ブックタイトルgokoku2012aki

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gokoku2012aki

静かに目を閉じて、火箸風鈴が奏でる音色に耳を澄ますと、やわらかな風が目の前をゆっくりと通り抜けたような空気になります。そんな心地いい音の余韻に心を奪われた人は数知れず。県内外のファンだけでなく、音響の専門家などからも広く称賛され、類いまれなる神秘的な音だといわれる風鈴の名は、「明みょうちんひばし珍火箸」。52代目、明珍宗理さんの手から生まれる、息をのむほど音色が美しい火箸です。平安時代から甲かっちゅう冑士として鎧よろいかぶと兜を製作していた明珍家は、明治維新後、代々受け継がれてきた鍛か冶じの技術を生かして、火箸作りを開始。しかし時代の変化とともに家庭から火鉢の姿が消え始め、火箸の需要も急減。「何としても引き継いでいかねば」。50代以上続いてきた明珍家の技が途絶えそうになった時、鎚つちを振るいながらずっとそればかり考えていたと、明珍さんは当時を振り返ります。そして、その後生まれたのが、4本の火箸で作った風鈴。火箸が触れ合った時に発した音にひらめきを得て、試行錯誤しながら完成した風鈴は、ちょっとした風でも真ん中につるした振り子に火箸が触れて、澄んだ音が鳴ります。そんな涼しげな風鈴の音が作り出されるのは、夏場は気温50度にも達するという自宅下の工房。熱気に包まれた仕事場で「もうこの温度に体が慣れてしまって、汗もかかなくなった」と明珍さんは笑います。炉から真っ赤に燃える鉄を取り出し、熱いうちに鎚で打つ。形を整えてはまた鉄を焼き、打つ。決して機械では出せない優しい音は、何度もその作業を繰り返すことで生まれます。全て手作業。そして、信じるのは自分の目と感覚。針のように美しく鍛えられた火箸の先端に、時代を超え、長年培われてきた職人の技が光ります。「ハングリーな気持ちを持ち続けることが大事」と、ものづくりの極意を語る明珍さんは現在、気品ある花器やチタンを使った郷土で育まれ、受け継がれてきた伝統的工芸品をご紹介します。技は語る?明珍火箸心に響く火箸の音色26