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音がつくれた」と今は思える。そうしたものが、僕らがこの6年間でつくってきたもののような気がします。○井戸ホールにお客さんがいっぱい入っている状態で演奏するときと、3分の2しか入ってないときに演奏するのとでは音と、音の響きも違いますよね。ある意味、お客さん自身も演奏者と一体になりたいという思いを持っておいでくださいということですよね。▽米田佐渡さんは昨年、東日本大震災被災地でも演奏をされました。現地での反応はいかがでしたか。○佐渡みんなを励まそうと思って行くわけですが、被災地の皆さんからの感謝の言葉の多さ、元気な笑顔に逆に励まされて戻ってきたというのが感想ですね。8月に福島県と岩手県に行き、さらに10月には日本ツアーで一緒に回っていたベルリン・ドイツ交響楽団の方から行こうと提案してもらって、宮城県名取市でも演奏しました。その時に行った海辺の閖ゆり上あげ地区は何もかもがなくなっていて、本当に胸が痛かったですね。美しすぎるほど真っ青な空の下、海が光っていて亡くなったたくさんの方が「ふるさとはこんなに美しいんですよ」と僕に訴えているようでした。○井戸佐渡さんのレクイエムは、もちろん犠牲になられた方々に対する追悼の意味もあるのですが、それだけではなく、今、生きている人たちへの「もっと頑張っていこう」という呼び掛けにも聞こえます。8月には、芸文センターで活動するスーパーキッズ・オーケストラと共に岩手県釜石市で海に向かって演奏していただきました。あれも、追悼と激励という二つの意味が込められているんですよね。○佐渡はい。海に向かって演奏するというのは、たくさんの亡くなった霊に対して、あるいは自然の神に対して、自分たちは演奏したい、鎮まってほしいという思い。同時に、その場に集まった人たちにとっては復興を誓う場になったと思います。▽米田県としても芸術文化の分野での支援活動をしていますよね。○井戸ええ。われわれも阪神・淡路大震災の時には芸術家の皆さんに随分励まされました。そういう機会を東北の被災地の人たちにも提供したいと、「がんばろう東日本!アート支援事業」を始めました。現地で演奏会を開いて激励するボランティア団体に対して、旅費などを助成して活動を応援しようというもので、24の団体が行ってくれました。○佐渡素晴らしいですね。そのようにさまざまな形で行くことが重要ですよね。被災地の人たちは歌も閉ざされた時間が長かったわけです。その中で、フォークソングや演歌、あるいはクラシックなど音楽を聞いて体が動くとか、手拍子するとか、歌が湧きおこってくる。それがいつか大きな合唱になって、オーケストラになったときに、僕の出番がやってくると思うのです。▽米田佐渡さんは以前から、水害に見舞われた佐用町や歩道橋事故のあった明石市での演奏、地震に襲われた中国四川省のためのチャリティーコンサートなど、さまざまな活動をされてきました。○佐渡僕自身こうして指揮を執ってこられたこと、この芸文センターへたくさんの人に来ていただいていること、あるいは音楽の持つ力を考えると、何か大きなことがあったときにはぱっと行って皆さんを励まし、悲しみを共有することは大事なことだと思っています。そもそも阪神・淡路大震災のことがあってこの劇場が誕生したわけですから、現地で共に祈り、手を合わせることはこれからもずっと重要なことなのではないでしょうか。○井戸昨年の第1回神戸マラソンの開会式での仙台市立八軒中学校と神戸市立本庄中学校などの合同演奏は息がよく合って素晴らしかったですね。神戸マラソンは東日本大震災の被災地に対して、「私たちは17年間かけて復興して幅広いプログラムを上演するPACオケの定期演奏会。釜石市内の根浜海岸で鎮魂のタクトを振る佐渡さん。(提供:産経新聞社)神戸マラソン開会式での合同演奏。音楽の持つパワーを被災地に届ける活動14