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その布に触れると何とも言えない優しさを感じる、それが丹波市青垣町を中心に作られている丹波布。明治末期まではこの地の農家などで盛んに織られていたものの、時代の流れとともに衰退し、一度は途絶えるという歴史を持ちます。しかし、民芸運動を提唱した故柳宗悦氏が京の朝市で丹波布を手に取ったことがきっかけとなり、昭和29(1954)年に再興。多くの人の尽力によりよみがえった匠の技を後世に伝えるため、平成10(1998)年には「丹波布伝承館」が完成し、今では全国から受講生が集まり、丹波布伝承者の育成の場にもなっています。柔らかな風合いを持つ丹波布の特長は、つまみ糸と呼ばれる絹糸を横糸に入れて、しま模様を織ること。温かい色合いは、化学染料を一切使わず、栗の皮など天然の草木で染めるからこそ。経験を頼りに何度も染めては絞ってを繰り返すため、同じ色がなかなか出ないのも魅力の一つです。「丹波布は、時間をかけて人の手から生まれるんです」と、穏やかな口調で話すのは、丹波布伝承館で指導員を務めて11年になる安あん達だち佳代さん。ものづくりにおける分業化が進む中、糸紡ぎ、染色、機織りといった全ての工程を手作業で行うことにこだわり、またそれが何年たっても心引かれる理由だそう。「手作業で大変だなと思うことはありませんか」と聞くと、「確かに、着物を1反作るには早くても2カ月、中にはもっと費やすものもあります。でもその分、一織り一織りに作り手の真心が込められているのです。それが丹波布なんですよ」と、安達さんは真っすぐに私の目を見て答えてくれました。使えば使うほど肌になじみ、時を刻みながらその良さが引き出されてくる丹波布。手間を惜しまず、全て手作業を貫き、それだけは今後も守り抜きたいという信念は、時代が変わっても揺らぐことはありません。「大切なのは技術をつないでいくこと」。そう話す安達さんの言葉には、郷土で育まれ、受け継がれてきた伝統的工芸品をご紹介します。技は語る?丹波布人の手が織り成すしま模様のぬくもり26