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思い切り歌って笑って音楽の力でストレス発散を集会所で開く楽しい歌の時間「兵庫県からやってまいりましたー。歌がお好きな方、一緒に音楽の時間を楽しみませんかー」。仮設住宅の間を歩きながら各戸に呼び掛けるのは、志賀ミサさんをはじめとする(一社)兵庫県音楽療法士会の3人。この日、宮城県石巻市開成地区仮設第3団地の集会所には、仮設住宅の住民約20人が集まりました。参加者の皆さんは、懐かしい歌謡曲の歌詞が並ぶプリントを手に笑顔を浮かべながらも、「どの歌から歌いましょう」という志賀さんの問い掛けには「順番通りに…」と小さな声を返すばかり。それでも「里の秋」の伴奏が始まると、しっかりとした歌声が響いてきました。曲を重ねるうちに、歌う声はさらに大きく、まとまるようになり、徐々にリクエストも出始めました。「音楽には、傷ついた心を癒やしたり、障害がある人のリハビリなどに役立ったりする力があります。私たち音楽療法士は、歌や演奏を通じて、心も体も元気になるお手伝いをしています。日頃のストレスをしっかり発散してもらえるように、今日は体を動かせる楽器も目いっぱい運んできました」と志賀さん。大きなスカーフを用いて曲に合わせて体を曲げたり伸ばしたり、また、マラカスや太鼓などの打楽器を配って音楽を本能で楽しむような陽気なリズムを全員でつくり出すなど、歌うだけでなく全身を使った演目に、皆さんの顔も晴れ晴れとし、集会所は大きな笑い声とにぎやかな音であふれ返りました。時には日常を忘れみんなでワイワイ「こうしてみんなでワイワイしているのが一番楽しい。普段歌うことなんてないものね。周りに迷惑を掛けないように、静かに暮らしてるから」と言う女性の顔は、優しくも少し寂しげに見えました。日頃から開成地区の仮設住宅支援に携わっているボランティア団体「やっぺす石巻」の小松佳代子さんが言葉を引き取ります。「始める前に志賀さんたちが声を掛けて回ってくれたので、いつもはこうした会に参加しない方も来られていました。今日は皆さん、表情がとても生き生きしていましたね。大声で笑える時間なんてなかなかないので本当にありがたいです」隣り合う家々が壁一枚隔てただけの仮設住宅で、物音一つにも気を使う生活。顔見知りがいなければ、楽しそうなイベントにも参加しづらいことでしょう。そんな中で、この日はほんのひととき、新しい出会いと周囲を気にせず大いに歌い笑える場がありました。兵庫県音楽療法士会の被災地派遣は今後も続く予定です。音楽に合わせてゆっくり体を伸ばせば、心も伸びやかに。志賀さんたちに誘われて、飛び入り参加の女性も。珍しい楽器を前に、会話も弾みます。19