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13県立歴史博物館ネットミュージアムひょうご歴史ステーション「ひょうご伝説紀行-妖怪・自然の世界-」を基に作成丹波市と多可町との境にそびえる篠ヶ峰には、古くから鬼が住み着いていました。ある日、この辺りを大きな嵐が吹きすさびました。嵐が収まり、鬼がふと山の下を見ると、山裾の牧山の里で人々が慌ただしく動き回っています。「滝つぼから水があふれて、里は水びたしじゃ。何とかしてやらにゃぁいかんのう」。鬼は滝つぼに口を当て、「ぶうーっ」と息を吹き込みました。すると不思議、あふれかえっていた水は、見る見るうちに地下へ吸い込まれていきました。ところが、地下にもぐった水は行き場を失い、東の船城の里へ吹き出して一面が水びたしになってしまいました。のんきな鬼はそれを知りません。「あー、いいことをした。人助けは気持ちがいいなぁ」と牧山の里を眺めているのでした。今度は日照りがやってきました。牧山の里では、鬼が滝の水を地下に吹き込んでしまったせいで田畑へ回す水が足りなくなり、人々は地面を掘り返して水が湧くところを探しています。「わしの失敗じゃ。すぐに何とかしないと」。鬼は指で地面を一かき二かきし、たくさんの井戸を作って、少ない水でも育つ栗や桑を植えて回りました。そしてまた満足気に下界を眺めていた鬼ですが、ちょっと東の空へ遊びに行ってみると、水浸しの船城の里が見えます。人々は山から木を切り出して沼に沈め、それを足場に深田の稲を育てています。「うーん、大変そうだなぁ。よし、こっちも手伝ってやろう」。鬼は牧山の里の栗を間引いて、船城の里の沼に放りこみました。間引かれた牧山の里の栗は大きな実を付けるようになり、船城の里の沼は浅くなって、豊かな水田が開かれていきました。天から与えられた二千年の命が尽きる日、鬼は名残惜しそうに白い雲をちぎっては牧山の里へ投げ落とすと、雲はきれいな繭を作る蚕になりました。里の人たちは、鬼が植えた桑の葉をたっぷりと与え、たくさんの蚕を育てました。「こっちにも何かあげておかないと」。へそをちぎって船城の里へ投げ落とし、へそは田んぼの水の中で大きなタニシになりました。こうして牧山の里は栗と蚕、船城の里はタニシの名産地となり、人々は豊かに暮らせるようになったのです。※篠ヶ峰は現在、ハイキングやマウンテンバイクの名所として親しまれています。また、牧山の里(丹波市山南町和田地区)は正月飾りの松や薬草の栽培が、水田が広がる船城の里(同市春日町船城地区)は稲作が盛んです。篠ヶ峰の鬼?のんきな鬼のお手伝い?ひょうごの民話15