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更新日:2017年3月6日

瀬戸内海の再生(平成26年3月)

瀬戸内海の再生

(瀬戸内海の魅力)

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 今また、瀬戸内海に注目が集まっている。瀬戸内海が国立公園として指定されてから今年で80周年を迎えるのもこの一つだ。この節目だけではない。昨年はあの公害の海「瀕死の海」に対して、水質対策のため制度化された瀬戸内海環境保全特別措置法の制定40周年であった。
 もともと瀬戸内海は日本人にとって心の故郷でもある。万葉集の額田王の歌「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」にもあるように、交流の海でもあった。
 しかも、風光明媚な多島海である。ドイツの地理学者で幕末に瀬戸内海を航行したリヒトホーフェンは、「瀬戸内海は地中海にも劣らず素晴らしい海だ。しかし、後世の人々の活動がこれを壊さないことを祈る」と言ったように、穏やかな海、多くの島々、美しい白砂青松などその美しさを誇っている。

(里海)

 この瀬戸内海に新たな動きが始まっている。まず、瀬戸内海を「里海」として再生しようとする動きである。「里山」は、集落の近くの広葉樹林が中心の山々に人々が入り込み、薪や炭を生産し、共生をしてきた。石炭、石油という化石燃料が私たちの生活に導入されるまでは、日本国内で普通の景色だった。これと同じように「里海」が提唱されている。つまり、人々と自然との交流を通じて生態系が維持されている関係になぞらえて、瀬戸内海のような閉鎖性海域で環境の保全を行いながら人々の生活が維持される相互関係を瀬戸内海で再生しようという試みだ。

(瀬戸内海の環境保全)

 瀬戸内海は、閉鎖性海域の環境保全では世界で有数の成績をあげている海である。あの戦後の高度成長下、水質が悪化し、瀕死の海と呼ばれ、沿岸知事・市長が立ち上がり、それが環境保全法の制定に結びつき、水質汚濁の原因となっている工場等の発生源規制、地域全体の総量規制がとられた。同時に生活排水や都市排水対策として下水道整備が進み、瀬戸内海の窒素、リンの環境基準の達成率は平成24年で98%とほとんど全ての観測ポイントで、未達成はほんの数ポイントの観測地点が残るだけである。このように、一度汚染された海域で、環境基準を取り戻した海は、瀬戸内海だけとされている。あの有名なアメリカ・ワシントンDCの北側のメリーランド州のチェサピーク湾の未だ困難な状況と比較しても画期的なことである。

(今直面している課題)

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藻場の再生

 しかし、今になって大きな課題に直面している。それは「きれいな海」は実現したけれど、「豊かな海」と「美しい海」が問題なのだ。まず漁獲量の減少。漁船漁業、アサリ等の漁獲量が減少し、ノリの色落ちが頻発することにより漁獲量がピーク時の約40%にまで減少していることだ。自然海岸も37%しか残っていない。

 どうしてこのようになったのか。まず藻場や干潟の減少だ。藻場は72%なくなってしまった。干潟も42%消失している。第二に、海底の環境悪化だ。ダムや河口堰により、海への砂の流入が減少し、二枚貝などの底生生物が生息できない海域が多くなってきている。また湾奥部や海底の土砂採取跡地で貧酸素水域が発生するなど、環境悪化が進んでいる。第三に、継続的な赤潮の発生だ。有害プランクトン、シャットネラなどによる被害が続いている。このことは、富栄養化と栄養塩不足が同時に生じていることにもよる。特に、プランクトンが栄養分を吸収し、ノリの生息に必要な栄養塩が不足する事態が、ノリの色落ちなど深刻な事態を招いている。第四は、海底や漂流ゴミなど海洋ゴミだ。海岸に漂着したゴミは、海岸管理者が必要な措置をとることとされているが、漂流ゴミや海底ゴミは処理責任者が明確でなく、その処理は円滑に進んでいない。

(瀬戸内海の再生)

 このような事態に対処するための取り組みが瀬戸内海を豊かで美しい里海として再生するための法整備を求める運動である。瀬戸内海環境保全知事・市長会議をはじめ漁業団体がこぞって新立法を求めている。平成19年には140万を超える署名を集め国会に提出した。国会でも議員グループの検討会が活動を始められた。ぜひ実現を期待している。

(新しい動き)

 この美しい多島海である瀬戸内海に新しい動きが出てきた。瀬戸内海の島々を活用した文化展示のリレーである。直島と淡路島を結ぶクルーズ船の運航も結構評判だった。周遊する観光客も増えてきている。ぜひ定着させたいものだ。

(リゾート適地 瀬戸内海)

 それにしても、どうして日本では本格的なリゾート地が形成されないのだろう。昨年秋にトルコ・エーゲ海沿岸のリゾート都市マルマリスで閉鎖性海域の環境保全国際会議(エメックス10)が開催された。会議では、瀬戸内海を里海として再生しようとする事業の基本理念である「里海」をテーマにセッションも開かれた。このマルマリスは冬季は3万人程の小都市だが、夏季など保養基地としてにぎわう時期は30万~50万人の大都市となり、リゾート地として観光客が押し寄せる。会議場となったホテルもペンションが本館の周りに配置され、前は海水浴場を中心として波止場とフィッシャーマンズワーフ(海市場)などが緑豊かな海岸沿いに並んでいる。このようなリゾート地が日本ではなぜ生まれないのだろう。

 トルコの環境学者オザーン先生は、「日本の人は、何もない所でゆっくり過ごす、何もしないで一日過ごすことができないようですね」と言われていたが、まさに、何か目的をもって出かけることが当たり前で、何も目的を持たずに出かけることができない性分なのかもしれない。しかし、何もしないという目的で出かけて、美しい自然の中に浸るという目的で出かけることが私たちの生活スタイルにならないものだろうか。成熟時代といわれ、超高齢社会といわれ、「ゆっくり」の価値が見い出されてもよい。

 瀬戸内海は日本のリゾートの適地でもある。ぜひ瀬戸内海と人との交流を、里海としてつくりあげたいものだ。

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