兵庫県における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領 福祉部長通知 施 行:平成31年3月12日 (目的) 第1 この要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、また、ユニバーサル社会づくりの推進に関する条例(平成30年4月1日施行)の理念及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定)に即して、法第7条に規定する事項に関し、兵庫県(県立学校及び地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第三章の規定の適用を受ける公営企業並びに警察を除く。)の職員が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 (定義) 第2 この要領において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 社会的障壁 障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (3) 障害を理由とする差別 障害者に対し、客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別な事情なしに、障害を理由として、障害のない者と異なる不利益な取扱いをすること又は社会的障壁の除去の実施に必要かつ合理的な配慮を怠ることをいう。 (4) 合理的配慮 社会的障壁の除去の実施を現に必要とする意思を表明している障害者又はその家族等(障害者がその意思を表明することが著しく困難である場合に限る。)に対し、社会通念上相当と認められる人的負担、物的負担又は経済的負担その他負担の範囲内で、障害のない者との平等な待遇を確保するために行う必要かつ適当な変更又は調整をいう。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第3 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として、障害のない人と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないものとする。これに当たり、職員は、別紙1に定める留意事項に留意するものとする。   なお、別紙1中、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ。)。 (合理的配慮の提供) 第4 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、合理的配慮の提供を行うものとする。これに当たり、職員は、別紙1に定める事項に留意するものとする。 (管理職員の責務) 第5 職員のうち、行政職7級以上の職又はこれに相当する職にある者(以下「管理職員」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施するものとする。 (1) 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、その管理する職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 (2) 障害者から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 (3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、管理する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 2 管理職員は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処するものとする。 (相談体制の整備) 第6 健康福祉部障害福祉局障害福祉課(以下「障害福祉課」という。)に、職員による障害を理由とする差別に関する障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するための相談窓口を置く。 2 相談を受ける場合は、性別や年齢等に配慮するとともに、対面、電話、ファクス、電子メールに加え、障害者がコミュニケーションを図る際に必要とする多様な手段を可能な範囲で用意し、対応するものとする。 3 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。 4 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。 (職員の意識の向上) 第7 障害福祉課は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、必要な研修・啓発を行う。 2 障害福祉課は、職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、障害者へ適切に対応するため、事例集等により、意識の啓発を図る。 3 障害福祉課は、定期的に職員に対する意識調査等を行い、行動目標(別紙2)を設定し、評価・検証等を行う。 (別紙1) 兵庫県における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項 1 障害者の対象範囲等  障害とは、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含みます。)その他の心身の機能の障害」であり、障害者とは、「障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」をいい、対応要領が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られません。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれます。  また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があります。 2 不当な差別的取扱いの基本的な考え方  法は、障害者に対して、正当な理由無く、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯等を制限する、障害のない人に対しては付さない条件を付けること等により、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。  ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではありません。したがって、障害者を障害のない人と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害のない人との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たりません。  このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害のない人より不利に扱うことである点に留意する必要があります。 3 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する等の取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。兵庫県においては、正当な理由に相当するか否かについて、法の趣旨に留意し、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び兵庫県の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。  職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが望ましいです。 4 合理的配慮の基本的な考え方 (1) 法は行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めています。合理的配慮は、いわゆる「社会モデル」(障害者の受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものという考え方)を踏まえ、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するために必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものです。   合理的配慮は、兵庫県の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないものであることに留意する必要があります。 (2) 合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、「5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素等を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものです。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じても変わり得るものです。合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとします。   なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要です。 (3) 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話を含みます。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含みます。)により伝えられます。   また、障害者からの意思表明のみでなく、本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含みます。   なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、支援者・介助者、法定代理人等を伴っていない場合等、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかける等、自主的な取組に努めることが望ましいです。 (4) 合理的配慮は、障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の環境の整備を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置です。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなります。また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要です。 (5) 兵庫県がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障害者が不利益を受けることのないよう、委託等の条件に、対応要領を踏まえた合理的配慮の提供について盛り込むよう努めることが望ましいです。 5 過重な負担の基本的な考え方  過重な負担については、法の趣旨に留意し、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。  職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましいです。 (1) 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か) (2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) (3) 費用・負担の程度 6 具体的な事例  障害福祉課は、職務の執行等に当たって職員等が活用できるよう、不当な差別的取扱いや合理的配慮の具体的な事例を収集し、公表します。 (別紙2) 兵庫県における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る行動目標 1 目標の期間  目標の期間は、平成31年度から平成33年度までの3年間とします。 2 目標の設定方法  職員を対象とする意識調査を行い、回答を1〜5点に換算して現状値を算出し、目標の期間満了時点における目標値を設定します。 3 目標 指標1 職場や街中で障害者とうまく接することができるか。 3.36を 4.00へ 指標2 障害者への対応について職場の周囲の意識は高いと思うか。 3.61を 4.50へ 指標3 障害者を意識して資料やホームページを作成する必要があると思うか。 4.30を 4.50へ 指標4 来庁した障害者を積極的にサポートしているか。 3.42を 5.00へ 指標5 障害者に社会的障壁が存在することはやむを得ないと思うか。 3.23を 4.00へ 指標6 障害者に積極的な優遇措置を採ることは良いことだと思うか。 3.73を 4.00へ 指標7 障害者差別解消法は業務の負担になると思うか。 3.21を 4.50へ