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更新日:2015年11月19日

前田 清悟さん (NPO法人たつの・赤トンボを増やそう会)たつの市

理事長・前田清悟さん

 元気な地域づくりの担い手を直撃インタビュー!キラリと光る活動や人柄をご紹介します。

 「夕焼け小焼けの 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か」

 秋になるとつい口ずさみたくなるこの童謡。日本人の心に染み込んだ名曲「赤とんぼ」は、ご存じ、現在のたつの市出身の詩人・三木露風が作詞しました。幼い頃、夕焼け空の下で赤トンボが飛んでいる様子を眺めた思い出を込めたと言われています。郷愁を帯びた美しい詞のイメージから、今でもたつの市にはたくさんの赤トンボが飛び交っている風景が期待されますが・・・その赤トンボは絶滅の危機にひんしている現実があるというのです。今回は、三木露風の愛した原風景を復活させようと奮闘する、NPO法人たつの・赤トンボを増やそう会理事長の前田清悟さんの思いに迫りました。

日本の原風景を復活、そして未来へ―

トンボを追いかける子どもたち

 ひんやりとした風に秋の深まりを感じたこの日。子どもたちは虫捕り網を手に、勢いよく稲刈りの終わった田んぼへ走り込んでいきます。「トンボ、いたぞー」という誰かの声を合図に、田んぼの中を右へ左へと大移動。子どもたちを夢中にさせるものがここにはあり、それはいつの時代も変わらない光景なのかもしれません。子どもたちはトンボ捕りを楽しむだけではなく、しっかりと命をつなぐ活動をしていました。

調査に参加した親子

・・きょうはどんなイベントなんですか。
 赤トンボを探すという、毎年この時期に行っている調査です。たつの市内の小学校に声をかけ、子どもたちと保護者に参加してもらっています。現在日本には200種類以上のトンボがいて、その中でトンボ科アカネ属に属する21種類のトンボのことを、私たちは「赤トンボ」と呼んでいます。童謡「赤とんぼ」のモデルになったのは、さらにその中の「アキアカネ」というトンボです。アキアカネは全国的に見ても減少してきていて、たつの市も例外ではありません。絶対に見られる場所というのが無くなってきているのが現状です。目撃情報があっても、「ウスバキトンボ」という外来種であったり、赤トンボの一種のマユタテアカネだったりすることが多いのです。

アキアカネのオス

 アキアカネは初夏にヤゴから羽化し、夏の間は涼しい高い山の上で過ごします。秋になって低地の気温が下がってくると産卵のために里へ下りてくる習性があるので、10月下旬から11月上旬にかけて調査しています。




赤トンボと共に秋の風物詩

 ・・どうして赤トンボに関わる活動を始めたんですか。
 
私はたつの市で生まれました。大学進学・就職は神戸や大阪でしたので、長い間離れていた地元に帰ってきたときに、改めてふるさとの魅力を感じました。これからは、たつのの文化や情報を発信してきたいと考えていたときに、旅館の社長さんから相談をされたのです。「お客様から、“たつのへ行けば赤トンボが見られるのですね?”とよく聞かれます。でも赤トンボを最近見かけないので、どこに行ったら見られるでしょうか」と。記憶をたどってみると、私が小中学生のころ、農道に寝転がって空を見上げれば一面にたくさんの赤トンボが飛んでいました。言われてみれば確かに最近、見かけないなと思ったのです。そこで、どうして減ってしまったのか、どうすれば増やせるのかを考えはじめ、2008年から赤トンボを復活させるための活動を始めました。

捕獲した赤トンボ

 赤トンボといえば、三木露風。三木露風といえば、たつの市。全国の人が期待している「赤とんぼの情景」を取り戻す活動を、たつの市がやらなくてどうするのか!そんな使命感も沸いてきたのです。



連結態の赤トンボ

・・日々の活動ではどんなことをしているんですか。
 
赤トンボの生態や減少した原因を調べ、数を増やすために人工繁殖に取り組んでいます。トンボの生態を全く知らないまま手探りで始めたので、最初の3年間はふ化も羽化も全くできませんでした。ふ化や羽化をさせるためには、水の量・農薬の種類・オタマジャクシなどの天敵の有無など様々な要因があり、最善策を見つけるのにとても苦労しました。「トンボ池」と呼んでいる実験場を作り、実際の田んぼにも飼育容器を置いて試行錯誤した結果、今年は303匹の赤トンボの羽化に成功しました。去年の実績が99匹だったことを考えると、3倍以上の成果です。既に激減しているものを復活させるのは大変難しいと感じますが、ここで誰かが手を差しのべなければ本当に絶滅してしまうかもしれません。そう思うと、少しずつでも成果を出して前に進んでいきたいと思います。



人工産卵の様子

 ・・きょうの調査では、人工繁殖に必要な赤トンボの卵の採取も行うんですよね。
 
交尾後連結態になって、メスは田んぼにできた水たまりなどの水面にしっぽを打ち付けて卵を産みます。だから、交尾後のメスを捕獲して卵を採取するんです。小さなケースに水を入れ、トンボのしっぽをつけて刺激すると産卵し始めます。

トンボの卵

0.5mmほどの小さな卵を100~500個ほど産むんです。日にかざすときれいな黄色であることがわかりますね。子どもたちにも手伝ってもらいますが、初めて見るトンボの産卵にみんな興味津々ですよ。








田植えの様子

 ・・子どもたちと活動することにはどんな意味がありますか。
 
実際に体験した記憶は、大人になっても消えないと思います。子どもの頃の経験とそのとき感じていたことを思い出して、赤トンボがすむ自分のふるさとを守っていって欲しいです。子どもたちにはきょうのような調査だけでなく、田植えから稲刈りまでの一連の農業を経験してもらっています。卵を産む場所である田んぼがトンボにとってどれだけ重要な役割を持っているか、どんな環境なら赤トンボがちゃんと生きられるか、田んぼとトンボの関わりを感じ取ってもらうためです。

稲刈りの様子

私たちの活動は、とても時間のかかる取り組みです。自然界での繁殖が安定するまで、この活動を次代へ引き継いでいかなければなりません。未来の担い手である子どもたちにしっかりと伝えていくことで、息の長い取り組みにしたいと思います。




子どもと一緒に観察する前田さん

・・赤トンボが自然界で産卵し、ふ化、羽化するためには田んぼの環境を整えることが必要なんですね。
 
そうですね、今までの調査で、
・卵を産みやすいように稲刈り後の田んぼに水たまりを作る
・ヤゴの生育に必要な約2ヵ月間は田んぼの水を切らさないようにする
・田植え時に使われる殺虫殺菌剤を、水生生物に優しいものにする
・農薬や化学肥料の使用を減らす
などが、赤トンボが育つ環境のポイントになることがわかりました。このような環境が整えば、赤トンボの増加につながるはずです。

たつの赤とんぼ米ののぼり

 この環境整備には、田んぼを持つ農家の人たちの協力が欠かせません。そこで私たちは、赤トンボに優しい環境の農法で作った米を「たつの赤とんぼ米」として販売を始めました。現在、8軒の農家が協力してくれています。赤トンボに優しい環境で作られた米は、私たち人間にとっても安全で安心ということになります。試食した人からは、「安全なのがうれしい」「モチモチ感があっておいしい」という声が届いています。「たつの赤とんぼ米」が安心ブランドとして定着していけば、我々の取り組みに賛同してくれる農家も増えるはずです。賛同農家が増えればこの農法での栽培面積が拡大し、赤トンボの産卵場所や生育できる場所が拡大するという良いサイクルが生まれます。さらに、ここたつの市の赤トンボに優しい農法がモデルとなり、他の地域へと広がってくれれば、全国で赤トンボが増えて日本の原風景が各地で取り戻せるのではないでしょうか。これもまた息の長い取り組みになりそうですが、人間と赤トンボの共存に向けて活動を続けていきたいと思います。

トンボの産卵を観察する高曽根

 オニヤンマ、ギンヤンマ、シオカラトンボにイトトンボ・・・私も幼い頃はよく虫採り網を振り回してトンボを追いかけたものです。思い返せば、刈り取りの終わった家の横の田んぼに赤トンボがたくさん飛んでいたような。前田さんが、「20年前には日本中どこにでも赤トンボはいた」とおっしゃっていましたから、私のこの記憶もきっと確かなものでしょう。故郷へ帰ればあの歌のような風景が今も広がっている・・・私もそんな気がしていた一人です。20年の間に、自然界では大きな変化が起きてしまっていたんですね。その事実をしっかり受け止めなければなりません。
 取材時、初めて見た赤トンボの卵の美しさに驚きました。子どもたちも、「こんなの初めて見た」「こんな小さな卵からヤゴになるなんて不思議」と、驚きを隠せない様子でした。この小さな卵には、大切な命とみんなの大きな期待が詰まっているんだと考えると、胸が熱くなります。前田さんのひたむきな思いは、きっと子どもたちにも伝わっているに違いありません。「自然を守ろう」とか「農薬を使わないように」とか言うのは簡単ですが、理想論に終わらせず、実現させて継続していける仕組みを考えるのは大変なことです。それを、人工繁殖や農法の開発で実践する研究者のような前田さんの存在はとても大きいと思いました。
 参加した保護者のみなさんからは、「赤トンボの里ならではの経験を子どもにさせてあげたい」という声も聞かれました。赤トンボがたつの市民の自慢であり、ふるさとの誇りだという思いはいつの時代も変わらないようです。その思いが後押しとなり、ますます活動が広がってほしいと思います。未来の風景は、今を生きる私たちが守り、つくっていくものなんだと改めて感じました。(高曽根)

☆「たつの赤とんぼ米」は、西播磨特産館で販売中!
西播磨特産館
場所:神戸市中央区北野町3-1-8
営業時間:10時~19時
定休日:毎週木曜日
TEL:078-855-3890
※詳しいお問い合わせは080-5343-7461(前田さん)まで

☆講演会のお知らせです。
「アキアカネが群れ飛ぶ童謡『赤とんぼ』の原風景復活をめざして」
講師:前田清悟さん(NPO法人たつの・赤とんぼを増やそう会理事長)

日時:平成27年11月28日(土曜日)午後3時~午後5時
場所:JA兵庫六甲平野支店ふれあい会館(神戸市西区平野町下村325)
講演内容:赤トンボ(アキアカネ)生息調査・アキアカネ人工飼育・アキアカネが育つ農法・たつの赤とんぼ米の取り組みについて
<申込み・問い合わせ>
上津橋土地改良区事務所 FAX:078-925-3855
農・都共生ネットこうべTEL:090-9112-1826(高畑さん)
※先着順・定員50人ですのでお申し込みはお早めに!

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