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兵庫県ゆかりの著名人のインタビュー全文を紹介します。
PROFILE
藤本 実(ふじもと・みのる)
昭和58年神戸市生まれ。県立長田高校から神戸大学工学部へ進学。平成24年に神戸大学大学院博士課程を修了(工学博士)。東京工科大学で教員となった後、25年にmplusplus(株)を設立。LEDを用いたダンスパフォーマンスシステムを開発し、EXILEをはじめとするさまざまなアーティストのドームライブやイベントの演出を手掛けている。
小さい頃から運動神経はいい方で、野球、テニス、体操と、クラブ活動に明け暮れていました。中学時代にDA PUMPを見たのがきっかけでブレイクダンスにはまりました。今のようにダンススクールがなかったので、テレビの録画を見てひたすらまねて覚えていましたね。大学でもダンスサークルに入り、踊り漬けの生活を送っていました。
もともと音響機器に興味があって選んだゼミがウエアラブルコンピュータ(身に付けて使用するコンピューター)の研究をしている所でした。4年生になり研究する段階になってもダンスが研究につながるとは思ってもいませんでしたが、きっかけはゼミの先生から「せっかくダンスをしているのだから、それをテーマにしたら」と提案されたことです。その時に初めてダンスが研究になるのだと気が付き、以来、アイデアがどんどん湧いてきました。
小型センサーが今ほど優れていなかったこともあり、何度も壁にぶち当たりながらも、LEDチップにマイクロコンピューターをつないで音と光を同期させるシステムを考えました。大学院生の時、初めてLED衣装を光らせたのがルミナリエ会場なので、東遊園地が今の仕事のデビューの場といえますね。その後、300人規模のステージでサークルの仲間とLEDダンスを披露し、拍手喝さいを浴びました。研究成果をSNSで発表するとまず海外、それから徐々に国内でも評価され声が掛かるようになりました。EXILEのHIROさんもその一人で、ドームツアーへの参加を機に、勤めていた大学での教員を辞め、会社を立ち上げました。
当初は今のように簡単に制御できるLEDテープが存在しておらず、1個1個のLEDにはんだでケーブルをつないでいたので、本来の仕組みづくりやプログラミング以上に、作業に膨大な時間を要しました。会社をつくったことで徐々に高性能なデバイスを設計・開発できるようになり、1人200粒が限界だったLEDの数が、今は5,000粒でも可能になりました。ただ、粒数や人数を増やすような大掛かりな方へ進めるのはもういいかな、と。今後はより新しい表現を見つけることに注力していきたいと思っています。
テーマは光ることだと思われがちですが、基本は「身体の拡張」です。コンピューターによって人の表現をどう拡張させることができるのか。LEDを使ったフラッグやリボンでの演出も同様で、いかに有機的な表現ができるかを追求しています。まだ誰も作ったことがない、自分も頭にしか描いていなかったものが目の前で形として再現できた時は達成感を感じます。新しいものが開発できるたびに、誰よりも私自身が一番感動していると思います。
実際に目の前で見てもらうことが重要だと考え、そこにこだわってライブに特化した作品をつくってきました。しかし、たくさんの人が集まれなくなった今、どんな表現で人を感動させることができるのかをあらためて考えるきっかけをもらいました。この期間中に国の研究費で開発したものが「Immersive Online Live System(イマーシブオンラインライブシステム)」として形になり、実証実験ができたのは大きな出来事です。この装置をスマートフォンの周囲に付けると、無線デバイスで同期信号を送ることによってステージの演出と連動してLEDが光り、自宅などに居ながらにしてライブの良さである“同じ空間を共有してつながる”体験ができるというものです。
常設のステージで、自分の演出したダンスとテクノロジーを基本とした公演を続けることです。サーカスのように老若男女が楽しめるものをつくりたいと思っています。また、今年は海外進出に加え、コロナ禍を経験したことで集まれない人へ作品を届けることも大きな目標になりました。
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