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平成21年4月から「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が全面施行され、健全化判断比率及び資金不足比率のいずれかが一定水準を上回った自治体には、財政健全化計画等の策定が義務付けられました。
このように、地方自治体の財政運営にかかる責務は益々大きくなってきており、地方自治体には、現行会計制度に基づく決算データの公表に加えて、これまでの会計では見えにくいコストを明示すること、保有する資産・債務を正確に把握し、コスト分析や政策評価に活用することなどを目指して、より精緻な財務諸表を整備・開示することが必要とされています。
今回の地方公会計改革は、平成18年8月に総務事務次官通知「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針(地方行革新指針)」において「新地方公会計制度研究会報告書」で示された普通会計ベース及び連結ベースの財務書類4表(貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書)を3年後ないし5年後までに整備すること、との方針に基づき進められています。
また、地方行革新指針では、資産・債務管理において、財務書類の作成・活用を通じて資産・債務に関する情報開示と適正な管理を一層進めるとともに、国の資産・債務改革も参考にしつつ、未利用財産の売却促進や資産の有効利用等を内容とする資産・債務改革の方向性と具体的な施策を3年以内に策定することとされています。
このような流れの中、地方自治体には、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」が全面施行されたことも踏まえ、新地方公会計モデル(基準モデル、総務省方式改訂モデル)による財務書類を作成のうえ、公表することが重要とされています。
基準モデルは、開始貸借対照表を固定資産台帳等に基づき作成すること、ストック・フロー情報を網羅的に公正価値で把握した上で、個々の取引情報を発生主義により複式記帳して作成することが前提であり、作成にあたっての当初の作業負担は大きいですが、書類の検証可能性が高くなります。
一方、総務省方式改訂モデルは、これまでの総務省方式とほとんど変わりませんが、各団体のこれまでの取組や作成事務の負担を考慮し、固定資産台帳や個々の複式記帳によらず、決算統計情報を活用し作成することとされており、整備が比較的容易であること等のメリットがある反面、公有財産等の貸借対照表計上額に精緻さを欠くという課題があります。このため、資産の有効活用等の目的達成には、売却可能資産から優先して固定資産台帳を整備し、以後段階的に整備していく等、継続して精緻化を図ることとされています。
平成22年9月に地方公会計の更なる推進方策等を検討するために、総務省に「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」が設置され、平成26年4月30日に報告書がとりまとめられました。
その後、「今後の新地方公会計の推進に関する実務研究会」を設置して議論が進められ、平成27年1月23日に「統一的な基準による地方公会計マニュアル」がとりまとめられました。また、同日の総務大臣通知「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」において、原則として平成27年度から平成29年度までの3年間で全ての地方公共団体において統一的な基準による財務書類等を作成することとされています。
統一的な基準は、(1)発生主義・複式簿記の導入、(2)固定資産台帳の整備、(3)比較可能性の確保といった観点を踏まえて定められており、今後、統一的な基準による財務書類の作成が各地方公共団体において進められることで、管理会計的な視点からの活用など、マネジメントツールとしての財務書類の機能がより一段と高まることが期待されています。
参考
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下記の表の凡例 基準モデルで公表している団体 |
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