平成29年(不)第5号事件の命令概要
兵庫県労働委員会は、令和元年5月10日、標記事件に係る命令書の写しを当事者に交付しました。その概要は次のとおりです。
1.当事者及び申立要旨
- (1)申立人X組合
- (2)被申立人Y1会社
- (3)被申立人Y2会社
- (4)申立要旨
- ア 申立日
平成29年6月2日
- イ 請求する救済内容(労働組合法第7条第1・2号)
- (ア)被申立人Y1会社に対して
- (イ)被申立人Y2会社に対して
- a 不利益取扱いの撤回
- b 団体交渉の実施
- c 謝罪文書掲示・交付
2.命令要旨
〔主文〕
- (1)被申立人Y2会社(以下「Y2」という。)は、申立人の組合員であるA1、A2、A3、A4及びA5(以下「A1ら」という。)を採用の面接時に提示した条件で採用したものとして取り扱わなければならない。
- (2)その余の申立てを棄却する。
〔事件概要〕
申立外C1会社(以下「C1」という。)の従業員として、C1と被申立人Y1会社(以下「Y1」という。)との請負契約等に基づき、Y1の工場の業務に就労していたA1らが、C1とY1との契約終了に伴い、他のC1の従業員14人と共にC1を解雇された。
C1が行っていたY1の工場の業務に対して従業員を派遣することとなったY2は、当該業務で就労する派遣労働者を採用するに当たり、C1の全従業員に採用の面接を行い、組合員であるA1らのみを不採用とし、他の従業員を全員採用した。
一方、申立人X組合(以下「組合」という。)は、Y1に対して、Y1の工場での就労継続等を議題とする団体交渉を、Y2に対して、不採用理由の説明等を議題とする団体交渉をそれぞれ求めたが、Y1及びY2はいずれも拒否した。
本件は、組合が、かかるY1及びY2による団体交渉の拒否が労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号の不当労働行為に該当し、Y2によるA1らの不採用が同条第1号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
〔判断要旨〕
- (1)Y1は、労働契約締結を含む労働条件について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできず、Y1は組合からの団体交渉要求に応じるべき使用者といえない。したがって、Y1が団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
- (2)A1らがY2の採用のための面接を受けた時点までは、A1らを含むC1の全従業員を採用することは、Y2において既定の方針であったと推認される。この事情を踏まえると、Y2はA1らとの関係において、近い将来において労働契約関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存在するので、労組法における使用者に当たるということができる。したがって、Y2が団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
- (3)労働組合の組合員であるが故に採用を拒否するという行為は、当該労働組合の団結権を直接侵害する行為であり、労働者が労働組合を組織し、団結することを擁護すること及び団体交渉をすること等を助成することを目的とする労組法が、労働組合の組合員であるが故に採用を拒否するという行為を保護の対象外に置いたとする解釈は妥当ではない。
本件は、A1らを伊丹工場から排除したいというY1の意向を慮ったY2がA1らを組合の組合員であるが故に不採用と決定したと推認するのが合理的である。
したがって、Y2によるA1らの採用拒否は、組合の組合員であることの故をもって不利益取扱いをしたものであり、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当する。
3.審査の経過
調査8回、審査2回
平成31年4月25日の公益委員会議で、一部救済命令を発することを決定
4.命令書全文
命令書全文(PDF:8,279KB)