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更新日:2026年3月5日

ひょうご県議会だより高校生web版

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「私」と議会 ~文教常任委員会への取材を通して~

甲陽学院高等学校/ららまる

取材記事

私たちが私たちらしく社会で自立するには?「社会的自立」を巡る議員の本音に迫りました。

 

私と議会|はじめに

7月の終わりごろ、この企画のキックオフミーティングがオンラインで開催されました。そこで兵庫県広報プロデューサーの有田さんからお話がありました。ありきたりな話を聞きに行くんじゃなくて、自分をぶつけることが大事だという話でした。でも、高校生の私たちがぶつけられる「私自身」って何だろう?議会について調べていくうちに兵庫県議会の昨年度の「文教常任委員会」というところでは「不登校と不登校支援」について一年間調査、研究をしていたことが分かりました。

私たちのチームには小学校時代、学校に行くのがひどく嫌いだった人がいます。彼は、自分は静かにしていたのにクラスがうるさかったために怒られてしまったことが原因だと言います。もしかして、この文教常任委員会についてなら「私自身」をぶつけられるかもしれない…。

そんなすがるような思いで私たちは、不登校支援に関する議会の役割を通して文教常任委員会について迫ろうと考えました。この記事はそのまとめになります。取材はアンケートとインタビューの2方式で行いました。アンケートは9月中頃から10月にかけて、昨年度(令和6年度)文教常任委員会に所属された方を対象に書面・無記名の形式で行いました。またインタビューは11月に、文教常任委員会の委員長を務められた北上議員にお願いしました。以下の記事では、内容を分かりやすくするためにインタビュー編を先に置いていますが、時系列的には逆であることにご留意ください。

「私」と「みんな」の関係性|インタビュー編

私たちが桂メディアディレクターと最終の打ち合わせをしていると、ひょっこり北上議員が入ってこられました。そのまま少しお話をして、いざ取材スタート!
まず手始めに議会のお仕事についての話から。

 

ーなぜ文教常任委員会に入られたのか気になっていて…

北上議員:県会議員の仕事は、幅広く県政に関わること全般が守備範囲なんです。県議会には7つの常任委員会があり、建設、文教、健康福祉、産業労働、警察など分野ごとに分かれています。実は1年に1回交代していまして、県政にかかわる全ての分野に取り組んでいくということで、昨年は文教だったんです。

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▲インタビューの様子。終始和やかにお話してくださりました。

ー文教常任委員会ではどのようなことをやられていたんですか

北上議員:議会の仕組みは、条例案や予算案の審議・議決を行っているんですが、常任委員会では、それぞれ専門の分野に分かれて審査しています。また、年間を通じて特定テーマに沿った調査研究を行い、文教常任委員会については、令和6年度は「不登校の課題」をテーマに、フリースクールなどの視察を行いました。

「社会」的に「自立」する?

インタビューの準備をしている中で気になったのは、不登校支援の目標になっている「社会的自立」という言葉でした。例えば「文教常任委員会 特定テーマに関する調査研究報告書」には、「不登校は、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要であり、支援に際しては登校という結果のみを目標とするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」という言葉があります。でも社会的自立という言葉、あまりピンときません。その言葉、一体何だろう…?

 

北上議員:今までの教育の在り方は学校に通えるようなことを目指すみたいなことだったけど、学校を休まずに頑張って行くっていうことも立派だし、通えないからだめじゃなくて自分のなりたい将来を自分の力で切り開いていく力をつける場所が学校だけじゃないよっていうことだと思うんです。

ー「社会的自立」は、自分で選択できる力をつけていくっていう考え方なんですね。

北上議員:そうなんです。子ども自身がどうしていくのかを決めるんですけど、子ども一人に任すんじゃなく、子ども自身にとって良い選択ができるよう周りで支えるのが大人の役割だと思うんです。決めつけるのはよくないと思うんですけど、こういう選択肢もあるよって提示するのは大人の役割の一つだと思います。

多数決で、人の生き方は決められないから。

ここで疑問が湧いてきました。

議会の仕組みは多数決だし、公共性も、もちろん大切です。でも「不登校」のような問題は、人によって違う。そんな問題を多数決で決めてしまうのは、ちょっと強引じゃない?それに議員さんたちは人それぞれ違う意見を持っているはずなのに、多数決をしてしまったらそんな意見がなかったことになってしまうんじゃないだろうか。
多数決の限界ってあるんじゃないの?そんな私たちのもやもやを最後にぶつけてみました。
すると…。

北上議員:議会のルールは最終的には多数決だけど、多数決になじまないような問題もありますよね。議会の中で修正案を作るとか継続審査で、もうちょっとよく話し合いましょうっていうことなどはできます。
他にも、多数決の前に県民の意見はこうじゃないですかっていろいろ言うことはありますね。

ー多数決以外の方法もあるということですね。

北上議員:一人ひとりの生き方ってやっぱり多数決で決められない。小さな声でも、個人の尊厳という憲法で保障されている権利は尊重しないといけないと思います。多数決でそういう人たちのことをなかったことにしてはいけないと常に思いますね。議会の役割として多数の都合だけでルールを作ってはいけない。人間の一生でも、赤ちゃんや子どもの頃はある面、弱者。成人になって体力的にも力を持ち、年老いてまた弱者になっていく。だからこそ、小さな声を尊重することは自分にも関わることであり、時間と手間を惜しまず、多数決に至るまでのプロセスは丁寧にした方がいい

 

―――――――――――――

インタビューが終わった後に、北上議員がいわゆるブラック校則を例にとって「私たちは県議会でこんな校則がいいですよ、と具体的に決めるのではなく、子どもが自分でこういうルールにしていこうって決められるような教育をつくり上げていきたいと思ってやっている」という趣旨のことをおっしゃいました。日々の暮らしでは気付かなくても、そんな縁の下の力持ちみたいなところがあるのかなと思いました。そして、そんなつかず離れずのほどよい距離感が、「私」と「みんな」のバランスをとるヒントなのかもしれない…と感じたのです。

 

あなたの思いを聴きたいんです|アンケート編

〈前略〉
令和6年度の文教常任委員会の皆さんがつくられた特定テーマに関する調査研究報告書「不登校への対応と不登校児童生徒への支援について」についての話を伺うことを軸に、それを通して文教常任委員会のお仕事についても取材したいと思い、昨年度文教常任委員を務めた皆さまにアンケート用紙を送らせていただきました。
これは僕の話になりますが、小学生の頃は学校に行くのがひどく嫌いでした。自分は静かにしていたのにクラスがうるさかったために怒られてしまったことが原因のように思います。一人ひとり、個人として見られていないようなところが苦手だったのです。
今回、議会というスケールの大きな場所を取材できる機会をいただきました。やはり僕としてはそんな議会の中で一人ひとりの議員の方がどういう風に仕事に向き合っていらっしゃっているのか、そこでどういうことを感じられたのかについても取材したいのです。お手数かと思いますが回答していただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

夏休みが終わりに近づいたころ、インタビューに先立って私たちはアンケートを作成しました。「自分」をぶつけること、それだけを頼りに何とか前文を記しました。そして託すような思いで、昨年度(令和6年度)、文教常任委員会に所属された方にアンケートをお送りしました。前文に記載されている通り、一人ひとりの意見を大事にしたかったので、回答いただいた全員分、端折らずに掲載しています。
回答してくださった議員の皆様、ありがとうございました。

Q.文教常任委員として大切にしていたこと、意識していたことは何ですか

  • 文教常任委員として私が最も大切にしていたのは、「現場の視点」です。私は南あわじ市選出の県議会議員として、常に南あわじ市の教育環境を念頭に置きながら議論に臨んでいました。議会で議論される大きな政策が、地域の学校や子どもたちにどう影響するのかを具体的にイメージしながら考えることを意識しました。また、南あわじ市議会議員を6年間務めた経験を活かし、市教育委員会とも密に連携を取りながら調査を進めました。県と市、それぞれの立場や課題を理解することで、より実効性のある議論につなげることができたと感じています。そして、私には当時小学6年生の息子がおり、一人の保護者としての視点も大切にしていました。学校に行きづらいと感じている子どもや、その保護者がどのような不安や悩みを抱えているのか、常に子どもたちや保護者の目線に立って考えることを意識しました。議会という大きな舞台で県全体のことを見据えつつ、自分の足元の地域や、身近な子どもの視点を忘れないこと。これらを両立させることを、常に心掛けていました

  • 出来るだけ当事者のお考えや状況を聞いて、不登校児童支援のリアルを把握することが大切だと思って取り組みました。
  • 社会を変えるのは、「教育の力」であること。個を尊重すること。しかし一方で、「自由とは責任」であること。
  • 若者を支援するというだけでなく、若者自身が社会の担い手として活躍できる環境を整えることを意識しています。こうした取り組みを通じて、兵庫県を「若者が主役となれる県」として再構築して行くことを大切にしております。
  • 不登校の子どもたち一人ひとりに寄り添い、必要な支援策を講じたり、オルタナティブな学びの機会を提供するために県の果たすべき役割を追求する。現在の学校現場における課題を浮き彫りにし、その問題を解決し、多くの子どもたちが「学校に行きたい」と思える環境整備に努める。家庭環境や障がいの有無、国籍等に関わらず、兵庫で育つ全ての子どもの最善利益を保障すること。
  • 将来を担ってくれる若者に直結する委員会だけに、長期的な視点で議論する事を心掛けて取り組みました。
  • 兵庫県議会では、県民の複雑かつ多様なニーズに応えるため、7つの常任委員会を設置しています。その中でも文教常任委員会は、未来の兵庫を担う子どもたちの心を育み、一人ひとりの個性や能力を大切にした教育を推進するための、非常に重要な委員会であると心得て活動してきました。
  • いつも心がけていたのは、子どもたちの目線で考えることです。数字や制度だけじゃなくて、子どもたちの気持ちや背景に目を向けることが何より大事だと思っています。今回、ららまるさんがご自身の経験を話してくださったこと、本当にありがたく思っています。「静かにしていたのに、クラスが騒がしくて一緒に怒られてしまった」という出来事から、「個人として見てもらえていない」と感じたというお話――とても共感しました。私自身も、似たような気持ちを抱いたことがあります。だからこそ、「誰かの声が埋もれてしまわないようにすること」を大切にしています。学校が、そうした声を受け止められる場になって、誰もが安心して学べる場所になることを願っています。不登校になったとしても、その子に合った学びの場を見つけて支えていくことが大切だと考えています。いろんな選択肢があっていい――そんなふうに思える社会を、少しずつ広げていきたいです。
  • 問1への対応として専門家や成果を上げている学校や教員、スタッフの熱意を生かし好事例を行政に生かしていくこと
    ※この質問の前に委員会の調査研究で印象に残ったことを聞かせていただいており、この方の回答は不登校児童・生徒への対応の変化でした。
  • 不登校、ヤングケアラーなど悩んでいる子ども達に寄り添った教育現場にしたいと政策提案に取り組んでいました。

 

―――――――――――――

アンケートの回答を読んでいく中で気づいたのは意見の多様さでした。昨年度1つの報告書をまとめた方々でも着眼点や大切にしていることなど1つとして同じものはなく、自分の経験に立脚して回答された方も多かったのが印象的でした。議論の場において多様な意見を持つ人がいることは当たり前だと思っていましたが、その貴重さを実感しました。

「私」と議会、ゆるやかなつながりの中で|終わりに

この取材は、私たち自身の思いを大人にぶつけることから始まりました。全体の中で押しつぶされたようにも感じたあの経験を、どうにかこうにか、ぶつけてきました。インタビューでは、「社会的自立」を入り口に、「個人を尊重すること」「同じ社会で生きていくこと」のバランスを考えました。どちらも手放し難い大切なものですが、どちらとも尊重する方法はあるのか、議員の方も一緒になって考えてくださいました。アンケートを通じて、議員の皆さん、一人ひとりの思いを伺うことができました。その意見の尊さは、インタビューで多数決のお話を伺ったあと、より一層肌身に感じるものがありました。

「私」と議会、個人と議会はゆるやかなつながりの中に存在しているように考えるようになりました。議会ではきっとアンケートで答えてくださったような議員の方の思いを、熟慮を重ねて出来うる限り一人ひとりにとって良いものにしていくのだろうと感じました。そうする上で、多数派になる場面でも少数派になる場面でも、一人ひとりの意見には意味があるのだと思いました。その一方で「一人ひとりの生き方ってやっぱり多数決で決められない」、その言葉の通り個人と議会の間の余白にも、大切なものが詰まっているように思います。見放すわけじゃない、でも過度に干渉するわけじゃない、議会のそんな姿勢も今の社会を形作っているように感じました。

お手を煩わせることも多かったと思いますが、議員の皆さん、有田さん、桂さん、広報広聴課の皆さん、議会事務局の皆さん、ありがとうございました。

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