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ようこそ知事室へ
【発表項目】
知事:
令和5年度予算の会見を始めます。
その前に、トルコ・シリア地震について、一言述べたいと思います。
トルコ南部で6日午前4時17分、日本時間でいうと10時過ぎに発生したマグニチュード7.8の地震及びその余震により、トルコと隣接するシリアも含めて、多くの亡くなられた方、それから被害が出ています。
亡くなられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被災されている方々が一刻も早く元どおりの生活を取り戻されることを、心からお祈りしています。
本日、駐日トルコ大使、そして総領事、さらには駐日シリア大使あてに、見舞い状を送付しています。
特にトルコとは、1999年のトルコ北西部地震をきっかけとして、兵庫県との交流も続いているところです。
防災教育など20年以上にわたり、草の根そして行政レベルでの活動もしているところでした。先日、1月24日の国際防災・人道支援フォーラムでも、トルコの関係者の皆さんにも来てもらい、復興の話をしてもらったところでしたので、急にこうした事態となり、たいへん心からお見舞いを述べたいと思っています。
今後、こうした友好関係にあるトルコについては、被災の規模がどれぐらいになるのか、それから海外に対する人道支援などのニーズがどれぐらいあるのか。日本からすでに昨日、先遣隊が行っていますが、そういったことを踏まえながら、どういった支援ができるのか。
それから見舞金を渡すことも含めて、現在、関係部局に指示をし、検討しているところです。これからまた関係機関や、あとはトルコの情勢などをみながら、しっかりと支援をしていきたいと考えています。
それでは、当初予算の発表に移ります。
令和5年度の当初予算、「躍動する兵庫、新時代への挑戦」ということで、今回発表します。2月13日に県議会が開会しますので、そこへ上程を予定しています。その内容について説明をします。
まず、2ページ目、予算の規模ですが、令和5年度の一般会計の規模は2兆3597億円となっています。
これは対前年度でいうと230億円ほどの減という形です。コロナに関連する事業が少し減ったり、中小企業向けの貸付金が減少したことなどによるものです。
それから歳入については、3ページです。
県税等は9037億円ということで大きく伸びています。令和4年度の県税収入についても、かなり伸びる見込みです。コロナや円安、物価高で世界的にインフレの影響などが出ていますが、本県のものづくり産業をはじめとする企業業績については、比較的堅調なところもあり、法人関係税などで大きく伸びてきています。それを踏まえて令和5年度も堅調な税収の伸びが予定されると見込んでいます。それに伴って、地方交付税が減少するなど、いろいろな要因が重なって、全体としてはこの規模となっています。
それから、4ページは、歳出です。
特にポイントとしては、人件費については、一定の退職見込者数の減などのいろいろな要因が合わさったものです。
特に投資的経費については前年度比1.1%増で、これは阪神南の特別支援学校の増設など、狭隘化対策などによる増で、こういったハード整備をきっちりとしていきます。
5ページが、ポイントとなりますが、財政フレームです。昨年、発表したものですと、令和10年度までの収支不足総額が140億円でした。今回、国が発表した経済成長率は少し鈍化する数字になっていますので、それに置き換えたことと、金利の上昇により公債費が増えることを踏まえると、令和10年度までの収支不足総額が前年度の140億円から115億円悪化し、255億円という形になります。
経済成長率が下がったり、金利が引き上げになると、借金を返す際の金利負担が増えるので、全国的な傾向ではあると思います。それが兵庫県でも表れているということです。
この中長期的な財政フレームの悪化を踏まえ、財政運営に対する緊張感をこれからも持っていかなければならない、ということだと思います。行財政改革をしっかりと進めつつ、必要な投資もする。
ただ一方で、メリハリのついた行財政運営をこれからもしていく。この収支不足に対して、毎年度予算の際に何とかやりくりしていきますが、少し中長期的には、悪化のトレンドが見えていますので、緊張感を持った行財政運営をこれからもしっかりとしていきたいと考えています。
6ページが、予算編成の全体像で、3つの視点で今回、編成しました。1つ目が、「新しい時代の力を育む」ことです。
兵庫の持続発展のためには、子どもたちが未来を切り開いていく力、これは教育がすごく大事だということと、兵庫を舞台にスタートアップやいろいろな人が活躍してもらえる場づくり、機会づくりが大事だと考えています。
そのために、県立学校の教育の環境改善や設備投資、それからスタートアップの支援、さらには水素をはじめとする次世代産業への投資に重点を置いた形になります。
それから2つ目が、「人の流れを生み出す」ことです。
今年から、JRのデスティネーションキャンペーンが本番になります。来年はアフターということ、そして次の年には、大阪・関西万博が訪れるということで、兵庫県の観光やその他の人の流れを呼び込む絶好の機会がやってきている、と考えています。万博で言いますと、ひょうごフィールドパビリオンの取組をしっかりとしていくなど、万博関連事業の予算もしっかりと確保したい、と思っています。
また移住についても、兵庫県内各地で、淡路や但馬、丹波も含めて、非常に移住希望者が伸びてきていますので、そういった流れもしっかりと掴んでいくことが大事だと考えています。
それから3つ目が、「一人ひとりに寄り添う」県政をしていくことです。
成長や観光の交流もしっかりと活性化していく一方で、誰ひとり取り残さない、誰もが安心して暮らしていける兵庫を作っていくことも大事です。
昨年からヤングケアラーや、課題を抱える妊産婦の支援をしてきて、先日も児童養護施設の現場へ行きました。新年度も、一時保護所の増設、児童養護施設でのケアリーバーの支援など、あとは不妊治療、不育治療の所得制限の撤廃による支援・サポート、それから自ら命を絶つ人、特に女性が増えていますので、そういった方々の支援などを、県民の皆さんの一人ひとりの状況に寄り添った支援をしていきたいです。
以降、具体的な事業について、7ページは、「新しい時代の力を育む」の1点目の「教育投資の強化」です。
これは以前お伝えしたこともありますが、新年度予算の目玉として、教育予算の充実をしていきたいと考えています。県内の県立高校を含めて、いろいろな子どもたち生徒たちが頑張っている状況です。社高校もまた春のセンバツに出場というたいへん喜ばしいニュースもあります。
一方で現場に行きますと、学校の施設が古くなっていて、老朽化が進んでいる。また、体育館や学校の備品などもすごく古くなっているというところです。昨日、特別支援学校へも行きましたが、いなみ野も非常に老朽化が進んでいる。狭隘化が進んでいて、廊下に備品を備蓄していたり、たいへんで、早急に改善すべき状況がありますので、そういったところを、生徒の声・現場からの声を踏まえて、県立学校の環境整備を推進していきたい、と考えています。
令和5年度から令和10年度の6年間で300億円の投資をしていきますが、今年度については38億円となります。具体的には、その下に記載のとおり、部活動など高校生の応援をしていくプロジェクトということで、今年度4億円となります。
それから県立学校の選択教室、体育館の空調、さらにはトイレをきれいにするなど、そういった身の回りの環境整備について126億円、令和5年度当初予算では、28億5000万円を計上します。
それから特別支援学校の整備、狭隘化や建て替えが非常に重要な場面もありますので、豊岡の特別支援学校の統合や、あとは東播磨地域の特別支援学校の狭隘化対策、ここをしっかりと進めます。
また、その下に記載の私立高等学校等の授業料軽減補助の拡充などや、スクール・サポート・スタッフの全校配置、これは市町からも声がありましたので、しっかりとしていきます。
それから、まだ来年度の予算には反映していませんが、国際教育の強化というものが非常に大事だと考えています。ハード面ではこういった環境改善をしていきますが、ソフトも大事です。その中でも特に高校生を含めた子どもたちの国際的な視野を育む教育、具体的には英語教育ですが、実践的に英語を使える力をいろいろな形で育んでいくことをどのようにすればよいのか、来年度、検討していきたいと思っています。
これはいろいろな地域へ行った際に、都市だけではなくて、多自然地域に住んでいても、国際教育を受けられるような環境づくりをしてほしい、という保護者からのニーズが強いということもあります。少子化が進んでいく中で大事なのは、少子化対策と同時に、今、兵庫で生まれ育っていく子どもたちが個の力を強くしていくこと。国際的にスポーツやビジネスなど、いろいろなところで羽ばたいて活躍できる人材を兵庫から育んでいく。そんな教育をソフト面で充実させていきたいと考えています。
それから8ページが「次世代産業の立地支援強化」ということで、産業立地条例を改正し、全県域で投資を促進します。ポイントは2点で、新たにベイエリアにおける投資に対する設備補助率を高めることと、水素をはじめとする次世代産業の設備補助率を高めることです。特に水素関連については10%とし、思い切って拡充する形にしています。
これは人口減少対策にもなります。雇用の場を創出することが兵庫県の人口対策にとても大事です。ベイエリアは、暮らす・働く場として兵庫県の人口の、雇用のダムとして、大事なところですので、そこに投資を促していきます。それとともに、新しい産業をしっかりと誘致して、働く場を作っていきたいと思っています。
それから、9ページは、水素関連です。神戸とともに播磨地域をカーボンニュートラルの地域にしていくということです。これは間違いなくなります。関西電力さんや川崎重工業さんが姫路を中心にカーボンニュートラルの拠点にしていくことを明言、方針としていますから。それに沿って県としてもしっかりと進めていきます。
また、次世代モビリティーということで、空飛ぶクルマの実用化を支援していく。会議体をつくっていろいろな人に参画してもらうと同時に、実証事業の支援をしていきたい、と考えています。
それから、10ページで、足元で大事なのが、やはり県内の中小企業・地場産業の支援をしていくことです。何より大事なのがブランディングです。競争力を強化していくことが大事で、その切り口はやはりSDGsの取組だと思います。
これをしていかなければ、マーケットや人材確保の観点から、取り残されるということです。これから県内の中小企業・地場産業に浸透させていくことが大事だと思っています。
それから、11ページは、中小企業の皆さんと話をしていると、人材の確保に非常に苦労していることが多いということです。
後ほども説明しますが、新たに奨学金返済支援制度を創設するという一番上の部分が今回の予算のポイントです。
県内の中小企業等との連携により、特に県内の企業に就職する人を対象として、新たな奨学金支援制度を創設します。特に私も奨学金を借りていましたが、就職して数年間は中央省庁でも給料はかなり安かったので、そこから返済していくのはなかなかたいへんな状況があります。そこで、一定程度給料が上がるまでの最初の期間について、県と企業でサポートをしていくことが大事だと思います。
これまでの制度は、資料に記載のとおり、企業が3分の1、県が3分の1、そして本人が3分の1という制度でしたが、県内の人材確保、そして奨学金の返済支援をしていくことが大事だと判断し、本人負担をゼロとする新たな制度に組みかえることにしました。企業が3分の1を、県が3分の2を負担するという形にします。これをきっかけとして、県内に若い世代の方々が就職していく起爆剤にしていきたい、と考えています。
それから、12ページは、「スタートアップ支援の強化」です。県では、ひょうごTECHイノベーションプロジェクトということで、地域の困りごとを、スタートアップや中小企業が新たな技術、新たなノウハウのみならず、既存の技術でも解決していくプロジェクトを実施してきました。資料記載のとおり、シカの撃退のプロジェクトや、後ほども説明しますが、警察でのAIを活用したパトロールなど。そういったうまくいっている事例もありますので、それをさらに来年度拡大していき、5課題だったものを10課題に、予算を倍増していきたいと考えています。
それから、13ページですが、「スタートアップの支援」ということで、いろいろな県内に来る方々、県内の人をサポートしていく。県内発のスタートアップを創出することも大事だと思います。特に、大学生をはじめとした県内の学生が起業をする際のサポートをしていきたい、と考えています。
起業プラザひょうごの利用がしやすい形の設定や、いろいろなイニシャルコストを支援していきます。また合わせて、県内には外国人の留学生がかなりいますので、そういった方々の日本に残ってビジネスをしたいという声や、兵庫に残って何かやりたいという声が、これからも増えていくように、留学生への起業支援を合わせてしていきたい、と考えています。
それから14ページが、農業関係で、資料記載のポイントは一番上です。有機農業をはじめとする環境創造型農業の推進をしていきます。
いろいろな地域で、お母さんや子育て世代の人と話をします。やはり有機農業に対する関心はすごく高いのです。県としても、これまで環境創造型農業について、コウノトリ育む農法を含めて、してきましたが、これをさらに拡大していくために、来年度、有機農業をはじめとする環境創造型農業に関する有識者の検討会を立ち上げて、販売促進などの出口戦略、生産者の取組支援や担い手の育成についても検討していきたい、と考えています。
それから、脱炭素の取組が、15ページです。
一番上がポイントの1つ、ブルーカーボンです。ここをしっかりとしていくということです。藻場の再生によるブルーカーボンについては、神戸市も進めていて、しっかりと連携しながらですが、ぜひ養殖ノリも、明石を中心として兵庫のノリは大事な水産業の1つですが、ノリの養殖がCO2吸収に大きく寄与をしていることの証明を、来年度を含めて検討していきます。
そうすれば、兵庫県のノリの養殖をどんどんとして、食べれば食べるほど地球環境にもやさしいというブランディングに繋げていきたいというのが、ここの養殖ノリのクレジット化に向けた検討です。
それから、16ページが、観光・ツーリズムです。ここからは「人の流れを生み出す」というポイントになります。
インバウンドの解禁、それから今年の夏のDC、大阪・関西万博、そして神戸空港の国際化ということで、新しい観光戦略を作って取組を進めていきます。
DCのほか、ユニバーサルツーリズムを推進する条例制定は全国で初でして、ハード、ソフトの両面で進めていきたい、と考えています。
それから、17ページは、「大阪・関西万博に向けた取組」ということで、兵庫県が実施する事業についてのアクションプランの取りまとめをします。
ひょうごフィールドパビリオンの展開や、万博会場につくる兵庫棟(仮称)、それから県立美術館などで一つの拠点をつくっていきたいと考えています。さらには、県版のテーマウィークを独自に設定して、兵庫県の魅力を市や町や関係者と連携しながら発信していきたいと思っています。
また、大事な機運醸成ということで、子どもたち(が万博に参加できる取組)や、県以外に経済界、市町と連携しながら、盛り上げていく、機運を高めていくための協議会の設置もします。そういった取組を来年度もしていきます。
それから、18ページが、「大阪湾ベイエリアの活性化」です。再掲になりますが、産業立地条例の改正をするなど、しっかりと進めていく。クルージングMICEや、資料一番下のところですが、瀬戸内の大交流圏の形成も大事ですので、岡山県・香川県との周遊クルージング事業も実施します。来年にはおそらく香川県知事との両県知事会議というものも、姫路などで開催したいと考えています。
それから、19ページは、「若者の県内定着促進」で、これは先ほど述べたとおり、2点あり、1点が県内企業への定着促進です。
若手従業員、5年間を対象とした新たな奨学金返済支援制度を創設して、就職後の5年間は県と企業で全額返済を負担するという、思い切った取組を今回、実施します。
これによって、県内企業の人材確保をしやすくするとともに、返済の負担に苦労している学生をサポートするという、両方をしていきたい、と考えています。
それから、20ページは、「兵庫五国の魅力向上」です。躍動する兵庫に向けた応援ということで、これは多自然地域を含めた地域の活性化に繋げていくものです。
県民局・県民センターのマネジメント力の発揮に向けて、県民局予算についても一定合理化をした上で、引き続きマネジメントを発揮してもらおうと考えています。
それから、21ページは、高規格道路ネットワークの推進です。これは各エリアごとに名神湾岸連絡線や、いろいろな主要で大きなプロジェクトがいよいよ動きだしますので、これは国・県・市関係者が連携しながら進めていきたい。
それから、22ページ、これは重要な話題の一つです。JRのローカル線の維持・活性化です。先日、今年度最後の検討会が終わりましたが、行政側・地元側とJR側とでは、方向性は一緒だと思いますが、認識に少しギャップもあったということです。兵庫県としては、当然に、維持・活性化に取り組むことが大前提ですので、赤字とされた4路線それぞれでの利用促進の取組をしっかりとしていく、そして、それを後押しする全県的な取組をしていきます。
それから、23ページは、「芸術文化・スポーツの振興」で、ひょうごプレミアム芸術デーとして、1週間程度、博物館などの無料開放を今年度初めて実施しましたが、これをさらに来年度も拡充します。
まず、1つ目が、県立以外のところにも声をかけて広げていくことと、ニーズがありました障害を持つ人や、子どもが小さい子育て世帯の方々、お母さんなども、こういった博物館での芸術鑑賞などを楽しめるような、そんな仕掛けをしていきたい、と考えています。
それから、資料の下のスポーツですが、来年度のおそらく組織の目玉になりますが、スポーツ行政を教育委員会から、一部を知事部局に移管する方向で今、最終調整をしています。
これには条例が必要になります。基本的にスポーツ行政は教育委員会で実施することが基本ですが、それを知事部局とするには、特別な条例をつくるという形になります。これを2月議会に提出する方向としていますが、それに基づいて来年度、スポーツ施策を知事部局でしていきます。
特に、兵庫県はプロスポーツ、それから、独立リーグをはじめとするような地域に根差したスポーツ、ゴルフなどいろいろなスポーツの魅力、そして可能性がありますので、それを地域活性化に繋げていきたい。来年の組織改正での大きなポイントになる、と考えています。
それから、24ページは、「子ども・子育て環境の充実」です。これは国の方も国家プロジェクトとして、児童手当の議論が盛んになって、たいへん大きな全体の枠組みを考えていくという形になりますが、兵庫県としてもそこはしっかりと人口減少や、定着に向けた取組をしていきたい、と考えています。
資料にあるように、出会い・結婚から妊娠・出産、子育て、教育、そして働く場(しごと・働き方)というこの全体像、一人ひとりの方々のライフプランに沿った、ステージごとの取組を総合的にしていくことが大事です。
特に教育、県立高校をはじめとする学校の環境整備、それから国際教育をしっかりと受けてもらうようにすることが中心になります。そこまでの出会い、出産、子育てについても、資料記載のとおり、例えば、妊娠ですと不妊治療の男女の、男性不妊も含めたサポート、ペア受診の機会や、あとはいろいろなところに住んでいてもお産ができるような環境整備も含めて、ヤングケアラーなど、困っている方々のサポートをしっかりとしていくことが県としての役割だ、と考えています。
こういった形で、結婚から出産、教育、仕事まで切れ目のない支援を展開していき、兵庫県におけるよいサイクルを作っていきたい、と考えています。
それから、25ページは、児童養護施設への支援や、また障害者へのサポート、さらにはユニバーサルツーリズムといった3つ目のテーマになります。一人ひとりに寄り添った、環境や状況が厳しいところに置かれている人へのサポートを検討していきます。
それから、26ページは、「医療介護体制の充実」です。医療と介護それぞれの両面で実施します。特に医療の関係でのポイントは2つあり、1つが資料に記載のとおり、子どもを持ちたいと思う人が安心して妊娠や出産ができるような兵庫県の実現に向けて、来年度、不妊治療の課題を整理して、対策をしていくための検討会を立ち上げます。
それから、産科の維持です。これは多自然地域において、公立病院や公的病院で産科が維持できないという声がとても強く出ています。そういったところをどのようにすればお産がのできる体制を維持できるのか、というところを検討する場づくりを、来年度、進めていきたいと思っています。
いずれも難しい課題があるかとは思いますが、現場の声や当事者の皆さんの意見も聞きながら、できるだけ持続可能な形で、妊娠や出産ができるような、そんな環境を兵庫県全体で、ぜひ作っていきたい。
資料に記載はありませんが、県立病院でWi-Fi整備のニーズが高いということです。特に、県立こども病院など、子どもが辛い病院生活の中で、楽しく動画を見たりする際に、Wi-Fiが繋がっていなければなかなか見られない、という声があります。予算の資料には載っていますが、こども病院を含めた7つの県立病院で、Wi-Fiの整備を来年度1年間ですべての病院で実施します。予算総額としては2.5億円で考えています。
それから、27ページが、「安全安心な暮らしの実現」です。犯罪被害者等の支援のための条例については、次の議会で制定を目指しますが、具体的な取組としては、ワンストップ窓口の設置です。そういった形で犯罪被害者等の支援を、サポートをしていきたい、と考えています。
それから、脱炭素の取組を推進するために、信号灯器のLED化を推進していきます。兵庫県はあまりLED化が進んでいない状況でしたので、ここをきっちりと切り換えていきたいです。
それから、資料の下、先日、福岡でストーカーによる殺人事件というたいへん痛ましい事案がありました。こういったことも踏まえ、相談体制をしっかりと強化していくとともに、通報機能つきのGPS端末の貸与を増やしていきたい、と考えています。これは警察の予算になります。
それから、地域防犯の強化は大事な観点で、今、世の中をにぎわしている広域の強盗事件についても、やはり防犯カメラなどが一つのポイントになってきますので、防犯カメラの設置支援については、これまでも継続していますが、来年度、少し前倒しをします。もともと250カ所を予定していましたが、その次の年度の分も含めて500カ所へ設置支援を加速化していきたい、と考えています。
それから、AIを活用した、特殊詐欺被害や、あとは子どもの性被害、それから薬物の大麻の事案、ものすごく増えてきていますので、そういったことに対するAIを活用した捜査の強化です。
これは今年度、ひょうごTECHイノベーションプロジェクトで、SNS上での子どもを守るサイバーパトロールを企業と組んで実施しましたが、それを応用するものです。
それから、28ページは、人権侵害、ネットでの誹謗中傷の対策を強化、それから、大学生や、不登校で悩んでいる人への支援をしていくということ。それから、子どものスマホの利用の適正化については、今年度プロジェクトチームで議論をしていますが、それを踏まえてしっかりと進めていきます。
それから、29ページは、「防災・減災対策の推進」です。震災の経験と教訓を発信していきます。創造的復興の理念を生かして、ウクライナの支援にも繋げていくために、神戸学院大学の岡部先生にも協力してもらいながら進めていきます。それ以外にも防災のまち歩き、ツーリズム、それから避難計画づくりもしていきます。
それから、ドローンの大量物資輸送の新たな実証事業が、私としても新規で、ポイントだと思っています。
ドローンについては、これまで兵庫県では数年間、結構実証実験をしてきましたが、これから行政が何に特化すべきかというところを考えた場合に、今回のシリア・トルコでの地震もそうですが、災害時への対応にドローンを活用していくことが、行政機関がやるべき本当に大きなポイントだと思います。
特に災害時の物資は、いろいろなものを大量に輸送することを、いかに現実的なオペレーションとしてできるのかを、来年度からは具体的にしていきたい、と考えています。まず、来年度、第1弾として県が行う広域防災訓練などにおいて、このドローンを使って大量に物資を輸送する実証実験を加えて実施したい、と考えています。
それから、30ページは、南海トラフ地震関係の津波防災対策、治水対策も昨年に引き続きしっかりと進めていきます。
それから、31ページは、県政の基盤の構築で、ペーパーレス化をこれからも推進していきます。また先日、少しお話しましたが、県庁の働き方改革のアドバイザリー会議、それから新しい働き方のモデルオフィスも試行的に実施していきたいと。これは生田庁舎で行いたいと思っています。
それ以外にも民間の人材を活用するなど、資料一番下のところ、新たな歳入確保策としてふるさと納税も大事ですし、ファンドレイジングという税以外の収入源を、特に寄附を確保していきたいと思っています。
先日、課題を抱える妊産婦への支援に約600万円をふるさと納税などで集めたいと発表し、当初は全然集まらなかったのですが、私がかなりはっぱをかけました。いろいろなところに財政課や福祉部局からどんどんと声かけをして、周知しなさい、と私自身も含めて声かけをしましたが、何とか600万円を達成できたところです。
こういった形でプロジェクトごとに、いろいろなふるさと納税や寄附を集めていく。弱い立場にある福祉施策や文化・芸術、そういったいろいろなトピックごとに、こういったファンドレイジングをこれからもしていきたい、と考えています。
最後に、32ページが、「ウィズコロナに向けた『新型コロナ対策』」です。3月上旬を目途に、医療体制など、コロナ対策をどのようにしていくのかを、おそらく、本部会議をして決定していく形になります。
予算上は今年のものをベースに、半年分は計上します。そこは国の状況を見ながら、予算の過不足を修正していく形にしたい、と思っています。
以上、要点を説明しました。
聞かれないのかもしれませんが、先に言っておくと、「今年の予算は一言で言うと何ですか」という問いに対して、「新時代 挑戦予算」ということで掲げていきたい、と考えています。
新時代、紅白歌合戦でも、「新時代」という歌がありましたが、新しい時代にこれから兵庫県もさらに踏み出していく、ということです。
脱炭素や、いろいろな時代が変わりつつある局面です。齋藤県政になって、2回目の当初予算です。実質的には、1年間しっかりと仕事をした上で当初予算をつくるのは、今回が初となります。(就任は)一昨年8月からでしたので、1年間を通して仕事をした上で、いろいろな対話等の課題解決に向けた現場を回りながら、どんなことが兵庫の成長・発展、安全安心の確保に向けて大事かということを、模索しながらの1年でした。それが来年度の予算に反映された、と考えています。
新しい時代を切り拓いていく、「新時代 挑戦予算」というのが、予算を一言で言うと、となりますので、よろしくお願いします。
私からは以上です。
記者:
今回の当初予算を組む上で特にこだわった点と、その手応えはありますか。
知事:
こだわった点は、6ページ上にある3つの視点です。特に新時代の兵庫県の原動力を作っていきたい、という思いで編成しました。
その意味で一番大きいのは、教育への投資です。県立学校の環境整備や、部活動を含めて、頑張っている生徒の皆さんを応援したい、と思っています。
それ以外にも、水素を含めた次世代産業の立地や育成、SDGs、スタートアップの応援。ポイントは人材の確保です。経営者や商工会員などからも人材確保がすごくたいへんだと聞いています。それと、今はコロナで学生の方々が、3年間、かなり親の経済環境も苦しくなり、奨学金で学業を何とか継続した人も多いと思います。その人材確保と奨学金の負担軽減の両方をしたいと思い、今回この奨学金返済支援を本人負担なしとすることを思い切って実施します。
こういった、兵庫県で若い世代を含めた新しい力を育んでいくことが、中長期的に見てすごく大事なポイントだ、と思っています。
記者:
予算を組む上で苦労した点、工夫した点は。
知事:
それぞれのポイントごとに、現場や当事者の声を聞いて、それをいかに反映していくか、という点に意を用いました。
あとは、全体として県税収入が増えていますが、長期的には厳しい見通しも出ています。その財政バランスとの兼ね合いで、出来るところを探りながら予算を組んだことが、今回の予算編成で少し苦労した点です。
記者:
ユニバーサルツーリズムの推進条例の制定を目指すことは全国初ですが、その政策に込めた思いを教えてください。
知事:
これは知事になる前から、障害のある当事者の方々から、旅行に行く機会をもっと増やしたい、行ける場所も増やしたい、という声を聞いていました。
旅行には行けるものの、これまではだいたいがバスツアーで、決まった場所、決まったサービスエリアで休憩、決まった宿に泊まる、という同じ内容を毎年していると、いうことでした。もっと自由にいろいろなところで、いろいろなアクティビティーをしたいという声を聞きました。
これを知事として、ぜひ実現したいという思いがあり、このユニバーサルツーリズムを推進していきたいと考えています。
もちろん、受け入れ側のホテルや旅館等の旅行関係者の協力も欠かせないので、少しずつ進めていくことが大事です。
そのためにも、ベースとなる条例で制度を作り、この条例に基づいて、ハード面とソフト面、それから人材育成を含めて、これからしっかりと、息長く推進していく。そのためにこの条例制定を目指します。
それに基づいて、予算でもハード面とソフト面の支援をしていきます。そうすることで、より高齢者や障害のある人が旅行しやすい、そんな兵庫県を作っていきたい。
当事者の方々にとってもハッピーなことですし、旅行関係者にとっても、これまで来られなかった方々が来ることで、新たな需要を作る形になると思います。それぞれにとって持続可能な形で、続いていく枠組みにしたい、と考えています。
記者:
教育投資について、最終的なゴールというのは、やはり人口流出への対策なのでしょうか。
知事:
そこが大きいと思います。
兵庫県は県立高校に行く生徒の割合が約8割程度で、他県と比べて高いのです。多くの生徒が県立高校で学ぶ中で、やはり物心がついて、青春の多感な時期に、ボロボロの校舎や施設ではなく、きれいな環境で学びやスポーツをしてほしいという思いがあります。
そこで英語教育などを含め、しっかりと学んで、個の力を伸ばしながら、青春を謳歌してもらうことで、兵庫県がしっかりと応援していることを感じてもらいたいです。それが、ふるさとを思う気持ち、いわゆるシビックプライドにも繋げていきたいと思います。
例えば、それによって、一度進学や就職で兵庫県以外に行ったとしても、また戻ってきたいという気持ちに繋がるかもしれません。
卒業してからも兵庫県で頑張りたいと思う生徒たちを、1人でも増やしていきたいと思っています。
記者:
知事として、万博関連の政策の中で、一番力を入れたい部分はどこですか。
知事:
ひょうごフィールドパビリオンで、五国をしっかりと展開していくことです。これは行政が主導するのではなく、民間の皆さんが手を挙げるという方式で、兵庫県ではあまり例のない事例です。そこに100を超える方々が、今現在でも応募してくれているので、たいへん期待が持てるのではないかと思っています。
問題は、このコンテンツをしっかりと築き上げるとともに、誘客の枠組みづくりに、仕上げていくことです。意欲を持って手を挙げてくれた方々とともに、仕組みづくりをしていきたい、と思っています。
つまり、それは兵庫県内それぞれの地域にある、点と点を結んでいくこと。例えば、日本酒というカテゴリーで結んだり、衣食住というカテゴリーで結んだり。いろいろなパッケージングがあると思います。それを、これからストーリー性を見せて、作っていくことによって、より深いところで長い時間、兵庫県に滞在してもらえるような枠組みを作ることが大事です。
これを万博までに何とか仕上げて、万博が終わった後でも続いていくようなレガシーにしていきたい、と思っています。
記者:
今回は知事として1年間仕事をした上では初めての予算編成です。知事の思いや具体的な事業の部分で、1年目との違いは何でしょうか。
また、長期的に厳しい財政運営を迫られる中で、今年度、手を付けられなかった課題があれば、教えてください。
知事:
この1年間、知事として仕事をする中で、対話と現場主義で、各地のいろいろな方々と話をする機会を持ちました。
それを踏まえて、当初予算を組んでいますが、やはり教育への投資を、大事なポイントとして注力しました。人口減少対策や子育て支援がフォーカスされ、注目を浴びていますが、やはり大事なのはその中でも、子どもたちの教育環境や国際教育を含めて、個の力を兵庫県で学ぶ子どもたちにしっかりと育んでもらいたい。勉強はもちろんのこと、スポーツやいろいろな自分なりの活動を、伸び伸びと出来るような環境を作っていきたいです。
そういった意味で、教育への投資をしっかりとすることが一番のポイントであると思っています。
それ以外にも、やはり万博やフィールドパビリオンは当然していきますが、一人ひとりに寄り添っていきたいと考えています。子育て支援や教育もしっかりと進めつつ、社会の中で困っている人や、今まで光が当たらなかった方々への支援にも意を注ぎました。
児童養護施設の子どもたちは本来、家庭の中で育っていくことがベーシックですが、いろいろな事情があって施設に入っています。しかし、本人なりにきちんと将来を見据えて勉強や資格、スポーツに励んで頑張っています。そういった方々が、入所している時のみならず、退所した後も、かなり困っているケースがあります。そういったフォローをどのようにしていくのか。
また、一時保護所の整備や不妊治療の支援など、一人ひとりのケースに寄り添った支援を、しっかりとしていきたいという思いがありました。
積み残しの課題についてですが、今の時点では、出来る限りのことをさせてもらった、と思っています。ポイントはこの予算が仮に議会で通ったとして、その後の執行の段階が大事で、やはり事業は予算を作って終わりではなく、事業をまわしていく執行の段階が非常に重要です。
そこで現場の意見をもっと聞いて、よりよい形で事業をしていく。もしそこで、課題や修正すべき点があれば、柔軟に改善していく。そして最も大事なのは、やはり県民の皆さんにもっと知ってもらうための発信をしていくことです。
この予算をどう執行していくのかが、次の課題解決に繋がっていくと思っています。
記者:
国は経済成長率低下を示し、財政フレームは悪化しています。収支不足を解消していくために、今後どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか。
知事:
まず、国の交付税で措置されることがベーシックです。しかし、やはり収支不足がここまで膨らんでいるので、きちんと危機感を持って取り組んでいかなければなりません。
県政改革を進める中で、事業の無駄や重複がないかを、今一度チェックしていかなければならない、と思います。イノベーション型の行財政運営として、1つの事業においてもいろいろなやり方を模索しながら、事業の無駄や重複をなくし、効率的にしていきたいです。
それから、歳入面では税以外の収入を、寄附を含めて、増やしていくことが大事です。プロジェクトごとに、課題を抱える妊産婦に600万円の寄附をしてもらい、たいへんありがたかったですが、そういった個別の事業ごとの寄附や歳入確保も頑張ってしていく。県庁職員も財務部を含めて営業をしていく、マインドの変化もこれから大事になってきます。
やはり何よりも、税収を増やすことがすごく大事なポイントです。そのためには、経済成長というものをきちんと実現させていく。産業立地条例に基づいて次世代産業を誘致するのみならず、既存の地場産業や中小企業、農林水産業の競争力やブランド力をアップさせていくことで、法人関係税を中心とする税収を確保、増やしていきたいです。
記者:
財政フレームについて、この収支不足額は、県庁舎の建て替えのための投資的経費が入った上での額ですか。
知事:
そうです。
県庁舎の建替経費は財政フレームに計上しています。ただ、基本的に財源は起債になるので、返済はもっと後に出てくることになるかと思います。ですから、その借金返済は、この期間ではほとんど入ってこないと思います。
記者:
政府は成長実現ケースがもう少し高めになる、という予測も出しています。知事としては、足元の税収が過去最高を見込む中で、今後の経済の見通しについて、どのように考えていますか。
知事:
兵庫県はもともと、成長実現ケースを用いて試算してきました。それを昨年からもっと現実的な形にしよう、とベースラインケースに見直しをしました。今年度も税収はかなり伸びていて、そのベースに基づいて今回も試算しています。成長率は少し低くなっていますが、税収自体はプラスという形になっています。
今後の見通しですが、ここは少しまだ不透明な部分があります。円安、物価高がどこまで続くのかというところです。
ただ一方で、兵庫県は製造業がすごく強いです。そうすると、円安の影響が輸出に対しては逆にプラスに寄与します。そういったところで、実はプラスに寄与してくるのではないか、という見通しも持っています。
あとは、今年の春からコロナが2類から5類になって、観光などの人の流れがかなり増え、個人消費が加速化していくので、そうすると消費、観光やいろいろなレジャー産業の業績もかなり戻ってくるのでないか、と考えています。
緊張感は持たなければなりませんが、税収面では少し改善の余地を期待できると思っています。
記者:
そのあたりは、県政としても観光や輸出産業の下支えをしていく、ということですか。
知事:
そうです。
税収を伸ばすと県の歳入が大きく違ってくるので、やはり経済の活性化を目指すことが、すごく大事なポイントです。
そこができれば、雇用の場も確保できて、人口減少対策にも繋がり、それが県の税収の改善にも繋がっていきます。
記者:
一方で、財政フレームによると、来年度以降はかなり収支不足額が膨らむ予測になっています。そうなると、県庁舎の建て替えを含めて、投資的経費をどのように切り込もうと考えていますか。
知事:
投資的経費は昨年度の県政改革の中で、一定のハコモノについては見直しをしました。そこはこれから効いてくる面がある、と思っています。県庁舎整備についても、これから議論をしていきます。それをしっかりとしつつ、一方で、いろいろな公共事業などは必要な面もあります。
そこはフレームの枠内で、きちんと続けていける仕組みを、昨年度の県政改革時に一定作りました。それに基づいて、県立学校や特別支援学校への投資や、病院の建て替えなど、いろいろと必要な公共事業をしっかりと実施していきたいです。
記者:
知事は当選時の公約として、返済不要の奨学金制度の導入を掲げました。今回の中小企業と一緒になっての5年間の支援も、奨学金返済額を支援することに繋がるかと思います。
改めて、現時点で県予算を踏まえての返済不要の奨学金制度をどのように考えていますか。
知事:
今回の新たな奨学金返済支援制度は、私が公約に掲げた、返済不要な奨学金の事業化、予算化したものとしたい、と考えています。5年間全額を支援するということで、だいたい1人当たり100万円弱になります。要は、県が直接、奨学金を出すことと同等の支援をできる形になった、と思っています。
私も月に10数万円の奨学金をフルで受けましたが、それをすべて県が返済不要の奨学金とするのは、どうしても難しい面があります。県ができる範囲内での、一定の奨学金返済支援を行うことが現実的だと思います。それは額がどの程度になるのかというところですが。
そういった意味でも、今回は1人当たり5年間トータルで約100万円弱を支援する形になります。これは県として、ある意味、事実上の奨学金を創設した、と理解してもらいたいと思います。
記者:
コロナ禍もあり、かなり多くの学生が奨学金の返済負担に苦しんでいます。
そこは国の問題だと考えているのか、それとも県としても何かしていきたい、と考えているのでしょうか。
知事:
今の国の育英会の奨学金もかなり充実してきている、と思っています。今回それが、新たな子育て支援の中で、より充実することを期待しています。
また、県の施策としてできることは、今回示した中小企業とタッグを組んだ返済支援です。本人負担額に実質100万円弱を支援するとともに、それを県内企業が苦労している人材確保に寄与させていく。
県内に若い世代の方々が定着することや、いろいろなところから県に来てもらえることに繋がる施策を、県として進めていきたいと思っています。
記者:
コロナ関連で。去年のこの時期は、まだコロナも感染が広がっていて、コロナ対応が最優先として予算を組んでいたと思います。
財源は国ということもありますが、(来年度の)コロナの予算は少し減った程度です。県として新たに始めるコロナ対策の事業は限定的ですが、知事として、来年度からはコロナ対策は縮小し、他のことに注力していきたい、という考えですか。
知事:
コロナについては、ご指摘のとおり、フェーズが変わってきています。今、オミクロン株でかなり変わってきました。今回、第8波になりましたが、落ち着いてきている状況にあります。
国も、春には2類相当を5類にしますので、基本的にオミクロン株のベースが続くという前提ですが、コロナ対策については、一定程度、規模を縮小していく形になる、と思っています。もちろん油断はできないので、いろいろな新たな変異株が出てきた場合には、即座に対応できるような、そういったところは一定程度維持をしながらだとは思いますが。
大きな文脈で言いますと、コロナが3年を迎える中で、一定のウィズコロナ型になっていて、予算面も事業も含めて、縮小していく。その部分を、お金の面も人的な面でもそうですが、アフターコロナのいろいろな事業に、人やモノに注力していくことになっていくのか、と思っています。
記者:
実際に、コロナ対策が一旦落ち着いて、縮小していくということで、新たに県としては、経済発展の方に舵を切りたい、という考えですか。
知事:
コロナ対策が3年を経る中で、おそらくもう通常の医療になってきますから、縮小していくと。そのかわりに、コロナが3年でようやく弱毒化、5類になっていくということは、ある意味で、新しい時代になっていく。
新しい時代は、コロナ対策をこれまでしてきた数年間からはフェーズを切り換えて、こういった経済成長であったり、一人ひとりに寄り添うなど、そういったテーマの予算に切り換えていきたい、という思いがあります。
記者:
立地条例について。これまでは、多自然地域、但馬や淡路など、そういったところへの企業立地を促すものだったものを、ベイエリアを重点的な地域に加えるということで、条例の趣旨も大きく変わってくると思います。
どうしてこのように切り換えたのか、知事として、県内のベイエリアの重要性をどのように捉えているのか、改めて教えてください。
知事:
ベイエリアはこれからすごく大事な地域になります。大阪湾を囲むベイエリアは、大阪・関西万博や神戸空港の国際化を受けて、人やモノ、投資の流れがどんどんと生まれてくる地域に、間違いなくなっていきます。
姫路を中心とする瀬戸内側のベイエリアも、これからカーボンニュートラルポートや水素の拠点として、ここもすごく活性化していく地域になります。このベイエリアというところに、人やモノや投資を集めてくると、それが雇用の場であったり、いろいろな成長の場になると思っています。
もちろん、多自然地域や北播磨地域なども大事な地域なので、そういったところもしっかりと、観光であったり、農業の支援などをしていく形になりますが。
今まで産業立地条例では、そこまでの支援実績がないというのが正直なところで、よりこの産業立地条例を有効なものにしていきたい、という思いがありました。
これは経済界といろいろな意見交換をし、多自然地域の首長からも言われたことですが、阪神・神戸、姫路を中心とするベイエリアを人口や産業、雇用のダムとして、より力強く発展させていくべきだ、という声が結構強いのです。それを正面から受け止めて、今回、条例改正の中でしっかりと、制度として反映させたというのが趣旨です。
兵庫県全体の人口対策や発展を考えた場合に、このベイエリアをもっと伸ばしていこうとすることが、税収の面も含めて、より大事なポイントかと思っています。
記者:
万博や神戸空港の国際化など、時流に沿って活性化していくものもあるのかもしれませんが、実際には、ベイエリアの方が港湾設備もありますし、おそらくこの条例は、県内企業の再投資を促すものだと思うので、県内企業にとっての投資のしやすさを踏まえて、ベイエリアという位置付けをしているのでしょうか。
知事:
もちろんそれもあります。特に姫路を中心としたエリアは製造業が多いですから、そういったところの、今後の成長力を強化していくためには、より積極的に
投資をしていかなければならない面もあります。
例えば、ベイエリアである、播磨地域の素材産業やエネルギー関係、ものづくり関連産業についても、脱炭素などの投資をしていかなければならないので、そのためにはいろいろな部品産業において、新たな設備投資をしてもらって、要は雇用を増やしていきたい、と考えています。
そうした趣旨を踏まえて、それが条件になっています。産業立地条例に基づく支援にあたっては、設備投資額要件や雇用要件を設定して、中小企業でも活用してほしい、と思っています。
記者:
今回、来年度予算に組まれる15億円は、条例の改正前の仕組みを利用した数字だと思いますが、この条例の改正で設備投資を何倍にしたい、補助を何倍にしたい、といった期待感はありますか。
知事:
この15.3億円は、現行制度で事業確認をしている案件に係る所要額を積み上げたものです。
条例改正により、できるだけたくさん県内投資を呼び込みたいと考えています。あとは質の変化もすごく大事だと思います。今回、ここには書いていませんが、物流センターは設備補助の対象外としています。
物流は当然に大事な誘致ターゲットではあるのですが、やはり国内のマーケットがこれから縮小していくことを考えた際に、よりイノベーションを促すような産業の方が、兵庫県としても、雇用を生み出してもらえるのではないかと思っています。
そういったメリハリをつけたり、あとはホテルを設備補助対象にしますが、企業誘致や投資の質を、より次世代であったり、より兵庫県の成長に向けて寄与するようなものに繋げていきたいと考え、支援する投資の分野を変えることにしました。
記者:
知事として、現在の重厚長大型の産業が引っ張っているこの経済の構造を少し転換する必要性を感じている、ということですか。
知事:
そうです。そこは大事だと思います。
今、兵庫県内の発電や製鉄などの重厚長大型産業は、脱炭素化に向けて懸命に企業努力を続けていますので、それを踏まえて、例えば、水素を含めた新しい産業のクラスターを、兵庫県にもっと作っていきたいという思いがあります。
それは、新しい産業を誘致することになりますし、今ある既存のものづくり産業の質を変えていくことによって、ご指摘のとおり、競争力をより強化していく。同じものづくり産業でも競争力を変えていく形に繋げていきたい、と思っています。
記者:
教育への投資について。やはり県の大きな課題としては、人口対策だと思います。知事も人・モノ・投資を呼び込んでいくことが大事だと言ってきました。ここ最近は、シビックプライドを醸成していくというフレーズをしきりに言われています。
まず、このシビックプライドを醸成するとして、今回の教育への投資によって、兵庫県がどうなっていくのか、改めて聞かせてください。
知事:
今回、教育への投資を中心に、新しい時代の力を育む、というものを大きなテーマとして掲げています。特に、県立学校への予算も増やしていきます。
7ページにも記載のとおり、この狙いは何かと言うと、やはり、学校生活を応援することで、生徒・子どもたちの、学校や地域、そして兵庫県への愛着、誇りをより持ってもらいたい。これは、シビックプライドを醸成していくという形になりますが、それをもっともっとしていきたい。
万博のフィールドパビリオンも、その1つになるのですが、そこ(シビックプライドの醸成)をやはり中心にしていきたい、と思っています。
狙いは、やはり人口流出、それから社会的な人口減です。兵庫県は、先日の推計人口でも、そういった結果が出ていましたが、やはり、それを少しでも減らしていく、改善していくことが、すごく大事かと思っています。
それに対して、いろいろな手だて、いろいろな取組があるのだと思いますが、その1つとしてもやはり大事なのが、子どもたちが兵庫県により誇りを持つ、好きになってもらうこと。先ほども言いましたとおり、兵庫県に残って、地域のために、ふるさとのために頑張ってみよう、という思いを育んでいきたいです。一度は県外に出た人がまた戻ってきて、兵庫のために頑張りたい、という気持ちを作っていくことに繋がるのではないか、と思っています。
それが、兵庫県全体の人口減少であったり、減っていく中でもいろいろな新しい人材が輩出していくことにも、兵庫を担っていく若い力を育てていく形にも繋がるのではないか。それを兵庫の活性化に繋げていきたい、と思っています。
記者:
重ねて伺います。知事は、教育の質として国際教育の強化を挙げていますが、300億円の大半が県立学校の環境や、特別支援学校のハード整備、備品などを新調するといったところで、いわゆるモノに充てるのだと思っています。
その上で、言われたように人口減少の上で、ふるさとに愛着を持って、そして残ってもらうことや、実際に戻ってきてもらうことに繋がるのかというと、論理と言いますか、話が飛躍しているかと思います。
今回、それだけの金額を充てる必要があるのかどうか、そのあたりはどのように考えていますか。
知事:
いろいろなことをしていかなければならないことはもちろんですが、やはり、現場の学校へ行くと、施設が古かったり、備品も、老朽化がすごく進んでいる面があり、子どもたちや学校関係者からも、ここの改善をしてほしいという声は、すごく強いのです。
それを放置しておくことは、当然によくありませんし、このハード面を改善していくということが、子どもたちが日常の、1日や青春時代の大半を学校で過ごすので、そこの環境整備をしていくことは、一番大事な面だと思っています。それをやはり、まずはしていきたい、と考えています。
もちろん、ソフト面なども、学校の先生の働き方改革であったり、あとは、デジタル授業をしっかりと進めることも、もちろんしていくのですが。もっとベースのところ、学校の、目の前のトイレであったり、古い施設を使ったり、ボールがボロボロなど。そういうものをきちんと変えていくということを、目の前のところを、きちんとしていくことが、大きな意味で、実は大事なポイントかと思っています。
記者:
まさに環境整備というものは、これはよいことだと、もちろん思っていますが。やはり大きな目標である人口減少への対応や、投資やモノを集めるという意味では、やはり少し、遠いのではないかと思います。
そのあたりは、大きな意味でも、大事な施策なのでしょうか。
知事:
目の前の改善すべきポイントに、まずは着手することが大事だと思っています。
そこがベースとなって、一度、きれいにしていけば、何世代にも繋がっていくので。そうすると、学校の改善が、目に見えてよくなっていくことで、子どもたちが勉強やスポーツなど、いろいろな学校活動をもっと伸び伸びと、よい環境で頑張ってもらえるようにしていくことが狙いです。いろいろな勉強もそうですが、文学やスポーツなど、いろいろな面で、もっと生徒たちの可能性や力を発揮できるような環境にしていきたい、と思っています。
そうすると、兵庫県に残ってもらって、よりいろいろな分野で活躍してもらう、新しい人材育成にも繋がっていきます。環境をよくするということは、間違いなく人材育成にも繋がっていくと。その人材育成は、すべての子どもたちではないのかもしれませんが、兵庫県に残ってもらい、兵庫のために、ビジネスやスポーツ、いろいろな分野で頑張ってもらう。
こうした新しい力が増えていけば、これは間違いなく兵庫県の活性化、成長に繋がっていくので、それほど大きく離れた施策でもない、と思っています。
記者:
教育への投資、この300億円のうち、交付税措置や国庫支出金などの国からの財源を除くと、200億円以上は県費を使うと聞いています。
先ほど財政フレームの質問もありましたが、結果として、財政フレームの悪化に繋がらないのか。あくまで優先順位を上げたものとして、やはり必要な経費だと考えているのか。そのあたりは、財政上どのように考えていますか。
知事:
財政フレームの中で、悪化しないような形で折り込んでいます。
昨年度、いろいろな県政改革をした中で、ハコモノの中止であったり、事業の見直しをしたので、そこで浮いた枠や、浮いた財源を、教育への投資に振り向けた面もあります。
今の財政フレームを悪化させることのないようにした、と考えています。
記者:
各地域へのお金(予算)について伺います。
今年は、まずは交付金の組み替えを行ったり、予算編成方針でも挙げたように、県民局・県民センターの事業の見直しをしたかと思います。実際に今年度と比べて2億円ぐらい県民局の予算も減っています。
また、先ほど質問のあった企業立地に関しても、成長産業以外の立地に関して、一部の補助が下がっている、特に多自然地域であれば本社・研究施設を呼び込む際の設備補助が(7%から5%に)2%下がることになります。
地域へのお金が、現実的に減らされているのではないか、とも見えるのですが、知事はそのあたり、どのような考えを持っていますか。
知事:
資料の20ページですが、「躍動する兵庫応援事業」として、これも継続という形にします。県(から市町へ)の交付金については、前の県政の時から実施していましたが、私自身は、県単独でするにしては、少しスペシャル過ぎるというように、もともとから考えていました。
地方創生関係では、交付金は国のものがありますし、県独自でするということが、県の財政が厳しい中で、どこまで必要なのか、とそもそも思っていましたので。基本的には、やはりそこは縮小していくべきだ、という思いがありました。
一方で、多自然地域の自治体の皆さんからは、やはり一定継続をしてほしいという強い声もありました。
そのような中で、規模を縮小しつつ、メニューも使い勝手のよいものにして、継続をしていく方向で、ぜひ実施したいということで、今回からこうなります。
あとは、県民局・県民センターの予算についても、今回、10億円という形で、昨年が12億円なので減っていますが、これも、本当にいろいろと聞いていると、あまりチェックすることはせず、県民局・県民センターが自由に組んでいる予算だったのです。
私自身には、本当にそれでよいのかとの思いがあって、いろいろと中身を見てみると、例えば、観光であったり、農林水産業への支援などについて、県庁本体の観光部局や、農林水産部局、あとは土木部局もそうなのですが、同じような事業を、規模を縮小して実施していた事業が結構ありました。
あとは、同じような地域団体への補助でも、ある県民局では30万円、ほかの県民局では50万円など、とバラバラでした。
二重行政であったり、基準が異なるものは、やはり公平性の観点と効率性の観点から、よくないのではないかということで、今回そこをきちんと財政課を中心に、中身をチェックした結果がこれです。
そうすると、全体で2億円減った予算の多くが、ハード整備事業で、例えば、道路などで、本来、県本庁がこの道路整備をすると判断し実施すべきところを、県民局の予算の中で実施するものが結構ありました。やはり、全体の道路ネットワークのことを考える場合には、本庁で実施する方がよいのではないか、ということで本庁の予算に振り向けたものもあります。
そういった二重事業や、基準がバラバラであったものを、効率的に、合理化した結果ですので、額が減ったということは、何もその地域への予算を切り捨てたというよりも、無駄やムラを正したというところが、本来の形かと思っています。
もちろん、多自然地域の関係者には丁寧に説明していかなければならないとは思っていますが、大きな趣旨で言うと、そういったことです。
記者:
そうすると、県民局との二重財政や二重行政のようなところは、やはり少しあるように思っていて、知事が掲げてきた公約の県政の刷新の一つの表れと言えるのか。
その上で、今後、財政フレームがまだまだ悪化していくとの説明があった中で、そうした不断の見直しを行っていくことが、齋藤知事にとっても大事なのか。
そのあたりの考えを、もう一度、聞かせてください。
知事:
そこをやはり見直していくことが、持続可能な財政、それから、より合理的な県政運営にとって不可欠だと思っています。二重行政などは、やはり正していくべきです。もちろんボトムアップ型県政と言っているので、県民局・県民センターに頑張ってもらいたいということはありますが。
やはり、県庁全体で観光振興をどうしていく、それから農業振興をどうしていく、という方向性がある際に、そこをバラバラでしていてはダメで、しっかりと県庁と県民局がスクラムを組んで、予算面でもより連携していく仕組みづくりをしなければならない、と思っています。そこに向けた、ある意味で、第一歩だと思っています。
いろいろな団体や地域との兼ね合いで、これから即座には、なかなか見直しが難しい面もあるかとは思います。そういったところも、より丁寧に議論をしながら、改善をしていくことが、これからの課題かと思っています。
記者:
産業立地支援について、先ほど物流センターなどは支援を縮小するという話があったかと思いますが、今、データセンターなどを全国の自治体が誘致しているところも多く、兵庫県内の自治体でも注目しているところもあると聞きます。
データセンターなどの場合は、物流センターと同じような扱いになるのか、ということと。次世代の新エネルギーやロボット産業などを目指していくということで、データセンターなどは、少しそういうものとは違う位置付け、兵庫県の目指すものとは少し違う、との考えですか。
知事:
物流センターについては何も来てほしくない、要らないというわけではなくて、阪神間とのアクセスを考えた場合に、兵庫県にどんどんと今、物流センターができていますので。そこは特に支援をしなくても、民間の事業者が経営判断の中でしてもらえる面もあると思います。そこは外してもよい、と考えました。
ご指摘のデータセンターについては、中身がまだそこまで分かっていませんが、いわゆる一般的な物を配送するような物流センターや、ビッグデータの処理などをする業種であれば、改正条例に基づく設備投資補助の対象外となります。
データセンターとは、何か、企業の。
記者:
今、クラウド社会となっていて、一定そういうデータをバックアップも含めて行うもので、都市部ではなくて、結構土地が広いところなど(に立地しています)。
知事:
データ処理技術は大事な分野で、いろいろな可能性があるとは思いますが。問題は、それがどこまで雇用や生産に結び付き、税収にいかに反映できるか、ということが大切であり、また今回の産業立地条例改正のポイントとしました。
記者:
私がネットで見る限りでNECさんが神戸市とともに作っていたり、あるいは、三田市などにもデータセンターの話があります。
製造業ほどではないが、雇用がある程度取れるというので、結構自治体が誘致しようとする動きもあるようです。
知事:
現行の産業立地条例では、他社のデータ管理を請け負うようなデータセンターは支援対象とはしていません。
今後の検討の中で、重点支援業種に掲げている5分野以外についても経済社会情勢を踏まえて、適宜見直していく余地はあると思います。
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