更新日:2023年3月27日

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局長メッセージ(令和4年11月)

 10月に入ると、丹波でも秋が深まってきました。朝晩はめっきりと冷え込み、最低気温が10度以下の日も増えてきました。日中30度近かった初旬には冷房をつけていたのですが、中旬以降はエアコンの運転モードを暖房に切り替え、朝晩の冷え込みを凌いでいます。

 この秋の深まりとともに、丹波には例年ブランド農産物や紅葉などを求めて、京阪神都市圏から多くの訪問客が押し寄せます。10月~11月が丹波にとって観光のハイシーズンにあたります。ウィズコロナが定着した今年に関しては、各観光施設とも例年並み以上の集客を期待しています。

 ご承知のように、コロナ禍のなか観光業は大変厳しい状況に置かれてきました。緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用により、デカンショ祭りをはじめお祭り・イベントは軒並み中止となり、主要観光施設の入込客数も大幅に減少しました。その結果、観光入込客数は依然コロナ前の水準を回復していません(図1参照)。

 

                                          図1 丹波地域観光入込客数(10月)の推移

           図1丹波地域

 

 しかしながら、そんななかでも訪問者が増えている施設もあります。その1つが兵庫県立丹波並木道中央公園です。令和2020年度、2021年度と2年連続して、過去最高の来園者数を記録しています。同公園では、動く恐竜模型の設置やサイクルステーションの開設など、施設整備が進んでいますが、来園者増の要因はそれだけではありません。

                 並木道

                大型恐竜遊具で遊ぶ親子連れ(丹波並木道中央公園)

 

 コロナ禍におけるツーリズム自体の変化も、その要因の1つと考えられます。マイクロツーリズム(近場観光)の隆盛が、京阪神に近い丹波の観光には追い風となっています。個人客中心のマイクロツーリズムでは、ファミリー層などが気軽に楽しめる丹波並木道中央公園のような施設が人気となっています。

 このマイクロツーリズムの実際の影響は、統計データで補足し難いところがあります。観光動態調査では、大型イベントへの参加者数と主要施設(年間入込客数10,000 人以上もしくは特定月5,000 人以上のイベント・施設等)への入場者数を集計し地域の観光入込客数を算出していますが、‘分散・離散’、‘小規模’、‘多様性’を特徴とするマイクロツーリズムでは、まち歩きや現地発着型の体験型プログラムへの参加など、時間消費型、コト消費型の滞在が増えています。このような人の動きは、観光動態調査には十分反映されないので、ツーリズムの実態が見えにくくなっています。

 そこで今回、マイクロツーリズムの影響を知るための何か手がかりを得ることができないかと、リーサス(地域経済分析システム)(外部サイトへリンク)のFrom-to分析を利用して、10月休日の滞在人口がどこから来た人なのかを分析してみました。滞在人口とは、携帯電話の位置情報でリアルタイムに把握された地域に滞在している人の総数で、そのなかには、観光客だけでなく、住民やビジネス客など観光以外の訪問客も含まれています。

 リーサスでは、NTTドコモの「モバイル空間統計®」のデータを活用し、指定地域の指定時間(4時、10時、14時、20時)に滞在していた人数の月間平均値(平日・休日別)を表示しています。今回は、観光客の影響が最も大きいと思われる10月の休日の日中(14時)の滞在人口(15歳以上~80歳未満)の平均値を2017年~2021年の5年間にわたって出してみました。

 その結果をみると、丹波篠山市、丹波市とも、10月休日14時の滞在人口は2018年をピークに減少傾向にあります(図2参照)。コロナ禍以降の2020年、2021年のコロナ前の2019年に対する減少率は、丹波篠山市が-3.8%、-4.7%、丹波市が-1%、-2.3%となっています(表1参照)。2020年、2021年は、旅行自粛で遠出せず、地元にいる住民の方が数多くおられたので、市内在住の滞在人口は両市とも、いずれの年も2019年を上回りました。

 

              図2 10月休日14時の平均滞在人口(出発地別:2017-2021年)

  図2 10月休日(正)
              

             表1 10月休日14時の平均滞在人口の増減割合(対2019年比)

                  表1 10月休日14時 

           ※出典:地域経済分析システム(原データはNTTドコモ「モバイル空間統計®」)

 

    一方、市外から来た滞在者は、丹波篠山市は2020年が-9.9%、2021年が-11.9%、丹波市はそれぞれ-6%、-12.4%と、大きく減少しています。両市あわせると、対2019年比で2020年が-8.4%、2021年が-12.1%となり、図1で示した観光動態調査(-31%、-19.4%)よりも、両年とも減少率は低くなっています。これは、(観光動態調査では補足できない)マイクロツーリズムによる訪問客が増えたからだと推測することもできますが、ビジネス客など市外からの非観光客の増加に因るものとも考えられます。

 市外からの滞在者のうち、県内(市内を除く)からの滞在者、県外からの滞在者を比べると、県外からの滞在者のほうが、減少率が高く全体に占める割合が低下しています(表1、図3参照)。コロナ禍以降、遠くから丹波に来る人は減っているのです。

 県外からの滞在人口において両市の都道府県別1位、2位を占めている大阪府、京都府については、実数では減少しているものの、全体に占める割合はコロナ禍以降上昇しています(図4参照)。

 

                   図3 滞在人口出発地(2017-2021年10月休日14時)

 図3 滞在人口 丹波篠山市図3 滞在人口 丹波市

               ※出典:地域経済分析システム(原データはNTTドコモ「モバイル空間統計図」) 

 

              図4 都道府県別滞在人口出発地(2019-2021年10月休日14時)[兵庫県を除く]

  図2 10月休日

               ※出典:地域経済分析システム(原データはNTTドコモ「モバイル空間統計図」)

 

 また、県内(市内を除く)からの滞在者総数はコロナ禍以降減少していますが、近隣の市町からの滞在人口は必ずしも減少していません。2019年と2021年の比較では、丹波篠山市では、三田市、神戸市北区から、丹波市では、丹波篠山市、多可町、三田市からの滞在人口がわずかながらも増えています(表2参照)。

 

表2 滞在人口県内上位5市町の動向(2019-2021年10月休日14時)

  表2


 このリーサスのFrom-to分析による結果を踏まえると、コロナ禍以降の10月休日日中の滞在人口は減少していますが、近隣府県や近隣市町からの滞在者は遠方からの滞在者ほど減っておらず、なかには滞在者が微増するケースもあることから、全体として人々の休日行動圏が狭まっていると考えてみてもよさそうです。そしてそこにマイクロツーリズムの影響をみてとることができそうな気がします。しかし、(非観光客を含む)滞在人口データの性格上、これだけでその影響と断定することができないのも事実です。正確に把握し、裏付けを得るには、観光客に焦点を絞った、モバイルデータによる移動分析を行う必要があります。

 このように現時点では、マイクロツーリズムの定量把握は難しいものの、丹波県民局ではその需要の高まりを受けて、令和3年度より四季の丹波「コト体験」コンテンツ・ブラッシュアップ等支援事業(コト体験支援事業)と呼ばれる、新たな事業を展開しています。この事業では、事業者による新たなコト体験の開発や既存コト体験の磨き上げのほか、コト体験をめぐる事業者間の新たな連携に対し、支援(補助)を行っています。

 コト体験支援事業では、令和3(2021)年度は9件、4(2022)年度は10件、計19件の申請が採択されています。事業者の方々は、補助金を活用してコト体験プログラムの企画・実施、PRにあたっています(補助額:事業者あたり補助対象経費の2分の1以内、上限30万円)。

 

      表3 四季の丹波「コト体験」コンテンツ・ブラッシュアップ等支援事業採択事業一覧コト体験表最終


 表3では、実施プログラムの内容をお示ししています。栽培・収穫体験や里山体験などの農林業関連や、サイクリングツアー、雲海ツアー、沢登りといったアウトドア関連のほか、黒豆味噌作り、利き酒、日本茶、陶芸、草木染めなど丹波の農産物・地域資源を活用した体験など、その内容は極めて多岐にわたっています。これらのプログラムが定着していくことで、丹波でも多様なマイクロツーリズム需要に応えていくことが可能になると考えています。

  今回採択されたプログラムのうち、3つのプログラムについて事業者の方に取材することができました。その1つが丹波市市島にある、江戸時代創業の歴史ある酒蔵、「㈱西山酒造場」です。

 西山酒造場では、コト体験支援事業の補助金を活用してDCプレキャンペーン(外部サイトへリンク)期間中の今年7月~9月に日本酒の利き酒体験ワークショップを実施しています。利き酒体験の会場は、通常非公開の国登録有形文化財の三三庵(ささあん)。かの高浜虚子をはじめ、著名文化人のサロンであったその場所で、参加者の方々は蔵人の話を聞きながら、丹波産の食材でつくられたおつまみをいただき、大吟醸酒の飲み比べを楽しんだそうです。利き酒会は期間中計5回を開催され、参加者は約50名にのぼったそうです。取材に応じていただいた蔵人の神田美波氏は、今後について、敷地内の酒蔵を宿泊施設、カフェ、ギャラリー併設のバーなどに改装し、インバウンドの受け入れにもあたっていきたいと語っておられました。

               利き酒

                 利き酒体験の模様((株)西山酒造場 )

 

 丹波篠山市大芋(おくも)にある農家民宿、「古民家ゲストハウスやまぼうし」のオーナー、宮林慶子氏にも取材に応じていただきました。やまぼうしでは、補助金を活用して黒豆味噌作り体験プログラムを今年2月に実施したそうです。季節の良い春や秋以外のコンテンツを充実させたいとの思いから、プログラムを実施したとのことでした。現在育てているブルーベリーの苗木が成長したら、ブルーベリーの収穫体験もプログラムに加えたいそうです。

 やまぼうしでは、コロナ前からインバウンドの宿泊客がいたそうですが、最近もまた海外から予約が入り始めているとお伺いしました。インバウンドの多くは京都市内観光などを兼ねて滞在を希望しているそうです。宮林氏は、2025年の大阪・関西万博に向け、今後インバンドの受け入れに積極的に対応していきたいとも述べておられました。

                   ゲストハウス 

                   古民家ゲストハウスやまぼうし

 

 最後に取材に応じていただいたのが、丹波篠山市福住にある「自転車工房ハイランダー」のオーナー、村上大輔氏です。ハイランダーでは、補助金を利用して、サイクリングツアーのホームページを開設するととともに、福住地区だけでなく、城下町地区や恐竜化石施設群などにも足をのばすガイドツアーをはじめたそうです。

 ターゲットは、京阪神などから自然を求めてやって来るファミリー層や30代以上の夫婦だとか。補助金でレンタサイクル用自転車を購入し、今年4月以降、市内の宿泊施設とも提携して、月2回のペースでツアーを実施しているそうです。村上氏は、将来はサイクルショップ(レンタサイクル)、宿泊施設、カフェを一体的に整備した施設を市内で開設し、丹波のサイクリング観光の拠点にしたいと抱負を語っておられました。

                自転車

                   自転車工房ハイランダー店舗前

 

 以上3つの事業者のコト体験プログラムの概略をご紹介しましたが、このほかのプログラムも個性的な内容のものが多く、参加者に新しい発見や出会い、交流をもたらし、丹波の風土・文化の魅力を存分に感じてもらえるものとなっています。

 兵庫県では2025年の大阪・関西万博にあわせて、県内各地で特色ある資源を生かした体験型・周遊滞在型プログラムを発信し、万博来訪者などを現場(フィールド)に誘う「ひょうごフィールドパビリオン」プログラムを展開しようとしています。

 県では現在プログラムへの応募申請を受け付けていますが、丹波地域でも様々なテーマで応募が検討されようとしています。フィールドパビリオンでは、各地域に根差したストーリーや稀少性、独自性を有するコンテンツが求められるとともに、SDGsの推進や地域、社会の課題解決につながる地域を豊かにする取組が期待されています。

 現在、丹波で発掘・開発しつつあるコト体験メニューのなかには、自然との共生、伝統文化の継承発展、地産地消、地域資源の保全・活用、地域再生などの観点で、ストーリー性をもち、課題解決を志向するプログラムが数多く含まれています。

 それらを上手く組み合わせることで、世界に発信する価値のある、丹波ならではの特色あるフィールドパビリオンを生み出すことができると信じています。今後、様々な知恵や工夫のもとフィールドパビリオンの内容充実に努め、万博開催時には一人でも多くの方をこの丹波の地に誘いたいと思っています。丹波にお住まいの皆様、丹波に関わっておられる皆様、この取組に是非ご参加・ご協力くださいますようお願いいたします。

 

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  新型コロナの新規感染者数は、減少傾向にあるものの依然高い水準にあり、まだ油断は禁物です。基本的な感染対策の徹底のほか、積極的なワクチン接種等により、安全安心な秋の行楽シーズンを過ごしましょう。

お問い合わせ

部署名:丹波県民局 県民交流室

電話:0795-72-0500

FAX:0795-72-3077

Eメール:tambakem@pref.hyogo.lg.jp