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更新日:2023年3月22日

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令和5年3月局長メッセージ(但馬県民局・登日幸治)

「始まりは終わりの始まり」「人間が始めたことは必ず終わる」
私が尊敬する上司の言葉ですが、私の拙稿も今回が最終回になってしまいました。
この間、「そんなに読者の方も居ないだろう」と高を括っていましたが、お会いする方々から「読んでますよ。」とのお話しを伺うことも多々。過日、公舎近くで私に気づいた知己の方が、息せき切って目の前に現れ、「次回、期待してます」との有難い言葉を残し、去って行かれました。
私自身、回を進めるごとにハードルが上がってきたような気がしています。

何故、私が「外から見ると不思議だらけの但馬地域」を書こうと思い至ったか。。。
今回はそれをしたため、少しの安堵と胸一杯の寂しさを噛みしめ、筆を置くこととさせて頂きます。
長らくのお付き合い、ありがとうございました。


最終回 これからは但馬の時代

私が赴任した約2年前は、コロナ禍真っ只中。
それでも、役目柄、色んな団体の方々にお話しをする機会が多い。
その際、私は「但馬は素晴らしいところ。誇りの持てる故郷だ。」と申し上げてきた。
とある会場で、お話をさせて頂いた後、聴講頂いた方から声を掛けられる。
「わしは但馬に誇りを持っている。でも、自分の息子には帰ってこいとは言えない」との弁。
また、違う会場で、「私は学校を卒業したら、早く但馬を離れたいと思っていた。なぜなら、大人たちが楽しそうに見え無いから。。。」との弁。
私なりに解釈すると、但馬の方々は、「誇りはあるが自信が無い」、「但馬の日々の暮らしに満足していない」にたどり着いた。

プライドと言う言葉を「誇り」と訳する場合が多いが、プライドは誇りだけではない。誇りプラス自信、つまり矜持である。
こんなに素晴らしい地域、人、環境なのに自信が持てない。
但馬の当たり前が実は凄いことだと気づいていない。
但馬の方々に自信を持って頂く、このために何が必要か。。。
私が行き着いたのは、「よそ者の視点」である。

県民局が実施している環境学習がある。
地域と都市部の生徒が一緒に円山川の生態調査を実施するのだ。
この際、都市部の生徒が「この川すごいなぁ」と歓喜の声を上げる。
何が凄いのか。。。
生き物がたくさん居る。
それだけではない。
雄大な流れ、コンクリートで固められていない緩やかな堤防。ゆっくりした時間が流れる中で、都市部の生徒は感動し、それを傍らで見ていた但馬地域の生徒が自分達が住んで居る地域の当たり前の素晴らしさに自信を持つ。

また、とある但馬の方とお話ししていた際。。。
「前に○○○に旅行に行ったが、宿での朝食が不味くて食べられなかった。毎日食べているお米がおいしいものだったことに初めて気づいた」とのこと。
但馬の食の当たり前の素晴らしさに気づいた瞬間であり、よそ者の立ち位置に立った瞬間である。
立ち位置が変われば見え方は変わるのである。

もちろん、但馬地域にも厳しい側面はある。
夏の暑さは尋常では無く、シャツは汗でびしょ濡れになる。
冬の雪かきは、筋肉痛との戦いだ。
ただ、悪いところを殊更見つめるのでは無く、良いところ、それも自分たちが気づいていない素晴らしいところを見つめ直すことは必要だ。
夏の暑さは、サウナ風呂に無料で行っているようなものだし、冬の雪かきに至っては、ジムに行かずに筋トレをしているようなものだ。
何より、汗をかいても、筋肉痛に苛まれても、すぐそこに汗を拭い、痛みを和らげてくれる温泉があるではないか。
また、一歩外に出れば都市部では味わえない雄大な自然が広がり、コウノトリが出迎えてくれる。夕餉の食卓には季節の野菜や魚介類が並び、胃袋だけでは無く、心まで満足させてくれる。
夏の暑さ、冬の雪を物ともしない魅力が但馬にはある。

時折しも、ウィズコロナの時代を迎えようとしており、コロナ禍からの教訓(過度な「密」から適度な「疎」への転換)を活かすべき時期に来ている。
加えて、「仕事重視」から「生活重視」への価値観の多様化、都市部で暮らさなくとも仕事ができるICTの進展、そして2030年までに高い確率で起こるとされる東南海地震などなど。
どれをとっても、但馬は地方回帰の受け皿となり得る地域だ。

「これからは但馬の時代」
私は心からそう思っている。

 

(但馬県民局長・登日幸治)

 

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