ホーム > 暮らし・教育 > こども・若者・家庭 > 家庭応援 > ゆる家事大作戦 > #11 学校でも「ゆる家事大作戦」!みんなが幸せになるために支え合える関係を

更新日:2024年3月25日

ここから本文です。

#11 学校でも「ゆる家事大作戦」!みんなが幸せになるために支え合える関係を

雲雀丘学園高校2年生の家庭科研究授業リポート

2月24日、雲雀丘学園高等学校(宝塚市)2年生の2021度最後の家庭基礎の授業で、兵庫県「ゆる家事大作戦」が取り上げられました。公立中からの進学生の多い理系クラスで、医療関係を志望する生徒もいます。当日の授業を取材しました。

共働きの子育てライフを考えてみた

2H組は男子23人、女子21人のクラス。授業を担当する和田由起子先生は、まずスライドを使い「高度経済成長期の性別役割分担を背景にもつ核家族から、単身世帯が年々増加し続けています。近年孤独死や孤立が社会問題になり、共生社会をつくることが求められています」と説明しました。

続いて生徒一人ひとりが学習用端末で取り組んだのが、

「週60時間働く男性(教員)と、
女性(教員)の子育てライフのシミュレーション」



週60時間以上の就業者が30歳代40歳代の男性に多いという教科書のグラフを示し、働き盛りの男性の長時間労働が、家族にどんな影響を与えているのかを実感してもらおうというのです。

生徒たちがイメージしやすいように、和田先生は「みんなが登校する朝8時ごろから夕方6時、7時ごろまで学校で仕事している先生、いるでしょ?」と声をかけました。



「その人の妻がやはり先生で、2歳の子を一緒に育てているとしたら、どんな生活になるだろう? 二人とも通勤時間はかかるし、保育所の送迎、朝晩のご飯作り、やることいっぱいで忙しいよね」

教科書の「子どもの生活」のページを示し、
「2歳の子は、夜9時には寝かせないといけないよね」
「女性が早く帰らないとお迎えに行けない」「9時に寝かしつけるの、不可能やなー」「睡眠時間を削るしかないなー」など、生徒たちの手元を見ながら声をかける先生。
生徒たちは24時間内に仕事・家事・育児が収まらず悪戦苦闘。
15分後、悩みながらほぼ記入を終えた生徒もいましたが、全く書き込みが進まない生徒も。



男性が、長時間労働の場合、家事・育児のほとんどを女性が負担しなければならないことに気づいたようです。ある生徒が小さな声で「お母さん大変やな」とつぶやきました。

日本のランキングは世界120位、何の数字?

次に問いかけたのは
「156カ国の中で日本が120位。さて、何の数字でしょう?」

生徒はガヤガヤと周りと話したりしましたが、正解は出ません。

「ジェンダーギャップ指数2021のランキングです。2021年3月に発表された世界経済フォーラム(WEF)のデータで、日本では男性と女性の格差がいろんな局面で大きいんです」

「今は随分変わってきたけれど昔は、女子は4年制大学に行かなくてもよいと考える人たちもいました」とも説明します。

次のスライドは、2019年4月の東京大学入学式で、上野千鶴子名誉教授が新入生たちに送った祝辞。(参考URL:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

その後段部分を和田先生は読み上げました。

「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください」

中学2年生はアンケートで「理想は家事の半分は家族」

「では、支え合って生きるって、どういうことでしょうか」

先生は、兵庫県が実施していた「ゆる家事大作戦」についてのアンケートをもとに、雲雀丘学園中学2年生に行ったアンケート結果を示しました。



「本校生徒の家庭では、女性が家事の8~9割を担っていて、そのほとんどは母が担い手です。実態はそうでも中学2年生は、家事シェアはした方がいいと思っていて、家事の5割は家族が負担するのが理想と考えています。
兵庫県の『ゆる家事大作戦』も、家事が誰かひとりの負担にならないように、シェアを進めていきましょうという取り組みです」

家族のために料理を一品作る「親孝行の日」

家事シェアで大切なのは、家事を一緒にすることで生まれるコミュニケーション。

「『孝道』を掲げている本校では毎年10月1日の創立記念日を『親孝行の日』として、家族のために料理を一品つくるという取り組みをしていますね。
皆さんやご家族からの声を集めた記念冊子も作っていて、今年は動画も作りました」



生徒たちは5分余りの動画を一緒に見て、家事シェアの意義を再確認していました。
和田先生は最後に「家族は、一番小さな社会です。家族で支え合うことの大切に気づければ地域で困っている人を支えるという共生社会を作っていくことにつながっていきます」と話しました。

生徒たちは、自分たちが学校行事で取り組んでいる「親孝行の日」が、支え合って生きていくことにつながっていることを納得したのか、晴れやかな顔で授業を終えました。

和田由起子先生から

家庭科は「何が幸せを作るのか、
幸せとは何かを考える教科」です


家庭科といえば「料理・裁縫・保育」というイメージを持っている人がいまだに多いです。

しかし、最近の家庭科は、自立・ジェンダー・LGBT・自己破産・少子高齢化・消費者教育・孤独死・インクルーシブ社会・合理的配慮といった、現代の日本社会が抱えている福祉に関する問題を学ぶ教科になっています。

 



家庭科の教科書には「福祉とは、広い意味で幸せということ」と書かれています。
社会の構成員一人ひとりが幸せに暮らしていける社会を目指すことが、家庭科という教科の役割。

最近、2030年に持続可能な社会の構築を目指すSDGsが注目されていますが、家庭科の教科書には10年も前からSDGsと同じような内容が書かれています。

何が「幸せ」を作るのか、「幸せ」とは何かという根本から、持続可能な社会の実現や共生社会の創造を考えるための大切な教科が家庭科なのです。

1990年代半ばに家庭科の男女共修が始まったので、現在45歳までの世代の男性は、子育てに積極的にかかわろうとする人たちが多く、家事シェアも自分事として考えやすい土壌を持っています。

家事とは、やっている時は大変だなと思っても、後で振り返ってみると、それが「幸せ」な時間を過ごしていたんだなと実感できるものです。
このことを「親孝行の日」に「台所コミュニケーション」として家族に1品料理を作るという取り組みを通して生徒から学ばせてもらいました。家族のほのぼのとしたエピソードを読んで、私が幸せや感動をもらいました。
家族で料理を一緒に作る時を過ごした出来事が「楽しかったな」と思える時間が増えて、みんなが幸せになる一つのプロセスになるといいですね。「ゆる家事大作戦」という取り組みも幸せを考えるきっかけになると思います。

【編集部から】コロナ禍にもかかわず、家庭科の研究授業の取材と和田先生へのインタビューを許可していただいた学校法人雲雀丘学園 雲雀丘中・高等学校の皆さん、ありがとうございました。生徒の皆さんと一緒に見た動画は感動的なエピソード満載で、涙腺が緩んで仕方がありませんでした。

授業で使った動画ではありませんが、親孝行の日について雲雀丘学園が公開している動画はコチラ
親孝行「手紙~愛するあなたへ~」
~雲雀丘学園中高学校 親孝行の日~(外部サイトへリンク)


取材にご協力いただいた学校法人雲雀丘学園 雲雀丘中・高等学校の公式サイト
https://www.hibari.jp/


 

ゆる家事大作戦その他の記事はこちら

#1 トップブロガー・ナコさんの”ゆる家事スタイル”って?

#2 炒めるだけのお料理セットでパパが本格中華に挑戦!

#3 手近に掃除用具を置けばみんなでちょこっと掃除でできるね

#4 家事シェア研究家・三木智有さん「シェアで大事なのはやっぱりコミュニケーション」

#5 掃除のプロが水回りの汚れをリセット

#6 家事はプロに頼ってOK、食事の作り置き依頼で忙しい日も安心

#7 宅配や送迎サービスを活用して高齢になってもラクラクお買い物

#8 「私のゆる家事大作戦」大公開

#9 お片付けサポートコミュニティに参加して、「お片付け習慣」ゲット!

#10 「ゆる家事大作戦」体験家族のその後の変化をレポート!

#11 学校でも「ゆる家事大作戦」!みんなが幸せになるために支え合える関係を

ゆる家事大作戦トップページ

お問い合わせ

部署名:県民生活部 男女青少年課

電話:078-362-3169

FAX:078-362-3891

Eメール:danjoseishounen@pref.hyogo.lg.jp