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ようこそ知事室へ
第355回兵庫県議会の開会にあたり、まず今後の県政の推進について、私の所信を述べさせていただきます。
私は先の知事選挙において、県民の皆様からのご支持をいただき、兵庫県知事として県政を担うことになりました。県民の皆様の負託にこたえる、その職責の重さに身の引き締まる思いです。
県議会の皆様には、二元代表制の一翼を担い、県政の発展に多大なご尽力をいただいていることに、心より敬意を表します。県民のため、兵庫県のさらなる発展のため、県議会の皆様とともに最大限の努力を払ってまいりますので、格段ご指導とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
知事として、これから4年間の私の使命は、「躍動する兵庫」をつくり上げることです。人口減少、超高齢化、多発する災害、温暖化、経済構造の変容。私たちの前には多くの課題が横たわっています。かつての成功モデルからは解決策を導き出せず、ともすれば立ちすくみかねません。そんな時代だからこそ、今何より大切なのは、挑戦を起こし続けることではないでしょうか。成功の反対は失敗ではなく、何もしないことです。のびやかな試行錯誤の中から、未来への扉を開く。そんな生き生きと躍動する兵庫をめざします。
そのために私が大切にする基本姿勢は3つ、第1に「開放性を高める」、第2に「誰も取り残さない」、第3に「県民ボトムアップ型県政を進める」です。
第1の「開放性を高める」とは、様々な壁を取り払うことです。年齢、性別、障害の有無などに関わりなく、すべての人が力を発揮できる社会をつくること。県内に閉じた内向きの発想ではなく、近隣府県をはじめ国内外との交流・連携を深めること。行政の自前主義に陥ることなく、企業や団体、大学等とのパートナーシップを広げること。こうした開放性の高いオープンな県政を進めます。
第2の「誰も取り残さない」は、国連のSDGsでも謳われている理念です。大都市から農山村、離島まで、多様な地域に暮らすすべての県民の皆様が、安心して、育ち、学び、働き、遊び、しあわせに生きられる。そんな誰も取り残すことのない、人に温かい兵庫をめざします。
第3の「県民ボトムアップ型県政」は、これまでの県政の基本姿勢である「参画と協働」と軌を一にするものです。県民の皆様の主体的な活動を支え、県民とともに歩む県政をしっかりと進めてまいります。そのために、現場に積極的に赴き、県民の皆様との対話を重ね、施策や取組につなげる、現場主義の姿勢を貫きます。
次に、県政の基本政策について申し上げます。
今、何にも増して力を注がなければならないのは、言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症への対応です。
県内で最初に患者が発生してから1年半が経ちました。改めて、感染症でお亡くなりになった方々に、衷心より哀悼の誠を捧げます。
この間、医療従事者の皆様には、強い使命感を持って、県民の命と健康を守る闘いを続けていただきました。また、スーパーや物流、介護施設の職員など、様々な職場の皆様が私たちの暮らしを支えてくださっています。そして、感染の拡大を防ぐため、外出自粛や休業・時短など、県民、事業者の皆様の献身的なご協力をいただいています。心から感謝申し上げます。
いまなお、コロナの影響が続いており、本県は緊急事態宣言の最中にあります。一人でも多くの命を救う。そのために全力を尽くさねばなりません。
知事就任以降、保健所、医療機関、飲食店、大学など、できる限り現場を回り、そこで伺った課題を対策につなげてきました。保健所体制の強化、病床や宿泊療養施設の拡大、ワクチン接種の若者対策、飲食店でのマスク着用の徹底などであり、今後も引き続き、現場の声を大切にしながら対策を強化します。
コロナから県民の生活を守るために力を注ぎます。
感染症の影響が長引く中、事業者の経営環境は厳しさを増しています。仕事が減り生活を切り詰める方や、就職不安を抱える学生も少なくありません。事業継続を支える支援の強化、生活基盤の確保支援、就職をサポートする施策の拡充など、事業活動や県民生活をしっかりと支えてまいります。
国難とも言うべき状況は続きますが、光明も見えつつあります。ワクチン接種の進展です。県民の自粛疲れが深まる中、感染対策の徹底等を前提に行動制限の緩和を図ることも大切だと考えます。現在、国においてその具体化の検討が進んでいますが、県としてもタイミングを慎重に見極めた上で、感染対策と経済活動の両立に向けた取組を進めます。
現下の危機を乗り越えた先にめざすもの、それはコロナからの創造的復興です。これからの兵庫を単にコロナ前の状態に戻すのではなく、もっと元気で、もっと安心な兵庫にしていかなければなりません。
一つは、新たな価値を生む経済の構築です。
ポストコロナ時代にふさわしい産業構造への転換が欠かせません。中小企業のデジタル化や脱炭素化を後押しするとともに、兵庫に根づく進取の気性を活かしてスタートアップの集積を図ります。また、万博もにらんだ播磨灘・大阪湾ベイエリアの活性化、水素をはじめとしたグリーン産業の創出、関西一の農林水産業のさらなる振興、近隣府県と連携した新たな観光戦略など、兵庫のポテンシャルを解き放ち、次なる成長の突破口を開きます。
二つには、安全安心社会の先導です。
世界に先駆けて超高齢社会を迎える中、だれもが健やかに安心して暮らせる地域づくりは、待ったなしの課題です。健康寿命が延びる。住み慣れた地域で医療や介護が受けられる。孤立や孤独を生まない人のつながりがある。そんな長寿の喜びが広がる兵庫をつくります。
災害リスクへの備えの強化も欠かせません。南海トラフ地震は遠からず発生し、風水害は激甚化しています。感染症の世界的流行も、人の移動のグローバルな広がりによって常態化しかねません。震災の経験と教訓を活かして取り組んできた防災先進地づくりの歩みを、今後も緩めることなく進めます。
三つには、未来を創る人づくりです。
「安心して子育てをしたい」。若い世代の方達とお話しする中で、とりわけ多く寄せられる声です。待機児童の解消など保育の受け皿を充実するとともに、地域全体で子どもや子育て家庭を支える取組を広げます。また、子どもの貧困対策、児童虐待対策に取り組み、すべての子どもたちが明るい希望の持てる兵庫をつくります。
教育は県の礎です。体験教育をはじめとした兵庫の教育の特長を重視しながら、デジタル技術の活用や学校施設の改善など、新しい時代に対応した学びの環境づくりを加速します。さらに、学生未来会議を立ち上げ、学生の意見を県政に取り入れる仕組みをつくります。
四つには、個性を磨く地域づくりです。
集中から分散へ、人の移動に変化が見られます。背景にあるのは、テレワークの拡大による住む場所の自由度の高まりであり、このことは取りも直さず、新たな地域間競争の始まりとも言えるのではないでしょうか。
都市に近接する豊かな自然、地域に根づいた産業・文化、五国の風土が育む多様な食といった、兵庫ならでは魅力をさらに磨きます。加えて、暮らしの利便性や地域の活力を高めるため、県内各地でのスマートシティモデル地区の形成や基幹道路ネットワークの充実など、情報基盤・交通基盤を強化します。これらを通じて、兵庫に住み続けたい、兵庫に移住したい人を増やし、人口流出県から人口流入県への転換を図ります。
五つには、県政運営の改革です。
まず、県政の土台となる財政基盤を確かなものとしなければなりません。コロナパンデミックが象徴するような、変化の読めない不確実な時代にあって、県民の暮らしを守るためには、持続可能な財政基盤の構築が不可欠です。守るべきものはしっかり守り、時代に変化に即して変えるべきところは変える。このことを基本に行財政改革を進めます。
仕事の進め方の見直しも必要です。デジタル化の加速はもとより、会議運営の効率化、さらには公民連携プラットフォームの設置等により民間との共同プロジェクトを広げていきます。
そして、県民とのコミュニケーションの強化です。県民との信頼関係の構築は、県政の基です。県民目線に立った広報活動、ネットコミュニケーションの充実等を進めるとともに、私自らもSNS等を活用し積極的に情報発信に努めます。また、ワーケーション知事室などを通じて、県内各地に積極的に出向き、県民、市町、団体、企業の皆様と真摯に意見交換を行い、県政に反映していきます。
私の好きな小説家、司馬遼太郎さんの著書の一つに「坂の上の雲」があります。そのあとがきで司馬さんは、明治期は一面では暗い時代だったが、その中にあって、この物語は日本史上類のない幸福な楽天家たちの物語であるとし、次のように語っています。
楽天家たちは、前をのみ見つめながら歩く。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。
多くの課題に直面する時代ですが、兵庫県のさらなる発展、県民生活の一層の向上に向け、希望を持って一心に坂をのぼっていきたいと思います。
続いて、補正予算案で計上した主な事業について説明します。
その1は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策の推進です。
病床及び重症病床の使用率は5割を切りつつありますが、引き続き、医療提供体制の強化と感染防止対策の徹底に全力を挙げます。
まず、医療提供体制の強化です。医療機関にご協力いただき、新たに120床を確保し、1,357床の体制を構築しました。宿泊療養施設についても、今月2施設の運用を開始し、計14施設、約2,000室の療養体制を確保しました。医師を派遣する医療機能強化型の宿泊療養施設は7施設に拡充し、酸素吸入装置の充実も進めています。
自宅療養者に対しては、県看護協会の協力を得て看護師を増員し、相談対応を強化するほか、パルスオキシメーターや酸素供給装置を追加整備します。
重症化を防ぐ治療法を受けやすい体制を整えます。抗体カクテル療法の専用病床を加古川医療センターに設けるとともに、酸素を大量に送り込むネーザルハイフロー療法の拡充に向けて、医療機関が行う設備整備を支援します。
感染の拡大により、保健所業務は多忙を極めています。特に業務が逼迫している阪神地域の3保健所を中心に、県の応援職員など100名以上の増員を行いました。引き続き、業務の状況を踏まえて必要と判断した場合は、迅速に体制強化を図ります。
感染拡大防止には、希望する県民への1日も早いワクチン接種が欠かせません。とりわけ重要なのは接種の進んでいない若年層への対策であり、10月以降、園田と姫路の競馬場を活用して実施する県の大規模接種において、受験生や大学生など若年層の優先枠を設定します。
中小企業や大学などが複数の関連事業者を対象として職域接種を実施する場合に、新たに助成制度を設けます。
また、学生に対して県公式オンラインショップ「ひょうごマニア」のクーポンやポイントを付与し、ワクチン接種とe-県民への登録の促進を図ります。
営業時間短縮に応じた飲食店や大規模施設などに対し、協力金を支給します。協力事業者の皆様には、引き続き、早期の支給に努めます。
感染対策実施済みの認証ステッカーの交付を受け、マスク着用徹底の啓発資材を掲示する店舗に対し、安全安心のPRや感染防止対策に要する経費を支援します。
県立学校では、「学校に持ち込まない、学校内で感染拡大させない」ことを基本に、感染防止対策の徹底を図っています。
体調に異変が生じた児童生徒や教職員に速やかな検査を行うため、抗原簡易検査キットを追加配備します。感染予防やワクチン接種に対する正しい理解の促進に向け、医師や保健師など専門家を学校に派遣します。
ICTを活用した学習支援体制を強化し、各学校の臨時休業等に対応するため、通信環境のない家庭に通信機能付きタブレット端末を貸与します。
修学旅行は、感染状況を踏まえて実施の適否を適切な判断ができるよう、私立学校も含め、キャンセル料の負担に対し支援します。
コロナを巡る状況は日々変化しています。今後も、追加対策が打てるものは機動的に実施し、軌道修正が必要なものは躊躇なく改める。こうした姿勢を基本に対策を検討し、推進していきます。
その2は、コロナ禍で落ち込んだ地域経済の活性化、県民生活の安定化に向けた支援です。
本県の経済情勢は、生産・輸出とも持ち直しの動きを維持する一方、緊急事態宣言の影響から個人消費は足踏みが見られます。有効求人倍率も13か月連続で1倍を下回るなど、引き続き厳しい状況にあります。事業継続や雇用を支えつつ、地域経済の早期回復に向けた取組が必要です。
飲食店の酒類提供禁止により影響を受けている酒類販売事業者を支援するため、国の月次支援金の要件である売上減少要件を県独自で緩和し、支給金額も上乗せします。
県内観光地では、8月の緊急事態宣言以降、観光客が減少しています。需要回復に向けた対策を講じなければなりません。
県民の県内旅行を支援する国事業を活用し、「ふるさと応援 ひょうごを旅しようキャンペーン」として、旅行・宿泊代金の割引や旅行期間中に使用可能なクーポン券の配布を行う予定ですが、感染状況がステージⅡ相当以下になることが条件であることなどから、事業開始が見通せない状況です。
このため、キャンペーンの本格実施に先立つ県独自のプレ事業として、今後の感染状況や国の行動制限緩和に関する検討状況を踏まえつつ、ワクチン接種の促進及び感染防止対策を図りながら経済活動の活性化につなげるため、県独自の県内宿泊・旅行業への支援を行います。県内の宿泊事業者や旅行事業者に配慮する形で実施します。
県産農産物等の販路を開拓するため、ECサイトへの出店時の初期費用や新商品出品に要する経費を支援します。また、県公式オンラインショップ「ひょうごマニア」での割引クーポンを発行し、生産者を支援します。
コロナ対策を講じながら、芸術文化に親しむ機会を確保します。
若手アーティストの活動や青少年の舞台芸術の鑑賞機会を確保するため、文化ホールなどが企画する公演の開催費を支援します。
絵画、彫刻等の造形作家が、オンラインギャラリーなどICTを活用して作品を発表する取組も支援します。
令和3年3月の県内の大卒就職率は、前年より2.8%減少しています。内定を得られていない学生の県内就職を後押しするため、合同就職説明会を開催します。
「ひょうごで働こう マッチングサイト」は、自己分析機能を活用した求人検索など新たに学生支援機能を加えます。学卒未就職者に対し、研修や求人企業の開拓・紹介などの支援を行い、県内就職につなげます。
コロナ禍で加速しているデジタル化や脱炭素化など、中小企業にもポストコロナ時代の環境変化への対応が求められます。中小企業が新事業展開を行うためのビジョン策定を支援します。
特に急がれるデジタル化に対応に向け、大学と連携したオンライン講座を通じて、中小企業のデジタル人材の育成を支援します。
その3は、県民の安全・安心の基盤づくりです。
公共事業について、当初予算を上回る国庫補助を確保しました。
これを活用し、豪雨災害や南海トラフ地震、インフラの老朽化に備え、分野別計画に位置付けられている後年度の事業を前倒し実施し、事業効果の早期発現を図ります。
以上が、補正予算案の主な事業です。
これより提出議案の概要について説明します。
まず、これまで主な事業を説明した「令和3年度兵庫県一般会計補正予算案(第5号)」等2件です。補正の規模は、一般会計で1,526億6百万円の増額、公営企業会計で51億79百万円の増額です。
その財源は、国庫支出金が、主に新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金や新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金、特定財源は、公共事業における市町負担金などです。地方負担額は、地方交付税で対応します。
補正予算の執行に当たっては、事業効果を早期に発現させるため、事前準備や支給体制を整備し、適切な執行に努めます。
決算案件は、「令和2年度兵庫県一般会計歳入歳出決算の認定」等23件です。先に監査委員の審査に付していましたが、このたび審査意見書の提出がありましたので、今回認定を求めるものです。
一般会計は、過去最大規模の歳出2兆5,636億円、歳入2兆5,736億円となりました。新型コロナウイルス感染症対策の影響による企業業績悪化や民間消費低下によって県税収入が当初予算を大きく割り込む一方、制度拡充された減収補填債などの財源確保や年度途中の歳出削減などに取り組んだ結果、翌年度への繰越財源を除いた実質収支は前年度並の23百万円の黒字、実質単年度収支は12百万円の黒字を確保しました。
収支均衡を引き続き保持することができましたが、今後も社会保障関係費の増加や震災関連県債などの償還、新型コロナウイルス感染症の影響等により、本県の財政状況は引き続き厳しい状況が見込まれます。
今年度実施する行財政運営方針の見直しについて、各分野の取組の進捗状況の点検、課題の整理などの検証作業を実施し、「課題と検討方向」をとりまとめました。今後は、これに基づき具体的な見直しを進めます。
見直しにあたっては、時代の変化への的確な対応、国と地方・県と市町との役割分担などの観点から事業を総点検するとともに、組織の多様性の推進、仕事の進め方の変革といった視点からの点検も行います。
今定例会で設置をお願いする県議会の特別委員会においてご審議いただき、県民の皆様からのご意見も聞きながら、最終案をとりまとめ、令和4年度の予算編成にも反映させていきます。
条例案件は、「個人番号の利用、特定個人情報の提供等に関する条例及び個人情報の保護に関する条例の一部を改正する条例」など5件です。
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部改正に伴い、関係条例について所要の整備を行うものです。
その他案件は、「国営加古川水系広域農業水利施設総合管理事業についての市町負担額の決定」など12件です。
以上で、提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切なご議決をいただきますようお願いいたします。
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