ここから本文です。
ようこそ知事室へ
第366回兵庫県議会の開会に当たり、議員各位の日頃のご尽力に敬意と感謝の意を表します。
<能登半島地震の被災地支援>
最大震度7の地震と津波が、能登半島を襲いました。犠牲となられた方々に謹んで哀悼の誠を捧げます。また、被害に遭われ、今なお不自由な暮らしを余儀なくされている被災者の皆様にお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復旧復興を心よりお祈りします。
倒壊した建物や、火災で焼け野原になった街が報道で映し出されるたび、思い起こされるのは、29年前の阪神・淡路の姿であり、胸が詰まります。あの時、私たちのふるさとも、一瞬のうちに変わり果てた姿となりました。それでも立ち上がることができたのは、国内外から多くの温かい支援の手を差し伸べていただいたからに他なりません。
だからこそ、私たちが培ってきた経験と教訓を活かし、被災地の復旧復興を全力で支える。これは兵庫の責務です。発災後、関西広域連合の広域防災担当としていち早くリエゾンを派遣するとともに、災害対策支援本部を立ち上げ、カウンターパート方式での支援を決定しました。
また、本県のカウンターパート先である珠洲市をオール兵庫で支援するため、兵庫県支援本部を設置し、市町や民間等と連携しながら、現地のニーズに沿った人的・物的支援に取り組んでいます。避難所運営支援や緊急消防援助隊、震災・学校支援チームEARTH、災害派遣医療チームDMATなど、これまで延べ約2,600人を派遣しました。今も200人を超える本県関係者が現地で活動しています。さらに、発災翌日に県広域防災センターの備蓄物資を届けるなど物的支援を展開するとともに、トイレカーや移動式コインランドリーの提供、被災者向けの県営住宅の確保、義援金の募集なども進めています。加えて、ボランティアが被災地に向かうバスや機材の借上助成など、今後のボランティア活動の本格化を踏まえた支援も行ってまいります。
今後、被災地は応急対応期から復旧復興期へと移ります。こころのケア、まちづくり、地域コミュニティの再生、産業復興など、この先も兵庫の経験と教訓は必ず活きるはずです。
古くから、「能登はやさしや土までも」と言われます。海と山が織りなす豊かな自然と、そこで暮らす思いやりと温かさに満ちた人々を表す言葉です。その能登が立ち上がり、再び元気な姿を取り戻すことをめざし、息の長い支援を続けます。
<「個」が輝く希望と安心の未来へ>
(人口減少対策)
それでは、提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
いま私たちは、メガトレンドとも呼ばれる、中長期にわたって世界中の人々に影響を及ぼす巨大な潮流の真っただ中にいます。気候変動、テクノロジーの爆発的進化、人口構造の変容、国際秩序の不安定化などであり、中でも日本社会にとって、今後加速する人口減少は最大の危機の一つとされます。
本県の人口も、現在の536万人から2035年には500万人を割り込み、2050年には今より約100万人、20%少ない435万人程度になると推計されています。人口の減少は、需要減による市場規模の縮小や、経済・社会の担い手不足、地域コミュニティ機能の低下など、様々な課題をもたらす恐れがあります。それだけに、少子化対策や東京一極集中の是正に向けた取組を、国や市町、民間とも連携し、さらに推進していかなければなりません。
(一人ひとりが輝く兵庫)
同時に、真正面から受け止めなければならないのは、出生率が直ちに大きく回復することは見込みづらく、少子化はすぐには止まらないということです。世界的に見ても、少子化の進行は社会が成熟した国々に共通する構造的な変化です。従って、いま私たちに問われているのは、人口減少時代にふさわしい社会のあり方を展望しつつ、新たな活力を生み出すための行動を起こすことではないでしょうか。
私は、人口の絶対数が減る時代だからこそ、一人ひとりが輝き、個の力がみなぎる兵庫を創っていきたい。とりわけ鍵となるのは、未来を担う若者たちがそれぞれの可能性を広げ、存分に力を発揮できる環境づくりです。
幕末から明治にかけて社会を変革する原動力となったのは、松下村塾で吉田松陰に学んだ塾生達でした。「人賢愚(けんぐ)ありといえども、各々(おのおの)一、二の才能なきはなし、湊合(そうごう)して大成する時は必ず全備(ぜんび)する所あらん」。人はそれぞれ素晴らしい才能を持っており、全力を傾けてその特性を大切に育てていけば、立派な業績を残す人間になる。この考えのもと、一人ひとりの個性と能力を引き出す指導をした松陰のもとからは、初代兵庫県知事となった伊藤博文をはじめ、高杉晋作、久坂玄瑞、山縣有朋など、個の力を持った人材が数多く輩出されました。固定観念に捉われ、若者の可能性の芽が摘まれるような環境であったなら、日本の近代化の歩みは遅れていたかも知れません。
誰もが望む学びや、働き方、暮らし方ができる、そして夢を持って生き生きと自分の物語を歩むことができる、そんな兵庫をめざします。このことが、ウェルビーイングとも言われる個人の幸福につながるとともに、地域の活力を生み、兵庫の持続的発展につながると確信しています。
<予算編成に当たっての重点>
新年度の当初予算は、その第一歩を力強く踏み出すとの思いで編成しました。
(若者・Z世代が輝く兵庫)
第一に、若者・Z世代が輝く兵庫づくりです。
次の時代を担うのは若者・Z世代です。彼らが自分の可能性を広げ、望む人生を積極的に追求できる社会でなければ、活力ある未来を展望することはできません。しかし、経済情勢の変化や気候危機の深刻化等から世界中で若者の間に不安が広がっています。また、日本では、重い奨学金返済の負担をはじめ、出産・子育て・住まいなど様々な分野で悩みの声が上がっています。
若い世代が抱える不安を取り除き、一人ひとりの個の力を伸ばすため、高等教育の負担軽減や留学支援、不登校対策、ヤングケアラーやケアリーバーの支援、不妊治療支援、子育て世帯への住宅対策など、分野横断的に若い世代を直接応援する施策を展開します。これにより、若者の県内定着と兵庫の成長・発展につなげます。
(活躍の場が広がる兵庫)
第二に、活躍の場が広がる兵庫づくりです。
一人ひとりの個の力を伸ばしても、それを発揮するフィールドが広がらなければ効果は十分に上がりません。次世代産業や地場産業、豊かな食や文化、盛んなスポーツなど、多彩なフィールドを持つ兵庫の強みをさらに磨いていきます。
水素エネルギーや次世代モビリティなど、今後成長が見込まれる産業の拠点形成を進めるとともに、新たなビジネスチャンスにもつながる中小企業のSDGsの取組支援を強化します。また、有機農業の拡大等を通じた農林水産業の付加価値の向上、スポーツや芸術文化に触れる機会の拡大も図ります。
そして、活躍の場を広げる象徴的な取組が、ひょうごフィールドパビリオンです。国内外からの訪問客だけでなく、ぜひ地域の若者や子ども達に体験してもらいたいと考えています。世界共通の課題解決のモデルとなり得る取組が、自分たちの足元で行われているのを実感してもらうことで、地域で働きたい、活躍したいと考える若者を増やしていきます。
(安全安心に包まれる兵庫)
第三に、安全安心に包まれる兵庫づくりです。
安全安心で、一人ひとりが尊重される環境があればこそ、私たちは存分に力を発揮できます。
しかし、多発する自然災害、被害額が過去最高となった特殊詐欺、自転車等の交通事故など、安全安心を脅かす事案は後を絶ちません。
高齢者に多い特殊詐欺被害や自転車死亡事故などに対し、既にこれまでにない規模で集中的な対策に乗り出していますが、新年度においても、能登半島地震を踏まえた防災・減災対策の強化をはじめ、各分野でさらなる対策の充実を図ります。
併せて、一層重要になるのが、多様性と包摂性(Diversity & Inclusion)です。年齢、性別、障害の有無、国籍、価値観等の違いに関わらず、一人ひとりの個性を大切にし、自分らしく生きられる社会づくりを進めます。
(県政改革の推進)
第四に、県政改革の推進です。
以上の取組を進めるには、言うまでもなく足腰の強い行財政基盤が不可欠です。知事就任以来、改革を一歩ずつ進めてきた結果、堅調な税収も相まって、当面の目標に掲げていた財政調整基金の積立に目途が立つなど、一定の成果を上げてきました。
一方で、分収造林事業や地域整備事業会計などの課題に対処していかなければなりません。決して将来に先送りにしない。その強い決意のもと、財政的問題の解決に向けて改革を実行し、未来への投資をしっかりと行っていきます。
県庁の働き方改革も大きな挑戦です。今年度行ったモデルオフィスでの試行を検証し、テレワークやパソコンのモバイル化など、4割出勤の実現に向けた取組を推進します。
≪新年度の主な施策≫
以下、主な施策を説明します。
【若者・Z世代が輝く兵庫】
第一に、若者・Z世代が輝く兵庫づくりです。
<「学びやすい兵庫」の実現>
その一は、「学びやすい兵庫」の実現です。
(県立大学の授業料等無償化)
「兄弟がいるので親に負担をかけて進学することに葛藤があった」「奨学金返済が結婚や出産のハードルになるかもしれない」。学生から切実な声が寄せられています。私自身、奨学金により学業を続けることができましたが、一方で、多額の返済負担がライフプランに影響を及ぼしたことも事実です。兵庫の若者には、学費負担の不安を抱くことなく、希望する教育を受けられる環境を用意したい。私の強い思いです。とりわけ、学費等が高額な高等教育の負担軽減は、最優先で取り組むべき課題です。
このため、兵庫県立大学及び芸術文化観光専門職大学について、県内在住者の入学金・授業料を、学部・大学院ともに、所得に関わらず無償化します。夢を追うことを躊躇する若者を前に、手をこまねいてはいられません。希望をもって将来を描ける社会への道を、兵庫から切り拓いていきます。
(奨学金返済支援制度の拡充)
中小企業と連携した奨学金返済支援制度も拡充します。今年度、就職後5年間は本人負担を無くす仕組みとしましたが、「転職人材を確保するには、30歳未満の要件は厳しい」「依然として返済額の負担が大きい」との意見が多く寄せられました。
こうした声を受け、年齢要件を40歳未満に引き上げるとともに、ワーク・ライフ・バランスや女性活躍、SDGs等の取組が認められる企業は最大で本人負担が実質ゼロとなるよう補助期間を延長します。これにより、若者の経済的負担の軽減、企業の人材確保、若者・女性に選ばれる企業の拡大という3つの効果を生み出していきます。
(グローバルリーダーの育成)
学業、スポーツ、芸術、農業など、興味のある分野で世界に出て自分の力を試したい。そんな願いを持ちながら、円安による影響もあり、経済的な事情等で諦めている高校生は少なくありません。
このため、「HYOGO高校生『海外武者修行』プロジェクト」を始動します。基金を設置し、個人や企業の寄付を募りながら、年間100人規模の海外留学支援を目指します。毎年100人程度の高校生が世界を体感することになれば、兵庫に新しい風が必ず吹くことでしょう。
また、アプリを活用した英語授業の実践研究を行うとともに、文理融合や国際系の探究的な学び等を先導する高校を「ひょうごリーダーハイスクール」として指定し、大学や研究機関等と連携して国内トップクラスの教材の開発等を進めます。
(教育環境の充実)
施設改修や空調整備、部活動用具の更新など、県立学校の教育環境の充実を進めます。今年度からスタートしていますが、実施にあたって各校で留意いただいているのは、生徒のニーズを取り入れることです。生徒会や各クラブなどから使い道についての意見を集めた結果、これまで後回しになっていた機器・備品の更新にも充てられています。先日訪問した猪名川高校や川西緑台高校でも、個人ロッカーや陸上部のタイマーなどを整備できたと、生徒から直接喜びの声を聞きました。引き続き、生徒ファーストの視点を大切にしながら、教育環境の充実を図ります。
4月には県立川西カリヨンの丘特別支援学校が開校します。これにより、阪神北地域の特別支援学校の過密化を解消するとともに、川西市北部と猪名川町の児童生徒の通学時間の短縮を実現します。いなみ野特別支援学校の改築や東はりま特別支援学校の校舎増築などの東播磨地域における狭隘化対策とともに、但馬地域の特別支援学校の発展的統合も計画的に進めます。
<「子どもを産み育てやすい兵庫」の実現>
その二は、「子どもを産み育てやすい兵庫」の実現です。
(不妊治療支援の強化)
子どもを持ちたいという希望が叶う兵庫をめざし、不妊治療支援を大幅に強化します。
「先進医療が全額負担になり経済的に厳しい」「近くに病院がなく交通費負担が大きい」「職場の理解を得るのが難しい」との声を多くいただきました。私自身、不妊治療の経験者として、身につまされます。
どこに住んでいても先進医療が受けやすくなるよう、回数制限のない医療費助成を行うとともに、通院交通費も支援し、経済的負担を軽減します。また、不妊治療と仕事が両立できる環境づくりに向け、企業への講師派遣や不妊治療休暇制度の設置促進に取り組むほか、高校生・大学生に対するプレコンセプションケアの啓発を進めます。併せて、将来にわたり安心して不妊治療が受けられる環境を整えるため、全国初の不妊治療支援特化条例の制定に向けた検討に着手します。
(放課後児童クラブの拡充)
保育所の待機児童数は減少傾向にある一方、放課後児童クラブの待機児童数は高止まりしています。その受け皿確保のため、保育所の空き教室等を活用した放課後児童クラブの開設を支援します。また、女性就業率の上昇等を背景に、ニーズの高まっている夏休みに特化した放課後児童クラブについて、開設・運営を支援する県独自制度を設けます。
(不登校対策等の強化)
不登校児童生徒数は年々増加を続けています。県民の皆様との対話の中でも、頻繁に伺うのが不登校問題の深刻さであり、一層の対策強化が必要です。その大きな第一歩として、校内サポートルームで学習や生活の支援を行う不登校児童生徒支援員について、県内全中学校等への配置を支援します。先進的に取り組んでいる川西市の中学校を視察し、支援員の配置が生徒一人ひとりのきめ細かなサポートとともに、教員の負担軽減にもつながると実感しています。
一方、学校へ行くことに抵抗のある児童生徒や、卒業者・退学者の孤立を防ぐことも大切です。県内5カ所にある地域相談拠点と学校との連携を強化するほか、ひきこもり支援団体のネットワークを構築し、支援の網を広げます。
(ケアリーバー支援の充実)
社会的養護経験者であるケアリーバーは、頼る人やロールモデルのいない中で、大学進学率は低く、転職も多い状況です。将来の選択肢を広げるため、学習塾や習い事、予備校に通う児童生徒を支援します。また、専門相談窓口や里親支援センターの開設、ケアリーバーを応援する企業の認定制度の創設など、社会全体で支える体制を構築します。
<「住みやすい兵庫」の実現>
その三は、「住みやすい兵庫」の実現です。
(子育て世帯への住宅支援)
阪神間を中心にファミリー層の転入超過が続く一方で、住宅価格の高騰や子育て世帯のニーズに合った住宅の不足などから、居住を諦めざるを得ないとの声を聞きます。このため、県営住宅と民間住宅の両面から、安心して子育てができる住宅・住環境を広げます。
県営住宅では、優先入居枠の拡充等により、子育て世帯向け住居を3年間で510戸増やすとともに、奨学金返済者優先枠の新設や、敷金免除、グレードアップ改修なども行います。民間住宅では、阪神間をモデルに子育て住宅促進区域を指定し、市町と連携して住宅取得を重点的に支援するとともに、県外からの住替も支援します。これらの効果検証を踏まえ、他の地域への横展開をめざします。
<「働きやすい兵庫」の実現>
その四は、「働きやすい兵庫」の実現です。
(多様な人材の活躍)
人手不足が深刻化する中、一層重要となるのは、多様な人材の活躍です。企業と連携して、高校生のキャリア形成支援や理工系人材の確保に取り組むとともに、女性の活躍を広げるため、現行のミモザ企業認定制度に、より取り組みやすい「フレッシュミモザ企業」を設けます。また、短時間勤務を望む女性や高齢者など、多様な就労ニーズに応えるため、デジタル技術を活かしたギグワークのマッチングシステムを構築します。
外国人の就職・定着に必要なのは、安心して働ける仕組みです。これは昨年末のベトナム訪問を通じて強く感じたことであり、外国人が働きやすい優良企業の認証制度創設に向けて検討を進めます。加えて、外国人の増加に伴い教育、生活、医療・福祉などの面でも課題が生じていることから、対応の充実に向けて検討の場を設けます。
【活躍の場が広がる兵庫】
第二に、活躍の場が広がる兵庫づくりです。
<2025大阪・関西万博に向けた取組の加速>
その一は、2025大阪・関西万博に向けた取組の加速です。
(万博に向けた仕上げの1年の取組)
大阪・関西万博の開催まで1年余り。準備を加速させます。
近年、オリンピックや万博の会場建設費や大会後の施設活用が課題となる中、点在する既存施設等を活用し、それらをネットワーク化する拡張型の開催方法を志向する動きが見られます。ひょうごフィールドパビリオンはその先導的な取組として、注目が集まってきています。
フィールドパビリオンのプレーヤーの方々からは、「自分たちの取組に光があたり、意欲が高まった」「地域全体で応援してくれている」といった声が寄せられています。この熱意をしっかりと成果に結びつけていかなければなりません。各プログラムの磨き上げに向け、県民や外国の方々に体験してもらい、その感想をフィードバックするモニター事業を強化します。また、国内外でのプロモーション活動や、旅行会社へのツアー造成の働きかけなどにも一層力を入れます。
県内各地へ誘うゲートウェイとなる万博会場「兵庫県ゾーン」と県立美術館については、来館者がワクワクする展示となるよう、内容のさらなる具体化を図り、制作を進めます。
そして、オール兵庫での取組を本格化させます。県内の企業・団体・市町等が情報発信を行う「兵庫県版テーマウィーク」や「市町の日」、子どもたちが主体的に関わる「子どもの夢プロジェクト」、万博300日前・半年前・1か月前といった節目に機運を高めるカウントダウンイベントなど、幅広い県民の参画を得ながら準備を進めます。
(尼崎フェニックス事業用地での五国の魅力発信)
万博会場外駐車場が設置される尼崎フェニックス事業用地には、多くの駐車場利用者が見込まれることから、兵庫五国の魅力を発信する好機と捉え、「ひょうご楽市・楽座」を実施します。現在実施中のサウンディング調査等を踏まえて、県内各地のグルメや特産品の販売、フィールドパビリオンのプログラム体験など、魅力的なイベントを検討します。
(他府県との連携)
万博時には、他府県と連携した取組も展開します。生物多様性等に配慮した農業を発信する「環境創造型農業サミット」や、瀬戸内の美術館や安藤建築等をつなぐ広域周遊プロジェクトなど、本番に向けて関係府県等との連携を深めていきます。
<産業競争力の強化>
その二は、産業競争力の強化です。
(水素社会の実現)
ウクライナ情勢等によって広がるエネルギー構造の変化を受け、水素社会の実現に向けた動きは世界中で加速しています。日本においても国は「水素基本戦略」のもと、水素サプライチェーンの大規模拠点を形成する方針を示しており、その候補地として大きなポテンシャルを持つのが播磨臨海地域だと確信しています。関西電力や川崎重工業など、関係企業と連携しながら、水素の受入拠点や需要先の開拓、供給手法等について検討、調整を進めます。
(空飛ぶクルマの社会実装に向けた取組)
空飛ぶクルマは、観光面はもとより、交通、救急・防災など、多くの分野で利用が期待されます。また、今後拡大する機体製造・修理等の需要に対しては、兵庫のものづくり力が活きるでしょう。それだけに、兵庫から社会実装を広げていきたいと考えています。新年度は、万博時の飛行を想定した、実機による二地点間運航の実証等を支援するとともに、安全柵の設置などフェニックス事業用地の暫定ポート整備も進めます。
(SDGsの取組促進)
企業のSDGsの取組は、サプライチェーンからの排除といった経営リスクを下げるだけでなく、新たなビジネスチャンスも生みます。経済団体の協力等もあってSDGs宣言企業の数は大きく伸びており、来年度末には全国トップクラスの2,000社程度まで宣言企業を増やすことを目指します。また、SDGs認証企業の拡大のほか、ロールモデルとなる経営者を顕彰する「ひょうごSDGs経営大賞」の創設等により、意欲的な取組を広げていきます。
<持続可能な農林水産業の実現>
その三は、持続可能な農林水産業の実現です。
(有機農業の取組拡大)
有機農業への関心は高まっているものの、「供給が足りない」「売り先が少ない」など、卵が先か鶏が先かの議論になりがちです。そこで、突破口として人材育成を強化します。経営として成り立つ有機農業を体系的に学べる「有機農業アカデミー」を、令和8年度に県立農業大学校に開設します。それに向け、新年度は、実習用のほ場やビニールハウスの整備、カリキュラムの作成等を進めます。
また、有機農産物の販路拡大に向け、生産者と消費者を強固に結びつけるCSA(Community Supported Agriculture)の拡大や、学校給食での活用支援に取り組むほか、日本酒の有機JAS認証制度開始を踏まえ、県産酒米・日本酒の認証取得支援を開始します。
<循環型社会の推進>
その四は、循環型社会の推進です。
(脱炭素の推進)
2050年のカーボンニュートラルをめざす中、太陽光発電は、導入コストや施設の荷重、適地の減少などの課題に直面しています。そこで期待されているのが、低コスト、軽量、曲げやゆがみに強いなどの特徴を持つペロブスカイト太陽電池です。開発企業や県立大学と連携して、実証実験に向けた調査・検討を行うとともに、情報発信に取り組みます。
藻場の再生やブルーカーボンクレジットの創出など、兵庫の海を活かした脱炭素化の取組も引き続き推進します。
(自然との共生)
人と自然が共生する社会づくりもさらに進めます。農業や生態系に被害を及ぼす特定外来生物のナガエツルノゲイトウについて、防除計画の策定、防除手法の実証・確立、防除実施者の育成など、抜本的な対策を講じます。
シカやイノシシ等による農林業被害が高止まりする中、狩猟者の育成が課題です。捕獲技術の向上や法令・安全対策にかかる知識習得など、狩猟者を育成する拠点として、6月に県立総合射撃場をオープンします。
<スポーツ・芸術文化の振興>
その五は、スポーツ・芸術文化の振興です。
(スポーツの振興)
昨年はスポーツが兵庫を大いに盛り上げ、全国の注目も集めました。これを一過性のものにすることなく、スポーツの持つエネルギーを兵庫の活性化につなげていかなければなりません。
県内プロスポーツクラブと連携して、ホームゲームへの子どもの無料招待や、選手・スタッフによるスポーツ教室の開催などを行います。また、県内スポーツ施設のユニバーサル対応の状況を調査し、今後の施設のあり方を検討します。
eスポーツにも大きな可能性を感じています。「普段、学校で大人しい生徒が、大舞台でいきいきと活躍する姿に感動した」。先日の高校生eスポーツ大会に来られた学校関係者の声です。新たな自己表現の場となり、地域活性化にもつながるeスポーツをさらに盛り上げていきます。
こうしたスポーツが持つ多面的な力を引き出すため、「HYOGOスポーツ新展開検討委員会」での議論も踏まえて、引き続き、様々な施策展開を図っていきます。
(芸術文化の振興)
阪神・オリックスの優勝記念パレードの際に寄贈いただいた障害者アートの虎の絵を、県庁2号館ロビーに展示しています。以前、そのアーティストの作品に感銘を受けて制作をお願いしたもので、ダイナミックで迫力満点の虎が、来庁者の目を楽しませています。これからも障害者の芸術文化活動を応援し、魅力を発信していきます。
美術館・博物館等を無料開放する「ひょうごプレミアム芸術デー」についても、さらに充実します。障害のある方や子育て世帯に配慮した取組に加え、新たにナイト・ミュージアム、こども学芸員体験なども取り入れ、だれもが気軽に芸術文化に親しめる環境を広げます。
<社会基盤の充実・強化>
その六は、社会基盤の充実・強化です。
(高規格道路ネットワークの整備)
広域的な物流と交流を支え、地域発展の基盤となる高規格道路ネットワークの整備を着実に進めます。北近畿豊岡自動車道の豊岡道路のうち、但馬空港-豊岡出石間は令和6年秋の完成予定です。山陰近畿自動車道、東播磨道、名神湾岸連絡線、大阪湾岸道路西伸部、神戸西バイパスなど、事業中の路線の早期整備も図ります。播磨臨海地域道路は、事業化に向け地元の意見も丁寧に聞きながら、早期の都市計画決定を目指します。
(JRローカル線の維持・活性化)
JRローカル線は、県民の暮らしや交流人口の拡大に必要な社会基盤です。沿線市町やJR、観光事業者等の参画を得て昨年度末に取りまとめた方針のもと、今年度は各路線のワーキングチームを中心に、利用助成、二次交通対策、マイレール意識の醸成、駅周辺の賑わい創出など、幅広い取組を進めてきました。これらの成果や課題を検証しながら、引き続き路線の維持・活性化に向け、沿線市町などとともに利用促進に取り組んでいきます。
(空港の有効活用・利便性向上)
関西国際空港と神戸空港の発着枠拡大に向けた新たな飛行経路案については、環境検証委員会の「中間とりまとめ」において、騒音予測が環境基準を下回ることが確認されるとともに、深夜・早朝時間帯の陸域飛行の制限など、国への要請項目が示されました。県として、「中間とりまとめ」の実現を国に働きかけることと併せて、地元への真摯な対応、環境監視体制の強化などに、関係自治体や経済団体等と連携して取り組みます。
【安全安心に包まれる兵庫】
第三に、安全安心に包まれる兵庫づくりです。
<防災・減災対策の強化>
その一は、防災・減災対策の強化です。
(阪神・淡路大震災30年)
来年の1月17日に、阪神・淡路大震災から30年を迎えます。災害の記憶は30年を経過すると、世代の交代によって風化すると言われます。このため、震災30年事業では、震災を「忘れない」「伝える」「活かす」「備える」に加え、世代や地域を超えて「繋ぐ」の5つをテーマとし、事業を展開します。
すでに、高校生や大学生による語り部活動やぼうさい甲子園など、次の世代へ継承する活動が展開されています。今年6月には、世界銀行の「防災グローバルフォーラム」が姫路で開かれ、令和7年には、1月17日の追悼式典をはじめ、被災地の知事や海外の自治体等が集う「創造的復興サミット」、さらには関西の企業経営者が一堂に会する「関西財界セミナー」や、世界各国の港湾関係者が集まる「世界港湾会議」が神戸で予定されています。まさに震災の経験と教訓を広く国内外に繋いでいく重要な機会であり、市町や関係機関・団体等と連携して取組を進めます。
ウクライナの復興に対しても、本県が培ってきた知見を活かし、被災者のこころのケアができる人材や、義肢装具のリハビリ訓練ができる人材の育成などに取り組みます。
(能登半島地震等を踏まえた対策強化)
能登半島地震は、新しい年の平穏と幸せを祈る元日に発生しました。災害は人間の都合に関わりなく、突然襲ってくる。このことを改めて痛感しました。新たに検討会を設けて、今回の地震で明らかになった課題を多角的に検討し、地域防災計画に反映するとともに、合同防災訓練等を通じて、官民連携の体制強化を図ります。
発生が懸念される南海トラフ巨大地震については、国の計画改定を踏まえて、本県の津波浸水想定および地震・津波被害想定の見直しを行い、津波災害警戒区域の指定等につなげます。
県土のさらなる強靭化も重要です。湾口防波堤の整備、防潮堤の嵩上げ、緊急輸送道路の拡幅等の機能強化、橋梁の耐震化、河川改修、砂防堰堤や治山ダムの整備などのインフラ整備を着実に進めます。
(フェニックス共済の加入促進)
能登半島地震では多くの家屋被害が発生しました。いざという時の備えとなるフェニックス共済の加入促進策を強化します。イベント等へのブース出展に加え、ショッピングモール等での街頭キャンペーンやインターネット広告などの取組を充実します。
<高齢者の安全安心対策>
その二は、高齢者の安全安心対策です。
(特殊詐欺、自転車事故対策)
昨年の県内の特殊詐欺被害件数は、高齢者を中心に1,200件を超え、過去最多となりました。犯人からのアプローチが最も多い固定電話対策として、自動録音機能付電話機の購入支援を継続します。同時に重要なのが、普及啓発です。講習会やPRキャンペーンの実施、各種媒体による情報発信など、県警や市町等と連携して取組を強化します。高齢者に多い自転車死亡事故に関しても、交通安全教室の開催や啓発動画の作成等を通じてヘルメット着用の意識醸成を図ります。
(ユニバーサルツーリズムの推進)
バリアフリー化等に取り組んでいる「ひょうごユニバーサルなお宿」は、これまで77施設が宣言し、うち34施設が県の基準を満たす登録施設となりました。今年は世界パラ陸上が開かれ、来年は万博が控えています。多様な人々を兵庫にお迎えできるよう、引き続き、バリアフリー改修の支援等により、宣言・登録施設を拡げます。また、新たに地域を挙げてバリアフリー化等に取り組む観光地を「ひょうごユニバーサルツーリズム推進エリア」として指定し、地域ぐるみの取組を支援します。
(感染症等対策)
帯状疱疹について、現下の物価高騰の状況等も踏まえて、令和6年度に限りワクチン接種支援を行う市町への補助制度を設けます。同時に、国に対して定期接種化を要望するとともに、令和7年度以降については、来年度の市町の実施状況等を踏まえて対応を検討します。
<地域の安全安心の確保>
その三は、地域の安全安心の確保です。
(防犯対策)
防犯カメラ設置補助事業を主体的に行う市町への補助について、この先も新規設置のニーズが見込まれることから、来年度以降も事業を継続します。
交番・駐在所の機能強化も進めます。すべての交番・駐在所においてネットワーク環境を整備し、業務の効率化によって街頭活動の時間を確保するとともに、迅速なデータ照会等による事件・事故への対処能力の向上につなげます。
(通学路等の安全対策)
児童生徒の通学における安全確保も大きな課題です。地域の関係機関と連携した安全対策と併せて、ハード面の対策として、「通学路交通安全プログラム」に基づき、優先して通学路の歩道整備を行います。
また、死傷者数が増加傾向にある横断歩道での事故を防ぐため、消えかかった横断歩道やセンターライン等の引き直しを加速します。
(医療の充実)
今年4月から医師の時間外労働の上限規制が適用されます。医師の働き方改革を促進するため、大学病院と連携し、長時間労働病院に対して医師を派遣するほか、希望する病院には働き方改革支援チームを派遣します。
また、新興感染症発生時の初動体制を確保するため、医療機関が行う個室等の整備を支援します。
地域の医療や介護を担う人材を育成するとともに、新長田のまちのにぎわいづくりにも資する総合衛生学院は、来年度中の供用開始を目指し、引き続き整備を進めます。
<一人ひとりが尊重される社会づくり>
その四は、一人ひとりが尊重される社会づくりです。
(パートナーシップ制度の運用)
誰もが人生のパートナーと協力しながら安心して暮らせる社会の実現に向け、4月からパートナーシップ制度の運用を開始します。公営住宅の入居や公立病院での面会など、性的マイノリティのカップルなどの日常生活での困りごとや不安の解消を図ります。
(SNSによる誹謗中傷等の抑止)
情報技術の進化により、誰もが気軽にインターネット上で情報発信ができる時代になりましたが、それに伴って誤情報の拡散や誹謗中傷など負の側面が深刻化しています。能登半島地震においても、悪質な誤情報が拡散されました。こうした状況を踏まえ、インターネット上の人権侵害の抑止や、情報リテラシーの向上を図るため、SNSによる誹謗中傷等を抑止する条例の制定を検討します。
(犯罪被害者等への支援)
犯罪被害者等の権利利益を守るため、昨年3月に制定した条例のもと、「兵庫県犯罪被害者等支援計画」を策定します。これに基づき、予期せぬ経済的負担の軽減策として、県独自の見舞金制度を創設します。また、個々の事案に適切に対応できるよう、県が中心となって関係機関と調整を行う「支援調整会議」や、総合相談窓口への専門職の設置など、支援体制を充実します。
【県政改革の推進】
第四に、県政改革の推進です。
<改革の着実な実行>
その一は、改革の着実な実行です。
今回見直した財政フレームでは、税収の増や経済成長率の上昇等により、令和10年度までの収支不足額の総額は255億円から215億円に改善する見込みです。依然として収支不足額が生じていることから、引き続き、歳入歳出両面における改革により、収支均衡をめざします。
また、分収造林事業や地域整備事業会計の多額の債務整理など、財政運営上の大きな課題も残っています。これらの事業の収支悪化を踏まえると、両事業に対する基金運用は不適切であり、できる限り早期に是正します。また、病院事業について、全国的な傾向ではあるものの、本県でも赤字基調となっており、経営改善が必要です。これらの課題に対して、県議会や県民との情報共有を徹底しつつ、抜本的な見直しに向けた検討を進めます。
新しい働き方の推進については、ペーパレス・ストックレス化の徹底や、サテライトオフィスの活用など、4割出勤の実現を目指したトライアルを行います。
また、本庁舎の再編に向け、3号館や生田庁舎のオープンオフィス化の改修を実施します。
<新たな収入確保策の展開>
その二は、新たな収入確保策の展開です。
今年度、本県への寄附総額は、現時点で目標を上回る5.8億円となりました。引き続き、魅力的な返礼品の拡充や、積極的な営業・広報活動を展開します。ネーミングライツは、対象施設への命名権に加え、事業者からの企画提案型や、県主催イベント等の冠スポンサー枠を新たに導入します。
≪新年度予算の概要≫
これより令和6年度当初予算の概要を説明します。
歳出では、社会保障関係費や定年引上げによる退職手当に加え、若者・Z世代応援パッケージや万博関連事業の増加を見込む一方、新型コロナウイルス関連事業や制度融資預託金の減などにより、前年度当初予算を下回りました。
歳入では、堅調な企業業績により法人関係税が増加するなど、県税収入全体は前年度を上回る見込みであり、臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は減となるものの、一般財源総額では前年度当初予算を上回る見込みです。
この結果、有利な財源や地方財政制度も活用し、新年度当初予算では、引き続き、収支均衡を図ることができました。
以上により編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 2兆3,390億 700万円
特別会計 1兆6,355億 500万円余
公営企業会計 歳入 3,023億3,300万円余
同 歳出 3,272億5,800万円余 となります。
≪条例、その他案件≫
条例については、太陽光発電施設等と地域環境との調和に関する条例の一部を改正する条例など25件、その他、公の施設の指定管理の指定など43件です。
≪結び≫
昨年は、日本一に輝いた阪神タイガースの快進撃が、私たちに感動と勇気を与えてくれました。その原動力の一人が、淡路市出身で、チーム不動のリードオフマンを務める近本光司選手です。
「常識をひっくり返したいと思ってやってきた。身体が小さくても遠くに飛ばせる。」
自分で限界を決めず、常に変化を求めてきた近本選手は、昨シーズン、持ち前のバットコントロールや足の速さに加え、随所で長打を放ちました。努力を積み重ね、長打力のあるトップバッターとして相手チームの脅威となった彼の存在が、チーム力を大きく押し上げたのです。
チーム兵庫を新たなステージへと押し上げるためには、県民一人ひとりがかけがえのないプレーヤーとして、個の力を磨き、その可能性を広げていかなければなりません。ともに伸びやかな挑戦を続け、希望と安心に満ちた「躍動する兵庫」をめざします。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
お問い合わせ