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安倉音頭は宝塚市南部に位置する安倉地区に伝わる摂津音頭の総称です。摂津音頭は宝塚市川面池田地区の伝承で、火事が多発していた江戸時代に「千吉稲荷大明神のお稲荷様に踊りを奉納せよ」とのお告げがあり、火事を収めるために奉納するようになったのが起源と言われています。
その後、旧川辺郡一円に広まり、伊丹市では摂津音頭、宝塚市では千吉踊りや安倉音頭と呼ばれ、盆踊りとして幅広い世代から親しまれています。
例年8月20日(土・日と重なる場合は翌月曜日)に開催される「宝塚サマーフェスタ」内で、クライマックスを飾る市民総踊りの盆踊りとして会場の雰囲気を盛り上げます。
大太鼓、小太鼓、歌い手、踊り手で構成されており、小太鼓は地元の子ども会の子ども6~7名、その他の大太鼓、歌い手、踊り手は婦人会などの地域の大人がボランティアで担当します。
踊りは稲が実って稲刈りをする時の様子を表現しており「チョイトカケタ」というはやし言葉が特徴です。
保存会の構成メンバーも高齢となり、時代をつなぐ若手の育成ということで、サマーフェスタの本番以外にも小学校や幼稚園で出前講座を行っています。幼稚園のオープンスクールで子どもたちが園庭に出て、家族と一緒に歌ったり踊ったりする様子を見た時は大変感動しました。子どもたちは小さいうちに覚えたことはなかなか忘れません。太鼓のリズムや踊りの振り付けはもちろん、経験としても頭の片隅に残っていくものです。オープンスクールの際、多くの親は我が子の写真を撮ることに夢中になっていましたが、「せっかくなので一緒に踊りましょう」とお誘いすると皆さん楽しそうに参加してくださいました。子どもと一緒に安倉音頭を踊ったという思い出は、家族にとっても心に深く残ったのではないかと思います。
その他にも介護施設の夏祭りなどに招待していただくことがありました。入居者の皆さんが懐かしそうに安倉音頭を見てくださる姿はとても感慨深かったです。
太鼓の練習はサマーフェスタの1週間前から毎日2時間程度行っています。最初はどうしてもリズムが合わなかったりしますが、毎年参加している子どももいるので、その子たちを手本に見よう見まねで覚えています。安倉音頭の歌との兼ね合いもあるので、太鼓のリズムの取り方が難しい部分もありますが、子どもたちは呑み込みが早いのでみるみる成長を遂げていきます。
今回の阪神北ふるさと文化の伝承事業で、小太鼓を2つ新調することができました。太鼓の数が増えれば、出前講座でも子どもたちが太鼓に触れられる機会も増えますし、より多くの子どもたちがサマーフェスタに出演できるようになります。サマーフェスタでは万単位のお客さんが集まる中、多くの人の前で太鼓を披露できるということは、本人たちにとっても誇らしいことだと思います。
まずは、太鼓に実際に触れてみて、なじんでいくことが重要です。いろんな方に太鼓に触れていただける場を作ることで、安倉音頭の裾野が広がっていくと考えています。
盆踊りは浴衣を着ている人でないと踊れないということはありません。たとえ歌詞がわからなかったり、踊りを知らなかったとしても、まずは同じ輪の中に飛び込んでみることこそが大切です。最初は見よう見まねでいいと思います。太鼓に関しても同じで、やってみたいという自主性が継続につながっていきます。
小さい頃にサマーフェスタで盆踊りをしたこと、太鼓の練習に励んでステージに上がったことなどは子どもたちの心に残り続け、大人になっても心の片隅に残り続けることでしょう。
幸いなことに今の時代、インターネットでいつでもどこでも安倉音頭の動画を見ることができます。実際の体験以外にもこうした動画などで興味を持ってもらって、少しでも安倉音頭を知ってもらえればと思っています。
今後も地域の人の心のよりどころとして守り続けていきたいと思いますので、興味のある方はぜひご参加いただければと思います。
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