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尼崎運河(幅10~40m、総延長約11km)は、大阪湾の湾奥部、尼崎港内に位置しています。尼崎南部の大半は、海抜ゼロメートル地帯であるため、閘門(尼ロック)・水門と防潮堤により外海から閉ざされ、全域が直立護岸に囲まれた閉鎖水域となっています。
そのため、外海との水の交換がほとんどなく、冬季以外は不透明でこげ茶色をしています。また、水深2m 以深の底では年間を通じて酸素が極端に少なく、生物の生息は困難です。
水面近く(表層)では、運河に流れ込む排水に栄養塩が多く含まれていることで、植物プランクトンや二枚貝等の付着生物が過剰に増殖します。そして、これらが死んで沈降することで堆積した有機汚泥は、バクテリアにより酸素が大量に消費され、底泥がヘドロ化します。また、表層がプランクトンにより濁っているため、低層にまで太陽光がほとんど届かず、植物による光合成が殆どおこなわれていません。酸素が極端に少ないために、生物がほとんど住んでおらず、生物の浄化機能が働きません。そのような環境の中で、ヘドロからの栄養塩の溶出により、さらに水質の悪化が進みます。
この汚濁プロセスを改善するためにつくられたのが、水質浄化施設(尼崎市道意町6丁目)です。
この施設は、貧酸素化の改善、懸濁物質の除去、栄養塩の回収という3つの機能を備えています。
水質浄化施設は、長さ35m、幅10mの鋼管杭式さん橋構造です。次のAからDまでの経路を運河の水が通ることにより、水質浄化をおこないます。
運河の水をポンプ(25リットル/分x2台)で、表層水と低層水を汲み上げます。
1,800リットルの水槽が2基(表層水・低層水)です。
汲み上げた表層水の濁りの原因となっている植物プランクトンを、二枚貝(コウロエンカワヒバリガイ)が食べることで水中から除去し、その一部を尿として排泄させることで有機物の中にあった栄養塩を無機態に変換します。死亡した貝は堆肥にして利用します。
低層水には空気を供給します。
幅30cm、長さ60mの水路が2本(表層水・低層水)です。
汲み上げた水を自然流下させます。その過程で、自然繁茂した藻類(スジアオノリなど)が、栄養塩(N.P)を体内に取り込みます。また、光合成による酸素供給をおこないます。
約80㎡(幅3m × 長さ27m )の人工干潟です。
干潟の生物を移入し、水質浄化の場、環境学習の場を目指しています。
この施設は、手漕ぎボートやパドルボードなど運河水面利用のための乗降場としての機能も持っています。
特に、水の流れが少なく、工場や岸壁で風が遮られるなど、パドルボード初心者にとっては最適な環境となっています。
平成22年度に、ここで活動する学生たちが、「ここで実現したいこと」を話し合いました。そのなかで、トップとなったのが「憩いの場となること」でした。そこで、水質浄化の成果を確認し、憩いの場としての未来を先取りする期待を込めて、一般の方も参加できる「Open Canal Day」を、開催しています。そこでは、水質浄化活動や水上さんぽなどをしています。フェイスブックページ「尼崎運河に行こう」(外部サイトへリンク)もご覧ください。
この施設は、運河まちづくりの拠点として、利用者が自主的に管理する形を目指しています。平成25年3月に水質浄化施設前に完成した施設「北堀キャナルベース」を拠点として、利用する学校・団体・企業・行政が参加して、尼崎運河まるまるクラブをつくり、協働で水質浄化を進めています。
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