更新日:2022年6月1日

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局長メッセージ(令和4年6月)

 ゴールデンウィーク明けはすっきりとしない天気だったものの、5月半ば以降、すがすがしい五月晴れの日が続くようになりました。そんな好天のある日、JR加古川線に乗ってきました。

 朝、加古川線の始発駅である谷川駅で下車すると、福知山線のプラットフォームには、丹波篠山方面に通学する、乗車待ちの高校生がたくさんいました。恐らくは、駅が一番賑わっている時間帯なのでしょう。

 その場を後にして、加古川線のプラットフォームにたどり着くと、1両(125系:座席定員40人)編成の西脇市行列車(列車番号:2322S)が静かに佇んでいました。列車に乗り込むと、リュックを持った初老の男性が先に乗車していました。列車はその男性と私の二人を乗せて出発しました。

               列車4

                   谷川駅に停車する西脇市行列車(7:42発)

 

 久下村駅を過ぎると、列車は新緑の木立の中をゆっくりと縫うように走っていきます。なかなかいい雰囲気です。旅っぽくなってきたと、心がときめきます。                                  

  二人だけの旅が終わったのは、本黒田駅でした。くだんの男性が下車し、代わりに高校生ら4人が乗り込んできました。以後、各駅で1~4名の乗車がありました。その大半が高校生や通勤・通学の若者です。その全員が終点の西脇市駅で下車しました。この列車に乗っていたのは、私を含めると14名でした。

  7分後、西脇市駅から再び同じ車両(2325S)で谷川駅に向かいました。西脇市駅から乗車したのは、私を含め8名です。今度は通勤ではなさそうな中年の人の姿が目立ちます。その後停車する度に1~2名ほど乗車し、黒田庄駅、本黒田駅で数名下車しました。終点の谷川駅で下車したのは、私を含めると9名でした。全乗客数は先ほどと同じ14名。今度は、私以外にも全区間乗り通した人が何名かいました。

 今回、加古川線に乗車したのは、同線の実態を改めて知っておきたかったからです。JR西日本は4月11日に同社の地方路線(2019(令和元)年度輸送密度2,000人/日未満)の収支を公表(「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」)し、対象の17路線30区間全てが赤字であることを明らかにしました。公表資料(「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」)によると、2018-2020(平成30-令和2)年度における加古川線西脇市駅~谷川駅間(17.3営業キロ)の収支率(運輸収入/営業費用)は5.7%で、100円稼ぐのに1,745円かかっており、2億6,000万円の赤字でした。残念ながら、県内及び近畿府県の路線区間のなかでは収支率ワーストでした。

 この公表資料には、平均通過人員(人/日)の過去との比較も示されています。西脇市駅~谷川駅間では、1987(昭和62)年度には1,131人であった平均通過人員が、2020(令和2)年度には215人と、実に81%も減少しています(図1参照)。

 手元にあった1988(昭和63)年3月の時刻表をみると、当時の西脇市駅(旧野村駅)~谷川駅間の列車本数は上下あわせて29本で、現在の上下18本(平日)を大きく上回っています。朝夕の本数が今よりも充実しています。当時は電化前でしたので、気動車で運行していましたが、所要時間は29~35分で現在(28~32分)とさほど遜色ありません。当時、通勤・通学の足としてそれなりに活用されていたのだと思われます。

 しかしその後、道路整備と自動車の普及とともに乗客は減少し、10年後の1997(平成9)年度には西脇市駅~谷川駅間の平均通過人員は595人と、1987(昭和62)年度からほぼ半減しました。そして、その10年後の2007(平成19)年度には338人と、さらに大きく減少しました。以後、コロナ禍前の2019(令和元)年度までは何とか300人台を維持していたのですが、コロナ禍がはじまった2020(令和2)年度には、前述したように215人と300人台を大きく割り込んでしまいました。

          グラフ3

              (出典:JR西日本資料「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」)

             図1 JR加古川線西脇市駅-谷川駅間の平均通過人員(人/日)

 

 このように長期にわたって乗客の減少が続いてきた西脇市駅~谷川駅間ですが、今も語り続けられているのが、阪神・淡路大震災時の加古川線の活躍です。震災後、JR神戸線甲子園口駅~須磨駅間の27.5キロが不通となると、加古川線は姫路駅~大阪駅間の迂回ルートになり、1995(平成7)年1月23日から迂回輸送が始まりました(図2参照)。

 迂回輸送にあたっては、当初、加古川駅~谷川駅間で上下15本の列車が増発されました。運行開始の週、列車は混雑し、乗車率150%の列車もあったそうです。その後2月には、加古川駅~谷川駅間の直通列車は上下45本にまで増え、西脇市駅~谷川駅間の列車も9往復増発されました。直通列車のうち何本かは快速列車として運行されたそうです。谷川駅には福知山線の全特急が停車し、震災前260人/日であった同駅での乗り換え人数が、運行開始の週には、8,600人/日にまで増加しました※1

 ※1 参考文献は末尾に記載

 この時の経験・教訓を踏まえ、『阪神・淡路震災復興計画』では、「幹線鉄道の迂回ルートの強化」(5(3)⑧)が方針として示され、JR福知山線(三田駅~篠山口駅)の複線化などとともに、加古川線の電化・高速化を進めることが謳われました(p.54)。そして、計画に基づき、2004(平成16)年12月、加古川線は全線が直流電化されました。加古川線の今後を考える際には、この広域鉄道旅客輸送における災害時の代替性確保の視点を忘れてはならないと思います。

            ルート2

                  出典:「阪神・淡路大震災誌」(1997)兵庫県土木部)

                      図2 JR線の迂回輸送

 

 県では、今回のJR西日本の公表を受けて、沿線地域にとって必要な鉄路の維持に向けた議論の場として、「JRローカル線維持・利用促進検討協議会(ラウンドテーブル)(仮称)」の設置を発表しました。県、沿線市町、JR西日本のほか、交通事業者、観光事業者、有識者等も参加するこの場で、課題の抽出 地元の意見集約等を行うとともに、利用促進策の検討にあたります。

 また、路線ごとにワーキングチーム(WT)を立ち上げ、その場で路線の実情に応じた検討が行われる予定です。丹波県民局も、加古川線WT(事務局:北播磨県民局)に参画し、沿線市町、JR西日本等とともに、利用促進策をめぐって具体的な議論を行っていきます。通勤・通学利用の促進策とともに、観光事業や駅周辺の活性化と一体となった利用促進策を検討するなど、幅広い視点に立って検討を進めてまいります。

  今回のJR西日本の資料公表に端を発する加古川線西脇市駅~谷川駅間の維持問題は、地域公共交通全体のあり方を地域全体で再考する機会となりそうです。県民局では、今後、加古川線だけでなく、路線バスなどについても、職員が実車し実態の把握に努める予定です。その結果については、今後の県民局長メッセージでまたお伝えしたいと思います。

 

(参考文献)

(財)関西交通経済研究センター(1995)「震災等発生時の旅客交通に関する調査研究報告書」

(財)運輸経済研究センター(1996)「災害に強い交通基盤整備のあり方に関する調査研究報告書」

阪神・淡路大震災兵庫県対策本部(1995)「阪神・淡路大震災―兵庫県の1ヵ月の記録」

兵庫県(1995)「阪神・淡路震災復興計画」

兵庫県土木部(1997)「阪神・淡路大震災誌」

森津秀夫(2005)「道路、港湾、鉄道、空港の整備に向けた取り組み」、『阪神・淡路大震災 復興10年総括検証・提言報告(7/9) 《第3編 分野別検証》 V まちづくり分野』兵庫県・復興10年委員会

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まん延防止等重点措置区域の指定は解除されていますが、引き続き、感染防止対策の徹底にご理解、ご協力をお願いいたします。

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