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兵庫県議会トップページ > 定例会・臨時会 > 令和7年度 > 令和7年12月第373回定例会 > 意見書 > 意見書 第81号
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更新日:2025年12月12日
JRローカル線の維持に向けた国の積極的関与と支援措置を求める意見書
JR会社が担う全国的な鉄道ネットワークは、ユニバーサルサービスとしての役割を担い、各社の経営状況にかかわらず、全国で公平かつ安定的に確保されるべき極めて重要な交通インフラである。
しかしながら、近年の人口減少や少子高齢化、地方の過疎化など、社会情勢の変化に伴い、特定のJR会社では経営の効率化を迫られる中、利用の少ないローカル線の維持と持続可能性の両立が大きな課題となっている。このため、国では、令和5年に地域公共交通の活性化及び再生に関する法律を改正し、鉄道再構築のための議論を行う仕組みができたところである。
ただし、鉄道のあり方は、利用の少ない特定の区間の採算性だけで議論できるものではなく、地方創生や鉄道ネットワークの議論が不可欠である。
兵庫県内のローカル線は、地域の足として、特に将来を担う学生の通学に重要な役割を果たしているとともに、地方の活性化や観光振興においても欠かすことのできない存在であり、鉄道の廃止や減便により、地方の魅力が大きく低下することが懸念される。また、再構築により鉄道事業者から沿線自治体への負担転嫁の流れが加速し、ますます地域間格差が広がることも危惧される。
さらに、災害に強い社会の構築が求められる中、鉄道は大規模災害時における迂回ルートとしてのリダンダンシー機能を有しており、地域のレジリエンスを支える災害対応インフラとして、その役割は重要である。このような認識のもと、ネットワークを構成するような路線については、一部の区間のみ、一部の自治体のみで議論を行うことはできない。
また、県北部の山陰本線(竹野駅~香住駅~浜坂駅)区間などでは、依然としてICOCA等のIC乗車券に対応していない駅が存在し、地域住民や観光客から早期対応を求める声が上がっている。地域間の利便性格差を解消し、利用促進を図る観点からも、国の支援と関与が不可欠である。
地方創生を実現させ、災害に強い鉄道ネットワークを将来にわたって維持することは、国の責務であり、鉄道のあり方は、自治体や鉄道事業者任せにするのではなく、国が責任を持って取り組む必要がある。
ついては、JRローカル線の維持に向け、国による積極的な関与と必要な支援措置について、次の事項に関し特段の対応を講じられるよう強く要望する。
記
1 広く国民にユニバーサルサービスとして提供する社会基盤となる鉄道ネットワークのあるべき姿を明らかにすること。その上で、利用が少なくても国土の均衡ある発展に必要な路線については、JR各社の経営状況にかかわらず、国の責務で維持すること。
2 JRローカル線については、安易な減便を行わないよう指導するとともに、鉄道事業者によるICOCA等のIC乗車券対応の促進を含むキャッシュレス化の導入や駅設備の改良など、利便性向上の取組を支援すること。また、これらの取組を通じて利用者の増加や地方創生が進むよう、国による財政的・技術的支援制度を創設すること。
3 経営の効率化や災害等を契機に、鉄道事業者側の一方的事情で、安易に存廃や再構築議論を行わないよう、自治体の意向を十分に尊重した上で制度運用することを、国の責任においてJR各社に対し厳格に指導すること。
4 令和5年の法改正以降、JRローカル線の再構築の取組が全国的に進められ、地方から様々な意見がある状況を踏まえ、国により再構築の議論の深化を図るために開催されている「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会(第2期)」では、地方の意見を十分に聴き、現状に合った必要な見直しを行うとともに、一部の自治体のみが負担を強いられることがないよう、公平な制度構築を行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年12月12日
兵庫県議会議長 山口 晋平
衆議院議長 額賀 福志郎 様
参議院議長 関口 昌一 様
内閣総理大臣 高市 早苗 様
内閣官房長官 木原 稔 様
総務大臣 林 芳正 様
財務大臣 片山 さつき 様
経済産業大臣 赤澤 亮正 様
国土交通大臣 金子 恭之 様
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