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昨年、春闘での大企業の賃上げ率が1991年以来33年ぶりに5%を超えたことが新聞紙面をにぎわせました。1991年は私が兵庫県庁に入庁した年なので、個人的にも強い印象が残りました。
この年は年表上バブル崩壊期になりますが、当時は、社会全体にまだまだ好景気の余韻が残り、浮き立った気分に満ちていたように記憶しています。
有効求人倍率も高く、内定者が他社の入社試験を受けられないように海外旅行に連れ出すといった囲い込みもありました。実際に体験した友人も少なくありません。今の若者にはおとぎ話のように響くでしょう。
シュプール号の時代からデフレ・スパイラルへ
当時(実は今も)お気に入りの映画の一つが「私をスキーに連れてって」です。40歳代から50歳代にかけて共感していただける方もいらっしゃると思います。 劇中で志賀高原から万座温泉への雪道を颯爽と走破するセリカGT-FOURには憧れました。残念ながら、購入するお金は全くありませんでしたが、JRシュプール号が全国を走り回り、新宿駅や大阪駅の大駐車場には壮観なまでに多数のスキーバスが並びました。
まさに猫も杓子も雪山へ向かった第3次スキーブームの中、ご多分に漏れず、私も、学生から社会人生活の初期にかけてせっせとスキー場へ通ったものです。
1991年はそういうギラギラとした時代の中にありました。その数年後から、日本経済は就職氷河期、そして30年以上続くことになるデフレ・スパイラルへと入っていくことになります。
今の30歳台以下の世代は、明日は必ず良くなると皆が信じられた時代を経験していません。
物価は上がらないもの。賃金は上がらないどころか実質で下がりかねないもの。世界経済が上昇しても日本はゼロ成長が当然であること。この30有余年で、そういった考えが広く深く日本全体に広がってしまいました。
若年層に限ったことではありません。高度成長期やバブル期を経験した世代ですら、デフレを所与の条件のように受け入れるにいたったように思います。
33年ぶりの好機
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