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第322回兵庫県議会の開会にあたり、議員の皆様のご健勝をお喜びし、日頃のご精励に敬意と感謝を申しあげます。
予算等提出議案の説明に先立ち、県政に取り組む基本的な考え方を述べさせてください。
あと1年。来年1月17日には、あの阪神・淡路大震災から20年を迎えます。
成長から成熟へ転換する節目に起きた震災は、未曾有の被害とともに、社会が抱えるさまざまな課題を私たちに突きつけました。私たちの復旧復興の歩みは、まさに新しい時代を切り拓く挑戦の連続であったと言えます。
復旧復興にあたっては、180万人ものボランティアの力が集結しました。内外からの多くの支援も得て、インフラ、住宅、産業の緊急復興3か年計画、二段階の都市計画、仮設店舗・工場の設置、見守りつきの復興住宅の供給など、創造的復興をめざした復興計画に基づく取組により、世界が注目するスピードでの復旧復興が進みました。
10年目の節目には総括検証を行い、内外に発信しました。私たちの教訓を踏まえ、国連防災世界会議において「兵庫行動枠組」がまとめられ、国際防災復興協力機構(IRP)の設立など、国際的な協力体制が構築されました。
今、被災地でも震災を経験していない人が4割を超えています。
これまでの私たちの経験や教訓を決して忘れてはなりません。何が起きたのか、何ができたのか、何が足りなかったのか、何を学んだのか、地域や世代を超えて伝えなくてはなりません。そこから得られた教訓を踏まえ、来るべき災害に備えなければなりません。そして、内外の防災・減災対策の推進に活かしていかねばなりません。同じ悲しみを繰り返さないために、被災地兵庫に課せられた責務です。
南海トラフ巨大地震など将来の災害に対し、被害を最小限に抑えられるよう、ハードはもとより、ソフトの視点からも地域の防災力を高めます。本年4月から1年間、震災20周年事業を実施します。私たちの経験や教訓を「伝える」「備える」「活かす」をテーマに、県民総参加による取組を展開します。
また、来年3月には、第3回国連防災世界会議が仙台で開催されます。阪神・淡路と東日本、二つの震災の経験と教訓を踏まえて、兵庫行動枠組の後継枠組について、復興への提言を発信していきます。
私たちは、阪神・淡路大震災から出発しなければなりません。その原点は安全安心です。安全安心な県土にこそ、豊かで元気な生活や社会活動が展開できるはずです。
私たちがめざした創造的復興を成し遂げる間に、内外の情勢は大きく変化してきました。
グローバル化の進展です。冷戦終了後の世界は、アメリカ主導のグローバル化が急速に進みました。
しかしながら、このアメリカの世界化が、新たな展開をもたらしたのです。拡大した世界市場をもとに、急速に経済成長を遂げた新興国は、経済的にも、政治的にも発言力を強め、今や世界は多極化の時代を迎えています。
一方で、市場原理に重きを置く経済システムは、深刻な格差を生み出しています。国家間はもちろん、わが国でも雇用や所得の格差が広がり、社会の安定に影を落としています。
自己の利益のみを求める競争、勝者総取りの経済では、格差や分断を生み、全体としての繁栄には限界があります。世界の国々や地域が、互いに協調し、ともに発展していく新たな秩序の再構築が求められています。
世界の人口は、今世紀末には100億人まで増加する一方、わが国は異なる事態に直面しています。人口構造の急激な変化です。戦後65年間で7千万人から1.8倍の1億2千8百万人まで急増した日本人口は、今後同じスピードで減少し、今世紀末には元の7千万人になると予測されています。これは世界のどこの国も経験したことのない変化です。
兵庫でも現在、毎年1万人のペースで人口減少が進み、さらに加速します。戦後の高度成長を経て到達した560万人から、今後30年間で約90万人減少します。まず、この動きを緩めなければなりません。
アンケートでも理想の子ども数は2.4人とされているだけに、仕事や経済的な事情により結婚、出産をためらうことがないよう、安心して結婚し、子どもを産み、育てられる環境づくりを急がねばなりません。
これまでの高齢者対策を主としていた社会保障について、子ども、子育て対策も強化する必要があります。
また、超高齢社会に備えなければなりません。戦後の時代潮流をリードしてきた団塊世代約800万人が高齢者の仲間入りをしました。今後、この人口の塊が75歳以上となる2025年問題が待ちかまえています。兵庫においても今後10年で、後期高齢者が30万人近く増加します。在宅サービスを中心に、必要なケアが受けられるよう、今から計画的に整備を進めていく必要があります。
一方で、豊かな経験をもち、元気で意欲あふれる高齢者の増加は、地域社会の活力源になります。高齢者を年齢で一律に「支えられる側」とみなす考え方の転換が必要です。
事実、60歳を過ぎても働き続けたいとの意欲をもつ高齢者が多いのです。高齢者だけではありません。女性の力も社会の活力維持には不可欠です。世紀の大発見を成し遂げた小保方(おぼかた)さんをはじめ、女性が能力を存分に発揮し、活躍できる環境をつくらねばなりません。そのためにも、家族はもとより地域ぐるみの取組が必要です。
人口の地域偏在も深刻化しています。兵庫でも、世帯数50戸以下、高齢化率40%以上の小規模集落が、毎年約20か所も増え、今や330集落に達しています。コミュニティ機能の維持が困難になるとともに、森林の荒廃や耕作放棄地の増大は、災害の増大も懸念されます。
多自然地域は、地域ごとに多様で豊かな自然、文化、生活を有しています。この多様性こそが、新たな力を生む源泉です。それだけに、地域がもつ資源を活かしながら内外との交流を広げ、兵庫の発展を支えてきた地域を再生していかなければなりません。
地域経済の活性化が必要です。ようやく長期にわたる景気低迷を脱し、新たな成長に向けて動き出しています。この波が全国各地に広がって欲しいのです。
スパコン「京」やSACLA、SPring-8など、兵庫に集積する最先端科学基盤は、世界を先導する新産業・成長産業の礎(もとい)となるでしょう。
また、地方にも世界市場を席巻する企業があります。新たなニーズを汲み上げるマーケット力と技術力を統合することで、この可能性はさらに高まります。
生活産業も次代のキーワードです。食やファッションをはじめ、健康、医療、環境、エネルギー、観光などの産業群が、暮らしを豊かにしてくれます。兵庫食材をはじめ、兵庫から世界市場での活発を期さねばなりません。
課題やニーズが多様化しても、新たな時代や地域を創っていくのは地域を愛する人々の力です。
しかし、経済的な豊かさや利便性を追い求めてきた結果、人々の生活や街の風景は画一化してきました。それに伴って、地域とのつながりも、そこから生まれる「ふるさと意識」も希薄化し、心の拠り所を失い、社会に漠然とした不安感が広がっているのではないでしょうか。
今こそ、自分たちの地域への関心と思いを寄せる「ふるさと意識」を育んでいかなければなりません。また、激しく変化し、グローバル化が進む時代だからこそ、自らが立つ基盤としての「ふるさと」が必要になるのではないでしょうか。
「効率性」「経済性」のみを重視した成長モデルからの転換が問われています。世界も、日本も、それぞれの地域がもつ多様性を活かし、互いに認め合い、連携する時代に向かうべきです。
私たちの日本は、古来、海外から技術や文化を取り入れながら、風土に応じて多様な歴史、文化、産業を育んできました。その世界に開かれた窓であったのが、兵庫、神戸だったはずです。
また、人口減少や少子化、高齢化等は、わが国だけの問題ではなく、先進国はもとより、成長著しいアジア諸国も将来同じ問題に直面します。
それだけに、地域の多様性を活かしながら、量の拡大ではなく質の充実をめざす成熟社会のモデルを、日本から世界へ示していかなければなりません。
日本の縮図といわれる兵庫は、五つの地域ごとに個性豊かな自然、文化、産業を有しています。また、進取の気性あふれる多彩な人材も輩出してきました。震災からの創造的復興では、成熟社会が直面する課題に、県民の力を結集して挑戦してきました。
そうした兵庫こそ、新たな社会づくりの先頭に立って進んでいかねばなりません。県民とともに描いた21世紀兵庫長期ビジョンを目標として、「安全元気ふるさと兵庫」の実現をめざし、着実に一歩一歩取り組んでいこうではありませんか。
以上の認識のもと、新年度は、
第一に、安全の兵庫。震災20周年を節目として、震災の教訓を伝え、活かし、備える県民総ぐるみの取組を展開する。地震、津波、風水害への総合的な備えの充実など、安全基盤を確かなものとする。
第二は、安心の兵庫。健康、医療、福祉、子育て環境の充実など、子どもから高齢者まで健康で安心して暮らせる地域をつくる。
第三は、人が活きる兵庫。高齢者、女性、若者、障害者が、持てる能力を存分に発揮し、いきいきと活動する社会づくり、次代を担う自立した人づくりを進める。
第四は、産業活力あふれる兵庫。最先端の科学技術基盤、幅広いものづくり産業、豊かな自然環境などを活かし、兵庫から新たなコンセプトを発信するしなやかな産業構造を構築する。
第五は、地域が元気な兵庫。人と人、人と地域、地域と地域のつながりを育み、これまでに培われた資源を活かし、地域の元気を創出する。第3次行革プランを着実に推進し、新たなふるさと兵庫をつくる基盤を確保する。
以上、五つの柱のもと、「安全元気ふるさと兵庫」づくりの取り組みを進めます。
これより新年度の重点施策を説明します。
重点施策の第一は、安全の兵庫づくりです。
その一は、震災の経験・教訓の継承と発信です。
震災から20年を迎える節目に、県民総参加のもと、地域団体やNPOなどが企画する県民主体の事業を、4月から1年間切れ目なく展開していきます。
来年1月17日には、「ひょうご安全の日のつどい」と「追悼式典」を行い、安全・安心な社会をつくる決意を発信します。国際復興フォーラム、防災教育に関する国際シンポジウムも開催します。
東日本大震災の被災地では、住宅の高台移転をはじめ新たなまちづくりが本格化しています。今こそ、私たちの知見を活かした支援が求められています。任期付職員の追加派遣はもとより、まちづくりやコミュニティ再生などの専門家を派遣し、被災地の自立復興を支援します。
その二は、防災・減災対策です。
地震の揺れに備え、緊急輸送道路の沿道建築物、大規模な病院や宿泊施設など、倒壊による影響が大きい建築物について、耐震診断と改修を支援します。先の補正予算とあわせて、学校、警察など公共施設の耐震化を促進するとともに、市町と共同で老朽空き家の除却も進めます。
最大級の津波に対しては、県独自の浸水想定を踏まえ、計画的に防潮堤の改良や水門の強化を進めるとともに、沈下対策にも取り組みます。
台風やゲリラ豪雨へも備えなければなりません。第2次山地防災・土砂災害対策5箇年計画による治山ダム・砂防えん堤の整備、県民緑税を活用した災害に強い森づくり、主要河川の流域ごとの総合治水推進計画に基づく河川改修、雨水貯留浸透施設の整備を加速します。
災害時の重症傷病者の広域搬送拠点として、神戸空港等4か所に臨時医療施設(SCU)を整備します。高齢者など要援護者の避難支援計画の策定をはじめ、防災訓練・防災教育を促進します。関西広域連合で策定した応援受援実施要綱に基づく、広域での避難や物資供給の訓練も行います。
消防団と自主防災組織の連携を強化し、地域防災力を高めます。
重点施策の第二は、安心の兵庫づくりです。
その一は、健康づくりです。
足腰が衰えるロコモティブ症候群の予防には日々の適度な運動が効果的です。市町介護予防教室など地域ぐるみの活動と連携して、手軽に取り組める「健康体操」の普及を支援します。
健康診断による疾病の早期発見や生活習慣の改善を進めるため、企業と連携し、家族を含めた従業員の健診や健康教室の開催などを進めます。特に受診率が低い女性のがん検診の強化をします。
こころの健康も重要です。自殺リスクが高いうつ病のチェックを企業の従業員に普及し、早期発見と治療につなげます。また、24時間電話相談体制の充実も図ります。
地域や診療科目ごとの医師の偏在は依然として大きな課題です。へき地医師の養成、大学医学部と連携した特別講座により医師を確保します。新たに「兵庫県地域医療支援センター」を設け、県養成医師等を計画的に派遣するとともに、体系的な研修プログラムを提供します。また、離職した看護師の再就業のための研修やマッチングに取り組みます。
県立病院では、尼崎総合医療センター(仮称)やこども病院の移転整備を進めます。また、こども病院及び粒子線医療センターの附属施設として、小児がんに重点を置いた新たな粒子線治療施設の整備を進めます。
社会保障と税の一体改革の一環として、国民健康保険や後期高齢者医療制度の低所得者の基準額を引き上げ、保険料の軽減措置を拡大します。
その二は、高齢者等が安心して暮らせる体制整備です。高齢者の急増に対応するには、介護の拠点を在宅に移していく必要があります。
在宅生活を支援するため、訪問介護と訪問看護を組み合わせた24時間対応の巡回サービスの普及強化とともに、生活援助員を配置して見守り活動を行う「地域サポート型特養」や、住民が配食やミニデイサービス等を実施する「安心地区」を整備します。
また、特別養護老人ホームを計画的に整備するとともに、有料老人ホーム等でも特養に準じたサービスが受けられる特定施設入居者生活介護の指定を拡大します。
認知症の早期発見と治療のため、もの忘れコールセンターでの相談を活用します。症状に応じて身近なかかりつけ医から専門医療機関や認知症疾患医療センターにつなぐ地域体制を整備します。
障害者の地域の生活の場となるグループホームの開設を支援します。聴覚障害者とのコミュニケーションを支援するため、手話通訳の講師養成をはじめ、基礎を学ぶ手話講座、学校での手話学習等にも取り組みます。
その三は、こどもを安心して産み育てられる環境づくりです。
待機児童の早期解消が必要です。認定こども園はもとより、駅前分園を含む保育所の整備、小規模保育や幼稚園の預かり保育により、保育の量的拡充を進めます。
小学校に入学した子どもの放課後の対応、いわゆる「小一の壁」も課題です。保育所・幼稚園等も活用して放課後児童クラブを充実します。
少子化の一因となっている未婚化、晩婚化に歯止めをかけるため、独身男女の出会いや結婚を応援します。新たな交流イベントを進め、毎年200組以上の成婚をめざします。
その四は、地域生活の安心確保です。
街頭犯罪や振り込め詐欺などの犯罪の未然防止には、地域の人々の協力が欠かせません。「ひょうご地域安全SOSキャッチ電話相談」、防犯カメラの設置やまちづくり防犯グループの活動支援などにより、安全安心なまちづくりを進めます。
人と自転車による事故が増えています。歩行者と自転車を分離する道路改良や自転車保険の加入に向けた検討も行います。
小野警察署を新設するほか、姫路警察署に高齢者等の自動車運転免許更新センターを神戸に続き開設します。
その五は、豊かな環境の保全と創造です。
私たちの暮らしを支える豊かな環境を守り、次世代へ引き継がなければなりません。10年後の将来像を示す「第4次環境基本計画」を策定し、温室効果ガスの排出量6%削減、里山整備30%増、一般廃棄物処分量10%削減などをめざします。
特に、温暖化対策では、事業所の排出抑制計画の策定義務の強化など対策を進めます。
野生動物による農林業被害が8億円にものぼります。シカの個体数を適正に保つため、年間捕獲3万5千頭を目標に、ハンターの育成、捕獲体制の強化など市町や関係者と一体となって進めます。バッファーゾーンと防護柵の整備など物理対策も行います。イノシシ、サルの捕獲や、アライグマ、ヌートリアの駆除も進めます。
瀬戸内海を豊かで美しい「里海」に再生するため、藻場や干潟の保全、水域ごとの水質目標の設定、海ゴミの処理ルール確立などに取り組み、新たな法整備を国に求めていきます。
ひょうご100万kw創出プランに基づき、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組みます。自治会やNPOによる導入を支援するほか、県自らも、未利用地をはじめ、学校や県施設の屋上を活用した太陽光発電設備の整備を進めます。但馬沖でのメタンハイドレートの調査も継続します。
重点施策の第三は、人が活きる兵庫づくりです。
その一は、生きがいを持てる社会づくりです。若者の就業はもとより、女性、高齢者、障害者の社会参加を拡大していかなければなりません。
大学生が、自分に適した職を見つけられるよう、インターンシップや中小企業とのマッチングの機会を設けます。学卒者の就業意欲と知識・技能を高めるため、民間企業等で研修等を行います。ニートの若者には、自宅訪問、情報提供やカウンセリングなどにより支援します。
不足感の強い建設業の人材を確保するため、若年者の期間雇用を支援するとともに、ものづくり大学校や民間施設で在職者向けの訓練を実施します。
子育てによる離職を防ぐため、短時間勤務や託児サービスの導入など仕事と生活の両立支援に取り組む企業を拡大します。育児介護休業が取りやすい環境をつくるため、代替要員確保を支援します。
また、女性の再就業を応援するため、就職や起業に関する個別相談から、必要な知識とスキルを学ぶセミナー、教育訓練、ハローワークとも連携した職業紹介まで、総合的に支援します。起業をめざす女性には、初期経費の助成など事業の立ち上げを支援します。
高齢者が、豊かな知識・経験を活かして働き続けられるよう、中小企業と退職技術者のマッチング、コミュニティビジネスの立ち上げ、福祉分野等の資格取得などを支援します。また、新たな就農や、高齢者大学での学習など、高齢者が地域の中で活躍できる場を広げます。
障害のある人の自立に向けて、雇用の受け皿である特例子会社や事業協同組合の設立、事業拡大を支援します。授産商品の開発やインターネットによる販路拡大なども支援します。
その二は、次代を担う青少年の育成です。
ふるさとを愛する心や豊かな人間性を培うため、幼児期の「ひょうごエコっこ育成事業」、小学校での「環境体験事業」、「自然学校」、中学校での「トライやる・ウィーク」、県立高校での「ふるさと貢献活動」など発達段階に応じた体験教育を実施するほか、副読本を活用し郷土の先人についての学びを深め、自立できる人材を育てます。
学力のさらなる向上をめざし、「ことばの力」を育む授業を推進するとともに、理科や数学への好奇心を高める「サイエンス・トライやる」を実施します。また、放課後の補充学習「ひょうごがんばりタイム」、土曜日に体験活動や学習活動を行う「土曜チャレンジ学習」を実施します。
県立高校の新しい通学区域導入に向け、学校ごとに理数教育、国際教育等の重点テーマを設け、特色化を図るインスパイア・ハイスクール事業を全校で展開します。
土曜日を活用し、外部人材を活用したキャリア意識向上授業をモデル的に実施します。
世界で活躍する人材には、豊かな語学力はもとより、チャレンジ精神やリーダーシップ、自国の文化をはじめ幅広い教養が必要です。英語による討論等を実践するスーパー・グローバル・ハイスクールの指定や外国人指導助手の活用により、英語教育を充実するほか、海外留学にチャレンジする高校生を応援します。日本の歴史と文化に関する教育も進めます。
工業分野では、拠点となる神戸と姫路の工業高校に3Dプリンター等の先端技術機器を設置し、企業の技術者による実践指導を行います。
特別支援学校の児童生徒増に対応するため、本年4月に、姫路しらさぎ特別支援学校を開校、こやの里特別支援学校分教室を開設します。さらに来年以降、神戸市西部に特別支援学校を新設、但馬に分校、阪神に分教室を開設します。
私立学校について、授業料の軽減措置を充実するほか、低所得世帯や退学者の学び直しに対する給付金制度を創設するなど、その就学を支援します。
県立大学が創立10周年、その前身である旧神戸商科大学の開学から85周年を迎えます。この節目を機に、世界に開かれ、地域とともに発展する大学としてさらなる飛躍をめざします。ふるさと納税を活用した寄附金も募り、記念事業を実施します。この4月、地球科学等の領域を究める人材を育成するため、県立コウノトリの郷公園内に地域資源マネジメント研究科を、シミュレーション学研究科には博士課程を開設します。また、産学連携にも応え、最先端の研究拠点をめざし、姫路工学キャンパスの建替整備に着手します。
その三は、スポーツの振興です。遠くソチから兵庫ゆかりの選手の活躍が届けられています。6年後の2020年には東京オリンピックとパラリンピック、その翌年2021年には生涯スポーツの国際的祭典である「関西ワールドマスターズゲームズ2021」が開催されます。
今から、オリンピックなど第一線で活躍できるアスリートを育成していかなければなりません。有望なジュニア選手を発掘し、海外トップチームとの合同練習、科学的トレーニングサポート等により選手の重点強化に取り組みます。また、優秀な指導者を養成します。
2021年のワールドマスターズゲームズに向け、生涯スポーツのすそ野を広げるため、関西全域を舞台に「関西マスターズスポーツフェスティバル」を開催します。
参加希望者が年々増えている神戸マラソンは11月23日に開催します。
その四は、芸術文化の振興です。「芸術文化立県“ひょうご”」をめざします。
今年の佐渡裕芸術監督プロデュースオペラはモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」です。芸術文化センターでの本公演に加え、県内4か所でコンサートを実施します。県立美術館では、「夢見るフランス絵画-印象派からエコール・ド・パリへ-」など魅力ある展覧会を開催します。
兵庫陶芸美術館では、全国の8つの陶芸美術館から作品を集めた初の共同企画展を、歴史博物館では、「軍師官兵衛」にちなんだ特別展を開催します。考古博物館では、特別展「官兵衛を巡る五国の城」など、人と自然の博物館では、篠山層群で恐竜化石の分析調査を行います。
「日本劇作家大会2014豊岡大会」の支援、県内の特色ある芸術祭が連携する「アートde元気ネットワークin兵庫・神戸推進事業」を実施するほか、新進・若手芸術家の育成に向け、発表や交流の場を拡充します。
重点施策の第四は、産業活力あふれる兵庫づくりです。
その一は、世界最先端技術の活用です。
発生・再生科学総合研究センターの研究グループによる「STAP細胞」の発見が世界中を驚かせました。神戸医療産業都市には、理化学研究所のスパコン「京」や、先端医療センターなど研究機関が集積しています。さらに、エクサ級のスパコンの開発も期待されます。万能細胞の早期実用化をはじめ、これらの先端研究機関群の潜在力を発揮するためにも、国家戦略特区の指定が必要です。
また、播磨科学公園都市のSPring-8、X線自由電子レーザー「SACLA」の産業利用を促進します。特にベンチャー企業等の研究開発には高度な技術支援を行い、医療・製薬企業の育成につなげます。産学官連携による研究開発を促進する「兵庫県COEプログラム」も拡充します。
その二は、オンリーワン企業の創出です。
競争力を高めるためには、マーケットインの発想、つまり市場ニーズと技術力のマッチングが必要です。例えば、介護福祉サービスとロボット産業、酒造会社と旅行業界など、様々な異業種交流を通じ新たな分野を開拓します。
活躍の場を世界に向ける企業も増えています。「ひょうご海外ビジネスセンター」と海外7か所のサポートデスクの連携によるワンストップ相談に加え、海外特許取得や市場調査、現地事情に通じた外国人留学生の雇用などを支援し、海外でのビジネスチャンスを拡大します。
その三は、生活産業の振興です。
これからの産業は、外需依存だけでなく成熟社会の消費ニーズに対応した内需拡大が求められます。おいしい食事やスイーツ、魅力あふれるファッション、健康をつくるスポーツなど、生活を豊かにする分野は、福祉、医療、環境、エネルギー、観光など無限に広がります。この分野の企業を支援するなど生活充実関連産業を育成していきます。
播州織やシューズ、鞄など地場産業のブランド力を高めるため、有名デザイナーとタイアップした商品開発、輸出につながる海外へのインターンシップや地場産品のサンプル作成を支援します。
運転資金の比重を減らし、設備投資などを中心とした4,000億円の中小企業制度融資枠を確保するとともに、新事業展開に対し融資対象を拡充します。
その四は、世界と競える農林水産業の育成です。貿易自由化の影響も見極めつつ、内外の産地間競争に打ち勝てる強い農林水産業を育成します。
農林漁業者と流通業者、研究機関による共同研究や商品開発を支援する「『農』イノベーションひょうご」に取り組むとともに、地域の特産品の中から新たなブランドを発掘・育成します。認証食品の普及を図るため、食品スーパーと連携し常設コーナーを設置します。
都市近郊農業の特性を生かし、外食産業向け大玉キャベツの大規模生産、ハウス団地に最新包装施設を加えた高鮮度葉物野菜のモデル生産事業を実施します。農産物の生産性向上につなげるためにも、認定農業者や集落営農組織への農地集約を進めます。
また、増体性に優れた但馬牛雄子牛の育成や乳用牛への受精卵移植により、海外からも引き合いが強い神戸ビーフの供給力を増強します。
全国の農業の担い手が相互研鑽と交流を図る「第17回全国農業担い手サミット」を本年11月に県内で開催します。
伐採、利用、植林、保育の林業生産サイクルが円滑に循環する林業を確立します。高性能林業機械の導入、低コスト原木供給団地の増設、林内路網の新たな1,000km整備に取り組みます。
バイオマス発電の需要増が森林の利活用の機会を高めています。チップ製造施設の整備とともに、材料となる未利用間伐材の収集・輸送体制を整備します。
水産物のブランド化に向け、新たに県産極上アサリの養殖技術を開発し量産体制を整えます。水産資源を確保するため、日本海でのズワイガニ等増殖場の整備、瀬戸内海での第2の鹿ノ瀬構想を推進します。
重点施策の第五は、地域が元気な兵庫づくりです。人口の偏在に伴い、地域間の格差が拡大しています。多様な資源をもつ地域が元気でこそ、兵庫の元気も生まれます。
その一は、地域再生大作戦の充実です。全ての小規模集落で、自ら今後の方向を検討し、集落が支え合う仕組みや都市との交流など活性化に取り組めるよう応援します。
小規模集落にアドバイザーを派遣し、将来構想づくりを促します。再生構想が整った集落には、その自立に向けた活動をソフト、ハード両面で支援します。例えば、古民家を改良した地域交流施設の整備や空き家を活用するための改修工事、再生可能エネルギーや非常用電源を取り入れたエネルギー自立のむらづくりなどです。多自然地域の魅力を都市部に発信するために、神戸市内のアンテナショップの充実も図ります。
その二は、魅力と活力あるまちづくりです。
三宮を県の玄関口にふさわしい活力とにぎわいのある街として再生するため、税の軽減を含めた支援メニューを用意し、オフィスの集積を進めます。このため、神戸市、鉄道事業者等とともに、基本構想を策定のうえ再開発を推進します。
産業集積条例の支援措置を活用し、大規模工場跡地の有効活用や企業立地も促進します。
まちの賑わいや地域コミュニティの形成に必要な商店街の元気を取り戻さねばなりません。共同施設の整備やイベント開催に加え、ご用聞きや共同宅配、移動販売を支援し、新たな客層を掘り起こします。また、空き店舗へ集客力のある個店を誘致する取組を3年にわたり支援し、活性化を図ります。
新長田をはじめ再開発ビルの空き床対策として、事業所開設に対する支援策を拡充し、店舗内装のリニューアルや賃借料への助成、新規出店を促します。
明舞団地がオールドニュータウンの再生モデルとなるよう、学生向け住宅の設定やまちびらき50周年記念イベントなど活性化に向けた取組を支援します。また、郊外の戸建住宅団地を想定した再生モデルプランづくりに着手します。
その三は、個性あふれる地域づくりです。
幅広いふるさとづくりの取組を支援します。地域の夢推進費の成果を継承しつつ、新たに県民、市町との連携を強化した「ふるさとづくり推進費」を創設し、地域再生に必要な施設を整備する市町との共同事業や県民の提案型事業などを新たに対象とします。また、大型の周年行事や災害復旧関連事業など、特定地域の集中的なニーズにも対応できる仕組みを取り入れます。
今年、但馬で「~出会い・感動~夢但馬2014」が展開されます。ジオパークの再審査にあわせて、山陰海岸ジオパーク国際学術会議やコウノトリ未来・国際かいぎの開催、食・スポーツ・アートなど6ジャンルの多彩なイベントを通して、交流拡大に取り組みます。
淡路花博15周年にあたる平成27年3月には、「あわじ環境未来島構想」や多彩な「食」をアピールする「淡路花博2015花みどりフェア」を、淡路島全島を舞台に展開します。
その四は、内外との交流促進です。
NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の放送を機に「あいたい兵庫キャンペーン2014」や、ゆかりの地散策ツアーをはじめ、映画やテレビドラマの舞台を活用したプロモーションを展開します。瀬戸内海の美しい島々を巡るクルーズなど、広域的な連携による新たなツアーを創出します。
ロシア・ハバロフスク地方友好提携45周年にあたり、友好訪問団の派遣など記念事業を実施し、経済、文化、教育等の交流を深めます。フランスの交流県との交流を深めるため、セーヌ・エ・マルヌ県、ノール県などの友好交流団を受け入れ、セミナーや意見交換会を実施します。
その五は、交流を支える基盤の充実です。
基幹道路のミッシングリンクの早期解消をめざします。豊岡-八鹿間20km余りを残す北近畿豊岡自動車道、鳥取から豊岡、宮津まで120kmを結ぶ山陰近畿自動車道の整備を着実に進めます。名神湾岸連絡線、大阪湾岸道路西伸部、播磨臨海地域道路については早期事業化を図ります。
3月に一部供用する東播磨道の北伸部、揖龍南北道路など地域の幹線道路の整備も進めます。
生活道路については、新渋滞交差点解消プログラムによる右折車線の設置やバイパス整備、踏切すっきり安心プランによる立体交差や歩道拡幅の推進など、今後5年間で問題箇所の半減をめざします。
身近な公共交通機関であるコミュニティバスや路線バスの運行支援とともに、神戸電鉄、北神急行電鉄等が取り組む老朽施設の補修等の安全運行対策を支援します。
関西、伊丹、神戸の3空港の一体的運用を進めるとともに、都市に近接する空港の優位性を活かすため、神戸空港の発着枠拡大や運用時間延長、神戸、伊丹両空港の国際チャーター便運行制限の緩和を国に強く働きかけていきます。
物流基盤である神戸港等への集荷を促進し、国際競争力を強化するため、新規の内航コンテナへの助成やクレーン使用料の減免を行います。
その六は、自立した兵庫づくりです。
21世紀長期ビジョンについては、現在募集している第7期地域ビジョン委員を中心に各地域の特性を生かした取組を展開していきます。ビジョンの実現状況をフォローする新たな指標を用いて、地域夢会議などでの議論を深めながら、創造と共生の舞台づくりを進めます。
県が直面している課題への対策について、「安全元気ふるさとひょうご実現プログラム」として一つ一つプログラム化していますが、その実績を評価し、わかりやすく公表していきます。
これまでの20年の地方分権への取組としては、機関委任事務の廃止、三位一体の改革や義務付け、枠付けの見直しなどが行われました。しかし、国から地方への権限移譲は、国出先機関の事務の一部にとどまり、地方分権改革はまだ道半ばです。今後とも、地方が必要な権限、財源を有する自立分権型の行政システムの構築に向け、全国知事会、地方六団体と連携し、積極的に主張していきます。
関西広域連合の設立から3年あまりが経過しました。来年度は、今後の3年間の活動戦略を示した次期広域計画のスタートの年です。引き続き、広域防災などの広域事務、インフラやエネルギーなどの共通課題の調整、国からの事務、権限の移譲に積極的に取り組んでいきます。
その七は、行財政構造改革の推進です。
行財政構造改革の推進に関する条例に基づき、3年目の総点検を行いました。県議会行財政構造改革調査特別委員会での慎重かつ熱心なご審議や、県民、市町、関係団体等からのご意見を踏まえ、第3次行革プランを取りまとめました。
新たな財政フレームは、国の中期財政フレームに準拠し、名目経済成長率や消費税率の改定を見込んでいますが、地方一般財源総額が27年度まで据え置かれるのに加え、社会保障関係の自然増や新規施策により、今後とも厳しい財政状況が続きます。30年度までの5年間で生じる収支不足額は1,655億円と見込まれます。
これに対し、点検結果等を踏まえた歳出歳入対策をさらに強化することで、収支均衡を30年度には実現する見込みです。しかし、29年度まではなお収支不足が生じるため、退職手当債や行革推進債、県債管理基金を活用し、解消します。
本庁組織は、現行の5部体制を維持し、関連業務をグループ化する「班制」を導入します。県民局は10県民局体制から7県民局3県民センター体制に見直します。
職員の定員は、一般行政部門で今後5年間に平成19年度比8%削減するとともに、非常勤嘱託員等の削減も実施します。本県独自の給与抑制措置は、財政状況等を踏まえ、段階的に縮小し、その具体的内容は毎年度定めます。
一般事業費等を毎年度10%削減し、このうち5%は新規事業財源として活用することで、減り張りのある事業執行に努めます。投資事業は、地方財政計画の水準を基本とした通常事業費に加え、緊急防災・減災事業費等を別枠加算分として確保します。
県民の期待に的確に応える県政であり続けるためには、震災で悪化した財政を立て直し、行財政構造を持続可能なものにしなければなりません。その道筋を示したのが、今回の第3次行革プランです。県民の理解と協力を得ながら、行財政全般にわたる改革を着実に実行します。
これより新年度予算の概要を説明します。
平成26年度の地方財政は、一般財源総額が平成25年度の水準を一定上回る額が確保されたものの、臨時特例で減額された給与費の復元を考慮すると実質的には増額とは言えません。また、消費税及び地方消費税の税率引上げによる増収分は社会保障の充実分等へ充てられるため、引き続き厳しい財政運営を強いられる状況です。
予算編成に当たっては、第3次行革プランの取組を基本に、行財政全般にわたる見直しを行う一方、県民ニーズに的確に応えるため選択と集中を進め、施策の重点化を図りました。
歳入では、景気の回復基調と地方消費税の税率引上げなどにより県税全体で、税交付金を除くと前年度を421億円上回りますが、この税収増に伴い地方交付税等が130億円減となります。
歳出では、定員削減や退職者数の減などにより、人件費は前年度を下回る一方で、社会保障関係経費について、消費税の増強に伴う新規施策や自然増による100億円を越える歳出増等により、税交付金を除く一般財源ベースで前年度を128億円上回る見込みです。
投資事業については、投資水準の見直しを行う一方で、緊急防災・減災事業債等を活用した県有施設の耐震化など、消費税率引上げによる景気の腰折れを回避しつつ、「ひょうごの元気」につなげるための事業規模を確保します。前年度と14か月予算として比較しても、ほぼ同規模となっています。
この結果、歳入歳出の収支は、前年度の735億円から163億円改善するものの、なお、572億円の不足額が生じます。第3次行革プランの枠組みの範囲内で、退職手当債や行革推進債の発行、県債管理基金の取崩しで対応します。
以上の方針のもとに編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 1兆9,501億6,200万円
特別会計 1兆3,579億4,300万円余
公営企業会計歳入 1,956億5,300万円余
同 歳出 2,382億9,600万円余 です。
条例については、兵庫県税条例の一部を改正する条例など19件です。
平成26年度税制改正に伴い、所要の整備を行います。法人県民税超過課税については、対象企業の法人税額の基準を500万円引き上げ、2,000万円超とするほか、勤労者の福利厚生を増進する超過課税の趣旨にのっとり、勤労者の仕事と生活の調和を推進する観点から、「勤労者の能力向上と労働環境の整備の支援」、「子育てと仕事の両立支援」、「子育て世帯への支援」を重点的に実施するため、その適用期間を延長します。
その他案件については、関西広域連合規約の改正など15件です。
兵庫の地で生まれ、全国の人々に夢を発信し続けてきた「宝塚歌劇団」が、今春、創設100年を迎えます。
華やかな文化が花開く宝塚ですが、大正時代は、ひなびた温泉地に過ぎませんでした。今日の発展は、創設者・小林一三氏のビジョンと実行力がなくては実現しえないものでした。
小林氏は、鉄道、商業施設、住宅地の事業を別々に捉えず、一つにまとめて地域全体の発展をめざす事業モデルを築いたのです。こうした柔軟な発想力こそが、新たな時代を生きる私たちに求められているのではないでしょうか。
私たちのふるさと兵庫は、自然、文化、産業など、多様な財産を有し、まだまだ未知の可能性を秘めているはずです。これらを活用することで、もっと安全な兵庫が、もっと元気な兵庫が、もっと魅力あふれる兵庫が実現できるに違いありません。
今こそ、創造的復興の過程で示した県民みんなの力を再び結集し、だれもが誇りと愛着をもてる「ふるさと兵庫」をつくっていこうではありませんか。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切な議決をいただきますようお願い申しあげます。
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