ここから本文です。
第326回兵庫県議会の開会にあたり、議員の皆様のご健勝をお喜びし、日頃のご精励に敬意と感謝を申しあげます。
予算等提出議案の説明に先立ち、県政に取り組む基本的な考え方を申し述べます。
1月17日、阪神・淡路大震災から20年を迎えました。
天皇・皇后両陛下のご臨席のもと、県公館とHAT神戸において、震災20年追悼式典を行いました。ご遺族、ご来賓、多数の皆様ともども、阪神・淡路大震災の犠牲となられた方々への哀悼の誠を捧げるとともに、未来を見据えて安全安心な社会の実現をめざす誓いを新たにしました。
あの日、僅か15秒程度の揺れによって、近代都市が壊滅的な打撃を受けました。6,434人の命が奪われ、美しい街が瓦礫で覆われました。
あれから20年。被災者をはじめ、ボランティアや内外からの支援者も一体となって創造的復興の歩みを続けてきました。震災の風化を防ぎ、私たちの経験と教訓を次の世代に伝え続けなければなりません。
震災に見舞われたのは21世紀を目前にした成長から成熟への転換期、高齢社会への入り口に立っていました。私たちが「創造的復興」に込めた思いは、単に元に戻すということではなく、震災を機に明らかになった成熟社会の課題に果敢に挑むということでした。
インフラや住宅の再建という枠を超え、見守りなど高齢化に対応した福祉、被災者のこころのケア、地域コミュニティの復興、まちのにぎわいづくり、美術館や芸文センター等による文化・芸術振興など、時代に先手を打ってきました。人と人、地域と地域のきずなを大切にして、共に支え合って生きることの価値の大きさも訴えてきました。
この20年間に培われた兵庫の経験や知見は、世界の防災減災対策にも期待されています。現在、国連の「兵庫行動枠組」に基づく取り組みが、世界中で行われています。来月、仙台で開催される第3回国連防災世界会議では、この10年間の経験も活かした提案を「ポスト兵庫行動枠組」に対して行います。未来に向かって、兵庫こそが安全安心社会のモデルであるとして、世界をリードする取り組みを進めていきます。
私たちの周囲には、常に危機が存在します。昨年は、8月豪雨、9月御嶽山噴火、11月長野県北部地震、年明け早々には、城崎温泉で火災が起こりました。
未来は予測困難であり、危険は時と場所を選びません。備えを万全にする必要があります。安全こそが、県民の豊かで健全な暮らしと活力ある社会経済活動の支えであることを常に意識し、「ポスト震災20年」の県政運営においては、安全の確保、「安全なふるさと兵庫」を第一の目標にします。
安全な県土空間は、地域の元気づくりの基です。地震、津波、風水害に対する防災インフラの強化と合わせ、県民の防災・減災意識を高め、防災関係機関の連携強化を図る訓練の実施や地域ぐるみ活動の活性化などにより、地域防災力をいっそう高めます。
安全の確保と並んで取り組むべき最優先課題が地方創生です。
戦後、効率性と経済合理性を優先した社会・経済システムは、わが国の高度成長を支え、国民生活水準の向上に貢献しました。しかしながら、画一的な拠点主義の発想による「ミニ東京」のような地方都市の乱立を招き、地方の個性を奪い、大都市、特に東京の相対的地位の向上が続きました。戦後70年間で、東京都の人口比率は、4.8%から10.4%に上昇しています。経済力で見ても、東京都の総生産は全国の約2割を占め、圧倒的です。
人口減少のもとで、人や企業が大都市ばかりに集まる状況を放置すれば、地方が衰え、国力が減退します。地方の産業やにぎわいの衰退を招き、国全体では、災害など危機に対する脆弱性が増すばかりか、没個性化した地域社会、人と人とのつながりの希薄化など、様々な弊害をもたらします。豊かな社会とするためには、多様な地域がバランスよく相乗的に発展しなければなりません。
日本の縮図と言われ、多様性を持つ本県は、人口減少が進んだ地域社会の姿を早くから展望し、課題に挑んできました。小規模集落の再生等をめざした「地域再生大作戦」などに取り組みました。国は、ようやく東京一極集中の是正をめざして地方創生に向けた動きを本格化させ、人や企業の地方への移転政策が始動します。地方は、これをしっかりと受け止め、それぞれの地域にふさわしい方向を見いだしていく必要があります。これからも、日本の将来を兵庫から切り拓く気概が必要です。兵庫だからこその「地域創生」をめざそうではありませんか。
地域創生の推進上、まず大切なことは「人口減少対策」です。人口の絶対数を増やすのは、相当長期的な課題です。このため、人口の「自然増」と「社会増」の両面からアプローチします。
人口の自然増を実現していくためには、多子型の出産・子育て環境が欠かせません。夫婦が理想とする子どもの数は約2.4人ですが、晩婚化や子育ての難しさがあります。出会いや結婚支援の充実と合わせ、だれもが子どもを産み育てられるよう、子育て支援、就業支援などを図らねばなりません。
兵庫に人が集まり、人が定着する。これが人口の社会増対策の基本です。自然増を進める上でも、まず、若い世代の地域への定着を進めることが必要です。昨年の県民意識調査によれば、「地域に愛着を感じる」人の割合は8割を超え、20代から30代の若者でも、実に83%です。ぜひ、ふるさとに住み続けて地域の支え手となってほしい。やる気のある働き手が地域に根ざした仕事に就ける環境をつくり、「住みたい」と思える魅力と個性にあふれる地域を兵庫に増やしていかなければなりません。
地域創生のもう一つの柱は、「地域の元気づくり」です。大都市やそこに立地する大企業の繁栄が、やがて小さな町や村も豊かにするというトリクルダウンとは正反対の、地域の自発的・内発的発展をめざすことが基本です。成長の種が地域で蒔かれ、地域で育つしくみが必要です。地域の創意工夫によって、地域特性が活かされる発展がなければ、県民が将来へ希望をもてる社会は実現できません。
SPring-8やスパコン「京」など世界に誇る兵庫の科学技術基盤を活かし、成長著しい分野の技術革新を促して新たな基幹産業を育てていく。また、世界で競争できるオンリーワン企業や、地域特性を活かした農林水産業を育成していく必要があります。
高齢化が進む中、健康、医療、福祉の充実によって、県民の暮らしの安心を守らなければなりません。地域医療の確保、在宅介護や見守りの充実など、セーフティネットを今一度見直し、時代の要請に応えられるしくみへの転換を図っていくことが必要です。
兵庫の強みである地域の多様性を活かし、将来への突破力としていかなければなりません。私たちが大切にしてきたのは、多様性を尊重し人や地域のきずなによって共に支え合うという価値観です。
経済効率性を追い求めて、地域の切り捨てにつながるような拠点化、集約化を進めるのではなく、大都市から農山漁村まで、個性豊かな地域がそれぞれ機能を分担しながら連携し、活力をもって自立できる兵庫を創らねばなりません。そのためには、地域資源を最大限に活かし、人、もの、資本、情報等が有効活用される環境の整備が不可欠です。
多様な地域に多彩な人材が生きる兵庫。その知恵と力を再結集して、地域づくりの新たなステージに臨み、安全で元気なふるさと兵庫の創造をめざしていこうではありませんか。
以上の認識のもと、新年度の県政は、次の五つの柱で推進します。
これより新年度の重点施策を説明します。
重点施策の第一は、安全な兵庫です。
阪神・淡路大震災で亡くなられた方の多くが住宅の倒壊によるものでした。20年が経過し、その耐震化促進が急務です。家屋の部分改修や屋根の軽量化に加え、より安全性が高まる住宅全体の建替を支援するなど、住まい方に応じた耐震化を進めます。
ホテルや旅館など5,000m2以上の大規模施設に耐震診断結果の公表が義務づけられています。このうち災害時に避難所の役割を担う建物には耐震改修への助成を上積みし、早期の対策を促進します。
「津波防災インフラ整備計画」に基づき防潮堤の強化、沈下対策や水門整備を計画的に進めます。百年周期の津波には越流の防止、千年周期の最大クラスの津波でも被害を軽減します。日本海津波による浸水シミュレーションに着手します。
昨年の8月豪雨では土砂崩れなど大きな被害が生じました。丹波市など被災地の道路、河川、農地の復旧を加速します。また、土砂災害警戒区域の総点検とともに、砂防えん堤や治山ダムの整備箇所を追加するなど「第2次山地防災・土砂災害対策5箇年計画」を拡充します。防災林の整備など災害に強い森づくりも進めます。
11地域ごとに策定する総合治水推進計画に基づき、学校への雨水貯留浸透施設の整備など浸水対策に取り組みます。ため池の保全に関する条例を見直し、防災機能の維持、疏水も含めた多面的機能の活用、防災管理体制の充実を図ります。
1月の火災で焼失した城崎温泉街の美しい景観を取り戻すため、防災性能を備えた木造3階建てのモデルとなるよう再建を支援します。
エボラ出血熱など感染症対策には初動はもとより二次感染対策も欠かせません。関西広域連合など近隣府県との連携体制を確立するとともに、患者を安全に移送するアイソレーターや防護服を配備します。
災害時の避難所では清潔なトイレや生活用水の確保が課題です。非常用トイレの備蓄とともに、避難所となる小学校への井戸の設置を支援します。要援護者向け福祉避難所の指定を促進します。
日頃の備えとして、消防団と自主防災組織が共同で実施する実戦的な訓練、専門知識を有する防災リーダー相互の連携や活動の場づくりを支援します。
震災の記憶を決して風化させてはなりません。ひょうご安全の日のつどい、減災活動の日の普及を継続的に実施します。震災の教訓事例集「伝える」に東日本大震災の教訓を盛り込むなど内容を充実し実用向けに改編します。
次なる災害に共助で備える住宅再建共済制度への加入促進を図ります。
来月、仙台で行われる国連防災世界会議で、被災者の生きがいづくり、地方自治体の防災協力など、私たちが培った創造的復興について提言します。
東日本大震災から4年目を迎える被災地では生活再建やまちづくりが本格化しています。漁港復興などチーム派遣を含め職員派遣を拡充します。
地域での見守りを強化し、犯罪の抑止力を高めるため、通学路や公園を中心に地域団体が行う防犯カメラの設置への支援を充実します。子どもが駆け込める110番の家や店を旗で明示するなど普及を図ります。通学路のカラー舗装も進めます。
増加する自転車事故への対策として、自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例を提案しています。県民、事業者、県が一体で理解と啓発に取り組む気運を高めます。また、利用者に夜間点灯や点検整備などの安全利用、特に事故に備えた損害賠償保険への加入を義務づけます。
繁華街での執拗な客引きが安心で快適な暮らしの妨げとなっています。新たな条例により、現行法令で規制できない公共の場所での行為を幅広く禁止します。指導員が巡回し実効性を高めます。
危険ドラッグなど薬物の濫用防止に向けた条例が昨年12月に施行され、立ち入り調査などの成果により県内の販売店はすべて営業を停止しています。引き続き、近隣府県とも連携し、インターネット監視などで流通を取り締まります。
小野警察署(仮称)を開設し、警察署の空白市を解消します。白バイ、パトカーなどの運転訓練を行うための総合訓練センターの整備に着手します。
重点施策の第二は、安心できる兵庫です。
働き盛りの世代を中心に、その家族も含めた特定健診受診や健康づくりを促進するため、「健康づくりチャレンジ企業」の登録を進めます。女性特有のがんについては市町が実施する検診への助成を拡大します。
歯と口の健康が身体全体の健康につながることから、乳幼児から妊産婦、高齢者まで年代に応じた切れ目のない口腔ケアを促進します。
こころの健康づくりも進めます。自殺者数は減少傾向にありますが、24時間電話相談や身近なサポーターの養成により、早期の気づきと予防を図ります。
限られた医療資源を有効に活用するには、急性期、慢性期など病状に見合った体制が必要です。地域医療ビジョンを策定し、適切な医療提供体制をめざします。
医師の地域偏在を解消するため、地域医療支援センターにおいて県採用医師を地域の医療機関に派遣します。地域医療活性化センターで専門性や技能の向上も図ります。
看護系学校での看護職養成を支援するとともに、医療機関が実施する研修の支援により、看護師が復職しやすい環境を整備します。
県立病院では、尼崎総合医療センター(仮称)を7月に開院し、救命救急センターを備えた高度専門医療を提供します。平成28年春の開院をめざすこども病院の移転整備、柏原病院と柏原赤十字病院の統合、新病院の整備を進めます。姫路循環器病センターの建替整備にあたっての諸課題を検討します。
介護、医療が連携した地域包括ケアシステムを構築し、住み慣れた地域での生活を支援します。
重度の要介護者にも対応可能な24時間対応巡回サービスの充実に向け、訪問看護ステーションの参入を促進します。特別養護老人ホームの生活援助員が在宅高齢者の見守りを担う「地域サポート型特養」、地域住民が配食サービスなどを行う安心地区(地域サポート事業)をさらに拡大します。
サービス付き高齢者向け住宅で常時介護サービスが受けられる特定施設入居者生活介護の指定を拡大するため施設整備を支援します。
認知症の進行を食い止めるためには早期発見と早期治療が大切です。認知症チェックシートで発症に気づき、早めに受診できるよう、身近な医療機関を紹介する相談センターをすべての市町に設置します。徘徊SOSネットワークを構築し、家族も含め認知症の人が安心して生活できる地域づくりを進めます。
在宅でのターミナルケアを充実するため、若年の末期がん患者の療養生活を支援し、介護にかかる家族の経済的・精神的負担を軽減します。
障害者の支援計画である「ひょうご障害者福祉プラン」の実現に向け、障害者の地域生活を支える仕組みを整えます。
障害福祉サービスから介護保険サービスへの移行を円滑に進めるため、相談支援専門員とケアマネージャーの連絡会議を設置します。
聴覚障害者とのコミュニケーション支援に向け、県民向け手話講座を全県で実施します。文字情報の音声化装置の県施設への配備、県広報刊行物への音声コード導入を進めます。
ロボットリハビリテーションの普及を図ります。ふるさと寄附金も活用して小児筋電義手の貸出を支援するとともに、福祉のまちづくり研究所等で、より軽い義手の開発に取り組みます。また、最新福祉機器の機能評価と情報発信を強化します。
制度上、年金が支給されない外国籍の重度障害者に対し、市町と共に障害基礎年金額相当が支給されるよう助成額を拡充します。
今年は戦後70年の節目にあたります。犠牲者に追悼の誠をささげ戦争体験を次世代に伝えるため、県公館で戦没者追悼式を行います。また、秋に南あわじ市の若人の広場公園で、全国戦没学徒追悼式典を開催します。激戦地となった沖縄でも県出身者の慰霊祭を行います。
重点施策の第三は、多様な人材が活躍する兵庫です
「ひょうご子ども・子育て未来プラン」を改訂し、結婚から子育て、仕事との両立までを幅広く支援します。平成28年からの5年間で22万人の出生をめざします。
1000組近い結婚を支援してきた出会いサポート事業を県外にも広げ、東京出張所を設置するなど出会いの機会を拡大します。都市農村交流イベントや個別お見合い、こうのとり大使の縁結びを通じ、年間で200組以上の成婚をめざします。
子ども・子育て支援新制度に伴い保育所入所要件が緩和されます。入所希望者の増加に対応するため、保育所や認定こども園の整備、保育人材の確保などを支援します。利用ニーズが高い病児、病後児保育への助成を拡大します。
小学生の下校後に預かり先がないことなど「小一の壁」を解消するため、1人からでも利用できる小規模クラブも含め放課後児童クラブへの支援を拡大します。親子が集い子育ての悩みやしつけの仕方を相談できる場、「まちの子育てひろば」や「乳幼児子育て応援」を引き続き実施します。
ふるさと意識を育む体験教育を推進します。幼児期から自然体験を始め、小学生の「環境学習」「自然学校」、中学生の「わくわくオーケストラ教室」「トライやる・ウィーク」、高校生の「ふるさと貢献活動」など成長過程に応じた教育を実施します。
学力の底上げを図るため、全国学力・学習状況調査の結果をもとに、小中学生がつまずきやすいポイントを整理し、指導の工夫や改善に役立てます。地域の人材の協力も得て、放課後や土曜日を利用した補充学習を拡大します。
新通学区域導入を踏まえ、理数教育、国際教育など、県立高校ごとの重点テーマに基づき特色化を図る「インスパイア・ハイスクール事業」を全校で実施します。
国際的に活躍できる人材を育成するため、県立高校の英語指導助手(ALT)を活用し、英語のみの宿泊生活を通じ表現力を高める事業を行います。
海外の高校生との交流、海外留学を支援します。海外への長期派遣や大学との連携により教員の指導力向上を図ります。
高校生の職業観を養う地域企業でのインターンシップを充実します。工業高校に続き、拠点となる農業高校にウイルス観察も可能な電子顕微鏡や家畜の人工授精機器などを導入し、農業、畜産業のスペシャリストを養成します。
特別支援学校では、卒業生の一般就労率向上をめざし、企業での現場実習を充実するとともに、作業スキルの基準化に向け認定資格開発を進めます。
4月には、出石特別支援学校みかた校、阪神特別支援学校分教室をそれぞれ開設し、地域の学校との共同学習も実施します。
県立大学の特色化に向け、国内外で活躍する人材育成、先導的な研究、地域貢献を進めます。震災の経験を生かし防災の専門人材を養成する大学院の開設準備を進めます。最先端の研究拠点をめざし姫路工学キャンパスの建替整備を進めます。海外の大学との交換留学や重点的な英語教育によりグローバル化にも適切に対応します。
若者、女性、高齢者、障害者の社会参加により、人口減少下においても活力を生み出します。
学生や学卒者が自分に適した職を見つけ就職後も定着できるよう、インターンシップの機会と場を提供するとともに、ビジネスマナーの習得研修も実施します。
出産や育児による離職を解消する在宅ワーク・テレワークの仕組みづくりを進めます。県としてもICTを活用した職員の在宅ワーク環境を構築するなどに率先して取り組みます。
離職した後の再就業を円滑化するため、就職や起業に関する個別相談、職業紹介までをワンストップで行う女性就業相談を実施します。起業にあたっては初期経費の助成などで立ち上げを支えます。女性の活躍の場を広げるため、職場の意識改革や女性登用につながる研修等を実施します。
仕事と生活の調和をめざすワーク・ライフ・バランスを推進します。ひょうご仕事と生活センター事業により、休業期間中の代替要員確保など退職せずに就業を継続しやすい環境づくりを支援します。離職者の再就職を促進するための雇用企業への助成を拡充します。
豊富な経験・知識をもつ高齢者の起業を応援します。ビジネスプランの開発、介護福祉に必要な資格取得を支援します。
障害者の働く場となる特例子会社や事業協同組合の設立を支援します。障害福祉サービス事業所の共同受注体制を強化するとともに、授産商品の配送料無料化など販路拡大を支援し、工賃向上を図ります。
建設や福祉の現場での人材不足が深刻化しています。民間職業能力開発施設に建設コースを新設し、資格取得を促進します。在職者のスキルアップに向け、ものづくり大学校などでの技能訓練を充実します。
福祉現場においてOJT研修によりスキルアップを支援するとともに、介護機器導入や福利厚生事業へ助成し、人材確保につなげます。
5年後の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際大会や全国大会出場選手の重点強化をはじめジュニア選手の発掘からトップアスリートの育成までを系統的に進めます。県内スポーツ施設の情報を発信するなど両大会の事前合宿の招致にも取り組みます。
生涯スポーツの国際総合大会「関西ワールドマスターズゲームズ2021」の開催に向け、組織委員会を中心に競技種目決定や会場選定などの準備を進めます。
県民だれもが参加できるよう改編した「関西マスターズスポーツフェスティバル」を5月から通年で開催し、生涯スポーツのすそ野を広げます。
また、昨年11月に開催が決まった「日本スポーツマスターズ2017兵庫大会」に向け準備委員会設立やイベントにより機運を高めます。
昨年約2万人のランナーが参加した神戸マラソンは節目となる5回目を迎え11月15日に開催します。
特別支援学校の体育館をバリアフリー化するなど、障害者の身近なスポーツ拠点となるよう整備、開放します。競技の場として障害者のじぎくスポーツ大会を開催します。
芸術文化立県ひょうごを目標に、新たな「芸術文化振興ビジョン」を策定し、多彩な事業を展開します。
震災復興のシンボルとして開館10周年を迎える芸術文化センターでは、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラとしてヴェルディの「椿姫」を上演するほか、管弦楽団によるベートーヴェン「第九」など年間を通して記念事業を展開します。
兵庫陶芸美術館でも、開館10周年を記念した特別展において、夏から冬にかけて連続で丹波焼を取り上げるほか、最古の登窯への火入れ式など地域の活性化事業を展開します。
県立美術館では、彫刻家「舟越桂展」、スイスの代表的画家「パウル・クレー展」など魅力ある展覧会を開催します。
歴史博物館では、新潟県立歴史博物館との連携企画展「北前船」を開催するほか、播磨の歴史について研究室を設置し調査を進めます。
考古博物館では、特別展「地震・噴火・洪水-災害復興の3万年史」、「王墓の埴輪」など、人と自然の博物館では、丹波竜発掘資料の分析を進めるとともに、移動博物館車「ゆめはく」によるアウトリーチ活動を行います。
若手芸術家の育成に向け、専門家の指導のもと作品展やコンサートなど発表の機会を提供します。また、いけばな、茶道など伝統文化の担い手を育てるため、児童生徒向けの体験教室を実施します。
重点施策の第四は、産業活力あふれる兵庫です。
兵庫の強みであるものづくり産業とサービス産業との調和を図り、世界に通用する成長産業、オンリーワン企業を生み出します。
昨年9月、先端医療センターで世界初のiPS細胞を利用した網膜色素上皮シートの移植手術が行われました。先月には理化学研究所のチームがES細胞から小脳の組織を作り出しました。これら最先端の研究機関が集積する医療クラスター、バイオクラスターから新たな成長産業を生み出す取組を支援します。
ロボットの実用化、水素エネルギーの活用など次世代産業分野を切り開く民主導プロジェクトを進めます。産学官の共同研究を促進する「兵庫県COEプログラム」を実施します。
計算科学クラスターではポスト「京」の開発が進んでいます。播磨科学公園都市の「SPring-8」、X線自由電子レーザー「SACLA」も含め、最先端科学技術の産業利用を促進します。
再生医療の実用化、新薬や新エネルギー材料の開発など関西圏国家戦略特区での取組を支援するとともに、医師の在留資格の特例や保険外併用療養の拡充など、さらなる規制改革を国に求めていきます。
東京はじめ大都市圏からの本社機能の移転、誘致を促進するため、産業集積条例の改正とともに支援制度をつくります。企業の立地については、設備投資補助、賃料補助、雇用補助に加え不動産取得税、法人事業税を軽減します。あわせて、多自然地域に立地する企業への支援を拡充し、地域の活性化を促進します。
新商品開発や販路拡大をめざし、製造業と広告業、飲食店とIT企業など40以上の異業種交流グループが活動しています。今後はプロジェクト立ち上げや事業化を促進します。
7月に神戸市で開催される「宇宙技術および科学の国際シンポジウム」、9月の「国際フロンティア産業メッセ」で、技術展示や商談会など異業種のマッチング機会を創出します。
地場産業のブランド力を国内外に向け高めるため、デザイナーとの共同企画による商品開発や海外商社でのマーケティング研修を支援します。
海外7カ所のサポートデスク、海外5事務所を拠点として、現地での販路拡大や拠点設置に関する市場調査など、海外でのビジネスチャンスを拡大します。
経済成長に寄与する設備投資と新分野進出を促すため、中小企業向け制度融資にかかる金利の引き下げに加え、信用保証協会の保証料を引き下げ実負担を軽減します。資金全体の融資枠は3,000億円を確保します。
また、中小企業団体中央会や商工会議所、商工会と共に販路拡大やビジネスプラン策定を支援します。
都市近郊という強みを生かした多様な経営モデルを県内各地に広げ、供給力を高めます。
農業経営の大規模化に向け、農地中間管理事業によるマッチングを加速し、経営力のある認定農業者や集落営農組織、農業法人へ農地を集約します。
都市近郊の有利性を活かし、鮮度保持包装に対応した葉物野菜団地モデル、県育成新品種を導入したイチゴ栽培モデル等を各地で展開します。
神戸ビーフの素牛である但馬牛の生産力を強化するため、肥育農家の繁殖経営参入による一環経営でコストを縮減します。感染性の疫病から保護するため、種雄牛管理施設の防疫強化に着手します。
就農者の設備投資負担を軽減するため、農業版設備貸与制度を県独自に創設します。ハウスや農業用機械をリースにより整備することで、都市からの帰農、異業種の参入、農業の拡大を促します。就農前後の不安定な経営を青年就農給付金や親方農家の指導により支えます。
林業の担い手として経営者、森林施業プランナー、現場技能者を一体で育成し、林業経営体全体のレベルを高めます。
新たなブランドを流通に乗せるため、ひょうご元気な「農」創造事業により、加工や鮮度保持の手法を確立し、調理法を提案するなど生産地とレストランや量販店をつなぐビジネスモデルを構築します。
神戸ビーフの輸出拡大に向け、国際基準を満たす衛生管理手法を導入した県内初の食肉センターの整備を支援します。
伐採、利用、植林、保育の林業生産サイクルが円滑に循環する林業を確立します。新たな林内路網1,000km整備プラン、低コスト原木供給団地の増設、高性能林業機械の導入により供給力を高め、木質バイオマス発電の需要拡大にも対応します。
コンクリート並みの強度をもつ直交集成板(CLT)の用途拡大を図り、県産木材の新たな需要を掘り起こします。特別融資の活用により県産木材を使用した住宅建設やリフォームを促進します。
県産カキとアサリの複合養殖経営を拡大します。水産資源の増殖に向け、ズワイガニ増殖場整備、第2の鹿ノ瀬構想を推進します。
重点施策の第五は、地域が元気な兵庫です。東京一極集中の是正に向け、多様な資源を生かして地域の再生を加速します。
多くの人が働き暮らす都心やニュータウンなどが有していた本来の活力を取り戻します。
三宮駅周辺を兵庫の玄関口にふさわしい街として再生するため、オフィスに入居する企業への法人事業税軽減措置を拡充します。
まちのにぎわいを再生するため、商店街を核に周辺住宅地と一体でまちづくりを進めます。モデル地区において、商業ゾーンの再編と合わせて行う土地の高度利用やサービス施設の誘致などをめざし、再生協議会の設置や構想づくりを促進します。商店街によるにぎわい創出のためのイベント、共同施設の整備にも支援します。
郊外の戸建住宅団地の再生に向け、若年世帯の入居につながるモデルプランを策定します。
「あいたい兵庫キャンペーン」では、有馬、城崎をはじめ兵庫の温泉を核としたツーリズムを発信します。淡路島全島をあげて季節の花々や食材をPRする「淡路花博2015花みどりフェア」、世界遺産姫路城のグランドオープンを機に、国内外から誘客します。
山陰海岸ジオパーク、鳴門うず潮などの観光資源を核に、隣接府県と連携し、日本海側周遊ルート、瀬戸内海の島巡りなど広域観光ルートを設定します。これら今年の見所を効率的に巡るツーリズムバスを運行します。
外国人観光客を呼び込むため、観光案内所の整備、ホームページの多言語化、Wi-Fiアクセスポイントの設置など環境整備を進めます。商店街が取り組む免税店の拡大や免税手続きのワンストップ化も支援します。
ミシュランガイド兵庫版の発刊にあわせ英語版サイトを公開し、兵庫の食の魅力を世界に向けて発信します。
ブラジル・パラナ州友好提携45周年、中国・海南省友好提携25周年にあたり、訪問団の派遣による記念事業の実施など経済・文化交流を活発化します。日韓国交正常化50年にあたり、韓国・慶尚南道との友好交流を行います。
イタリアで5月から開かれるミラノ国際博覧会では、安全安心な農水産物を中心に世界に向け兵庫の魅力を発信し、あわせて、フランス友好交流県を訪問し友好のきずなを深めます。
広域的な地域間連携に基幹道路は欠かせません。神戸ジャンクションと大阪府を結ぶ新名神高速道路の平成28年度供用、播磨新宮インターチェンジと山崎ジャンクションを結ぶ中国横断自動車道姫路鳥取線の平成32年度供用をめざします。
日本海側のミッシングリンク解消に向け、北近畿豊岡自動車道八鹿日高道路の平成28年度開通、山陰近畿自動車道浜坂道路の平成29年度開通をめざし整備を進めます。阪神、播磨臨海部の東西をつなぐ大阪湾岸道路西伸部、名神湾岸連絡線、播磨臨海地域道路については早期事業化に向け取り組みます。
但馬空港の就航率向上に向け、新たな飛行経路の設定について検討します。また、羽田直行便就航に向けては、引き続き航空事業者や国に対し路線開設を働きかけます。
8億円もの農林業被害をもたらす野生動物の中でも、シカによる被害地域が拡大しています。年間3万5千頭の捕獲を目標に、ハンターの育成強化、隣接府県と連携した捕獲対策を進めます。
肉や皮など丸ごと活用に向け、一時保管場所であるストックポイントの整備など加工施設への集約を円滑化します。
イノシシ、アライグマ、ヌートリア、サルやカワウについても行動特性を利用した捕獲対策を講じます。
豊かな海を取り戻すため、瀬戸内海環境保全特別措置法が改正される見込みです。本県でも、水産資源の回復に必要な栄養塩管理、藻場や干潟の保全、下水処理場の栄養塩管理運転を実施します。
兵庫県版地方創生戦略の策定と実行に向け、兵庫県地域創生条例案を提案しています。
まず、人口減少対策として、人口の自然増対策を行います。出生数を増やさねばなりません。結婚を支援する出会いサポート事業の拡充、子育てしやすい環境づくりに向けた保育所、認定こども園の整備支援、第3子以降の保育料助成などの取組を強化します。
次に、人口の社会増を促す施策です。中小企業と県外学生のマッチングを図る首都圏での合同就職面接会、地域資源を生かした起業を促す「ふるさと起業支援」やIT企業の事業所開設支援、帰農者の初期投資の支援などを集中展開し、U、J、Iターンを拡大します。
多自然地域への定住や移住を促す「地域再生大作戦」も拡充します。地域外からのUターン希望者の研修や体験居住ツアー実施し、移住のきっかけをつくります。空き家の改修を支援し、住宅や事業所として都市からの移住や二地域居住を進めます。
地域の元気には地域ならではの発想が必要です。県民、地域団体が提案し参画するソフト、ハード事業を機動的に支援し、地域ににぎわいや雇用を生むリーディングプロジェクトを推進します。
21世紀兵庫長期ビジョンについては、第7期地域ビジョン委員を中心に、地域の特性を生かした県民主体の取組を展開し、創造と共生の舞台づくりを進めます。また、2040年の兵庫のゆたかさの実現に向けて重視すべき視点や方向性を検討する「兵庫のゆたかさ研究」に取り組みます。
地方創生を実現するためにも、地方が役割に見合った権限、財源を有する自立分権型の行政システムが必要です。全国知事会、地方六団体と連携し、積極的に主張していきます。
関西広域連合では、防災をはじめとする広域7分野事務を着実に実施します。「成長する広域連合」をめざし、共同で処理すべき事務の拡充についても検討します。今後も、提案募集を活用した国からの事務、権限の移譲や関西圏域の展望研究などに積極的に取り組んでいきます。
重点施策の最後は、行財政構造改革の推進です。
新たな財政フレームは、この度、公表された国の中長期の経済財政に関する試算で示された経済再生ケースの名目経済成長率や名目長期金利の改定を反映して見込んでいます。一方、地方消費税については、税率改定の見送りに加え、増収分の一部を社会保障関係費に充当されるものとして見込んでいます。
第3次行革プランに基づく歳出歳入対策、県債の発行年限の短縮化等による利子の低減措置により、平成30年度までの収支均衡は達成できる見通しです。平成29年度までの収支不足には、退職手当債や行革推進債、県債管理基金を活用し対応します。
県民局・県民センターの本局に班制を導入し、業務間の相互連携を図ります。職員の定員は一般行政部門で119人の削減を行います。給与については、第3次行革プランに基づき、本県独自の給与抑制措置の縮小を図ります。また、宿泊料について特別職は実費支給、一般職は4区分に改める旅費の見直しを行います。さらに、事務事業のスクラップアンドビルド、公社の見直しなど行財政全般にわたる改革を着実に実行します。
これより新年度予算の概要を説明します。
平成27年度の地方財政は、地方創生のための措置により、一般財源総額は26年度を上回る額が確保されたものの、地方消費税の引上げによる増収分を除くと減少しており、引き続き厳しい財政運営を余儀なくされます。
予算編成にあたっては、第3次行革プランの取組を基本に、国の制度改正や予算編成、地方財政措置の動向を見極めつつ、県民ニーズに的確に応えるため、選択と集中を徹底しました。
歳入では、企業業績を反映した法人関係税の増や、地方消費税率引上げよる税収の平年度化等に伴い、県税全体で、税交付金を除き26年度を558億円上回る見込みです。一方、税収増に伴い、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は367億円減少します。
歳出では、子ども子育て支援新制度の充実により社会保障関係費が338億円増と大幅な増加が見込まれます。投資事業については、地方財政計画を踏まえた投資水準見直しの一方、緊急防災・減災事業債を活用した県有施設の耐震化や、8月豪雨災害を踏まえた山地防災・土砂災害対策の拡充など安全安心を充実する事業費を確保しました。
これにより、歳入歳出の収支不足額は430億円となりますが、26年度当初予算に比べれば142億円改善しています。その対策として、財政フレームの範囲内で退職手当債や行革推進債の発行、県債管理基金の取崩しを行います。
以上の方針のもとに編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計1兆9,220億4,700万円
特別会計1兆2,904億6,800万円余
公営企業会計歳入1,872億1,600万円余
同歳出2,099億6,700万円余です。
なお、経済対策のための国の補正予算が成立したことを受け、本県においても、国補正予算を有効活用するための緊急経済対策補正予算を、新年度当初予算と一体的に編成しました。補正予算案については、後ほど説明をさせていただきますのでよろしくお願いします。
条例については、兵庫県地域創生条例の制定や、産業の集積による経済及び雇用の活性化に関する条例の一部を改正する条例など24件です。
その他案件については、第3次行財政構造改革推進方策の変更、公の施設の指定管理者の指定など40件です。
専決処分承認案件は、「県立龍野高等学校(硬式テニス部練習中の事故)にかかる国家賠償請求控訴事件判決に対する上告及び上告受理申立」について、承認を求めるものです。
フランスの経済学者トマ・ピケティは、話題の著書『21世紀の資本』で、「資本の収益率が経済成長率を常に上回っているため、資本を持つ者と持たざる者の格差が拡大し続ける」と書いています。このことは、資本ストックが集積する大都市と、それが乏しい地方との地域間格差の問題の説明にも通ずると考えられます。
格差は、成り行きに任せていては解決しない構造問題なのです。この認識に立って、国は、大都市に集中する人・企業・資本を地方に環流させる確固たる制度を構築し、一方、私たち地方は、全力で地域の魅力と活力を高める努力をしなければなりません。兵庫には、その努力に応えてくれる多彩な地域資源があります。知恵を絞ってこれらを活用し、人を引きつけ、住む人に心から愛されるふるさとづくりを進めていこうではありませんか。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切な議決をいただきますようお願い申しあげます。
お問い合わせ