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第331回兵庫県議会の開会にあたり、議員の皆様の日頃のご精励に敬意と感謝を申しあげます。
新年度予算案など提出議案の説明に先立ち、今後の県政について、基本的な考え方を申しあげます。
世界は今、時代の変革期を迎えているのではないでしょうか。
私たちの眼の前には、様々な不安が広がっています。
領土や領海をめぐる国家間の紛争が後を絶ちません。宗教や思想、民族の対立により内戦や凶悪なテロも頻発しています。
テロの背景にある、富める者と貧しい者の格差拡大も見過ごせません。
石油をはじめとする資源価格の暴落は、新興国の成長を阻み、世界第2位の経済大国中国の減速と相まって、世界経済の安定感も失われています。
温室効果ガスの増加に起因する地球規模での気候変動が顕在化しています。記録的な洪水や深刻な干ばつは、力の弱い途上国を苦しめ、新たな紛争の火種となりかねません。生態系の破壊も危惧されます。
数々の不安の一方で、歩み寄り、結びつきを強めようとする動きも広がっています。
TPPでは、関税の撤廃に止まらず、サービスや投資など幅広い分野のルールが共通化されます。中国、インドを含む東アジア地域の包括的経済連携交渉も始まっています。世界経済の一体化が加速し、人、物、資本、情報の往来がますます活発になるでしょう。
昨年末のCOP21では、先進国と途上国が対立を乗り越え、世界のすべての国が参加する地球温暖化防止の新たな枠組みに合意しました。共有された危機感をもとに、各国が真剣に取り組むことが期待されます。
情報通信技術ICTの発展も見落とせません。今や世界中の人が携帯端末一つでつながり合う時代です。
私たちは、このような世界潮流を見極め、的確に対応しなければなりません。
世界化が進む今だからこそ、地域は、全体の中に埋没することなく、地域、地域の個性を明確にして、世界の中で独自性を発揮できる存在にならなければなりません。
わが国は、海外から新しいものを取り入れ、これを自分のものとして、独自の文化を発達させてきました。なかでも日本の中央に位置する兵庫は、内外の人や物が行き交うことで発展してきた地域です。兵庫のさらなる成長のためには、多文化共生の地域づくりを進めることはもちろん、世界との接点を常に意識して行動する必要があります。
日本の人口が減少に転じてから7年。ようやく人口減少や東京一極集中が進む日本の将来への危機感が高まりつつあります。これに対し、地方創生として国全体の取組も始まりました。
私たちは、地域が主体的に取り組むという観点からこれを地域創生とし、中長期的な県政課題に位置づけ、条例で枠組みを定め、創生戦略を策定しました。まさに人口減少時代を迎え、少子高齢化の中にあっても兵庫の活力を持続させる取組が強く求められています。
しかも、今ほど、地方に関心が向けられたことはありません。すでに首都圏から地方へと向かう人の流れが生まれています。
農業や漁業に可能性を見出し、見知らぬ村に移り住む地域おこし協力隊の若者がいます。
結婚出産を機に、地方都市をめざす家族もいます。
サラリーマン生活を終え、ふるさとの田畑で第二の人生を始める団塊世代もいます。
これらの動きは、大都会にはない、地域の魅力や可能性に、人々が気づき始めた兆しと受け取れます。その背景にあるのは、価値観の多様化やライフスタイルの変化です。人の幸せは金銭だけでは測れません。高い所得よりも、人とのつながりを感じながら、自然の中で過ごす豊かな時を求める人が増えています。終身雇用や家族のあり方も問われています。潮目が変わりつつあるのです。
この兆しを一過性のものではなく、地域の時代到来の確固たる流れにしていかなければなりません。私たちならできる、そう確信しています。
東京が、またその模倣が地方の発展を支えるのではありません。地方から日本の元気をつくる。そのためにはわが道を行かねばなりません。今必要なのは、すべての地域が違いを認め合い、高め合う関係を築くこと。それぞれの地域が強みを活かし、個性豊かに発展する道へと進むことです。
兵庫には自然、歴史、先人の努力により培われた多様な資源があります。一つひとつの資源を鍛え上げ、本物の強みへと高めなければなりません。
私たちは21年前、阪神・淡路大震災を経験し、創造的復興を成し遂げてきました。それだけに兵庫ならではの高い防災力と安全安心の基盤をつくりあげなければなりません。どこよりも「安全安心の兵庫」をめざすのです。
わが国の発展を支えてきた高い技術力を持つものづくり産業の集積も次の時代に活力を生む源です。成長が見込まれる航空機、新エネルギー、先端医療などの次世代産業を育成していく必要があります。「ものづくり兵庫」の革新です。
兵庫に立地する大型放射光SPring-8、X線自由電子レーザーSACLA、スーパーコンピュータ「京」は世界有数の科学技術基盤です。人類の発展に寄与するような研究開発を兵庫発で進めていかなければなりません。「イノベーション兵庫」をつくりましょう。
「多文化共生の兵庫」も強みです。明治以降、世界有数の貿易港として発展した神戸を中心に今でも145カ国、9万7千人の外国人県民がおられます。世界に開かれた地域としての魅力に磨きをかけなければなりません。
古より御食国(みけつくに)と称された淡路をはじめ、兵庫は、多様な気候風土に恵まれた食の宝庫です。神戸ビーフ、淡路島たまねぎ、兵庫のりなど世界へ豊かな食を提供する「平成の御食国(みけつくに)兵庫」をめざします。
そして何よりも、兵庫をつくってきた人材力、県民の進取の気性があります。兵庫は、新たな分野に果敢に挑戦する人や企業を輩出してきました。困難な時代だからこそ、明日を切り拓く原動力として、この気風を伸ばしていく必要があります。「人づくり県兵庫」です。
これらの取組を進めるに当たっては、地域の多様性を最大限に活かさなければなりません。摂津、播磨、但馬、丹波、淡路の五国からなる兵庫。人口と産業が集まる大都市から、豊かな生活環境の地方都市、山川海の大自然に囲まれた多自然地域まで、多様な地域特性が凝縮された、まさに日本の縮図です。兵庫なら、望む生き方、働き方ができる。どんな産業でも起こせる。この間口の広さこそ、兵庫らしさです。
県内41市町も創生戦略を策定し、今後、取組が本格化します。これまで以上に市町と協調し、地域と地域、人と人を連携させて、兵庫の総合力に高める。この「多様性と連携」で未来を拓く兵庫創生に挑みます。
新年度は、昨年秋策定した地域創生戦略を具体化するスタートの年、兵庫地域創生元年です。
めざすは、人口が減る中でも、少子高齢化が進んでも、活力を保ち、将来への希望を持てる地域の実現です。対策に近道はありません。世界を視野に、将来を見据え、兵庫の強みを活かし、一つひとつ前へと歩みを進めます。
これより新年度の重点施策を説明します。
まずは、地域創生です。
第一に、人口の自然増対策です。
少子化の要因である未婚化と晩婚化を阻止しなければなりません。身近な場所で婚活ができるよう、市町単位に出会い支援の窓口を設置します。また、UJIターンにつなぐため、出会いサポート東京センターと東京こうのとり大使が一体となって、関東在住者の結婚を支援します。
出産への支援として、保険適用外となる不妊治療への助成に加え、流産を繰り返す不育症治療への支援を行います。
望まない妊娠や経済的な理由で子育てができない方もおられます。こども家庭センター、市町、産科医の連携により、里親制度を活用しながら、特別養子縁組の普及を図ります。
地域全体で支え合う地域三世代同居を進める必要があります。子育て支援に関わりたいシニア世帯と支援を受けたい子育て世帯をマッチングし、シニア世帯が日常的な見守りや相談、緊急時の一時預かりを行う地域祖父母の育成に取り組みます。
待機児童を解消するため、保育所整備、認定こども園への移行促進、保育人材確保の取組を強化します。
小学校に上がった子どもの預け先に困る、いわゆる「小1の壁」の解消に向け、放課後児童クラブの充実も大切です。賃貸物件で開設する場合にも改修経費を助成します。
あわせて、病児、病後児保育施設を増やすため、診療所に併設される小規模な施設への助成を拡充します。
子育て家庭の経済的負担を軽減するため、第3子以降を対象に20年度から多子世帯の保育料軽減を行ってきました。
今回、国による第2子及び第3子以降の軽減措置が拡充されました。この国の措置の対象外となる子のうち、多子世帯について所得制限を640万円まで緩和するとともに、第2子について同じ所得制限のもと第3子以降に準ずる支援を市町と共同で実施します。これにより支援対象となる子どもの割合が2分の1から4分の3へと広がります。
子どもを産み育てるためには、経済的に自立し、安定した収入を得ることが必要です。
若者の就職を支援するため、県内大学と共同で地元企業とのマッチングを支援します。また、非正規雇用者の正社員転換に向け、処遇改善に関する相談会の開催や、企業への個別支援を行います。学卒未就労者の早期就業を促すため、就労体験の場づくりも進めます。
女性が出産、育児により離職することなく、働き続けられるために、育児休業の取得促進にあわせ、短時間勤務制度の利用につながる代替要員の確保を助成します。
また、女性の再就職を支援するため、離職した女性を雇用する事業主への補助に加え、主婦のインターンシップを支援します。
第二に、人口の社会増対策です。
人口の転出超過、特に就職に伴う若者の転出の増加が深刻です。新卒者や転職を志す第二新卒者の県内就職拡大に向け、高校2年生全員への県内企業ガイドブックの配布、インターンシップ、首都圏の大学との就職支援協定に取り組みます。
また、UJIターンを促進するため、カムバックひょうご東京センターを拠点に情報発信を行うとともに、同センター内に国からの権限移譲を活用した県版ハローワークを開設すべく協議を進めます。
郡部、都市部を問わず増加している空き家を移住の受け皿としても活用します。安全安心で良質な中古住宅の流通を促進するため、建築士による家屋の品質判定、いわゆるインスペクションの普及を図ります。あわせて、一戸建ての空き家の水回り補修など住宅、事業所、交流拠点への改修を助成する制度を農村部から都市部に広げて実施します。
高齢化による活力の低下が課題となっているオールドニュータウンにおいて、再生に向けたガイドラインを策定し、地域、行政、事業者の連携による取組を促します。また、新婚、子育て世帯への住み替えを進めるため、賃貸向けの住宅改修を助成します。
県営住宅の活用も進めます。入居要件を緩和して県外からの三世代近居や若年世帯の居住を促進し、移住希望者による短期の「お試し居住」も支援します。
二地域居住を広げるため、空き家と遊休農地を一体的に活用した田舎暮らし拠点や農業体験民宿の整備を支援します。多自然地域に首都圏からの移住者を呼び込むモデル事業も実施します。
移住、定住には働く場が不可欠です。雇用の受け皿をさらに拡大するため、法人事業税の軽減などにより産業立地を進めます。社員の大規模移住も期待できる本社機能立地は昨年2社実現しました。さらなる立地に向け、不動産取得税の軽減措置を拡充するとともに、小売業などを支援対象業種に追加します。このほか、外資系企業の立地支援補助の創設、IT関連事業所の開設支援、ふるさと起業支援などにより、幅広い投資を促進します。
また、内陸部の産業立地需要に対応するため、小野市内で新たな産業団地の整備に着手します。
第三に、地域の元気づくりです。
その一は、次世代産業の育成です。
昨年、神戸医療産業都市における産学官連携の取組が、全国で唯一のリサーチコンプレックス推進プログラムに選ばれました。理化学研究所を中心に京都大学、神戸大学、県立大学など県内外の大学と企業が連携し、健康分野の研究開発、事業化、人材育成をワンストップで行う仕組みを構築します。
また、播磨科学公園都市では、物質・材料研究機構との連携による材料開発など、放射光施設を活かした幅広い研究開発を推進します。
本県の次世代産業雇用創造プロジェクトには、180社を超える県内企業が参加し、航空宇宙、ロボット、水素エネルギーなど成長分野の事業創出に取り組んでいます。県内に多数立地する素材部品メーカーを中心とした川上から川下までのサプライチェーンの構築に向け、人材育成、技術開発、販路開拓、設備投資への支援を行います。
その二は、中小企業の競争力強化です。
中小企業振興条例も制定されました。中小事業者の努力や創意工夫を支援します。
経営の向上に必要な資金需要に応えるため、制度融資枠を3,500億円に拡大するとともに、融資利率の引下げと信用保証協会の保証料率の見直しにより、事業者の実質負担を軽減します。
地場産業のブランド力を高めなければなりません。ニーズに応じた新製品の開発、国内外の展示会への出展、デザイナー等との連携、それらを支える専門人材の育成を後押しします。
競争力の高いオンリーワン企業の創出、創業間もない企業向け展示会による販路開拓、ものづくり大学校による人材育成も進めます。
その三は、農林水産業の育成強化です。
TPPにより経営環境の大きな変化が予想されます。新しい農林水産ビジョンに基づき、農林水産業の競争力強化を図ります。
大都市近郊という本県の優位性を活かし、野菜等の園芸作物の供給力を高めるため、農業経営の規模拡大を推進します。特に付加価値の高い葉物野菜、トマトなどの生産拡大に向け、先端技術を用いた施設園芸を推進します。
営農者の設備投資負担をさらに軽減します。リース方式で行っている施設貸与事業に賃貸借方式を加え、対象を林業、水産業へも拡大します。
需要の拡大する海外市場への農畜産品の輸出拡大を進めます。肉牛の繁殖と肥育の一貫経営への誘導などにより、神戸ビーフの生産拡大を図ります。国際的な衛生管理方式HACCPに対応した輸出用食肉センターの整備も支援します。
また、いちじく、丹波の黒大豆など付加価値の高い産品の輸出にモデル的に取り組みます。パリやドバイでの食品展示商談会へも積極的に出展し、兵庫ブランドの海外市場での認知度を高めます。
本年5月、神戸で開催されるインターナショナルワインチャレンジ(IWC)SAKE部門審査会を契機に兵庫の酒の魅力を発信します。
さらに、山田錦やコウノトリ米などのブランド米の生産拡大を進めます。主食米の兵庫オリジナル品種の開発にも着手します。
兵庫の林業振興は、木材利用と木質バイオマスの2本柱で推進します。発電燃料などの需要に的確に対応するため、林内路網整備や高性能林業機械の導入支援を行います。県産材を利用した木造住宅の建設を促す特別融資も拡充します。
水産振興としては、第2の鹿ノ瀬など魚礁漁場の整備を計画的に進めるとともに、アサリ、カキの種苗育成やローカルサーモンの高品質化など養殖業の生産拡大に取り組みます。
昨年秋、瀬戸内海環境保全特別措置法が改正されました。瀬戸内海を豊かで美しい里海として再生するため、湾灘ごとの協議会を設置し、栄養塩管理や藻場干潟の整備を進めます。
その四は、次代を担う人づくりです。
県立高校の特色化を推進します。専門特化した学力をつける理数科や国際科などの学科増設に加え、社会のニーズにあった職業能力を身につける福祉系新学科の開設準備を進めます。新たにふるさと寄附金制度も活用して、特色ある学校づくりに取り組みます。
国際的に活躍する人材を育成するため、外国語指導助手を全県立高校に配置し、生徒の海外留学も積極的に支援します。
特色ある教育を展開する私立学校に対しては、引き続き運営費への助成と魅力発信への支援を行います。また、保護者の経済的負担を軽減するため、授業料補助を拡充します。
いじめ、不登校、貧困など学校現場を取り巻く課題は複雑多様化しています。解決困難な事案への対応力を高めるため、28年度から31年度までに全中学校にスクールソーシャルワーカーを配置します。
スマートフォンの普及に伴う青少年のインターネット依存対策には、友だち同士や親子で利用時間などのルールを決める取組が有効です。青少年愛護条例を改正し、主体的なルールづくりを学校、家庭、事業者で支援します。
地域の知の拠点としての県立大学の強みをさらに伸ばします。神戸大学などと連携し、学生の地域貢献や卒業生の地元就職の拡大をめざすCOCプラス事業に取り組みます。
産学連携による最先端の研究と地域産業支援を推進するため、姫路工学キャンパス全体の建替整備を計画的に進めます。また、姫路駅前にも医産学の連携拠点を設けます。
県土の7割を占める森林では、管理の担い手不足により、木材供給のみならず、水源涵養、土砂流出防止などの公益的機能の維持に懸念が生じています。木材生産や森林整備に加え、森林セラピーや野生鳥獣対策を含めた森林経営の専門人材を育成するため、県立森林大学校を開設します。宍粟市と協力して、来年4月の開校に向け、準備を進めます。
その五は、多様な人材の活躍促進です。
起業創業をめざす女性や高齢者に対しては、ビジネスプラン作成から、事務所開設への助成、事業資金の無利子貸付まで総合的に支援します。
障害者雇用を目的とした中小企業の事業協同組合設立を支援し、障害のある方の雇用の場を拡大します。ICTを活用した在宅就労の普及に向け、スキルアップ研修や企業への働きかけも行います。障害児を対象に、民間施設を活用した職業体験にも取り組みます。
また、サラリーマンの生きがい就農も含め、農業への関心を広げるため、駅前講座を実施します。
その六は、多文化共生社会の実現です。
多文化共生社会づくりの新たな指針に基づき、外国人県民とともに暮らし、それぞれが生きがいを持てる地域づくりを進めます。
県立高校で日本語能力に応じた入学者選抜や指導方法の開発を始めるなど、外国人児童生徒への日本語指導や母語による学習支援の充実を図ります。
医療通訳者の育成をはじめ、医療、福祉サービスにおける多言語での情報提供を広げ、暮らしの安心も確保します。
高度な人材の受入れを増やすため、奨学金制度により留学生の拡大を図り、インターンシップによる県内企業への就職支援や、帰国後のネットワークの形成も進めます。
その七は、文化、スポーツの振興です。
芸術文化振興ビジョンに基づき、県内各地で多彩な事業を展開します。
芸術文化センターでは佐渡裕芸術監督プロデュースによるオペラ「夏の夜の夢」など、県立美術館では「藤田嗣治(つぐはる)展」など、兵庫陶芸美術館では「明治有田超絶の美」など、歴史博物館では「立体妖怪図鑑」など、考古博物館では古代中国鏡「千石コレクション」の展示や淡路の銅鐸の分析調査など、特別な企画や展示を行います。
生の演劇に触れる機会が少ない地域において、舞台を楽しめるピッコロ劇団の出前公演を新たに始めます。
ラグビーワールドカップ、東京オリンピック、パラリンピック、そして、関西ワールドマスターズゲームズと、2019年から毎年、世界のアスリートが日本に集う機会が続きます。
競技スポーツの強化に向けて、陸上競技やサッカーなど特別強化対象競技への支援、ジュニアの発掘からトップ選手の育成まで系統だった取組を進めます。オリンピック事前合宿の招致も行います。
特別支援学校体育館のバリアフリー化や一般開放など環境整備を進め、障害者の社会参加につなげます。
アジア初のワールドマスターズゲームズまであと5年、組織委員会を中心に会場選定を行いつつ、大会開催の準備を進めます。また、日本スポーツマスターズ2017兵庫大会の一年前イベントを実施し、機運醸成を図ります。
その八は、魅力と活力あるまちづくり、むらづくりです。
神戸市とともに、三宮を魅力ある街に再生します。歩行者の回遊性を重視した道路空間のデザイン、駅ビルやバスターミナルの刷新、オフィスや商業スペースの充実など、再整備基本構想の実現に向けた取組を進めます。
街のにぎわいの中心となる商店街の再生に取り組みます。空き店舗の活用を進めるための店舗借上げ、新規出店に向けた改装に加え、若者と女性による開業や事業承継を支援します。また、ご用聞き、共同宅配など高齢化に対応する取組を拡充します。
地域コミュニティとしての機能向上を図るため、地域と一体となって実施するイベントへの支援も拡充します。
多自然地域の活性化に向け、住民の主体的な取組を支援する地域再生大作戦を引き続き実施します。複数集落による6次産業化や地域おこし協力隊と連携した起業の促進に加え、遊休施設を活用したレストラン、特産品加工所の整備を支援します。
また、地域資源を交流人口拡大の起爆剤とするため、新たな発見が続く丹波の恐竜化石を活かしたまちづくりやスキー場構想など大河内高原の活性化、明延鉱山跡の一円電車復活などの地域プロジェクトを応援します。
その九は、内外との交流拡大です。
訪日外国人旅行者は3年連続で過去最高を更新し、全国で1,900万人を超え、本県でも100万人を突破する見込みです。
姫路城をはじめとする歴史文化、温泉地やスキー場、多彩な食材など、兵庫の魅力を発信するとともに、観光施設へのWi-Fi環境の導入、多言語案内看板の整備などにより、さらなる誘客を図ります。
また、新たな広域観光周遊ルートとして神戸、姫路と山陰海岸ジオパークを結ぶ「関西・美の伝説」と、大阪湾、播磨灘、世界遺産登録をめざす鳴門の渦潮をつなぐ「せとうち・海の道」の情報発信に力を入れます。
関西広域連合を中心に、関西国際観光推進本部(仮称)を立ち上げ、関西全体の観光プロモーションを世界で展開する体制も整えます。
西オーストラリア州友好提携35周年をはじめ、フランスの友好県との交流25周年、パラグアイ日本人移住80周年の記念行事や、日本広東経済促進会などへ訪問団を派遣します。
これらの地域創生戦略を推進するためにも、安全な県土と、医療、福祉など生活の安心確保、教育や社会基盤の充実が欠かせません。
まず、安全基盤の整備です。
阪神・淡路大震災から21年経過し、東日本大震災から5年を迎えます。未曾有の大災害の教訓を活かし、南海トラフ地震に備えなければなりません。最大級の津波を想定し、防潮堤の沈下対策や防潮水門の整備、耐震化を進めます。また、浸水の恐れがある15市町のすべての住民を対象に、初めての一斉避難訓練を実施します。
関西広域連合では、関西全体の被害想定と、対策の全体像を取りまとめ、広域連携の強化に役立てます。
命を守る建築物の耐震化も急がなければなりません。耐震性の低い住宅34万戸への働きかけを強めるとともに、避難所となるホテル、旅館等の民間建築物の改修助成対象を中規模建築物に拡充します。小規模建築物の耐震診断にも助成します。あわせて、耐震化事業向けの融資も、限度額の引上げ、利率の引下げを行います。
頻度を増す豪雨災害への備えも大切です。治山ダムや砂防えん堤の整備、災害に強い森づくり、ため池の改修を計画的に推進します。
河川上流部からの土砂流出による被害防止のため、上流部の対策も地域総合治水推進計画に盛り込み、中小河川防災対策事業を計画的に実施します。
災害への地域の対応力を高めるため、防災リーダーを育成するとともに、企業ごとに従業員の消防団を結成し、企業と地域が連携して行う消防活動を支援します。
また、三木の広域防災センターにおいて日本赤十字社兵庫県支部が進める広域応援、受援のための災害救護拠点の整備を支援します。
阪神・淡路大震災からの創造的復興の経験と、国際的な防災関係機関の集積を生かして、防災減災の専門人材を育成する県立大学大学院減災復興政策研究科(仮称)を来年春に開設します。
南海トラフ地震や首都直下地震に備えるためには関西にもう一つの司令塔が不可欠です。関西広域連合で、防災庁が担うべき機能や、首都直下地震発生時の広域応援体制の検討を行います。
次に、安心の確保です。
医師の地域偏在や診療科偏在を解消しなければなりません。へき地で勤務する医師の養成、大学医学部への特別講座増設によるへき地病院への派遣強化など、医師確保対策に総合的に取り組みます。
看護人材も不足しています。再就業支援のための窓口を追加設置するとともに、医療機関、福祉施設が合同で開催する就職説明会への支援を行うなど、看護師確保対策を行います。
県立病院では、小児、周産期医療の全県拠点病院として、新しいこども病院を5月に開院します。隣接地には、小児がんの陽子線治療に重点をおいた施設の整備も進めます。また、柏原病院と柏原赤十字病院を統合した新病院の整備や、姫路循環器病センターと製鉄記念広畑病院の統合再編基本計画の策定を進めます。西宮病院と西宮市立中央病院のあり方については、統合も選択の一つとして検討を行います。
死亡原因の第1位、がんに対しては、早期発見、早期治療が有効です。受診率が低い女性特有のがん検診について中小企業従業員とその家族の受診費用を助成します。
団塊の世代が75歳以上になる2025年には1万3千人分の介護施設が不足する見込みです。8千人分の特別養護老人ホームの整備を急ぐとともに、5千人分の受け皿となる在宅サービスの充実を進めます。
定期巡回・随時対応サービスに参入する事業者への支援に加え、地域の特養などの機能を活用し、24時間在宅介護サービスを提供するモデル事業を行います。
また、特養などが在宅高齢者の見守りを行う地域サポート型施設の取組、地域住民が家事援助や配食サービスを行う安心地区の取組を推進します。
認知症には、予防と早期対応が大切です。認知症チェックシートの普及促進や認知症予防体操のリーダー養成を行います。また、早期治療につなぐため、市町の認知症相談センターと医療機関の連携を強化します。
敬老の日が制定されて今年で50周年になります。発祥の地、多可町と共同で長寿を祝う記念行事を実施します。
阪神地域の高齢者の学習拠点である阪神シニアカレッジの機能を拡充するため、宝塚健康福祉事務所の整備とあわせて学び舎の整備に着手します。
障害者が自立した社会生活を営むことができるよう、グループホーム利用者への助成や手話の普及などを進めます。また、4月の障害者差別解消法施行に向け、相談センターの設置など体制を整えます。
精神障害者に対しては、転居等で必要な医療や支援が途切れることのないよう、健康福祉事務所、市町、医療機関などが情報を共有し、継続的に支援する体制を整えます。
これまで恋愛感情を伴わないつきまといは、ストーカー規制の対象外でした。迷惑防止条例を改正し、これらの嫌がらせ行為を取り締まります。また、地域の防犯力を高めるため、地域団体による防犯カメラ設置への支援も拡充します。
自転車事故を減らすため、高校生向けのスタントマンを使った教室など自転車教育の充実とあわせ、自転車保険への加入を呼びかけます。
人口減少や施設の老朽化で水道事業の経営維持が課題となっています。暮らしの基盤として、水道は一日たりとも止められません。市町と共同で広域化などの対応方策を検討します。
シカやイノシシによる被害も依然深刻です。庁内に専門組織を設置して対策の充実を図り、シカ45,000頭、イノシシ15,000頭の捕獲をめざします。
捕獲したシカの集積施設の整備や処理加工業者による回収を支援し、食肉などへの有効利用を進めます。森林動物研究センターでの捕獲対策の指導者育成も行います。
COP21では、世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えるべく全世界が温室効果ガス排出削減に努力するという目標が示されました。本県としても、引き続き事業者に対し削減計画の策定とそれに基づく省エネ対策などの実施を求めます。あわせて、県内の排出削減目標や再生可能エネルギー導入目標の再設定を行います。
国境を越えて拡散する微小粒子状物質PM2.5対策など、国際協力が必要な環境問題が増えています。地球環境戦略研究機関の協力を得て、中国広東省との間で、測定分析技術の研修、発生源の共同調査、汚染防止に向けた民間企業への技術移転を進めます。
また、本年夏、ロシアで開催される世界閉鎖性海域環境保全会議(エメックス11)に参加し、瀬戸内海再生の取組等を世界へ発信します。
本年9月、神戸でG7保健大臣会合が開催されます。感染症対策など世界が直面している課題への対応が話し合われます。
会議にあわせて、WHO神戸センターとも連携し築いてきた神戸医療産業都市の成果を世界に発信します。また、事件事故防止体制を強化し、安全確保に万全を期します。
第三に、教育環境の充実です。
地域の資源を活かし、体験を通して豊かな心を養う教育を推進します。小学校の環境学習と自然学校、中学校のわくわくオーケストラ、トライやるウィーク、高校生のふるさと貢献活動など、年代にあわせた取組を行います。いけばな、茶道などの伝統文化わくわく体験教室も実施します。
子どもの学力向上に向けては、地域の協力を得て、放課後の補充学習「がんばりタイム」を拡充します。また、ウェブ上の学習支援ツールを活用し、一人ひとりの進度にあわせた指導を行う体制も整えます。
地域全体で子どもの成長を支えるため、学校、PTA、自治会などによる地域学校協働本部をすべての小中学校区に設置します。関係者が教育目標や課題を共有し、学習支援や体験交流活動を実施します。
第四に、社会基盤の整備です。
県土の骨格を形成し、発展の基盤となる基幹道路ネットワークの整備を推進します。大阪湾岸道路西伸部の事業着手、名神湾岸連絡線と播磨臨海地域道路の早期事業化、また、北近畿豊岡自動車道八鹿日高道路と山陰近畿自動車道浜坂道路の早期供用、両道路の接続部の調査推進などについて、地元市町、経済界とともに国へ働きかけ、整備を急ぎます。
公共交通の維持と利便性向上のため、神戸電鉄粟生線において巡回バス運行による利用拡大の社会実験を行います。淡路地域に乗り入れる高速バスへのICカードシステム導入も支援します。JR姫新線では開通80周年を契機とした利用促進を進めます。
本年4月、関空、伊丹両空港の新会社による運営が始まります。関空のLCC拠点化、伊丹のさらなる活用とあわせ、神戸空港を含めた三空港の一体運用も求めていきます。
但馬空港の開港から21年が経ち、伊丹便で使われている機材の経年化が進んでいます。安全で安定的な運航の継続に向け、機材を更新し、羽田直行便の実現もめざします。
最後に、自立の基盤づくりです。
地方創生のためにも、地方が役割に見合った権限、財源を持つ必要があります。
昨年度から始まった提案募集方式で、大規模農地の転用許可、地方版ハローワークの設置権限など、17件の権限移譲が実現しました。さらなる移譲を働きかけます。
関西広域連合への奈良県の加入が実現し、名実ともに関西が一丸となる体制が整いました。今後も、防災、医療、観光など7分野の広域事務と、総合戦略の策定や広域インフラの整備方向の検討など広域課題への対応を進めます。
住民サービスの向上、業務の効率化の観点から神戸市との事務の共同化を推進します。産業活性化センターを神戸市産業振興センタービルへ移転し、中小企業支援機関のワンストップ化を図ります。
また、新長田へ県と神戸市関係機関の共同移転を行い、被災地域のにぎわいづくりに貢献します。新年度は、神戸県民センターなどが入るビルの整備が着手されます。
行財政構造改革を着実に推進します。
本県の財政は、震災以降の復旧復興で大きな負担を強いられました。今でも4,300億円を超える震災関連県債残高を背負っており、約500億円の償還を余儀なくされ、収支不足の大きな要因となっています。このため、職員定数や給与の削減、組織機構の見直し、事業の重点化などに取り組んでいます。
当初予算を踏まえた新たな財政フレームでは、1月に公表された国の中長期の経済財政に関する試算に準拠して、税収や公債費、社会保障関係費等の伸びを見込み、歳入歳出を試算したところ、30年度の収支均衡は達成できる見通しです。29年度までの収支不足には、退職手当債や行革推進債、県債管理基金を活用し対応します。
また、新年度は第3次行革プランの策定から3年目にあたるため、プラン策定後の行財政環境の変化を踏まえ、県議会や有識者会議等のご意見もいただきながら総点検を行います。
これより新年度予算の概要を説明します。
国の経済・財政再生計画において、地方一般財源総額は28年度から30年度まで実質的に27年度と同水準に据え置かれる枠組みとなっています。
このため、28年度の地方財政は、一般財源総額が27年度とほぼ同水準にとどまっており、社会保障関係費の新規需要増や自然増を考慮すると、引き続き厳しい財政運営を余儀なくされます。
予算編成にあたっては、国の制度改正や予算編成、地方財政措置の動向を見極めつつ、県民ニーズに的確に対応するため、選択と集中を徹底しました。
なお、28年度当初予算は、先の臨時議会において議決いただいた緊急経済対策補正予算と一体的に編成しています。
歳入では、勤労所得の増や企業業績を反映した個人関係税や法人関係税の増、内需回復基調を踏まえた地方消費税の増に伴い、県税全体で、税交付金を除くと前年度を198億円上回る見込です。一方、税収増に伴い、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は55億円減少します。
歳出では、行政経費は、介護給付費県費負担金など社会保障関係費の増、中小企業制度融資の拡充による金融機関への預託金の増が見込まれます。投資的経費は、地方財政計画を踏まえた水準とするとともに、引き続き県有施設耐震化等の緊急防災・減災事業や山地防災、土砂災害対策を実施し、災害関連事業等を除き25億円上回る事業費を確保しました。
その結果、歳入歳出の収支不足額は320億円となり、前年度の430億円に比べ110億円改善しています。その対策として、財政フレームの範囲内で退職手当債や行革推進債の発行、県債管理基金の取崩しを行います。
以上の方針のもとに編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 1兆9,494億7,200万円
特別会計 1兆1,949億2,400万円余
公営企業会計 歳入 1,835億9,200万円余
同 歳出 2,087億8,800万円余となります。
条例については、兵庫県立森林大学校の設置及び管理に関する条例の制定や、青少年愛護条例の一部を改正する条例など24件です。
その他案件については、第3次行財政構造改革推進方策の変更、公の施設の指定管理者の指定など9件です。
昨年のラグビーワールドカップで日本代表を率いたエディ・ジョーンズ前ヘッドコーチは、「強みを把握し、伸ばす」チーム作りを徹底しました。日本人の体が小さいのは変えられないが、強く、速く、賢くなることはできる。そして猛練習により、80分間動き回り、攻撃し続けることのできる体力と、組織的な戦術を確立し、本番で、世界の注目を集める活躍を果たしました。
地域づくりも同じことではないでしょうか。個性を活かし、強みを活かさなくてはなりません。圧倒的に際立った個性でなければ、本物の強みにはならないのです。
地域創生を実現する力は、ふるさと兵庫を愛する一人ひとりの力の総力です。ともに知恵をしぼり、ひと味ちがう兵庫の魅力を地域、地域で作り上げようではありませんか。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議のうえ、適切な議決をいただきますようお願い申しあげます。
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