ここから本文です。
第339回兵庫県議会の開会に当たり、議員各位の日頃のご尽力に敬意と感謝の意を表します。
提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
明治維新と時を同じくして兵庫県が発足して150年が経とうとする今、世界は大転換期を迎えています。
変化の原動力は、情報通信技術です。情報には時間、空間の壁はありません。情報を瞬時に共有する基盤が地球規模で整い、貨幣までもが国境を超えて飛び交う時代になっています。人工知能が人間の領域を脅かす世界も現実化しています。
経済の勢力図が書き換えられつつあります。今や成長の中心は中国です。例えば、発展著しい広東省の経済力は、友好提携した1983年には本県の半分もありませんでしたが、今や本県の7倍に達しています。次にはインド、さらにはアフリカが控えています。
日本では人口減少、高齢化が進んでいます。明治以降増加してきた人口は、少子化により長期の減少局面に入っています。昨年は40万人の自然減、本県でも年1万人以上のペースで減少しています。今後、50年、100年にわたる人口減少は避けられません。
しかも、人々の価値観が多様化しています。人とのつながり、時間の豊かさ、健康など、一人ひとりが自分の大切にする価値を追求する時代になっています。
大きく変化する世界の中にあって、人口が減り、少子高齢化が進む中でも活力を保ち、誰もが豊かさを実感できる地域をつくっていかなければなりません。
振り返れば150年前の日本も大転換期にありました。産業革命により工業化した欧米列強がアジア、アフリカの植民地化に乗り出し、ついにその手が極東の小さな島国に伸びようとしていました。
この大波に立ち向かったのが幕末の若き志士たちでした。
明治維新に計画も設計図もありませんでした。過去からの延長線上でしか対処できない幕府に危機感を抱き、列強に対抗できる近代国家を建設しなければならないという夢を追って果敢に行動した若者たちが新しい国をつくる力となったのです。
そして今。時代を変える志士となるのは、若者をはじめ、今を生きる私たちです。既存の枠組みを超える新たな発想でこの大転換期を乗り越えていかなければなりません。
兵庫150年の歴史を振り返ると、そこには常に、激しい変化の中でも明るい未来を願い、奮闘してきた人々の姿があります。
気候風土、文化の異なる五国の統合による大兵庫県の誕生。工業化と都市化。不況と戦争。焼け野原からの戦災復興。高度経済成長。阪神・淡路大震災からの創造的復興。そして、その間ずっと続けられてきた、個性豊かな五つの地域が一つになって総合力を発揮する雄県兵庫をつくる取組。
順風満帆な道のりではありませんでしたが、その時々の県民の力で着実に発展への道を歩んできました。
県政150年を迎える今、改めて歴史を振り返る意味は何か。それは、先人たちの夢と行動が今の兵庫をつくってきたことを知るためです。未来を知ることはできなくても、未来をつくることはできる。そのことを学ぶためなのです。
必要なのは、夢と行動。将来を不確実と見るか、無限の可能性が開かれていると見るかは、私たち次第です。世界は急速に変わりつつあり、未来はきっと現在の延長線上にはありません。既成概念にとらわれず、変化をおそれることなく、新しい一歩を踏み出さなければなりません。
参画と協働の基本姿勢に立ち返り、安全安心の確かな基盤の上に、県民が望む生き方、働き方ができる地域をつくる、これこそ兵庫の新時代を拓く道筋です。
さあ皆さん、未来への扉をともに開こうではありませんか。
新たな兵庫づくりへの大きな節目となる平成30年度の県政の柱は、次の五つ。
一つに、新時代の兵庫づくり
二つに、安心できる社会づくり
三つに、次代を担う人づくり
四つに、元気な地域づくり
五つに、自立の基盤づくりです。
まず、第一に、新時代の兵庫づくりです。
その一は、県政150周年記念事業の推進です。県民と共に150年を祝い、地域の将来を考える多彩な事業を展開します。
7月12日に本県は設立150周年を迎えます。記念式典を開催し、来し方を振り返り、未来を誓います。あわせて、「2030年の展望」を発表し、兵庫のめざす姿を県民の皆さんと共有します。
県民連携事業を本格的に展開します。県民の創意溢れる取組を幅広く支援し、未来への期待を広げます。
県の成り立ちや歴史を振り返る場として、初代県庁舎を復元します。兵庫の文化、産業を体感できる県政資料館の整備を検討します。兵庫県百年史を継ぐ県史の編纂を進めます。
姉妹友好州省サミットを開催し、各地域の代表者を招待し、関係の強化につなげます。
その二は、地域創生の展開です。
戦略を改定し、元気な高齢者を増やす健康長寿社会づくりも、自然増対策と位置づけ、施策を展開していきます。
地域創生を加速するため、国の地方創生推進交付金と拠点整備交付金を最大限に活用します。さらに、市町と連携して本県独自の地域創生交付金を創設し、多様な取組をきめ細やかに支援します。
地域の資源を活かした魅力づくりを進めるため、県民局・県民センターの取組を促します。
その三は、行財政構造改革の総仕上げです。
阪神・淡路大震災や経済不況で危機に陥った財政を立て直し、将来にわたって県民の要請に応えられる行財政基盤を確立するため、県民の皆様の理解と協力のもと、厳しい改革に取り組んできました。
その目標年度を迎え、収支均衡をはじめ財政運営の目標を達成できることになりました。
しかし、今後も震災関連県債に加え、改革期間中の財源対策として特別に発行した県債の償還を行わねばなりません。内外の動向を注視しつつ、行財政の健全性を今後も維持できるよう、これまでの改革の成果を検証し、次年度以降の行財政運営の枠組みを検討していきます。
第二は、安心できる社会づくりです。安心して子育てできる社会、誰もが生きがいを持って長寿を全うできる社会をめざします。
その一は、子育て環境の充実です。
昨年県内で生まれた子どもは42,198人と28年から1,934人減りました。子育てしながら社会で活躍したい女性の希望に応えるためにも、安心して子どもを預けられる環境づくりを急がなければなりません。
保育定員を5千人増やすとともに、待機児童が集中している都市部での受け皿整備を加速するため、建物の賃料や用地取得に伴う利子負担に助成します。病児・病後児保育の実施箇所も増やします。
これと併せて、保育士の処遇改善を行い、保育人材の定着と質の向上を図ります。
子育て家庭の負担を軽減するため、県独自に中間所得層の第2子以降を対象とした保育料助成額を一律1,000円増やします。3歳未満の第3子では月7千円まで助成を行います。
保護者の多様なニーズに対応するため、21時まで延長保育を行う保育所や19時半まで開所する放課後児童クラブへの支援を行います。
地域で子どもを見守ります。地域三世代家族の育成に取り組む地区を増やし、シニア世代によるふるさと文化の伝承を支援します。
その二は、医療・介護の充実です。
団塊の世代が全員75歳以上になる2025年が近づいてきました。
保健医療計画と老人福祉計画を同時に改定し、医療と介護の体制を一体的に整備します。
病院における回復期病床への転換と特別養護老人ホームの整備を並行して進めます。また、神戸市西区玉津にある県内最初の特別養護老人ホーム「万寿の家」を元鈴蘭台西高校用地に移転するとともに、民間活力を活用し、地域の介護福祉拠点を整備します。
在宅介護では、定期巡回・随時対応サービスに参入する事業者を増やすため、人件費に加え、事業所の整備費や賃料への助成を行います。24時間対応の訪問看護ステーションを増やし、在宅看護の体制を強化します。
介護人材が不足しています。福祉人材センターの窓口を県内5箇所で開設し、就職支援を行うとともに、外国人技能実習制度を活用して介護職の実習生の受入れを増やします。総合衛生学院では、2019年度から介護福祉士養成課程を設置します。
地域の医療資源を有効に活用するため、改定する保健医療計画では2次保健医療圏域の再編や準圏域の設定を予定しています。疾病ごとに地域の実情に応じた医療体制を構築します。
県立病院では、丹波医療センター(仮称)の2019年度開設をめざし、整備を進めます。はりま姫路総合医療センター(仮称)は、設計を進めます。西宮病院と西宮市立中央病院の統合再編は、基本方針を明確化し、がんセンターについては、今後のあり方を検討します。
その三は、健康づくりの推進です。
県民の健康寿命の男女とも1歳延伸をめざします。
特定健診の結果や医療費、介護保険のデータを収集解析し、個々人の特性に合わせて将来の健康リスクを示し、生活習慣の改善を促します。
社員の健康づくりに取り組む企業を応援します。がん検診や歯科検診の受診費用に対する助成を行います。
中小企業で健康に働ける環境を整えるため、共同福利厚生事業「ファミリーパック」への助成を行い、人間ドックなどの利用を促進します。
高齢化に伴い認知症の詳細な検査を希望する方が増えています。認知症疾患医療センターを増設するとともに、地域ごとに医療機関のネットワーク化を図り、身近な医療機関での相談から診断、支援へと切れ目なく対応できる体制を整えます。
国民健康保険の運営基盤を強化するため、新年度から市町とともに県も保険者になります。制度改革に伴い保険料が急激に上昇する市町へは激変緩和措置を講じるなど、円滑な移行に努めます。
その四は、ユニバーサル社会づくりの推進です。
ユニバーサル社会づくりの理念と施策を規定した条例を制定します。あわせて、手話講座を各地で実施するとともに、失語症の方の社会参加を促進するため、意思疎通支援者を養成します。
鉄道事業者と連携し、駅舎のバリアフリー化を進めます。エレベーターやホームドア設置への支援を拡充するとともに、視覚障害者の安全確保のための研修を実施します。みんなの声かけ運動も引き続き展開します。
障害者福祉施設の整備促進と障害者の自立支援に取り組みます。福祉のまちづくり研究所をロボットリハビリテーションの拠点とするため機能強化し、阪神地域では新たなリハビリテーション拠点を検討します。
東京パラリンピックに向け、障害者スポーツの普及を図ります。万寿の家の移転跡地にスポーツ交流館と一体をなす障害者スポーツ拠点の整備を検討します。
その五は、安全安心の地域づくりです。
平成29年の県内の自殺者数は976人と2年連続で1,000人を下回りました。さらに「いのちと心のサポートダイヤル」の回線数を増やし、SNSも活用して相談体制を充実させます。
消費者問題が多様化、複雑化しています。市町の相談体制も整ってきたことから、県の地域消費生活センターの相談機能を消費生活総合センターに集約し、高度な相談に対応できる体制を整備します。
6月に住宅宿泊事業法、いわゆる民泊法が施行されます。生活環境の悪化やトラブルの発生が懸念されることから、民泊を制限する区域や期間を地域の特性に合わせて設定し、適正な運営を誘導します。
第三は、次代を担う人づくりです。人工知能と共に生きる時代がやってきました。これまで以上に人間ならではの創造力や感性を伸ばす取組が大切になります。
その一は、教育の充実です。
子どもの学力向上に取り組みます。学力に課題が見られる市町を中心に、地域人材を活用した放課後の補充学習を拡充します。つまずきポイント指導事例集を活用して授業の改善にも取り組みます。
本物に触れ、周囲との絆を感じる経験を通して豊かな人間性や社会性を育む兵庫型体験教育を推進します。小学5年生の自然学校では、感動体験をもたらす魅力的なプログラムの普及に取り組み、中学生へは、ふるさとの魅力発見を促す副読本を配布します。
高校の学区が拡大し、選択肢が広がりました。武庫荘総合高校に福祉探求科を新設するなど、高校の特色化を進めます。
高校生の海外留学を支援するとともに、県立高校10校を指定し、国際的に活躍できるグローバルリーダーを育てる取組を行います。
小規模高校でも多様な学びができるよう、遠隔授業システムを2校に導入し、その効果を検証します。
いじめや問題行動の重大化を防ぐ鍵は、早期発見です。スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの配置を増やすとともに、SNSによる相談窓口を試験的に開設します。
教職員の負担軽減が課題になっています。教員が教育に専念できる環境をつくるため、地域人材がスクールサポートスタッフとして業務の一部を担うモデル事業を行います。中学校へは部活動指導員を配置します。
私立高校に通う家庭の負担軽減を図るため、授業料の軽減措置を拡充します。平均授業料の上昇に伴う助成額の引上げを行うとともに、年収590万円未満相当の世帯を対象に、国が授業料無償化を2020年度までに実施するとの方針を踏まえ、県独自の段階的な軽減措置を行います。
その二は、多様な人材の育成です。
県立大学は、時代の変化に合わせて改革を進め、魅力を高めねばなりません。
神戸商科キャンパスの経済、経営学部を2019年度から文理融合型の社会情報科学部(仮称)とグローバル人材を育成する国際商経学部(仮称)に再編します。このため、新たな教育研究棟や国際学生寮を整備します。
環境人間学部では専門教育を横断的に進めるため、コースを再編します。
実践的な職業教育を行う専門職大学について、但馬で観光・文化をテーマに開設する準備を進めます。淡路では食をテーマに検討を行います。
開校20周年を迎える淡路景観園芸学校は、海外の大学とも連携してカリキュラムを再編し、研究・教育機関としての機能を強化します。
第四は、元気な地域づくりです。人が集まる地域をつくるため、産業の活性化、交流の拡大に取り組みます。人生100年時代の到来を見据え、全ての県民が活躍できる環境を整えます。
その一は、移住・定住の促進です。
人口の流出に歯止めがかかりません。昨年は6,657人の転出超過となりました。その多くが東京圏への20代の転出です。若者が働きたくなる、住みたくなる兵庫をつくらなければなりません。
UJIターンのワンストップ窓口であるカムバックひょうごセンターを強化します。兵庫の良さを体感してもらうため、東京、大阪からのお試し移住ツアーを実施します。
昨年末1.36倍と本県の有効求人倍率は高い水準で推移しており、人手不足感が強まっています。若者の県内就職と定着を促進するため、引き続きひょうごで働こうプロジェクトに取り組みます。
兵庫型奨学金返済支援制度は、助成期間を最長5年まで延長し、中小企業の人材確保を支援します。
面接旅費、転居費用助成は、対象地域を拡大するとともに、新たに企業の採用力強化に向けた取組を支援します。
第2新卒者に対しては、転職希望者を積極的に受入れる企業の情報提供を強化します。
その二は、県民総活躍の促進です。
本県の女性就業率は依然低い状況です。就業相談や職場の意識改革を促す研修を実施するなど、女性の活躍を応援します。
元気な高齢者が増えています。ひょうご・しごと情報広場と県民局・県民センターに就労支援窓口を開設し、シニア世代に就職情報を提供します。
県内企業の障害者雇用率が初めて2%を超えました。障害者の社会参加と自立を促進するため、特例子会社や事業協同組合の設立を支援します。在宅で行える仕事の開拓、インターネットを活用した授産製品の販売促進など、所得の向上を後押しします。
その三は、産業の活性化です。
航空、水素エネルギーなどの次世代産業を育成します。重点分野にAI・IoTを追加し、新産業創造研究機構に専門人材を配置してAI・IoTの活用に取り組む企業を支援します。
大型放射光施設SPring-8などを生かして新材料の開発を進めるため、産学官による放射光利用の推進体制を立ち上げます。
海外に活路を求める中小企業が増えています。事業可能性調査を支援するとともに、JICAやJETROとも連携して海外展開を後押しします。
昨年開設した起業プラザひょうごは若者を中心に利用が進んでいることから、若手起業家向けの支援事業を創設します。
多自然地域に限定していたIT関連事業所の開設支援の対象地域を中小都市にも拡大します。高度な技術を持ち、国内外で活躍しているIT起業家と連携し、ITベンチャーの誘致に取り組みます。
制度融資の新規開業貸付に経営者の個人保証をとらない制度を新設します。
県内への産業立地を強化します。支援制度の申請期間を建築確認申請の日まで1年程度延長し、制度の利便性を高めます。
但馬技術大学校内に県内4か所目のものづくり支援センターを設置します。但馬の製造業の支援拠点として、独自技術の発掘・育成に取り組みます。
黒字経営でありながら後継者がいないために廃業する企業が増えています。商工会、商工会議所、金融機関と連携して事業承継に悩む企業を支援する体制を整備します。
商店街では、県政150周年を記念した賑わいづくりへの支援を行います。次のリーダーを育てるため、若手商業者の発想を生かした取組への支援を強化します。
その四は、農林水産業の基幹産業化です。
(農業経営の法人化促進)
農業の持続的な発展のため、農業経営の法人化を進めます。設備の導入助成により法人化を促進するとともに、財務や労務管理など経営面の支援を行います。企業参入への支援も拡充します。
新規就農者を増やします。初期投資の負担を軽減する施設貸与や給付金の支給を引き続き実施するとともに、技術指導や地域への溶け込み支援を行います。UJIターン就農を促進するため、首都圏で相談会を開催します。
加西に整備した次世代施設園芸団地は一日にトマト11,000個、ミニトマト73,000個の安定出荷ができる施設となっています。中山間地域においても施設園芸を展開できるよう、加西拠点のノウハウを生かした環境制御機器の導入など農家への支援を拡充します。
但馬牛2万頭増頭計画の達成をめざします。新規参入する畜産農家の負担を軽減するため、賃貸する牛舎の整備を支援するとともに、肉用牛の飼育を助けるヘルパー組織の運営を支援します。
丹波の木質バイオマス発電所が稼動を始めました。
燃料材を含む木材需要の拡大に対応するため、林内路網など林業基盤の整備を進めます。所有者不明の森林が健全な森づくりの妨げになっていることから、集落ぐるみで行う所有者追跡調査への支援を始めます。
付加価値の高い建築用材の利用を増やす必要があります。工務店と連携して県産木造住宅の展示会を実施し、木材を耐火構造部材として利用するための研究も行います。CLTを活用した林業会館の建替も引き続き支援します。
森林大学校は、この秋、宍粟市内の小学校跡に移転し、本格開校します。より高度なカリキュラムを展開し、森林林業の担い手を育成します。
瀬戸内海を豊かで美しい里海として再生するため、イカナゴなどの水産資源の維持に必要な栄養塩類の管理手法の開発に取り組みます。下水処理場の管理運転も行います。
生物の生息環境を改善するため、藻場や干潟の再生を進めます。
漁場整備については、日本海でズワイガニやアカガレイの増殖場、瀬戸内海で第2の鹿ノ瀬構想に基づく増殖場の整備を推進します。
国内外の観光客に兵庫の食の魅力を発信する拠点となる神戸ビーフ館の30年度中のプレオープンをめざします。
スイーツ博物館の構想についても検討します。
その五は、鳥獣害対策の充実です。
野生鳥獣による農林業被害は依然深刻な問題です。捕獲目標をシカ4万6千頭、イノシシ2万頭に増やします。市町の要請により捕獲を代行する専門チームを編成します。スマホで遠隔操作できる大型捕獲オリの導入や、出没情報などを一元管理、分析するシステムの開発など、ICTを活用した対策も進めます。射撃訓練や捕獲技術の研修を行う狩猟者育成センターの整備に向け、環境調査を行います。
捕獲したシカを有効に活用するため、搬入、回収、処理加工、流通、消費の一貫した体制を構築します。処理加工施設から遠い場所で捕獲されたシカの回収を促すため、臨時置場となる冷凍コンテナの設置や保冷車の導入を支援します。
その六は、交流人口の拡大です。
外国人旅行者数で大阪、京都に大きく差をつけられています。魅力発信の強化が必要です。神戸、姫路城、城崎温泉をはじめ、本県の誇る観光資源を結び付けたゴールデンルートをSNSで強力に発信します。
兵庫の自然や文化を生かした体験プログラムの開発、世界最大のオンライン旅行社との連携、外国人ドライブ旅行者の誘客などにも取り組みます。
海外では急速にキャッシュレス化が進んでいます。海外からの買い物客を呼び込むため、商店街の小売店、飲食店におけるスマホ決済の導入を支援します。
行ってみたいと思わせる地域をつくるためには、地域の多様な魅力の一つひとつに磨きをかけなければなりません。
国立公園六甲山では、神戸市と共にグランドデザインを策定し、遊休施設の再生を促します。登山者や外国人観光客の増加に対応するため、自然保護センターをリニューアルし、名称もビジターセンターに改め、現在休館している冬期も開館します。
4つの日本遺産を活かした周遊ルートの開発にも取り組みます。銀の馬車道・鉱石の道では、明延と神子畑の接続ルートの整備を検討します。
山陰海岸ジオパークの運営体制や拠点施設を強化し、ユネスコ世界ジオパーク再認定をめざします。
新発見への期待が高まる篠山層群の化石については、調査範囲を特定して本格的な発掘調査に取り掛かります。
自転車を楽しむ人が増えています。アワイチで人気の淡路島にさらに多くのサイクリストを呼び込めるよう、徳島県と連携して、大鳴門橋への自転車道の設置を検討します。
身近な憩いの場である県立都市公園のリノベーションを順次実施していきます。明石公園、甲山森林公園の再整備を行うとともに、有馬富士公園、淡路夢舞台温室のリニューアルを検討します。
その七は、芸術文化・スポーツの振興です。
県立美術館「プラド美術館展」、陶芸美術館「ひょうごのやきもの150年展」、考古博物館「ひょうご五国の始まりを探る」など県政150周年記念特別展を開催します。記念日である7月12日から5日間の無料開放や各館が連携したスタンプラリーを実施します。
ワールドマスターズゲームズ2021関西の開催準備を加速します。生涯スポーツの裾野を広げるため、女性スポーツの会の設立やスポーツクラブ21の活性化を支援します。秋にマレーシアのペナンで開催されるアジアパシフィックマスターズゲームズへの参加ツアーを募集します。
東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、未来のスーパーアスリートを育成します。事前合宿の招致にも市町と連携して取り組みます。
第五は、自立の基盤づくりです。社会基盤整備を着実に推進します。時代の変化に対応した規制改革など、地域の自立に向けた取組も進めます。
その一は、防災・減災対策の強化です。
南海トラフ地震に備え、津波防災インフラの整備を計画的に推進します。日本海側の津波防災インフラ整備計画も策定します。
緊急時に円滑に避難できるよう、スマートフォン向けの情報伝達アプリを開発するとともに、災害時要援護者の個別支援計画の策定を進めます。
巨大災害に警鐘を鳴らす必要があります。我が国の防災・減災力の向上に貢献する人と防災未来センターの展示機能のあり方を検討します。
豪雨災害が頻発しています。第3次山地防災・土砂災害対策計画を策定し、治山ダムや砂防堰堤の整備、災害に強い森づくりを進めます。河川の拡幅や洪水調節施設の整備も行います。
ため池を総合治水条例の指定貯水施設に指定して浸水被害の軽減に活用します。台風期を通じて予め水位を下げて大雨に備えてもらうよう管理者を支援します。
ため池の安全対策も急がれます。ため池の適正管理を支援する窓口を設置するとともに、小規模ため池の台帳を整備するなど、下流への影響が懸念されるため池の安全確保を図ります。
その二は、エネルギー・環境対策の推進です。
温室効果ガスの排出削減目標を達成するため、うちエコ診断の実施体制を強化し、中小事業所へは省エネ設備の導入を支援します。
バランスの取れた再生可能エネルギーの利用をめざし、バイオマス発電や小水力発電、家庭用蓄電システムの導入などを支援します。
水素エネルギーの活用方策や水素受入拠点の立地可能性を検討し、取組方針を定めます。県内3か所目の水素ステーションの整備を支援します。
海の環境を改善するため、漂流ごみ、海底ごみなど海ごみの効率的な回収、処理方法を国、市町と連携して確立します。
アスベスト使用建築物の解体が今後増える見込みです。飛散防止を徹底するため、解体現場の監視を強化します。
その三は、交流基盤の整備です。
基幹道路ネットワークは地域活性化の基盤です。
3月18日に新名神高速道路の県内全線が開通する運びとなりました。
大阪湾岸道路西伸部、神戸西バイパス、中国横断自動車道姫路鳥取線、東播磨道、山陰近畿自動車道、北近畿豊岡自動車道の早期整備、名神湾岸連絡線、播磨臨海地域道路の早期事業化を推進します。特に山陰近畿自動車道浜坂道路Ⅱ期については、来年度事業着手をめざします。
概ね30年後を見据えて、基幹道路ネットワークの将来像を示す新たな基本計画を策定します。
高速道路の利便性を高めるスマートインターチェンジの整備を進めます。明日開通する淡路島中央に続いて、淡路ハイウェイオアシス、山陽自動車道三木サービスエリアなどでの整備を検討します。
姫路港に賑わいを取り戻すため、旅客船ターミナル一帯の再整備計画を具体化します。陸上輸送から海上輸送への転換を促進するため、姫路港と神戸港を結ぶ内航フィーダー航路の開設可能性を検証します。
4月から神戸空港が民営化され、関西3空港の実質的な一体運営が始まります。今後更なる航空需要の拡大が見込まれ、3空港の最大活用に向けた運用の見直しが欠かせません。国をはじめ、経済界、関係府県市に3空港懇談会の早期開催を働きかけます。
但馬路線に新機材ATR42-600を導入します。増える座席数を生かして団体旅行を呼び込むため、旅行会社が開発する首都圏からの団体旅行商品に対して助成します。
年を取り、車を運転しなくなっても安心して生活できる環境をつくらなければなりません。路線バス、コミュニティバスの運行を支援するとともに、自家用車などを用いた地域団体の自主運行バスへの支援を拡充し、立ち上げを促進します。
その四は、活力あるまちづくりです。
空き家対策を充実します。新たに共同住宅や不動産業者が取り扱う物件を改修する場合も支援対象とします。事業所に改修する場合は助成額を増やします。閉鎖された事業用建物やオフィスビルの空き床を活用する場合には改修費や賃料を助成します。
古民家再生への支援を拡充します。歴史的建築物については、ひょうごの近代住宅100選も対象に加えて支援します。
兵庫の玄関口、三宮駅周辺の再整備が進んでいます。神戸市が今年度末に策定するエリア一帯の整備方針や新バスターミナルの整備基本計画の早期実現を支援します。
本庁舎1・2号館や県民会館の老朽化、神戸県民センター移転後の神戸総合庁舎の活用などの課題を踏まえて、本庁舎周辺の再整備を検討します。このため、まず本庁舎1号館の耐震診断を実施します。
その五は、地域自立の推進です。
県の情報を県民に確実にわかりやすく届けます。新たに外部の人材を広報官に登用し、SNSの効果的な活用や広報誌の見直しなどを進め、県の情報発信力を強化します。
国の権限と財源を大括りで地方に移譲する地方分権が必要です。
憲法における地方自治の本旨の明確化など憲法改正を国民的議論に高め、国の事務・権限を限定する新たな法律の制定や実験的な権限移譲の制度創設を国に提案します。
規制改革の新たな取組を始めます。過去に県や市町が独自に設けた規制が地域活性化の支障となっている事例を掘り起こし、その解消に努めます。
これより新年度予算の概要を説明します。
地方一般財源総額の増加が期待できず、厳しい財政環境のもと、行財政構造改革の総仕上げに取り組みながら、兵庫の新時代を切り拓く施策を進めていかなければなりません。
予算編成に当たっては、国の制度改正や地方財政措置を踏まえつつ、県民の要請に的確に対応するため、選択と集中を徹底しました。
歳出では、行政経費について、社会保障関係費の自然増、県政150周年記念事業の増を見込んでいます。地域創生の推進など新たな事業の展開には基金を活用するなど、財源の有効活用を図りました。
投資的経費については、地方財政計画を踏まえた投資水準を基本に、交付税措置のある県債を活用して財源を確保しつつ、地震・津波対策や第3次山地防災・土砂災害対策、公共施設の長寿命化対策など必要な事業費を別枠で確保します。
歳入では、教職員給与負担事務の神戸市への移譲に伴い個人県民税が減となる一方、地方消費税が内需の回復基調を反映し増となることに伴い、県税全体で前年度を27億円上回る見込です。一方、普通交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は、税収増に伴い基準財政収入額が減少するため、前年度を14億円下回ります。
県税の徴収対策や定員削減など、行財政構造改革の総仕上げに向けた歳入歳出改革の取組により、前年度まで生じていた収支不足を解消し、財政運営の目標とする収支均衡を図ることができました。
以上の方針のもとに編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 1兆8,880億5,000万円
特別会計 1兆5,476億2,400万円余
公営企業会計 歳入 2,570億3,500万円余
同 歳出 2,782億8,900万円余となります。
条例については、ユニバーサル社会づくりの推進に関する条例の制定など26件、その他案件については、最終2カ年行財政構造改革推進方策の変更など35件です。
日本で生まれ、英国で育った作家、カズオ・イシグロは、昨年のノーベル文学賞受賞の記念講演で「不確実な未来に重要な役割を担おうとするなら、我々はより多様でなければならない」と語りました。
異質なものとの出会いは、社会に変化と活力をもたらします。未来が不確実であればあるほど、活力を保ち続ける上で、私たち自身の多様性が問われることになります。
幸い兵庫は多様性の宝庫です。五国からなる地域の多様性を今でも強く保ち続けています。この強みを活かすことこそ、兵庫の進むべき道と信じます。多様な地域の個性を伸ばし、活かすのは一人ひとりの県民の力。
県民の皆さん、今こそ未来への扉を開き、新しい兵庫をともにつくっていこうではありませんか。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
お問い合わせ