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第353回兵庫県議会の開会に当たり、議員各位の日頃のご尽力に敬意と感謝の意を表します。
提出議案の説明に先立ち、今後の県政について所信を申し述べます。
新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方へのお悔やみと、感染された方へのお見舞いを申し上げます。
医療従事者はもとより、営業時間短縮やテレワークにご協力の事業者、外出・移動の自粛などにご協力の県民の皆さまに、心から感謝を申し上げます。
1月13日に緊急事態宣言が発令されて、感染者数は確実に減少傾向にありますが、医療体制の逼迫も続いているため、緊急事態宣言は3月7日まで、1ヶ月間延長されました。
医療の入口対策、出口対策、入院調整者の健康管理などの医療体制の確保、事業継続、雇用確保、県民生活のセーフティネット強化などコロナ関連対策に着実に取り組み、県民の生命と健康を守る闘いを続けています。
まさに、今が正念場です。日常生活を取り戻すためにも、兵庫が一丸となってコロナ対策を徹底し、収束させねばなりません。県民の皆様には、一段の協力をお願い申し上げます。
歴史を振り返ると、感染症の流行は社会を大きく変えてきました。
14世紀に欧州で大流行したペストは、多くの命を奪い、教会の権威が失墜しました。その結果、ルネサンスの契機になったと言われています。
100年前のスペイン風邪では、第1次世界大戦下の社会的混乱の影響もあり、公衆衛生に関する基盤整備の重要性が認識され、貧困問題改善のための雇用環境整備や生活協同組合設立への気運が高まりました。
コロナ終息後にも、新たな価値観が生まれ、時代の潮流となって、社会のありようが変わってくる。まさにポストコロナ社会の到来です。こうした社会の変化に対応していかなければなりません。
変化の一つは、デジタル化の加速です。
コロナ禍で、2年分のデジタル改革が2ヶ月で起きたと言われています。今後、5Gの導入が本格的に進めば、自動運転や遠隔医療が普及し、くらしの変化は飛躍的に進むでしょう。5Gの次の動きすら、始まっています。
今後、こうした技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデル、業務プロセスを変革する「デジタル・トランスフォーメーション」が急速に進むでしょう。行政も例外ではありません。
非対面型ビジネスの普及、医療・健康、社会課題の解決など、スタートアップの可能性も高まっています。
人々を、時間や空間、身体的制約から解放するデジタル改革に官民を挙げて取り組み、未来を先取りして、兵庫の優位を確立することが求められています。
二つは、変化に強い産業構造への転換です。
わが国のものづくり産業は、国際的なサプライチェーンの構築を通じて、製品価格の抑制など、新興国の市場を自らの成長に取り込んできました。
しかし、部品や材料の供給を特定の国に過度に依存した結果、生産活動に支障を来す事例が多発しました。
ひとたびどこかで問題が生じると、瞬く間に様々な影響が全世界に波及する。急速に進んだグローバル社会に対する警鐘とも言えます。
県内ではサプライチェーンの国内回帰、分散化の動きが始まっています。
あの大震災後、重厚長大産業中心の兵庫では、産業のソフト化など産業構造の転換や高度化への遅れが懸念されていました。しかし、技術革新による付加価値化や新分野への展開などにより、ものづくり産業を基礎とした新しい活力が生まれました。
さらに、デジタル化や情報化による新たな展開が期待されています。環境変化にしなやかに対応し、新たな価値や市場を生み出していけるかが、問われています。
三つは、地方回帰です。
東京の過密は、効率性、近接性、交流の機会など、優位を保ってきました。
大企業が集中し、正規雇用が多く、女性に期待される事務職やサービス産業の割合も多いため、進学や就職を機に、東京に転出する傾向が続いてきました。しかし、過密の弊害も認識されはじめました。特に、このコロナ禍において著しくなっています。
昨年、パソナグループが発表した本社機能の多くを東京から淡路島に移す試みは、大きな驚きを与えました。これまでの価値観では、想像できない出来事です。大阪から兵庫へ移転する企業も多くあります。デジタル基盤の活用で距離の壁を越え、密であることから、それでなくてもよい、かえって地方の良さを求めて、大都市で働かなくてもよい土壌が育まれつつあります。
「密から疎へ」。果てしなく高いハードルに見えた東京一極集中是正に向けての地殻変動が、大きなうねりとなりつつあります。この機を逃さず、地域創生、交流・環流の取組を加速させ、多くの人がくらし、働き、学び、活動し、訪れる、活力に満ちた兵庫を創りあげるべきです。
コロナという見えない敵との厳しい闘いが続く中、感染者や医療従事者、家族に対する誹謗中傷など、社会のゆがみも露呈しました。
一方、人と人との交流を制限したことで、家族や、なかなか会えない親類、友人、仲間の大切さに気付いた人も多いはずです。今、私たちは、社会の絆を大切にする思いを再認識しています。
社会の絆を再構築し、人、くらし、産業、地域が個性を生かしながらバランスを保ち、一つになって輝いていく。これはまさに、私たちが震災からの創造的復興の過程で得た財産ではないでしょうか。今、この貴重な経験を生かすときです。
そのためにも、コロナを乗り越えた先にある兵庫の姿を描き、その具体化への道筋をつけなければなりません。
県民の皆さん、ポストコロナ時代にふさわしい「すこやか兵庫」の実現に向け、ともに手を携え、挑戦しようではありませんか。
令和3年度の県政の柱は、次の五つです。
まず、第一に、安全安心な兵庫づくりです。
その一は、新型コロナウイルス対策です。
医療提供体制の改善が喫緊の課題です。入口対策として、医療機関などのご協力により、入院病床や宿泊療養施設を追加で確保しました。特定の宿泊療養施設には、医療ケアが必要な方を受け入れ、医療チームを定期的に派遣する体制を整えています。
また、出口対策として、入退院の円滑化が急務です。回復者転院支援窓口を設置するとともに、受入先となる一般医療機関や福祉施設へは、退院基準満了証明書の発行や協力金の支給により、転院を促進します。
やむを得ず自宅待機となっている方全員に対して、アプリを活用した健康観察を実施します。高齢者や基礎疾患のある方には、保健師の個別訪問や福祉サービスの提供など、きめ細かに対応します。
患者が多く発生している地域の高齢者施設の従事者に対しては、3月中に、任意による検査を集中的に実施し、クラスター化の防止を図ります。
一方で、重症病床使用率や人口10万人当たり新規陽性者数の減少とともに、入院調整者などの状況を総合判断し、政府に対し緊急事態宣言の解除の要請を検討します。同一交流圏である京都府、大阪府と十分に連携を図り、対応します。
医療への負担軽減と社会経済活動の本格的回復に向け、ワクチン接種には大きな期待が寄せられています。
医療従事者への優先接種を3月中旬に実施できるよう、体制を整えています。高齢者や基礎疾患のある方など住民向けの接種を行う市町とも十分に連携を図り、円滑な接種をめざします。安全性や有効性に関する専門相談窓口も設置し、県民の不安解消を図ります。
その二は、防災・減災対策です。
防災・減災、国土強靱化対策が、5か年15兆円の規模で延長されました。多発する風水害や南海トラフ地震に対する防災・減災対策などに、積極的に活用します。津波、洪水、高潮、土砂災害、ため池、老朽化などの事前防災対策を加速させるほか、緊急輸送道路の整備にも重点的に取り組みます。国の補正予算措置に基づき、2月補正予算に計上しています。
令和7年度まで延長した県民緑税を活用し、災害に強い森づくりも着実に進めます。
高齢者や障害者など避難行動要支援者に対する個別支援計画作成を後押しします。避難所の不足を解消するため、福祉避難所として協力する社会福祉施設の認証制度を創設します。
広域防災センターに宿泊施設が整備される令和4年までの間、ひょうご防災リーダーや防災士のスキルアップ研修を先行実施し、実践的な防災人材を育成します。
その三は、医療確保と健康づくりです。
県立病院は、県民の命を守る最後の砦です。加古川医療センター、尼崎総合医療センターを中心に、全力でコロナ対応にあたります。
令和4年度上期に開院予定のはりま姫路総合医療センター(仮称)や、県立西宮病院と西宮市立中央病院の統合新病院の整備を進め、がんセンターの建替にも着手します。
健康づくりに加え、コロナ対応でも重要な役割を果たしている保健師の研修拠点として、保健師キャリア支援センターを設置します。潜在保健師に対する研修会も開催します。
コロナ対策で明らかになった課題や教訓を今後に活かすため、感染症対策研究機関を検討します。
がん治療後の外見変化に伴う患者の心理的負担に鑑み、ウィッグや下着など補正具の購入を支援し、がん患者の社会復帰を促進します。
骨髄などドナーの登録者を増やします。骨髄などを提供した県民に対し、市町と県で支援します。
外出自粛の長期化により、認知症の発症、悪化が懸念されます。
認知症機能訓練システム「兵庫県4DAS」のオンライン研修、軽度認知障害の方への日常生活支援や専門医療体制の強化などに取り組みます。
その四は、子ども・子育て環境の充実です。
一昨年に初めて4万人を下回った出生数は、コロナの感染や生活への不安から、更に1,000人あまり減少し、37,653人となりました。安心して産み、育てられる環境の一層の充実が必要です。
医療保険適用を見据え、国の特定不妊治療費助成制度が拡充されました。これに加え、不妊の原因を早期に発見し治療につなぐため、夫婦の検査費用に対する助成制度を創設します。不育症治療も、国制度では対象外の費用を支援します。
待機児童解消に向けた受け皿整備や保育人材の確保・育成に、引き続き取り組みます。
在宅で育児を行う家庭への支援も強化します。保育士や栄養士などによる訪問相談の実施や、三世代同居に必要な改修工事への支援制度を創設します。
児童虐待相談件数は増加を続け、内容も複雑・多様化しています。北播磨、阪神地域にこども家庭センターを新設し、多くの相談にバランスのとれた対応を図ります。
満床状態にある一時保護所を拡充し、新たに阪神間での整備を進めます。
その五は、高齢者、障害者支援の充実です。
団塊世代が75歳以上になる2025年問題が間近に迫ってきました。特養などの施設整備を計画的に進めることに加え、在宅サービスの充実が必要です。
このため、24時間対応の定期巡回・随時対応サービスへの訪問介護看護事業所の参入支援や、小規模多機能居宅介護事業所の整備を進めます。
障害の有無に関わらず、生きがいを持って暮らせる社会の実現は、すべての県民の願いです。
動画を活用した手話講座の普及や、駅舎など公共空間のバリアフリー化など、ユニバーサル社会づくりの取組を進めます。
在宅医療の広がりを踏まえ、重度障害者が利用する訪問看護療養費を福祉医療の助成対象に追加し、経済的負担を軽減します。
その六は、くらしの安心確保です。
県内経済の落ち込みにより、厳しい雇用環境が続いています。有効求人倍率も1を割りました。経済団体や労働者団体とも連携し、雇用の維持、確保を図ります。
離職を余儀なくされた方への支援として、1,200人分の緊急的な雇用の場を確保します。ITや人手不足の建設分野に関する職業訓練を新たに実施します。在籍型出向などにより事業者間での雇用者調整を行う取組も支援します。
サービス業などに従事する女性の離職者が増えています。男女共同参画センターに支援員を配置し、ハローワークなどと連携して、離職した女性の再就職をサポートします。
昨年の自殺者数は889人と微増でした。しかし、これからが心配です。
休日夜間法律相談電話を充実します。弁護士が経済的問題の相談を、心のケアが必要な場合には精神保健福祉士が対応します。
自殺リスクの高まりが懸念される女性の専用相談窓口も設け、県民の尊い命を守ります。
感染者、医療従事者などへの誹謗中傷や差別が、多くの人のこころを傷つけています。尊厳を踏みにじる悪質な行為は絶対に許されません。
コロナ関連の書き込みをインターネット上のモニタリング対象に加えます。人権に関するウェブサイトを開設して、啓発を強化します。
第二に、交流の新展開です。
その一は、五国の交流、魅力発信です。
これまで、主にイメージ戦略として実施してきた兵庫五国連邦プロジェクト(U5H)を、五国に興味を持ち、体感・体験してもらうための取組として、具体化します。
初代県庁館が、今秋、先行オープンします。この機に、五国の理解を深めるフォーラムを開催します。
県民交流バスを活用して、五国相互の交流を促進します。e-県民アプリを活用した、五国を巡るスタンプラリーも実施します。
全国最多9つの日本遺産の認知度向上のため、合同シンポジウムや巡回展などの実施に加え、周遊ツアーを造成します。
公式オンラインショップ「ひょうご市場」では、ポイント還元率の引上げや送料無料などのキャンペーンを展開し、五国の逸品・絶品を多くの方に届けます。
淡路花博の理念の継承と淡路の多彩な魅力を発信する花みどりフェアは、感染防止対策を十分に行った上で、春と秋の2シーズンにわたり開催します。
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする大阪・関西万博の開催は、医療産業都市などの先端技術、歴史、文化、観光など、兵庫の魅力を発信する絶好の機会です。メイン会場での情報発信や県内でのサテライト会場設置を検討します。
その二は、新たなツーリズムの創出です。
当面の観光需要を担うのは国内旅行です。感染防止対策の徹底を前提とした、国内旅行モデルを提示します。
Go Toトラベル再開も見据え、新たな体験・周遊滞在型ツアーを造成します。鉄道事業者と連携したキャンペーン、瀬戸内クルーズのモデル実施、県内空港の国内線就航先との相互送客ネットワークの構築などに取り組みます。
Go Toトラベル後の観光需要の急激な落ち込みを回避するため、宿泊施設の割引や温泉地のお土産券の進呈により、誘客を図ります。
インバウンドの再開を見据え、受入環境を整えます。
サイクリングやゴルフツーリズムの造成に加え、オンラインによる海外向けプロモーション活動に取り組みます。
その三は、芸術文化、スポーツの振興です。
芸術家が地域へ出向くアウトリーチ活動や、文化施設でのロビーコンサート開催を支援し、芸術文化に触れる機会を創出します。アーティスト動画の制作・配信やリモートレッスンなど、ICTを活用した活動を支援し、新たな展開を図ります。障害者の発表機会も充実します。
ワールドマスターズゲームズ2021関西の開催に向け、リハーサル大会などを行い、準備を進めます。東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレー・聖火フェスティバルや、事前合宿の受入準備も進めます。第10回の節目を迎える神戸マラソンは、11月開催予定です。
ゴールデン・スポーツイヤーズのレガシー継承や、豊かな海づくり大会を見据えた新たなスポーツ振興事業について、検討します。
その四は、交流基盤の整備促進です。
広域交流につながる基幹道路ネットワークの整備を着実に進めます。
名神湾岸連絡線、山陰近畿自動車道の竹野道路について、令和3年度の新規事業化を国に強く要望しています。中国横断自動車道姫路鳥取線は、令和3年度中に開通予定です。
大阪湾岸道路西伸部、北近畿豊岡自動車道、神戸西バイパス、東播丹波連絡道路、東播磨道の早期整備、播磨臨海地域道路の早期事業化も図ります。
神戸空港については、コロナ後を見据えた関西空港の発着容量拡大にあわせて、早期に関西3空港懇談会で検討し、国際化を含めた活用の方向性を明確化します。
第三に、兵庫の強みを活かした産業の育成です。
その一は、地域を支える産業の振興です。
コロナによる経済的影響の長期化を見据え、中小企業の資金繰りをしっかりと支えねばなりません。新年度の融資枠は、当初予算としては過去最大の8,000億円を確保します。無利子・無保証料資金の終了後も経営改善などに取り組む企業を支援するため、保証料の3/4を支援する資金を創設します。事業再生や再起業のための資金も、対象要件の拡充や融資期間の延長を行います。
飲食店などの感染防止対策、デリバリー、テイクアウトへの参入を後押しする「がんばるお店・お宿応援事業」の第2期募集を行います。
中小企業からの相談増加に対応するため、商工会議所・商工会の体制強化を支援します。
ECサイトや共同宅配、送迎、買い物同行支援など、買い物弱者への支援や新規の顧客獲得をめざす意欲ある商店街の取組を応援します。
その二は、農林水産業の基幹産業化です。
施設園芸の更なる生産力強化を図ります。栽培環境を最適化する環境制御技術の導入を促すため、助成対象とするハウスの面積要件を緩和し、必要な機器を農業者が選択できる柔軟な制度に見直します。
ドローンによる農薬散布や森林測量など、技術実証と普及・定着に取り組みます。
日本酒の消費が低迷しています。直売所と連携したキャンペーンの実施など、山田錦の需要拡大に向けた取組を強化します。
秋には、ブリュッセル国際コンクール日本酒部門 SAKE Selectionを開催します。バイヤーとのネットワーク構築や情報発信を通じて、輸出拡大につなげます。
小規模農家の高齢化に伴い、不耕作農地の拡大が懸念されます。
4月に発足するひょうご農林機構が、暫定的な農地管理を行いながら、地域の話し合いや担い手確保を一体的に支援する体制を構築します。衛星データなどを活用した、耕作状況の把握モデル構築にも取り組みます。
但馬牛の子牛価格は未だ回復途上ですが、繁殖農家にとっては、規模拡大の好機でもあります。牛舎整備や繁殖雌牛の導入に伴う初期投資の軽減、畜産用地の確保に取り組みます。
豚熱や鳥インフルエンザなど、家畜伝染病の発生・まん延防止にも注力します。
植林・保育・伐採・利用のサイクルが継続する資源循環型林業の確立をめざさなければなりません。主伐・再造林を低コストで行うためのモデル事業に、引き続き取り組みます。
非経済林では、森林環境譲与税を活用し、間伐などの適切な管理を進めています。ひょうご森づくりサポートセンターが、技術者の派遣や調査・設計業務を受託し、市町の取組を支援します。
県産木材利用の促進支援を強化します。
県産木材利用拡大キャンペーンでは、県産木材使用率に応じた3段階の補助単価を設定するとともに、新たにリフォームを対象とします。融資事業や設計支援事業の対象となる県産木材使用率を引き下げ、より制度の利用を促します。
水質規制から水質管理への転換期を迎えています。栄養塩管理制度の創設を主とした瀬戸内法の改正が予定されています。生物の多様性が確保され水産資源に恵まれた豊かな瀬戸内海をめざし、取組を強化します。
漁業者による海底耕うんに加え、肥料供給試験を実施し、藻場や生物に与える効果を検証します。底質改善や栄養塩循環に効果が期待できるナマコ、アシアカエビの種苗生産を進めます。
工場などからの更なる栄養塩供給に向け、総量規制基準値の緩和の検討を始めます。
その三は、持続可能な地域環境の創造です。
2050年の脱炭素社会を実現するためにも、2030年度温室効果ガス削減目標は、現計画の26.5%を35~38%まで引き上げます。その実現には、排出量の74%を占める産業部門、業務部門の協力が欠かせません。排出抑制計画の策定や措置結果の報告を義務づける対象事業者を、中小企業などに拡大します。
創エネ・省エネ設備の導入や、工場などの屋根への太陽光パネル設置に伴う改修も支援し、取組を強化します。
燃料電池自動車の導入支援の対象をタクシー事業者まで拡大します。再生可能エネルギーを水素として貯蔵し、公的施設の非常時の電力などに活用するための調査研究も行います。
家庭で余った食品をこども食堂などに寄付するフードドライブ運動を全県に拡大中です。スーパーや団体の活動に要する初期経費を支援し、より多くの参画を促します。
廃棄される衣料品のリサイクルシステム構築に向けた、需要調査や実施方法を検討します。
野生鳥獣による農林業被害は全体では減少傾向ですが、地域差が見られます。但馬、西播磨地域でICTによる捕獲をモデル実施するなど、地域の状況に応じた捕獲、個体数管理に取り組みます。
第四に、多様な兵庫人材の活躍です。
その一は、次代を担う人材の育成です。
義務教育段階の1人1台端末、県立学校の校内LANやネットワーク接続回線など、ハード面の整備が進んでいます。人と人との関わり合いや体験を大切にした学びを基本としながら、こうした基盤を効果的に活用し、学びの質の向上を図ります。
学校現場で中心的役割を担う教員のICT活用能力育成に、計画的に取り組みます。
知識や技能、思考力や判断力を身につけ、生きる力を育む高等学校の新学習指導要領が、令和4年度から実施されます。重点校を指定して授業改善の研究を行い、主体的・対話的で深い学びができるカリキュラムを開発します。
3月に提出される高校教育のあり方検討委員会の報告を踏まえ、魅力ある高校のあり方や、学校の適正規模、配置などに関する実施計画を策定します。
阪神地域の特別支援学校では、児童生徒数の増加により定員を上回る状況が続いています。阪神北地域に加え、阪神南地域でも新設校の整備に着手します。
4月に開学する芸術文化観光専門職大学には、全国から多くの出願がありました。徹底した少人数教育、演劇による学び、地域と連携した実習など特長あるプログラムのもと、地域と世界で活躍する人材教育拠点となることを期待します。
その二は、全員活躍社会の推進です。
女性に選ばれる活力ある兵庫をめざし、女性の県内定着を図ります。
企業で活躍する女性の交流機会の創設、企業の行動計画の策定支援など、女性活躍のための取組を強化します。
ひょうごしごと情報広場のシニア就労窓口を拡充し、在宅しごとの切り出し、在宅ワークに対応するIT・パソコン研修の実施、マッチング機会の創出により、シニアの多様な働き方を支援します。
3月から民間企業の法定雇用率が引き上げられます。ひょうごジョブコーチによる就労・職場定着や、特例子会社の設立などを支援し、障害者雇用を促進します。
ICTを活用して、企業と在宅障害者間の業務受発注を増やす取組を支援します。一般就労が難しい障害者の方には、在宅で従事できるシステムを構築します。
農福連携を更に進めるため、ワンストップで農業経営体からの相談に応じる窓口を設置します。
第五に、新たな兵庫への道筋です。
コロナ後の兵庫は、単にコロナ前の状態に戻すのではなく、その経験と教訓を踏まえて次代を拓く兵庫に変革していかなければなりません。
今、大切なのは、道筋をしっかりと示し、第一歩を力強く踏み出すことです。
その一は、デジタル化の本格的推進です。
兵庫情報ハイウェイの通信容量が倍増し、3月には、東京アクセスポイントを新設した「兵庫情報スーパーハイウェイ」の運用が始まります。これにより、東日本全体と均一料金で結ばれるようになります。本社機能の移転やIT関連のスタートアップ企業の進出、テレワークなど働き方改革に、大きな役割を果たすことが期待されます。
さらには、ドローンを活用した新事業展開、障害者の在宅ワークの促進、環境制御技術の導入などスマート農業の推進、オンラインによる医療支援の取組を展開するなど、県民がICT利活用による恩恵を身近に感じ取れるスマート兵庫の構築をめざします。
県庁自体も率先して、デジタル化に取り組みます。
業務プロセスの見直しを行った上で、行政手続きのオンライン化や事務処理の自動化、オンライン会議の活用などに取り組みます。外部専門人材の登用や職員の能力向上に取り組み、推進体制を強化します。
その二は、変化に強い産業構造への転換です。
コロナ禍の閉塞感を打開する上でも、スタートアップがもたらすイノベーションへの期待が高まっています。
ビジネスプランを資金や販路に繋ぐピッチコンテストの開催や、起業の初期段階での資金需要に対応するファンドを創設します。UNOPSによるSDGsの課題解決に向けたビジネスモデルを支援するなど、ひょうご発のスタートアップ・起業の創出、育成を本格化させます。
企業のデジタル技術導入による経営革新を促すため、新産業創造研究機構(NIRO)による相談窓口の設置や社内人材の育成講座を実施します。
AI・IoT、健康・医療などニーズの高い分野への業種転換や求職者のキャリアチェンジを促すため、専門家の派遣やマッチング支援を行います。
産学官連携による立ち上がり期の研究プロジェクトを応援するCOEプログラムの対象を拡げるなど、支援を拡充します。
スーパーコンピュータ「富岳」が、3月9日から本格稼働します。
富岳の産業利用を促進するために、FOCUSスパコンによる企業技術の高度化、富岳と同じ中央演算処理装置を搭載したミニ富岳によるお試し体験など、立地メリットを活かした県内企業の富岳の利活用を後押しします。
今春開設予定の本庶佑ノーベル賞受賞記念「次世代医療開発センター」で取り組む研究を支援します。自己免疫疾患完治療法に関する先進的な創薬研究や開発を期待します。
その三は、地方回帰を促す環境整備です。
カムバックひょうごセンターは、兵庫・東京に加え、大阪にサテライトを開設します。関西の移住先として人気が高い兵庫への移住を後押しするものです。
本格的移住の前に行うお試し移住やテレワークも、引き続き支援します。
移住・定住には、しごとの確保が不可欠です。
首都圏の相談窓口であるカムバックひょうごハローワークは、ひょうご移住プラザに移転し、移住相談窓口との機能集約による円滑な県内就職につなぎます。移住・就職へつなぐため、短期滞在と就業体験を併せて斡旋し、この体験を支援します。
転出超過が続く女性への働きかけを強化します。女子学生などと、県内企業のロールモデルとの交流会の開催、ものづくり分野への就業を促す業務仕分けの普及啓発に取り組みます。再就業や起業に向けた、相談から能力開発、職業紹介までに至る体系的な支援も充実します。
小規模集落の数は10年前の2倍以上に増加しています。更なる増加が見込まれる中、地域再生大作戦の新たな展開を図ります。
これまで対策に取り組んでいない集落を対象に、現状を調査し、今後の対策につなげます。移住を促すため、集落が行う住環境整備の助成を強化するとともに、移住者自らが行う整備を支援対象とします。
地域おこし協力隊は、国要件では対象外となる集落近隣の在住者なども、県独自で支援しています。これに加え、都市部からの地域活動への参加を一層促すため、小規模集落活動人材バンクの登録者を派遣するモデル事業を、新たに実施します。
空き家対策も喫緊の課題です。改修経費支援を拡充し、UJIターン用の住居や事業所、学生シェアハウスへの活用を促します。
空き家対策検討会議を設置して、条例化を含め、総合的な空き家対策の検討を行います。
生産拠点の国内回帰、地方への企業移転の動きをしっかり受け止めることが必要です。産業立地条例による支援対象は、今年度、ほぼ全ての業種を対象としました。あわせて、法人事業税の軽減を拡充し、サプライチェーンの強化・再構築をめざす事業者への支援も強化しました。支援制度を広くPRし、誘致を図ります。
フィンテックやAI・IoT関連のスタートアップ企業をターゲットに、外国・外資系企業の誘致も図ります。
その四は、ポストコロナ社会を先導する取組の強化です。
兵庫2030年の展望リーディングプロジェクトは、コロナ禍で浮き彫りになった課題を踏まえて、取組を強化します。
防災・減災加速プロジェクト、起業立県実現プロジェクト、スマート県庁推進プロジェクトなど、ポストコロナ社会を先導して未来を切り拓く17のプロジェクトを展開します。
地域創生戦略で示した5年後の姿の実現に向け、五国の個性や強みを活かした地域プロジェクトを展開します。新たな大阪湾ベイエリアのグランドデザインの検討、神戸・阪神地域臨海部への集客や交流施設の集積促進、ワーケーションや二地域居住など新たな働き方・暮らし方の実践、地場産業を担う若手クリエイターの受入・育成などに取り組みます。
その五は、新しい将来ビジョンの策定です。
変わりつつある社会の動きを踏まえながら、既存の常識にとらわれず、大きな飛躍を目指して新しい時代を描く発想が求められます。
検討を進めてきた将来構想研究会では、未来へ歩む兵庫が大切にすべき基本姿勢を、「個性の追求」「開放性の徹底」「つながりの再生」「集中から分散へ」など6つの柱として、2050年を展望した多様なシナリオを描いています。
これを基本に、県民とともに新たなビジョンの策定に向け、検討を進めます。
その六は、持続可能な行財政構造の確立です。
新しい兵庫づくりのためには、これを支える行財政基盤の確立が不可欠です。
しかし、コロナに伴う税収減により、令和4年度から令和9年度にかけて、総額330億円の要調整額が生じる見込みです。ストック指標でも、防災・減災、国土強靱化対策を加速させることもあり、県債残高比率や将来負担比率は、財政運営目標を上回ることが見込まれます。
このため、令和3年度には、行財政運営方針の3か年目の見直しに際して、新型コロナの感染状況や経済動向などを十分見極め、財政フレームの検証など必要な見直しを行います。
厳しい財政状況を踏まえ、現在実施している給与抑制措置のうち、特別職の給料及び一般職の管理職手当の減額率を引き上げます。
その七は、大規模プロジェクトの進度調整です。
県庁舎等再整備基本計画は、新型コロナの状況や経済情勢などを踏まえ、その予算を令和3年度に繰り越し、引き続き策定作業を行います。阪神南県民センターと阪神北県民局の統合に向けた庁舎整備は、着工を1年遅らせます。
但馬空港の機能強化は、航空需要の動向を見極める必要があります。懇話会の取りまとめが延期されることから、慎重に検討します。
大規模アリーナの整備は、将来、県内にどのようなスポーツ・集客施設が必要となるかなど論点整理を行い、慎重に整備の可能性を検討します。
これより新年度予算の概要を説明します。
令和3年度は民間消費の低迷や企業業績の悪化を反映し、前年度を超える税収減が見込まれ、震災関連県債の償還なども依然続くことから、本県を取り巻く財政環境は、より一層厳しさを増しています。
予算編成にあたっては、緊急、臨時的な対応として、シーリングの強化や事業数の削減など、施策の選択と集中に取り組みました。また、令和3年度地方財政計画における地方財政対策を基本としつつ、新たに制度化された特別減収対策債などにより、厳しい財政状況下であっても、県民サービスを確保しつつ、行財政運営を行える予算としました。
歳出では、行政経費について、社会保障関係費の増に加え、新型コロナに関連した交付金事業や、過去最大となる8,000億円の融資目標を設定した中小企業制度融資の預託金の増を見込みました。
投資的経費は、地方財政計画を踏まえた投資水準を基本にしています。防災・減災、国土強靱化対策事業を経済対策補正予算に前倒ししたことから、当初予算比較では前年度を下回っています。しかし、経済対策補正予算を加えた14か月予算では、補助事業の充実を図り、前年度と同規模の事業費を確保しました。
歳入では、法人関係税や地方消費税など多くの税目で減収が見込まれ、県税等全体で前年度を919億円下回ると見込んでいます。
一方、普通交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税は、基準財政収入額において県税収入の減が反映されるとともに、地方財政計画上、地方税などの減少に伴う地方単独事業の財源減少分に対して、基準財政需要額への加算が行われたため、前年度を848億円上回ります。
地方税の減収に対する資金手当として制度化された特別減収対策債を146億円、調整債を49億円活用します。
以上の方針のもとに編成した新年度の歳入歳出予算は、
一般会計 2兆7,304億700万円
特別会計 1兆6,047億1,300万円余
公営企業会計 歳入 2,599億7,300万円余
同 歳出 2,716億6,700万円余 となります。
なお、東京オリンピック・パラリンピック応援事業、海外友好州県との周年交流事業など、新型コロナの影響により令和3年度に実施を延期した事業は、予算の繰越により対応します。
条例については、兵庫県立兵庫津ミュージアムの設置及び管理に関する条例など18件、その他案件については、兵庫県行財政運営方針の変更、公の施設の指定管理者の指定など57件です。
知事就任から20年近くになりました。この間、五国からなる多彩な地域と多くの県民に接してきました。そして極めて豊富な地域資源や多様な人材など、兵庫の持つポテンシャルの高さを認識しました。
ポストコロナ時代に向けた挑戦が始まろうとしている今、かつて「雄県」と称された兵庫が、再びわが国をリードしていく存在でありたいと願っています。
そのためにも、未来に向けた投資は、ためらってはいけません。厳しい財政環境にあっても、創意工夫しなければなりません。知事としての最後の当初予算編成に当たって、当面のコロナ対策はもちろんのこと、兵庫のポテンシャルを更に伸ばし、活かせるよう、想いを込めた施策を掲げました。
その実現は、新しいリーダーと県民のみなさんに委ねることになりますが、5か月あまりの残る任期を全力で駆け抜け、次代へのつなぎ役としてしっかり果たす決意です。
県政150年の歴史は、高い壁を乗り越えようとする先人たちの果敢な挑戦と絶え間ない努力の歴史です。人知を超えた自然の驚異に立ち向かうのも、私たち自身の挑戦以外にないのです。そして、その先には希望が開かれるのではないでしょうか。
「兵庫なら、きっとできる。」
県民のみなさん、ポストコロナ時代の新しい兵庫づくりに、ともに挑んでいこうではありませんか。
以上で、新年度の県政推進方針と提出議案の説明を終わります。議員の皆様には、よろしくご審議の上、適切な議決をいただきますようお願い申し上げます。
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