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更新日:2009年4月1日

会下山トンネル保存検討委員会の提言文(要約)

 歳月を経た土木、建築構造物を、「残す、残さない」「保存する、しない」といった議論をどのように展開するかは、対象物、年代、地域性等で一概には決めることは出来ないが、少なくとも事前にその歴史的、技術的価値等について、関連する専門分野からの多角的評価を得ておく必要がある。
 近年、土木の分野においても、歴史的な近代土木遺産を再評価して、保存すべきかどうかという論議が行われるようになってきており、湊川隧道は、兵庫県における近代土木遺産としての歴史的価値評価を事前に行った最初の事例といえる。
 委員会は、湊川隧道の歴史的価値評価について、「技術的評価」・「意匠的評価」・「系譜的評価」の三つの軸から評価を行い、いずれの評価軸からも近代土木遺産として高い価値を有することを認めた。
 本検討の結果により、湊川隧道の構造物を保存・活用し、次世代に伝えることが十分可能であることから、湊川隧道は、兵庫県、神戸市の歴史・文化を語る遺産として、将来のまちづくり、さらには土木技術の継承に役立てるべきである。

技術的評価

 湊川隧道は、わが国初の河川トンネルとして、明治34年(1901年)8月に竣工しており、延長は竣工当初、620メートル、断面形状は、幅約7.3メートル、高さ約7.6メートルと、当時の世界の一流のトンネルに劣らない規模を有する。
 明治29年の設計においては、平均流速を算出するためにクッター公式(注)が使用されており、わが国では先進的事例として位置づけられる。
 トンネル内部の覆工には、煉瓦による竪積みと呼ばれる技法が用いられており、覆工背面には栗石が裏込材として密に施工されている。これは、未固結地山に対応した独特の技法であって、トンネルの安定性に大きく寄与しているものと考えられる。
 また、河川トンネルという条件を考慮して、インバート部は、煉瓦の上に花崗岩の切石を敷き詰めた構造となっており、洗掘と摩耗等への対策が十分になされている。
 当時の工事は、ツルハシやノミ等を用いた手掘り作業によって行われており、湧水対策を含めて、未固結地山を対象にした難工事であったものと思われる。
 一方、工事の計画、設計にあたっては、日本を代表する土木技術者、沖野忠雄、瀧川釖二が深く関わっていることからも、当時の技術レベルを知る上で本隧道の持つ価値は高い。
 
(注)クッター(kutter)公式(スイス、1869):クッターの研究による水路や河川の平均流速を算出する公式であり、我が国でも多年にわたり広く用いられている。しかし、近年では取り扱いの容易なマニング式が一般的に用いられている。
 
 

意匠的評価

 吐口側は、明治期のトンネルらしく煉瓦造であるが、そのデザインは本格的なネオ・ルネッサンス風の完成度の高いものである。
 呑口側は、昭和2年、神戸有馬電気鉄道株式会社の鉄道工事に伴うトンネル延伸工事の際に約66メートル東に移設され、擬石構造に変更された。昭和初期の構造物ではあるが、時代性を良く表した立派なデザインと評価できる。
 トンネルの記念碑的地位の象徴である扁額は、小松宮彰仁元帥の揮毫によるもので、吐口側に「天長地久」、呑口側に「湊川」と記されている。このうち「天長地久」は「老子」に見られる言葉である。扁額の書体は漢隷書で、荘重美の曹全碑をよく研究した婉麗な書風の筆跡となっている。

系譜的評価

 湊川隧道を含む湊川の改修工事は、「新修神戸市史」によれば、奥平野浄水場他の上水道工事、兵庫運河開削の港湾修築工事と並ぶ神戸市の三大事業の一つとされている。
 その目的としては、
1.兵庫と神戸の間の交通、経済上の障害を取り除くという「都市政策」
2.当時世論が高まっていた「神戸港の土砂堆積対策」
3.当時度々発生していた水害に対する「治水対策」
 の三つが挙げられる。
 この付け換え工事は、小曽根喜一郎、大倉喜八郎、藤田伝三郎といった当時の多くの地主や事業家の協力による斬新で画期的な民間事業であった。
 河川付け換え後に旧河川敷を埋め立ててできた土地は、後に湊川新開地として神戸市の発展に重要な役割を果たしている。
 湊川の付け換え、流路の変遷は、平清盛の時代からこれまで幾度か繰り返されてきたものであるが、付け換え工事は、神戸発展の歴史の中で明確に位置付けられる大事業であり、その中でも、湊川隧道の築造は事業の要であるととともに、それ自体が最もシンボリックな構造物として位置付けられる。
 トンネルの覆工に用いられている煉瓦は、大阪南部の貝塚煉瓦(株)と岸和田煉瓦(株)で生産され、海上輸送されたものと考えられる。これらはいずれも良質のものであり、現在でも高い強度を保持している。また、インバート部の敷石は、当時の主要な生産地や花崗岩の色調等から岡山県の北木島はじめ複数の産地のものを使用しているものと思われる。
 一方、呑口側の坑門工には擬石が使用されていたが、これは移情閣や立ヶ畑堰堤でも使用されており、当時、神戸市内ではよく用いられた特徴的な技法といえる。
 湊川隧道は、阪神大水害、第二次世界大戦、さらには阪神・淡路大震災といった災害にも耐え抜いて存在しており、その技術レベルの高さとこれらの歴史を後世に伝える土木構造物として高い価値を有するものである。

湊川隧道の保存と活用について

○保存について
 近代土木遺産としての価値を有する土木構造物をどのように保存していくかは、構造物自体の価値、位置する場所、安全性、保存の形態、管理者といった多くの要因が関係する。
 湊川隧道は高い歴史的価値を有し、工学的検討結果から、一部分の補強策をとれば安全性は確保でき半永久的に保存可能と考えられる。
 湊川隧道の場合、その性格からトンネルそのもの全体を移築することは困難であり、原位置に保存をせざるを得ないが、原位置に保存することは、地域の文化を継承する近代土木遺産として、最も望ましくかつ優れた保存方策である。
 こうした試みは、先人達の知恵と技術の集大成である湊川隧道の近代土木遺産としての価値を正しく後世に伝え、将来の土木工学の発展、さらには地域文化の創造に役立つ。
 
○将来に向けた活用について
 湊川隧道は、市街地という一般市民が訪れやすい場所に存在する地下空間であり、市民のための多目的スペースとしても様々な活用が期待できる。
 このような可能性豊かな空間の活用を考える場合、現時点で最高の方策であったとしても、時代が変わり、技術が進歩するにつれ、より効果的な活用方法やより重要なニーズが生じる可能性のあることも考慮しなければならない。
 このような考えに立った場合、現時点では活用方策を限定せず、将来必要な時点で活用できるよう湊川隧道を良好な状態に保つことが必要である。また、住民からのアイディア、要望等によって、活用の方策を決定していくことも可能である。

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