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県民の皆様に、税の仕組みや目的など、税に対する理解を深めていただくため、毎年11月11日~17日を「税を考える週間」として、広報啓発活動を実施しています。
小学生高学年(5・6年生)の「税に関する書道・ポスター」(兵庫県納税貯蓄組合総連合会主催)や、中学生の「税についての作文」(国税庁、全国納税貯蓄組合連合会主催)の優秀作品のパネル展等を県内で実施しますので、ぜひご覧ください。
小野市立小野小学校
6年 八嶋 杏
伊丹市立緑丘小学校
5年 岡田 柚羽
稲美町立加古小学校
6年 松井 香乃
加東市立社小学校
5年 濵脇 ゆい
西脇市立重春小学校
6年 真鍋 希衣
加西市立北条東小学校
6年 松中 歩夢
令和六年の夏に新紙幣が発行され、一万円札に記される人物は、福沢諭吉から渋沢栄一に変わることで渋沢栄一という人物が大きく取り上げられた。渋沢栄一とは国立銀行を設立し、その他多くの会社を立ち上げ、日本の近代化に貢献した人物、というのが歴史の授業で学んだことであったが、新紙幣発行に合わせて多くのテレビ番組に取り上げられる中で、さらに大きな功績があることを知った。それが国や国民を豊かにする税制度への取り組みだ。
埼玉県の大きな農家に育った栄一は、たびたび領主からお金を差し出すように命じられることに対して、自分たちが努力して集めたお金を権力者が当たり前のように使うなんて納得できないと十六歳の栄一が訴えるのだ。ほとんど私と同じ若さで、こうした考えを持ち、毅然とした行動に移す姿に大変驚いた。
その後栄一は幕府の一団として訪れたフランスで大きな体験をしたという。一つ目は戦争で負傷した兵士を国の負担で治療するという制度があること、そして会社を作る時にはみんなでお金を出し合い、利益が出たらそれをみんなで分け合うという株式会社の仕組みである。権力者がお金を吸い上げて事業を行い、お金を出しているのに恩恵も少なく、守ってもらえない日本との差にショックを受けたに違いない。そしてこの体験が国民から税金という形でお金を集め、そしてそれを有効に使うことで国民は豊かになり、さらに一生懸命に働くことで国が一層豊かになるという考えになったのだ。
栄一が病人や貧しい子供などの保護施設を運営していた時、「貧しい者を税金で養えば、怠け者をつくる」という意見があったそうだ。しかし、栄一は過度な貧富の差の拡大を防ぎ、よりよい未来のための税金の使い方を考え抜き、安定した税制度の確立を目指した。
私たちの暮らしはみんなの税金で支えられている。私たちがきれいな学校で快適に学習できるのも、図書館で本を読めるのも、安心して生活できるのもみんなで出し合った税金のお陰である。教科書にも「この教科書は税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう。」との記載もあり、税金の大切さについては何となくではあるが知ったつもりでいた。しかし、今回渋沢栄一の生き方を通して税について改めて知ることで、税というものの共生や共助の理念を感じることができた。さらには、多くを稼ぐことができたものはその分多くの税を払うことで、富の分配という役割や福祉的な側面もあることを知ることができた。
私はいま多くの大人や社会に支えられる側にいる。しかし、私が大人となり納税する際には、今度は私が支える番であり、共生社会に役立っているという誇りを持てるような納税者となりたい。
私の父は建設業の現場監督である。橋を架けたり、道路を作ったりといった、国から請けた大規模なプロジェクトにも携わっている。ある時、父の仕事について聞いてみたことがある。
まず、初めに知ったことはそれらの仕事が税金によって行われていたということだ。例えば、二〇一五年に起きた関東・東北豪雨による鬼怒川の氾濫。堤防の一部は決壊し、川の水が街に流れ出した。テレビでも、連日放送されていたそうだ。その災害復興にあたり鬼怒川の堤防の強化工事に父は約一年間従事した。父によると、この工事の発注者は国土交通省、つまり国である。したがって、父が携わっていた鬼怒川の堤防復興工事は、税金によって行われていたのだ。あれから九年、鬼怒川の堤防は決壊することもなく市民の安全を守り続けている。
父は「常に丈夫で安全なインフラ設備を作る」ということを信条として、働いていると語った。そんな、地域に暮らす多くの人々のために汗を流す父を、私は誇りに思う。このような尊い仕事をして人々の安全を守れるのも、国と税金のおかげである。税金というひとりひとりが納めたお金が、巡り巡って人々の生活を守っている。税金のおかげで、被災地から遠く離れた人でも、被災者を支援することができるのだ。私も、被災地を映したニュース映像を見て、何もできない自分にもどかしさを感じたことがあった。しかし、そんな自分も大人になれば、納税という行為を通して被災者を支援できる。そのことを父の話から気付き、嬉しく思った。また、このような大規模なプロジェクトでは、作業員だけでなく、建設資材を取り扱う人、建設機械を製造する人といった非常に多くの人々が携わる。そのため、雇用にも良い影響を及ぼしていると思う。
私たちが住む宝塚市でも、一九九五年一月一七日に阪神・淡路大震災という災害に見舞われた。多数の人命が失われるとともに、設備や建物等に大きな被害をもたらした。それらの復興にも、税金が使われていた。私たちが住む宝塚市も鬼怒川と同じように、災害の復興に税金が使われていたのである。自分が住むこの大切な街を守るためにも、私たちがいずれ納める税金が不可欠なのだ。
税金と聞くと、マイナスなイメージを持つ人が多いだろう。しかし、税金というシステムのおかげで、遠くの被災者を助けたり、自分たちの住む街や暮らしを守ったりすることができる。税金とは助け合いの精神の象徴、つまりは人と人とを繋ぐ架け橋なのだと、今回改めて思った。その精神を後世へと繋げるために、税金の意義について、将来を背負う私たちが考えなければならない。
以前、陸上自衛隊主催のイベントに参加したことがある。実際の駐屯地の中に入り、本物の戦車によるパレードなどを見た。
駐屯地の中にはたくさんの自衛隊員がいて、きっちりと隊服を着こみ、背筋を正し優しそうな笑顔を浮かべていた。私は正直自衛隊に少し怖いイメージを持っていたので驚くとともに安心感を覚えた。
広い駐屯地の中をほぼ歩き終えたとき、パレードが始まった。先ほどの優しい雰囲気とはまた違う自衛隊員の勇ましい姿から目を離せなくなった。胸を張り、しっかり前を向いて歩を進める姿にとても感動した。その後ろには本物の戦車がゆっくりと進行している。普段なら絶対に見られない貴重な光景に目を輝かせ見入っていると、人々の歓声をかき消すほどの大きな声が聞こえてきた。
「自衛隊は税金泥棒!」
「国民の税金を無駄使いするな!」
パレードに夢中になっていた人々はざわめいた。駐屯地と外を隔てるフェンスの際に大きな横断幕を掲げた人々が叫び声をあげていたのだ。しかし、目の前のパレードは何事もないように進んでいる。私はどうしてもその異様な光景が忘れられなかった。
家に帰っていろいろ調べているうちに、自衛隊が活動するために税金が使われていることを知った。勇ましくたたずんでいた戦車も税金から作られているらしい。私の知る日本は戦争をしない国だ。そして、軍隊も持たない。ならばなぜ戦車が必要なのか。本当に自衛隊は税金泥棒なのか。たくさんの疑問が浮かんではうやむやになっていった。
それからしばらくして、そんな私の考えを大きく変える出来事が起こる。能登半島地震だ。幸い、私の住んでいる地域は何の被害もなかったが、テレビの向こう側では変わり果てた能登の街が広がっていた。道路に瓦礫が大量に散らばり、歩くことですら困難な様子だった。しかし、次の日のニュースでたくさんの自衛隊員の方が派遣され、救助活動にあたっている、という報道を見た。その時私の頭には「税金泥棒!」と叫んでいた人々の姿が思い浮かんでいた。いつまた地震が起こるか分からない状況で自分の命も顧みず一人でも多くの命を救うために懸命に活動している自衛隊員の姿を見て、本当にそのようなことが言えるのだろうか。
私はまだまだ税金に対して知識不足で、多角的に物事を捉えられているとは言えない。しかし、少なくとも私が実際に駐屯地で見たり、ニュースで知ったりした自衛隊は税金泥棒には見えなかった。
このような体験を通じて私はもっと国民全員が税金についての知識を持つことが必要だと考えている。また、税金に対する様々な考えを持つ人たちがいるということを知る機会があれば、とも思う。私はその経験が必ず正しい税への認識に繋がると信じている。
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