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更新日:2023年3月27日

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丹波県民局長メッセージ(令和3年6月)

  

 野山に新緑萌える5月。丹波でも、森や草木の緑が眩しく、初夏の花々が美しく咲き揃う季節となりました。本来ならば、週末毎に野外に出て、思う存分自然を満喫したいところですが、外出自粛が求められる緊急事態宣言下であります。私も週末はステイホームで読書にあけくれる日々となりました。読もうとしていたのは、丹波の自然・風土・文化に関わる本の数々です。

 私がまず手に取ったのは、文化人類学者・故米山俊直氏の著作、『小盆地宇宙と日本文化』(岩波書店、1989年)です。米山氏は、小盆地こそが日本の重要なハビタット(居住環境)であり、日本列島の多彩な地域文化の拠点であると主張し、岩手遠野と並んで丹波篠山をそのモデルに挙げています。周囲の山々を含む盆地全体を1つの統合体(宇宙・精神世界)と考えるその言説は、丹波の空間全域を対象として地域づくりを進める丹波の森構想に通じるところがあると感じました。

 この本には、米山氏による篠山盆地への訪問記(フィールド・ノート)が掲載されています。氏はデカンショ節、丹波焼・王子山焼、能楽・猿楽、丹波杜氏などの歴史・文化に言及しつつ、盆地内部に蓄積された潜在力を高く評価しています。そして、『しっかりと根の生えた地方文化の拠点として、篠山盆地は着実に生きつづけてゆくだろう』と記し、その後の丹波篠山の創造都市としての発展を予見しています。

※ユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)が2004 年より文学・映画・音楽・工芸・デザイン・メディアアート・食文化の7 分野において世界でも特色ある都市を「創造都市」に認定。丹波篠山市は2015年に工芸分野で認定を受けている(世界では246都市、日本では丹波篠山市を含む9都市が認定されている)。

 この訪問記のなかで、米山氏が『一生記憶に残っているだろうと思う本』として紹介しているのが、河合雅雄先生の『少年動物誌』(福音館書店、1976年)です。少年期の先生が主人公のモデルであるこの本は、映画「森の学校」の原作としてもよく知られていますが、恥ずかしながら、これまで読んだことがありませんでした。そこで、二冊目の‘課題図書’として手に取ったのですが、面白さのあまり一挙に読破してしまいました。少年たちが思う存分丹波篠山の自然や動物たちと触れ合う様を生き生きと描いたこの本は、子どもたちにとって必読の書であるとともに、大人が読んでもワクワク感を感じることのできる名著です。一人でも多くの方に手に取っていただきたい作品です。

 この『少年動物誌』の読後の清涼感に浸っていたその矢先に、大変悲しい哉、河合雅雄先生のご逝去が報じられました。先生のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 霊長類学の世界的権威であり、児童文学者としても有名な河合先生ですが、ふるさと丹波のためにも様々な形でご尽力いただきました。丹波の森づくりには最初から関わっていただき、長年にわたり丹波の森公苑長や丹波の森大学学長をお務めいただきました。まさに、人と自然の共生を掲げる丹波の森づくりの精神的支柱でいらっしゃいました。また、丹波市青垣町にある兵庫県森林動物研究センターの所長として、野生動物保護管理の面でもご指導賜わりました。

 ご訃報に接し、改めて河合先生の丹波の森大学での講義録(『自然と人間』)を読み返すと、次のような一節を見つけました。

『「丹波の森がどこにあるのか?」とよく聞かれます。「鎮守の森」のように思っているわけです。「これが丹波の森です」というのではなく、丹波全体が一つの森に囲まれた、一つのユートピア、丹波に住んでいる人にも暮しやすいし、外から来ても楽しいところだというみんなの共通のふるさとを創っていこう、これが丹波の森構想だと思います。』

(河合雅雄監修・(財)丹波の森協会+中瀬勲編『もり ひと まちづくり-丹波の森のこころみ』、学芸出版社、1993年)

 河合先生は、丹波の森構想のめざすところは内外に開かれたふるさとづくりにあると仰っているのですが、これこそが今各地で進められている地域創生の本旨であります。30年前、先生がこのことを丹波の人々に説いていただいていたことが、その後の丹波の森づくりにおける先導的な取組を後押ししたように思います。

 また、先生は同じ講義のなかで、自然と関わることの意義を説いておられます。

『ふるさと感覚は自然に親しむことによって創られていきます。自然に自分のなかにできていくものです。』

『自然のなかにいるというのは、命があるものと対話すること』(であり、子どもたちが主体性を回復するうえで一番大切なこと)

『「自然に遊ぶ」ということは、美意識を養っていくこと』

 このような先生の教えがあって、今日、丹波の森づくりのなかで、ふるさと学習(外部サイトへリンク)環境学習里山づくり(PDF:1,732KB)などの取組が定着していったのだと思います。そのなかには、先生ご自身でご発案いただいた取組(子供向け環境教育教室(丹波縄文の森塾(外部サイトへリンク))の開催(外部サイトへリンク)国蝶オオムラサキの食樹(エノキ、クヌギ)植栽)(外部サイトへリンク)もあります。

 残念ながら、私自身河合先生に直接お目にかかり、ご指導いただく機会はありませんでしたが、丹波には、河合先生の自然や生き物を愛するお気持ちやふるさと丹波への想いを受け継ぎ、「もりびと」として活躍する人たちがたくさんおられます。この担い手の方々と一緒に、丹波の森づくりの継承・発展を図っていきたいと考えています。

 

里山探索  

 里山探索の模様(丹波縄文の森塾)〈丹波の森公苑HP〉 

雑木林 

  河合先生のご提唱により、オオムラサキの食樹として丹波の森公苑内に植栽されたエノキ・クヌギ・コナラなどの雑木林

〈丹波の森公苑HP〉

 

 今年は、新しい丹波地域ビジョンの策定年でもあります。新ビジョンでは、2050年を見据え超スマート社会のもとでの人間と技術の関わり方を展望する一方で、森づくりの理念を踏まえつつ、「もりびと」らの声をもとに人と自然が共生する未来の地域社会像を示していくつもりです。

 河合先生は、丹波の森づくりを『我々の後を受け継ぐ子どもたちを本当に健全な心身に育てていく一つの大きな試み』とも仰っています。技術進歩により社会が大きく変容しようとも、森を守り続け、次代の子どもたちが 『少年動物誌』の主人公が体験したような自然との濃密な関わりを味わえる未来を築いていきたいものです。河合先生の教えを改めて胸に刻み、新たなビジョンづくりに取り組んでいきたいと思います。

※新丹波地域ビジョンへの皆様のご意見をお待ちしております。tambakem@pref.hyogo.lg.jp

 

 

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兵庫県への緊急事態宣言は6月20日(日)をもって解除されましたが、引き続き県下の一部では6月21日(月)から7月11日(日)までの間、まん延防止等重点措置区域の公示がなされています。県民の皆様には、感染拡大阻止に向け、外出の自粛、感染対策の徹底、ワクチン接種への積極的参加など責任ある行動をお願いします。

 

 

丹波県民局長  今井 良広

 

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