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県立病院で勤務する薬剤師の仕事内容については、こちらもご覧ください。

尼崎総合医療センター薬剤部 副主任
小学校6年生の時に図工の授業で、卒業制作として自身の将来の姿を粘土で作る授業があり、その時が自身の将来について考える最初のきっかけでした。「人の役に立つ仕事がしたい」、「医療関係の仕事ってすごくかっこいい」という思いがあったのですが、血を見るのが怖かったのもあり、医師や看護師は断念しました。そんな時に見つけたのが、薬剤師でした。薬は多くの人に非常に身近な存在なんだと感じて、その身近な存在の薬のプロになれたらすごくかっこいいし、人の役にも立てるかなと思い、その時に「薬剤師になりたいな」と思ったのがまず最初でした。
兵庫県職員を目指したのは、「患者さんと直接関わりながら医療貢献がしたい」という気持ちが一番あった一方で、行政薬剤師にも興味があったからです。異動を通して様々な環境に身を置きながら成長できる点に、魅力を感じました。
今、薬剤師として病院で働き始めて、4年目になりました。普段は病棟に常駐し、カルテで患者さんの情報を確認し、直接患者さんに会いに行って服薬指導を行っています。医師や看護師とのディスカッションを通して治療薬の選択や治療方針に関わることもあります。年数が上がる毎に、担当する仕事や業務内容が広がってきて、「薬剤師ってこんな業務もあるんだ」と新たな気づきがあり、たった4年でも、薬剤師にできることは非常に幅広いんだなと感じています。一方で本庁や健康福祉事務所での行政薬剤師としての業務は、患者さんと直接関わる機会は少ないですが、そこで薬剤師の資格を持った人間として何ができるのかを学べたら、病院に戻ってきたときに何かに活かせるのではないかとも思っています。なので、できることがあるなら積極的に挑戦して、自身の経験にして仕事につなげたいという気持ちが強くあります。
私は最初、正規職員ではなく「レジデント」という、いわゆる研修医のような立場で入職し、経験を積んでいました。レジデントの2年目からは、自身が興味のある分野のチーム医療に参加できるプログラムがあり、私は緩和ケアに関心があったため、希望して加わることになりました。
緩和ケアチームに参加して間もない頃、がん患者さんの退院に向け、鎮痛剤の内服時間を夜の9時から朝の9時に調整する機会がありました。薬効の持続時間が24時間の薬剤のため、内服間隔が長くなると薬効が切れ疼痛が増強する可能性があったことから、先輩にも相談したうえで、内服時間を21時→24時→3時→6時とずらす提案を行いました。患者さんは「先生方にお任せします」と受け入れてくださり、主治医にも報告してその方針で進めることに。
しかしその後、緩和ケア専門の看護師さんから「この患者さんは不眠でも悩んでいたし、疼痛コントロールも比較的うまくできている。先生が言うならって納得したけど、遠慮してそう言っているだけかもしれないよ。本当にそれでいいの?」と指摘を受けました。患者さんの本音や生活の質まで深く考えたその言葉にハッとさせられました。薬剤師としては薬効や内服時間に目が向きがちですが、緩和ケアではそれだけでは不十分であり、患者さんの生活リズムや気持ちに寄り添う視点が何よりも大切だということを実感しました。もし自分が患者さんの立場だったら、夜中に薬のために起こされることをどう感じるか?当事者としての視点を持つことの重要性を、この経験を通して深く学ぶことができました。薬の専門知識だけでなく、患者さん一人ひとりの背景や思いに寄り添う姿勢が求められる緩和ケアの神髄に気づかされた瞬間でした。
臨床現場は知識だけでは対応が難しい場面が多く、特に緩和ケアにおいては、経験の浅さから迷うこともあります。がん性疼痛の鎮痛剤として、医療用麻薬の強オピオイド(モルヒネ等)をいきなり投与開始することに抵抗があり、弱オピオイド(トラマドール等)から投与開始して様子を見ようとするケースに遭遇することがあります。しかしこの場合、緩和ケアチームでは、便秘をはじめとした副作用のリスクの観点から、病状的に今後オピオイド鎮痛剤の使用が長期的に継続となることが予想される場合は、最初から強オピオイドで開始する方が望ましいと判断することもあります。薬剤的知識、患者さんの症状や背景、主治医の思いの狭間で、私自身迷ってしまうことがあります。「薬剤師としての知識だけだとプランAだけど、この患者さんの症状や今の体調に配慮するならプランBの方がいいと思うのですが…」と明確に提案できないもどかしさを感じ、悔しい思いをすることもまだまだ多いです。
また、抗がん剤の副作用について患者さんから質問を受けた時も、倦怠感などの情報は調べてもなかなか一般的な情報が得られず曖昧な回答しかできない場面もありました。今後は外来で継続治療の患者さんにより多く携わることで、副作用のタイミングや傾向を深く理解し、患者さんへの説明もより具体的にできるようになりたいと思っています。
まだまだ力不足ではありますが、年数が上がるにつれ、いろんな経験をさせていただき自分自身で成長したなと感じる局面もあります。例えば、患者さんへの薬剤指導を行う時も、最初は副作用などの情報を一方的に説明していましたが、「患者さんの立場だったら、この説明をどう受け止めるだろう?」と疑問が浮かぶように。自分の説明が患者さんにどう届くかを一歩引いて考えるようになったことで、より患者さんに寄り添った薬剤指導ができるようになったと感じています。

また、薬剤部内で係の分担業務の主担当を任される機会も徐々に増え、今年から薬剤の勉強会の企画を担当しています。新しく導入した薬剤があれば、薬品メーカーにアポを取り、その薬剤について学べる機会を企画・調整します。薬剤部員全員の知識につながる勉強会なので、「いい加減なことはできない」と大きな責任意識を持って取り組んでいます。
他にも、仕事中に分からないことがあれば必ずメモして、後で調べて勉強したり、最新の知識は、病院薬剤師会のオンライン講義などを活用して、興味のある分野の講義にも積極的に参加しています。まだまだ成長途中ですが、周囲からは「よく頑張っているね」と声をかけていただけることもあり、励みになっています。
薬剤師として経験を重ねる中で、これまで点でしか見えていなかった仕事が線としてつながるようになり、一つひとつの業務の意義を理解できるようになってきました。入職当初は、処方箋に従って薬を袋に詰める業務から始まりましたが、その薬が病棟に届き、患者さんが実際に服用している様子を見ることで、自分の仕事が患者さんの治療に直接つながっていることを実感できました。最近では、入院前の患者さんに対して麻酔科医師、看護師などと一緒に説明を行う機会も増えてきました。私は薬剤師として服薬状況や副作用歴、アレルギー歴、健康食品やサプリメントの使用状況の確認、手術前の中止薬の確認及び説明を行う業務が主なのですが、その情報が入院後の治療に活かされていることを知り、チーム医療における役割をより深く感じるように。このように、業務がそれぞれ独立しているのではなく、他の場面での業務との連携が見えてくることで、仕事に対する責任感も高まり、より一層身が引き締まります。
今後の目標は、カンファレンスや病棟ラウンドで、薬剤師として自信を持って自分の考えを提案できるようになることです。現在は、自分の知識に100%自信があるとは言えず、相談を受けてもすぐに答えることが難しく、一度持ち帰って上司や先輩に確認してからでないと提案できない状況です。しかし将来的には、自分の判断で「これがベストだと思うのですが、どうでしょうか?」と提案できるようになるために、専門資格取得を目指して勉強を頑張りたいと思っています。また、兵庫県には複数の県立病院があるため、各病院の症例報告を通じて、対応方法や工夫について学ぶ機会も多くあります。他病院の取り組みを知ることで、新たな気づきや視点が得られると感じています。
薬剤師として自分が向いているかは、正直まだ分かりませんが、患者さんから「ありがとう」と言われるなど、人の役に立てた瞬間に大きな達成感を感じるため、この気持ちを原動力にして日々努力しています。
仕事に関しては先延ばしにせず、疑問はその日のうちに解消するなど、自分が納得できるまで取り組む姿勢を大切にしています。帰宅後はしっかり食事をとって眠ることがストレスをためない秘訣です。

休日は、友人や家族と会ったり、特にパンが好きでよくパン屋さん巡りをするのですが、今年の春からパン教室にも通い始めました。もう一つの趣味、コントラバスの演奏では、吹奏楽団に参加させていただくことになり、仕事で忙しい中でも空いた時間で練習して、音楽活動も中途半端にならないようにしたいです。
これまでの配属先
令和4年4月 現所属
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がんセンター 薬剤部 副主任 |
Q.なぜ民間ではなく公務員を目指したのか、またなぜ各市町村ではなく県を目指したのか?
大学生の時に、こども病院のオープンファーマシーに参加したことがきっかけで、兵庫県立病院に興味を持ちました。県立病院には6つの総合病院と4つの専門病院があり、幅広い知識と専門的な知識を身に付けられるだけでなく、福利厚生も充実しており、様々なライフスタイルに合わせて働けると思い県職員を目指しました。
Q.これまでの業務で大変だったこと・嬉しかったことは?
AST(抗菌薬適正使用支援チーム)を担当するようになり、自分が提案した抗菌薬で患者さんの容態が悪化しないか不安でした。広域抗菌薬と狭域抗菌薬のメリット・デメリットを考えながら抗菌薬を選択することは難しく、自信を持って提案できるように今も勉強中ですが、患者さんが提案した抗菌薬による治療を完遂され、無事に退院される時は嬉しいです。
Q.現在の仕事をする上で心がけていること・大事にしていることは?
服薬指導等で入院中の患者さんと話す際は、私にとって日常でも、患者さんにとっては特別な事であることを忘れずに、不安に寄り添った丁寧な対応を心がけています。
Q.県職員の仕事のどういったところに難しさを感じるか?また、県職員として働く魅力やおもしろさはどのようなときに感じるか?
症例報告や相互利用等で他病院と連携する機会があり、良い所を取り入れて県立病院全体で成長していけることは、複数の系列病院があるおもしろさだと感じています。また年に数回研修があり、同期や転勤された先輩に会えることも魅力です。多職種合同の研修では、医療従事者だけでなく、普段はあまり関わることのない職種の方とも話すことができます。エルダー研修で新入職員の指導担当者同士で話し合い、様々な考え方に気付き、指導方法について考えることができたのは貴重な機会でした。
Q.今後チャレンジしたいことやいつかやってみたいことは?
抗菌化学療法認定薬剤師の資格を取得することが目標です。資格を取得し専門的な知識を活かして抗菌薬の適正使用に貢献していきたいです。
これまでの配属先
令和3年4月 現所属
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