JR福知山線列車事故の検証について
JR福知山線列車事故における行政機関等の対応について、8月3日に「JR福知山線列車事故検証委員会(委員長:木下冨雄京都大学名誉教授)」を設置し、同委員会において検証を進めてきた。この度、その検証結果をとりまとめ、1月18日(水曜日)に県に対する報告を行う。
- 趣旨
JR福知山線列車事故における県の対応等を中心として総合的に検証し、その成果を大規模事故災害対策計画に反映させるなどにより、事故災害対策の充実強化に資する。
- 検証分野
- (1) 総合的な対応体制のあり方
- (2) 人命救助活動や地域との連携・協力
- (3) 救急搬送や患者の受入
- (4) 安否情報の開示と提供システム
- (5) こころのケア
- 検証体制
JR福知山線列車事故検証委員会を設置して、各分野ごとに担当委員を中心として検証作業を行い、委員会で全体を取りまとめた。
担当分野
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担当委員
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総括
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木下 冨雄 国際高等研究所フェロー、京都大学名誉教授(委員長)
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総合的な対応体制
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林 春男 京都大学防災研究所巨大災害研究センター長・教授
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人命救助活動や地域との連携・協力
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堂本 嘉巳 株式会社エフエムあまがさき顧問、兵庫県建物管理企業組合理事長、元尼崎市消防局長
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救急搬送や患者の受入
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鵜飼 卓 兵庫県災害医療センター顧問
井伊久美子 兵庫県立大学看護学部教授
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安否情報の開示と提供システム
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宮林 正恭 千葉科学大学副学長兼危機管理学部長
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こころのケア
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加藤 寛 こころのケアセ研究部長
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オブザーバー
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尼崎市消防局・県警本部・陸上自衛隊・尼崎市・県災害医療センター・JR西日本
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- 4 主な提言内容
- (1) 総合的な対応体制のあり方
- 鉄道事業者をはじめ、県、市町その他防災関係機関は、それぞれの役割を明確に認識し、定期的な協議や訓練等を通じて、地域防災計画で定める情報収集・伝達の徹底を図るべき。
- 事故現場において、県、市町、消防、警察、自衛隊、鉄道事業者等は現場の責任者を配置し、対策ごとに主責任組織が中心となって、共通の対応方針のもと連携して活動を展開するとともに、県は総合的、広域的視点から広報や防災資源の調整等に努めるべき。
- (2) 人命救助活動や地域との連携、協力
- 救助機関は、今回の事故のような困難な事案を想定した救出救助訓練を行うとともに、狭隘な場所でも利用しやすい小型軽量の装備資機材の整備・開発に努めるべき。
- 事故現場周辺の住民や事業所による救出・救護活動などが大きな効果を発揮していることから、自主防災組織や事業所等は、今後とも平時から地域の連帯づくりに努めソーシャルキャピタル(社会関係資本)を豊かにしておくべき。
- (3) 救急搬送や患者の受入
- 県は、災害拠点病院救護班を緊急時に機動性をもつ医療チーム(兵庫版DMAT)として位置づけ、その運用方法を定めるとともに、トランシーバー、衛星携帯電話、簡易心電図モニター、共通ユニホームなどの資機材を整備し、特別な研修を実施すべき。
- 災害医療コーディネーターの役割と責任を明確にするとともに、広域災害・医療情報システムの入力率をさらに向上させるため、医療機関への啓発・訓練を徹底すべき。
- (4) 安否情報の開示と提供システム
- 大規模事故に係る安否情報の収集・提供に関しては、市町や県が中心となって収集・提供する仕組みについても検討すべき(安否情報の収集・提供のあり方については、法令などにより、全国的な統一が図られることが望ましい)。
- 安否情報について、1.初期の必要最小限の情報提供、2.関係者からの照会に対する情報提供、3.病院等における家族等への詳細な情報提供の3段階に区分し、1.はインターネット、2.はテレフォンセンター等の手法も検討すべき。
- (5) こころのケア
- こころのケア実施機関が迅速に被害者を把握し、アウトリーチ(訪問相談)を行うことができるよう、国のガイドライン等で、被害者情報のこころのケア実施機関への提供の根拠を明確にしておくべき。
- 消防機関だけでなく、医療関係者を含めて、救援者へのこころのケアについてのサポート体制も充実させるべき。
- 5 今後の県の取り組み
検証提言を県地域防災計画(大規模事故災害対策計画)の見直しや、今後の防災対策などに反映させるほか、市町等にも普及浸透を図る。