更新日:2022年9月13日

ここから本文です。

協働のための広報 兵庫県 広報ガイドライン Hyogo Public Relations Guidelines

 

自治体広報あるある(3)押しつけ広報

 

 

そろそろ少しテンション下がられているかもしれませんが、これでもう最後なのでご安心ください。「○○地域で働こう。移住フェア in 東京」。某県の移住促進系のチラシです。いま、東京以外の多くの道府県が、人口増を目的とする移住促進事業を行っていますよね。そういう意味では、他人事ではない内容かもしれません。

このチラシで最初に目に入るのは、何でしょう?8つ並んだ「ゆるキャラ」が最初に目に留まる方が多いと思います。2番目は?チラシ上側のタイトル部分、「○○県○○地域で働こう!○○移住フェア」かと思います。3番目は?いちばん下、写真を背景とした「○○で暮らそう」でしょうか。あら、2番目の部分は「働こう」で、3番目の部分は「暮らそう」ですね。

ではこれも、初めて食事に誘う言葉に言い換えてみます。

 

オレ、最高だろう?絶対一緒になった方が良いって。オススメなわけ。だけど口下手でこの良さがぜんぜん伝わらないからさ、とりあえずゆるキャラで親しみやすくしたけど、どう?それに若者向けにアレだ、SNSも頑張ってみたから。うん。イイネはまだ8だけど。

 

「イイネが8ぐらいのSNS」、心あたりがありませんか?そして、誰がイイネしたか確認したらみんな身内だったりして。「“とりあえず”SNS」、「“とりあえず”ゆるキャラ」、多いんですよね。

「おかしいな?私たちの地域や人や物、すごく素敵なんです。だけど、その良さがちっとも伝わらないんです。やっぱり広報にかける予算も人手もないからなんですよね」という声をよく聞きますが、そのようなスタンスでは、たとえお金や人が増えても同じ。効果が出るとはあまり思えません。

だって「ゆるキャラもSNSも頑張ってるのに、やっぱり僕が人気ないのは、お金がないからなんだよね」という人がいたら、相手はどう思うでしょうか?

 

そもそもあんた自身が問題なんじゃ?

 

そしてもうひとつ、想像してみてください。もしもあなたが見ず知らずの人にいきなり「ね!○○県に住もう!ぜったい良いから、行こう!暮らそう!働こう!!」と言われたら、どう思われますか。正直、「いや、何で自分が○○県?」と思いません?

こうして他県の例で言われてみると感覚がわかるのですが、自分の県については、やっていることが多いです。「兵庫県に住もう!兵庫県で働こう!兵庫県で起業しよう!兵庫県を旅しよう!兵庫県で泊まろう!兵庫県を祝おう!ねっ、兵庫県最高!!」……けっこうしんどうですよね。それぞれの担当部局さんが伝えるのは1回ずつだとしても、受け取る県民の方からすると、「絶対兵庫県が最高!」の波状攻撃を浴びることになってしまいます。

相手との対話が成立しないまま、一方的に伝えようとするから、押しつけになります。冒頭にお伝えしたように、“PR”はパブリック・リレーションズであって、プロモーションではありません。ですから、まずは相手との関係性を構築するところから始めましょう。

たとえば、相手に訊いてみるといいかもしれません。「兵庫県に住むというのは、いかがですか?」「兵庫県を旅するのは、いかがでしょう?」「兵庫県、好きですか?」……。「押しつけ」よりは「引き出す」広報、ぜひ心がけてみてください。

次のページ:1章 広報の意味『行政に広報は必要か? 』