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協働のための広報 兵庫県 広報ガイドライン Hyogo Public Relations Guidelines
「自治体広報あるある」の2例目は、補助金の説明です。まず、「補助金を受ける方」の条件として、市内に5年以上住んでいて、中学生以下の子供がいること。その次に「補助金の額」について、実質家賃負担額の2分の1までで、最高1万円。その下に、手続きについての説明があります。非常に分かりやすいですね。どこに問題があるか、わかりますでしょうか。こちらも、初めて食事に誘うような言葉に言い換えてみますね。
ねえ、僕と一緒にランチするならお金あげるよ。うれしいでしょ?あ、ちょっと待って。ただし5年以上つき合うのが条件で、半額補助で1,000円までだから、ランチは税込み2,000円までね。手続きは来月までで、よろしく!
こう言われた女の子は、どう思うでしょう。
何様?
「え、あんた、何様?お金くれるから、偉いわけ?」そう思ってしまいます。なぜならここに「なぜ君を食事に誘うのか」という、一番肝心なメッセージ(why)がないからです。
このように「言わなくても分かるだろう」とばかりに動機や背景を省略し、とにかく手続きだけを告知するやり方は、とくに「お上」感が強くなってしまいます。伝統的に行政は「お上」だったので、仕方ありません。しかしそのため、相手に「え、何様?」と受け取られかねなくなってしまうのは、もったいないですよね。
「手続き告知だけ」という広報を、行政はよくしてしまいがちです。「皆の者に告げる。こうしなさい。以上。」これって、つまり、「お触れ」ですよね。
江戸時代ならともかく、情報過多な現代では、そのようなお触れはなかなか読んでもらえません。
「お触れ広報」のケースに、受け取る側が感じるであろう「そもそもどうしてそれをしているの?」という疑問への答え、すなわち、「私は誰をどのように幸せにしたいので、この事業をします」という”why“がありません。食事に誘う例なら「なぜあなたと食事をしたいのか」という”why“、つまり愛を、しっかり伝えることが大切だと、もう理解していただけると思います。
冒頭で、「広報は対話的に」とお話しました。対話的ではない、このような「お触れ」広報の場合、受け取る側は「なんや、上から目線やなぁ」と思ってしまいます。せっかく良いことをされているのに、もったいないですよね。
その事業の目的である”why“の部分も、しっかり書いてみてはいかがでしょう?たとえば、今回のチラシの場合、「こどもたちは、未来をつくる宝物です。なので私たちは、子育て中のご家庭を支援させていただきたいと思っています。その中で、このような支援制度ができました。ぜひご利用されませんか?」など、いかがでしょうか。
行政だからと遠慮せず、むしろ「お上から」と思われがちな立場だからこそ、あなたの「思い」をきっちり伝えたうえで、手続きを案内してください。きょうび「お触れ」を出しても、誰も読んでくれませんから。