兵庫県政労使会議
令和6年1月30日火曜日、兵庫県公館第2会議室において、労働者団体、使用者・経済団体、行政が一堂に会する兵庫県政労使会議を開催しました。
会議では、それぞれの立場からの考えや取組み内容について説明いただき、率直かつ建設的な意見交換が行われました。
意見交換の後、齋藤知事が会議を総括し、オール兵庫で賃上げ等に取り組む共同メッセージを公表しました。
- 日時:令和6年1月30日(火曜日)10時~11時
- 場所:兵庫県公館第2会議室
- 出席者
- (1)労働者団体:連合兵庫会長 福永明、事務局長 那須健
- (2)使用者・経済団体:兵庫県経営者協会会長 成松郁廣、兵庫県商工会議所連合会会頭 川崎博也、兵庫県商工会連合会会長 小寺博史、兵庫県中小企業団体中央会会長 大辻利弘
- (3)行政:兵庫県知事 齋藤元彦、副知事 片山安孝、産業労働部長 原田剛治、兵庫労働局長 金刺義行、兵庫労働局雇用環境・均等部長 廣瀬真理
- 主な発言
- 齋藤知事
物価高を上回る賃金の引き上げ、人手不足対策、中小企業支援を、オール兵庫で取組み解決していくことが極めて大切である。
本日、兵庫版の政労使会議を開催させて頂いたことは、大変大きな一歩。
現在の情勢、それぞれの立場からの取組みの方向性や課題などについて発表いただき、共有していただくことが大事だ。兵庫県の成長発展、県民一人ひとりにとって働きやすい環境づくりに向け、共に歩んでいきたい。
- 福永連合兵庫会長
経済成長や企業業績の後追いではなく、産業・企業、経済・社会の原動力となる人への投資を起点として、ステージを変え、経済の好循環を目指すこと。これが連合としての考え方である。慢性デフレのサイクルから、賃金も物価も経済も安定的に上昇する経済社会に転換していく事を、今年の春闘方針に掲げている。
連合としては、中小企業の賃上げと格差解消が、経済の好循環のキーになってくると考える。公正な取引環境の中で、労務費の適正な価格転嫁がなされる環境の整備が、人への投資、あるいは技術革新など未来への投資を通じた産業生産性の向上につながるし、継続的な賃上げが可能となる環境整備につながる。地域経済、雇用を支えるのは中小企業であり、中小企業の人手不足対策は、地域の活性化につながっていくと考える。
- 成松兵庫県経営者協会会長
構造的な賃金引き上げの実現は、生産性の改善と向上の帰結である。
賃金引き上げに当たっては、賃金決定の大原則に基づき、実質賃金の持続的上昇を目指すというのが、私どもの立場。賃金決定の大原則は、労使協議を経た上で、各企業の判断で決定することだが、労使交渉の結果として業界内では同一内容での決着が図られているのが実態。賃上げは、あくまで自社の支払能力を踏まえ、労使協議を経た上で、各企業で判断、決定することだということを強調しておく。
- 川崎兵庫県商工会議所連合会会頭
賃上げ実施企業は、昨年度から10%以上増加し、賃上げの動きは着実に進んでいる。しかし、中小企業を中心に、人材確保のための防衛的賃上げが多いのが現状。価格転嫁は着実に浸透しているものの、人件費への転嫁には進んでいない。経営体力が乏しい中小企業は、再び競合他社との価格競争にシフトする傾向にある。
人手が不足している企業は7割を超えている。中小企業の多くは人手不足で、事業機会の損失、労務費上昇を転嫁できず、利益も減少してしまう悪循環に陥っている。
賃上げ原資の確保には、企業の生産性向上への取組みが欠かせない。困窮する中小企業を下支えしながら、変革に挑戦する中小企業をサポートし、生産性向上、業務効率化、販路拡大、ビジネスモデルの再構築など、多様な分野に対応出来る支援体制づくりが大切だ。商工会議所では、企業に寄り添った伴走支援で、これらの課題に対峙していく。
- 小寺兵庫県商工会連合会会長
多くの企業で、原材料高、光熱費や燃料代の高騰で、経営が大きく圧迫されている。加えて、働き手不足も顕著である。厳しい経営環境だが、雇用の確保等の面から、中小企業、小規模事業者も積極的に賃上げを検討すべき。
全国商工会連合会の調査では、70%の企業が賃上げを実施。内4%を超える賃上げをした企業は22%程度。しかし、売上高が2億円以上の80%以上が賃上げを実施している反面、売上高が2千万円未満の企業では40%台。小規模企業ほど賃上げが実施出来ていない。
価格転嫁は、7割以上の価格転嫁が実施出来たのが全企業の22%。3割未満しか出来ていないのが56%。進んでいないのが現状。国や県による、コスト増や人件費増分を取引価格や製品価格に転嫁しやすい機運醸成と経営環境整備、下請け取引の適正化への指導が必要。
- 大辻兵庫県中小企業団体中央会会長
2024年問題を抱える運送業界や建設業界の職人不足、卸売業や飲食業界、介護現場での人手不足を訴える声が多い。当会では、物流業界の生産性向上を図るため、2024年問題対策について検討したが、「1.標準運賃の見直しに向けた交渉力向上や、2.ドライバーの労働時間、拘束時間管理の重要性を改めて認識すること、3.労働時間や拘束時間、人件費コストを把握し、データをもとに荷主の理解を得る取り組みを行うこと」が提言された。
また、当会では、人材採用応援プロジェクトを実施、学生の生の声やZ世代と呼ばれる若い人達の考えや実態を知る機会を設けた。
このほか、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金事務局の受託を通じ、働き方改革や被用者保険適用拡大や賃上げ等に役立つ中小企業の設備投資等を支援している。
- 金刺兵庫労働局長
「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき、労使団体、兵庫県など関係機関と連携した持続的な賃上げの推進に取り組んでいる。具体的には、中小企業の賃上げ環境整備として、業務改善助成金による支援を実施している。
また、年収の壁への対応を含めた所得向上への取組として、年収の壁・支援強化パッケージによる支援などを実施。106万円の壁、130万円の壁、企業の配偶者手当への対応策を盛り込んでいる。
このほか、三位一体の労働市場改革は、公的職業訓練のデジタル分野への重点化、デジタル推進人材の育成等を実施。多様な働き方の推進として、同一労働同一賃金の更なる徹底などを推進している。
さらには、労務費の適正な価格転嫁の推進として、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」による価格転嫁関連の施策紹介、賃上げの意向確認、賃金が支払われない場合の是正指導等を行っている。
- 原田兵庫県産業労働部長
中小企業が賃上げしない理由に、業績低迷、雇用維持を優先、物価高騰によるコスト上昇などがある。県では、これらの事情を考慮しながら施策を展開している。
具体的には、一つは県内企業人材確保支援事業。中小企業等と連携し、若手従業員を対象に、就職後5年間の奨学金返済を県と企業で全額負担し、人材確保、雇用の安定化を支援。また、年齢要件の緩和等も拡充した。二つ目は制度融資。低利融資を運用し地域経済の好循環を下支えしている。事業展開融資では、新分野への進出など前向きな取り組みを支援し、企業収益の拡充を後押ししている。三つ目は経営改善、成長力強化への支援。金融機関による伴走支援に補助することで、中小企業等の経営力強化を促進している。
これら、総合的な取り組みを商工会議所、商工会など各団体と連携しながら、伴走できめ細かく実施していく。
- 齋藤知事総括
政労使会議の成果として、共同メッセージを発表させていただく。本日の意見交換を通じて、昨今の労使双方がおかれている状況などを共有でき、取組みの方向性が同じだと確認できた。このことは大変大きな成果だ。
阪神淡路大震災から、来年で30年の節目を迎える。震災の様々な困難を乗り越えて創造的復興を果たしてきたのが、兵庫県である。バブル崩壊、リーマンショック、コロナなど、幾度もの困難を乗り越えて、製造業などを中心に力強いひょうごの力を発揮してきたのが、兵庫の強みである。今後も、政労使が一体となって続けていくことが大切である。
足下での物価高騰を踏まえると、大切な4つのポイントがある。
1つ目は、皆さんとともに賃上げを進めていくこと。次に、その分を適切に価格転嫁していくこと。さらに、DX導入などにより、生産性を向上させていくこと。人手不足対策、事業承継など経営課題を抱える企業を支援しながら投資拡大をしていくこと。
なによりも、兵庫で働く労働者の皆様、特に若い世代の皆さんに更に兵庫県に定着いただき、県内の中小企業や様々な業種でしあわせに働いていただくことが大切である。
そのためにも、今日の共同メッセージのもとで、オール兵庫で取り組んでいきたいので、よろしくお願いする。
兵庫県政労使会議 共同メッセージ
私たちは、デフレ経済やコロナ禍の苦難を乗り越え、
兵庫経済の好循環を実現するため、昨年を上回る賃上げ、
労務費等の適切な価格転嫁、生産性の向上、投資の拡大に
「オール兵庫」で取り組みます
令和6年1月30日
兵庫県政労使会議
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兵庫県政労使会議共同メッセージ(PDF:487KB)(別ウィンドウで開きます)
兵庫県政労使会議資料(PDF:7,031KB)(別ウィンドウで開きます)