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協働のための広報 兵庫県 広報ガイドライン Hyogo Public Relations Guidelines
多くの人は文章を読むのが好きではありません。どちらかと言えば苦痛です。文章を「読まれない前提」で書くというのは「読む側の立場になってみる(なる、ではなく、なってみる)」ということ。「読まれなくてもいい」と謙虚な姿勢でさまざまな対処をするということです。その対処についてはいろいろとありますが、基本は「捨てる」と「見出し」。まず「捨てる」について。「伝えたいことをすべて」を伝えるのではなく、「伝わること」を伝える。正確には「伝わることから伝える」。あれもこれもとすべてを求めて結果がゼロとならないように「捨てる」勇気が必要になります。次に「見出し」。新聞のように見出し読みができるようにする。そのためには、複数の見出しだけで全体概略を把握でき、あわよくば本文(小さな文字)も読んでもらえるような、そんな見出し作りを目指します。
表現の順序の話です。同じ組織内でのコンセンサスを目的とした文書では「全体→具体」が適切です。頭の中を整理できるからです。ところが、見知らぬ誰かを振り向かせる広報物の場合には受け手の具体的なメリットや興味が先立つ必要があります。難しい!関係ない!と思われた時点で、先を読まずに捨てられてしまいますので。
一方で「先に結論を言う」も重要な表現手法です。そこで、2つのキャッチコピーを見比べてみてください。
いずれも結論(に近いこと)を表現しています。くらべると、(1)の方が全体網羅性はありますが、お客さんの立場としては明らかに(2)に惹かれると思います。理由は、メリットが具体的だからです。結論からスタートすることは重要です。しかし、発信側の結論に重きをおくと、受け手の具体的なメリットが薄まってしまうのです。
チラシやポスターの構成を考えるときの要素です。
以下のような要素を明確にして校正を考えます。
(1)スタンス
どんな立場、立ち位置で発信すれば、受信側と距離が縮まるか。「一緒に考えましょう」なのか「協力してください」なのか、発信側が極力存在を消して受けて同士で会話してもらうのか。キャッチコピーを誰目線で書くのかにもつながります。発信者本意では伝わりませんが、むやみに受け手にすり寄っていくだけでは信頼感が損なわれます。
(2)すごいこと
広告業界では「ユーザーベネフィット」という言葉を使いますが、受け手が最も興味を持つだろう内容を考えます。できれば複数。それぞれに順位をつけて、表現順序に反映させます。
(3)具体情報(内容)
人は具体にのみ惹かれます。前述のマンションのキャッチコピーのように、高さなのか、価格なのか。広告でよくつかわれるユーザーボイス(お客様の声)もこれにあたります。
column Chapter-3-
印刷物を事業者に依頼する
印刷物を事業者に依頼する際、お願いするのは「印刷のみ」なのか「印刷+デザイン」なのか。前者の場合に気をつけるのは、渡したデータを印刷用に変換してもらう際にどこまでの調整(きれいなデータにする作業)してもらえるのかコンセンサスをとることです。こちらで制作するデータの必要な精度が変わってくるからです。後者の場合は、逆に「デザインしたような」データを作らないこと。必要なテキストや素材データをまとめて、受信者に認識してもらいたい順を掲示する。これだけで十分です。こちらがデザインしすぎると、事業者の発想の幅が狭まり、せっかくの事業者のスキルを十分に生かすことができません。