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未来へつなぐ能楽師の挑戦
2017(平成29)年、西宮市に「西宮能楽堂」を設立し、能楽の魅力を国内外へ伝えている能楽師の梅若基徳さんは、その功績などにより、本年度の県功労者表彰を受賞しました。能楽堂設立の経緯や現在の活動について聞きました。(取材・文 本紙編集部)
Q.設立の経緯は。
能を核とする多彩な芸能・芸術に親しんでもらいたいとの思いで、有名な謡曲「高砂」に地名が登場する鳴尾の地に開館しました。天窓から自然光が降り注ぎ、野外舞台の姿を屋内に再現できる希少な能楽堂です。

近代的な建物の中に作られた能舞台。南向きに設計したことで、窓から入る自然光の移り変わりと物語の時間を合わせることができます。
Q.兵庫県との能楽の関わりや、初心者が楽しむこつは。
兵庫県は、「敦盛」をはじめ多くの演目の題材となっている源平合戦の古戦場があるほか、尼崎が舞台の「船弁慶」、須磨が舞台の「松風」など、能楽と縁が深い土地です。そういった地元ゆかりの演目から入ると親しみやすいと思います。当能楽堂では、初心者や子どもも分かりやすいよう、全せりふの字幕をスクリーンに表示しています。

能面付け体験は子どもにも人気です。
Q.活動の内容は。
国内はもちろん、海外でも毎年公演しています。また、親子体験教室や他の伝統芸能との共演といった普及活動にも力を入れており、能面や装束を身に付けられるワークショップは海外からの観光客にも人気です。今後も国内外へ能楽の魅力を届け、次世代につないでいきます。

中世から続く観世流シテ方、梅若家に生まれ、3歳の初舞台以来、国内外で活動してきました。
問い合わせ
自主公演のほか、すり足、能面付け、装束付けなど各種体験も。要予約。料金は体験により異なる。
【場所】西宮市鳴尾町3-6-20
【問い合わせ】(一財)日本伝統芸術文化財団
【電話】0798-48-5570
【ファクス】0798-48-5571
詳しくは西宮能楽堂(外部サイトへリンク)のページへ
「花と能」生花と舞の競演
草月流師範会顧問の多田玲秋さんによる「いけばなライブ」と、梅若さんによる「花ノ精の舞」の披露。トークコーナーも。
【日時・期間】12月5日(土曜日)14時00分~
【場所】西宮能楽堂
【料金】指定席4,400円、自由席3,850円(いずれも前売りは550円引き)
【申し込み・問い合わせ】(一財)日本伝統芸術文化財団
西宮能楽堂に込められたこだわり
西宮市鳴尾町にある西宮能楽堂。一見すると現代的なコンクリート造りの建物ですが、一歩足を踏み入れると、そこには伝統的な造りの能舞台が広がります。この能楽堂には、古くから受け継がれてきた能舞台の姿を再現するため、さまざまな工夫が施されています。設立した能楽師の梅若基徳さんに、建物や舞台に込めたこだわりを聞きました。

太陽の動きと物語が重なる舞台
西宮能楽堂の大きな特徴は、天窓から自然光が差し込むことです。
「昔の能は屋外で演じられていましたが、当然、電気による照明はありませんでした。太陽の光の中で演じるのが本来の姿だったんです」と話す梅若さん。そこで、舞台を南向きに配置し、自然光が差し込むように設計しました。時間の経過とともに舞台に差し込む光や影も変化します。夕暮れには自然と光が弱まり、舞台の表情も移り変わっていきます。一方、自然光を取り入れることで、照明を消しても舞台を完全に暗くできないという難しさもあります。それでも梅若さんは、昔ながらの能舞台の姿を大切にしたいと考えました。

天窓から差し込む太陽光
客席数よりも大切にした舞台の造り
西宮能楽堂の設計では、限られた敷地をどう生かすかも課題でした。客席を増やすためには、舞台の向きや配置を変えるという選択肢もありましたが、梅若さんが優先したのは、伝統的な能舞台の姿を再現することでした。「本当はもっと客席を取ることもできたんですが、舞台の方角を優先したかったんです」

また、能舞台を囲む白い小石が敷かれた「白洲」にも、昔ながらの工夫が残されています。現在は舞台を飾るもののように見えますが、もともとは太陽の光を反射させ、舞台を明るく照らす役割がありました。
「今は電気があるので幅も狭くなっていますが、昔はもっと広かったんです」

能舞台を囲む「白洲」
能舞台の屋根も、かつて屋外で演じられていた名残の一つです。現代の建物の中にありながら、屋根付きの舞台や白洲など、昔の特徴を残している西宮能楽堂。梅若さんのこだわりが、随所に詰まっています。
舞台の背景にも込められた思い

能舞台の正面にある「鏡板」には、伝統的な老松に加えて、梅の枝が描かれていますが、よく見ると梅の花は咲いておらず、つぼみのままになっています。そこには「花は舞台の上で演者が咲かせるもの」という思いが込められているそうです。
普段は何気なく見過ごしてしまう舞台の一つ一つに目を向けると、能楽の世界がより身近に感じられるかもしれません。














