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8月も中盤になると、猛暑続きから一転し、梅雨のような雨続きの日々となりました。そんな悪天候の最中ではありましたが、丹波の森公苑では、8月9日(月)にシンポジウム(「丹波の森づくりの新展開に向けて~次代のもりびとと共に~」)が開催されました。当日は、丹波の森研究所の研究報告に続いて、パネルディスカッションが催され、近年移住者が多く移り住んでいる福住地区(丹波篠山市)や神楽地区(丹波市青垣町)の代表の方などが移住対策や集落活性化について熱く語られました。
丹波では今、この集落・地区がホットな場所になりつつあります。近年、活力ある地域社会の実現に向け、移住対策とともに、交流・関係人口の拡大や生業の起業化につながるユニークな取組が集落・地区単位で進められつつあります。本日はそのなかで、丹波篠山市の旧小学校を活かした地域づくりについてご紹介したいと思います。
まずご紹介したいのが、丹波篠山市東部の雲部(くもべ)地区です。丹波篠山市では2010年代に小学校の統合が行われ、118年の歴史を誇った雲部小学校も、2010年3月に閉校になりました。
しかし、地区の人々の熱意と努力で、旧小学校は交流拠点(「里山工房くもべ」(外部サイトへリンク))としてよみがえりました。2013年、旧小学校舎内にカフェレストランと農産物直売所がオープンしたのです。地元で採れた新鮮な野菜をふんだんに使った「定食」やオーガニック・コーヒーなどが徐々に評判を呼び、オープン3年目には、カフェレストランの利用者は年間1万人を越えるまでになりました。
一方、旧小学校内の教室についても、利用希望が相継いだことから、工房・展示販売室として利用されるに至っています。現在、革製品、丹波木綿や木工などの作家6人の方が入居されています。そのなかには、地元丹波篠山市の方とともに、阪神、播磨地域出身の方もおられるそうです。
「里山工房くもべ」ではレストランの運営などを手がける一方で、兵庫県のアンテナショップ「元町マルシェ」に毎週、農産物の出荷も行っています。また現在は、地域の特産品を生かした加工品、スイーツの開発にも乗り出すなど、新たなチャレンジを続けています。
旧雲部小学校 カフェレストラン「里山工房くもべ」 美味しいと評判の「定食」
※左、中の写真はインターネット情報誌「ふるさと兵庫“すごいすと”」HPから転載
パネルディスカッションに参加した福住(ふくすみ)地区でも、旧小学校活用の取組が進んでいます。伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)の中心にあり、宿場町の本陣跡に建っていた旧福住小学校(2016年3月閉校)を「人や文化が行き交う拠点-SHUKUBA(外部サイトへリンク)(しゅくば)」と位置づけ、2018年から施設改修を進めてきました。これまで、カフェや「福住ダイドコラボ」と呼ばれる農産加工品の開発を行なう共同利用加工所、地域の歴史・文化の展示室などが整備されました。加工所ではオープン以降、様々な加工品の受託生産を行ってきましたが、最近、自主商品の缶詰(「山鹿のオイル煮」、「椎茸のオイル煮」、「ピリ辛椎茸のオイル煮」)を開発したところ、市のふるさと返礼品に選ばれるなど、好評を博しているそうです。
また、旧教室等へのテナントの入居も進んでいます。3階の旧音楽室には、現在シェアオフィスとして2つの事業者が入居しており、旧図工室には丹波木綿の工房、旧普通教室には、写真家夫婦のギャラリーが開設されています。旧職員室には、市の多紀支所が入居し、にぎわいづくりに一役買っています。
旧福住小学校 「福住ダイドコラボ」 自主開発したオイル煮缶詰
福住の北隣の大芋(おくも)地区でも、旧小学校を活かしたユニークな試みが行なわれています。2016年3月に閉校した大芋小学校について「地域コミュニティが主体的に関わり、地域コミュニティの場とする」方針を決定し、施設の整備・活用を進めてきました。
閉校後、地区では、旧小学校の利活用方針の検討に入りましたが、同時に、施設の一般開放も始めました。すると、スポーツ教室や合宿、ドローン学校の実習などで、阪神間など、他地域の人も利用しだしました。また、学生や起業を志す人たちの拠点としての活用もスタートしました。
そして、こうした利用者から出てきたのが、校舎への宿泊要望です。それを受けて、地区では2つの旧教室を改修し、畳敷きの宿泊スペースに転用し、2020年4月、旧小学校は「泊まれる学校おくも村(外部サイトへリンク)」としてオープンしました。オープン後、コロナ禍で一旦は休業を余儀なくされたのですが、昨夏の再開以降、宿泊客は堅調に推移しているそうです。また、空き教室への引き合いもたくさん来ていて、旧教室のいくつかは、コ・ワーキング・スペースとして賃貸契約されたそうです。
旧大芋小学校 旧教室を改装した宿泊スペース ランチルームでの活動の様子
以上、3つの事例をご紹介しましたが、これらに共通しているのが いずれも地域が主体的に考え、発案した取組だということです(それ故に、それぞれの取組に‘個性’があります)。まちづくり協議会(地区の運営組織)などで時間をかけて議論し、活用方針の検討から施設改修・整備、運営へと進んできました。各地区の運営法人も、地域の人たち手で設立されたものです(雲部:合同会社「里山工房くもべ」、福住:NPO法人「SHUKUBA」、大芋:「一般社団法人「おくも村」」)。その過程は、まさに内発的、自律的な地域づくりの実践プロセスだったかと思います。
こうした取組が実現したのは、実務経験豊かなまちづくり協議会役員の方々らが、リーダーシップを発揮し、地区の力を結集したからに他なりません。その一方で、移住者や関係人口の方々らが継続的に関与したことで、取組のなかに新たな知恵やアイデアがもたらされることになったともお聞きました。今後も、定住者、移住者、関係人口の方々が一緒になって、地域発のユニークな取組を興していけるよう、県民局としても最大限支援していくつもりです。緊急事態宣言が解除され、落ち着いた日々が戻ってきたら、是非一度皆さんも、丹波の集落・地区に足を運んでみてください。きっと、新しい発見と出会いがあると思います。
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兵庫県下では、9月30日(木)までの間、緊急事態宣言が発出されています。感染拡大阻止に向け、責任ある行動をお願いします。
丹波県民局長 今井 良広
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