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雪が舞う2月17日、丹波の森公苑では「シリ丹バレー(外部サイトへリンク)推進協議会」の設立総会・記念セミナーが行われました。セミナーでは、丹波市ご出身(丹波篠山市在住)でロボット工学の世界的権威でいらっしゃる金出武雄先生(カーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授)に基調講演を行っていただきました。
基調講演を行う金出(かなで)先生
先生には「素人のように考え、玄人として実行する」というタイトルのもと、専門常識にとらわれない素直な発想の大切さについてウィットに富んだ語り口でお話いただきました。ご講演の最後には、イノベーションを起こす要因として人的資源(良い人)と住環境(良い環境)の重要性をご指摘いただき、その点で丹波は恵まれた土地であり、シリ丹バレーの将来は明るいとエールを送っていただきました。関係者一同、先生のお話から大いに刺激を受けるとともに、丹波の可能性に自信をもつことができました。金出先生、ご講演誠に有難うございました。
基調講演後、セミナーでは3つのセッションを設けクロストークを行いました。そのうちの1つ、「地域発イノベーションの世界的動向」では、海外からご報告いただきました。アメリカからはポートランド市振興局(Prosper Portland)のケビン・ジョンソン氏が同市の国際的なB to B(事業所間)マッチング・プログラムを紹介し、丹波の企業に参加を呼びかけていただきました。
また、ドイツからはアンナ・シュラーデ関西学院大学准教授が、バイオマス資源に富んだ丹波の参考事例として、同国のエネルギー自給率100%コミュニティ、フェルドハイム(Feldheim)の取組をご報告いただきました。今後も、両氏にはシリ丹バレーのプロジェクト等に様々な形で関わっていただき、丹波と世界の交流を後押ししていただく予定です。
ケビン・ジョンソン氏 アンナ・シュラーデ准教授
丹波と世界の交流といえば、丹波の森づくりを推進することになったウィーンの森との交流が有名です。交流は1987(昭和62)年に当時の丹波10町の町長、議長が兵庫県田園文化都市視察団の一行としてウィーンの森を訪問したことをきっかけにはじまりました。その後、1993(平成5)年には、丹波の森とウィーンの森(ウィーン13区)が正式に姉妹提携を結び、森を通した国際交流が進められてきました。これまで丹波からウィーンの森には22回の訪問団を派遣し800名以上の丹波の人々が現地での交流活動を通じて森づくりへの理解を深めてきました。また、ウィーンの森との交流が発想の原点となり、今に続く「丹波の森国際音楽祭シューベルティアーデたんば」が生まれました。
ウィーンの森親善訪問団
一方、丹波篠山市、丹波市の海外姉妹都市交流はウィーンの森との交流よりも早く、その歴史はほぼ半世紀に及びます。丹波篠山市(旧篠山町)は1972(昭和47)年8月にアメリカ・ワシントン州ワラワラ市と、丹波市(旧春日町)は1968(昭和43)年7月に同州オーバーン市、(旧柏原町は)同年11月に同州ケント市と姉妹都市提携を結んでいます。
※丹波篠山市は1988(昭和63)年5月にギリシャ共和国アンシェントエピダウロス市とも姉妹都市提携を結んでいます。
丹波市長、ケント・オーバン両市長のオンライン会議(2021年2月22日)
両市ともこれまで若者の交流などを通して姉妹都市と友好関係を築いてきてきました。丹波篠山市は1974(昭和49)年以降、長期留学生(1年間)を21名ワラワラに派遣し、14名を丹波篠山市に受け入れてきました。短期留学生に関しては、派遣、受け入れとも、300名近くに達しています。丹波市でも、高校生の交換留学を1966(昭和41)年にはじめ、これまで33名の留学生をアメリカに送り、34名の長期留学生を丹波市に受け入れました。短期留学生に関しては、派遣、受け入れとも約180名にのぼります。
ホストファミリーとの交流
手元に丹波篠山市からワラワラ市に派遣された長期留学生のリストがありますが、それをみると、その後商社などに入って海外に雄飛されている方もいますが、地元丹波篠山で英語教員、公務員、あるいは旅館経営者などの立場で、国際交流活動やインバウンドの受け入れなどにあたっておられる方もいます。地域にとって貴重な国際人材の蓄積を図ることができたのは、姉妹都市交流の大きな成果といえましょう。
丹波篠山市とワラワラ市の姉妹都市交流は、2022年の今年ちょうど50周年を迎えます。現在ワラワラ市では、記念事業としてメインストリートにデカンショ踊りの彫像を設置する計画が進んでいますが、こうした取組を通じて、両市の間で新しい友情と連帯が育まれることを祈っています。また、シリ丹バレーの取組等を通じて、日米の姉妹都市間で新たな経済交流がはじまることも期待しています。
デカンショ踊りの彫像(丹波篠山市役所庁舎前)
現在策定中の「丹波新地域ビジョン」(案)では、ここに記したウィーンの森との交流や海外姉妹都市との交流を継続・発展させることで、国際理解を促進するとともに、地域の活性化を図ることを謳っています。
また、新地域ビジョンでは、丹波の森大学(外部サイトへリンク)のオープン化、グローバル化の推進も展開方向に掲げています。丹波ならではの講座(森づくり、有機農業、古民家再生等)をオンラインで海外の方が受講できるようにすることや、少子・高齢化等世界共通の地域課題の解決に向け、講師陣に海外の専門家、研究者を加えアクティブ・ラーニングを実践することなどを謳っています。先にご紹介したアンナ・シュラーデ先生も、来期の丹波の森大学の講師陣に加わっていただき、ドイツ人の森を愛する心について語っていただく予定です。
さらに、新地域ビジョンでは、内なる国際化についても取り上げています。地域社会において、外国人コミュニティと連携して、多文化共生※の取組を推進し、相互理解を促進することを謳っています。
その背景には、丹波管内における外国人数の増加があります。管内では2009年の1,209人(兵庫県調べ)から2020年には1,864人(法務省「在留外国人統計2020」)へと、約1.5倍に増加し、外国人の方が社会の様々なところで活躍するようになっています。同時に多国籍化も進み、様々な文化・生活様式をもった人々がこの地で暮らしを営むようになっています。
※国籍等の異なる人々が、互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと(総務省(2006)「多文化共生の推進に関する研究会報告書」)
多文化共生の取組は、すべての人を社会の一員として温かく包み込み、互いに支え合いながら共に生きる包摂型社会づくり(ソーシャル・インクルージョン)の考え方に基づくものです。将来に向けて、外国人をはじめ誰もが暮らしやすい、開かれた地域づくりを推進していくことが求められています。
外国人コミュニティとの交流
包摂型社会の実現は、地域の持続可能性の向上という観点からも重要になってきています。人口減少・高齢化が今後長期的に続くなか、担い手を確保していくには、年齢、性別、国籍、障がいの有無等に関わりなく、誰もが活躍できる社会を築いていかねばなりません。担い手の多様性(ダイバーシティ)が地域力の向上につながります。外国人の視点を活かすことで、新しい丹波の魅力の発掘・発信が可能になるでしょう。
今後、丹波県民局ではシリ丹バレーをはじめ様々な事業において、世界とのつながりや多文化共生の視点を意識しながら取組を進めてまいります。これから、「丹波新地域ビジョン」で謳う、新しい暮らしのカタチの創造に向けた共創※の取組に、世界の人々が関わる仕組みを築いていきたいと考えています。世界とのつながりのなかで、丹波らしさを再発見するとともに、世界の地域社会が共有する課題について丹波からも解決策を発信することが、我々の願いであり、目標であります。
※目標を共有(「共感」)する人たちが、ともに学び、ともに成長し、ともに新しい価値を創ること
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