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「死」は、存外身近なことかもしれません。
家族の、友人の、同僚の、あるいはテレビの中の世界の人の。
死の迎え方も様々です。病で、事故で、他者の手で、そして、自らの手で。
兵庫県の自殺者数は減少傾向にありましたが、残念ながら近年は増加傾向に転じています。私も、身近な人の自死を経験したことが一度ならずあります。いずれの時も、「何かできたことはなかっただろうか」と考えなかったことはありません。周囲に、悲しみだけではなく、戸惑い、後悔、あるいは自責の念という感情をより喚起するという面からも、自死は他の死とは異なります。
「ゲートキーパー」という言葉をご存じでしょうか。悩んでいる人に気づき、声をかけ、話をきいて、必要な支援につなげ、見守る人のことです。「命の門番」とも言われています。医師やカウンセラーなどの専門家だけが担うものではありません。私たち誰もがなり得るものです。
詩人・谷川俊太郎さんの『ぼく』という絵本があります。
ぼくはしんだ
じぶんでしんだ
ひとりでしんだ
で始まるこの絵本は、少年の自死を題材にしています。その制作過程を追ったドキュメンタリー番組の中で、「この絵本の読者にメッセージを」との求めに対し、谷川さんは間髪入れず「一切ないですね」と答え、次のように続けます。
「一般的な読者に対して何か言うことはできない。一人ひとり全然違う境遇で、全然違う人間関係を持っている子どもたちに、一般的にメッセージなんて言えない」
抱える事情は一人ひとり異なるからこそ、私たち一人ひとりがゲートキーパーとなって、声をかけ、寄り添うことが何より大事です。
注意して見ると、いつもと少し様子の違う人はいませんか。
声をかけてみる、その一歩を踏み出しませんか。
3月は「自殺対策強化月間」ということで、今回のメッセージを書きました。
「死」について言葉にするのは、正直恐いです。
ですが、一人でも多くの人が小さな一歩を踏み出していただければ、との思いを言葉にしました。
届くと幸いです。
阪神北県民局長和泉 秀樹
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