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映画であれ、ドラマであれ、漫画であれ、決して有名ではないけれども、自分だけの心に残る「名作」が、誰しもあるのではないでしょうか。
私にとって「スローニン」という漫画が、そんな作品です。作者は吉田聡。代表作の「湘南爆走族」は、実写映画化やアニメ化されました。「スローニン」は1987年から1988年の約1年間、「ビックコミックスピリッツ」に連載された、全4巻の小作品です。同時期に同誌に連載されていた「めぞん一刻」や「美味しんぼ」などと比べて、地味な存在でした。
少しストーリーをご紹介します。
高校ラグビーのスター選手だったが、試合中の事故で大けがを負ったため、ラグビーを諦め、「なんでも屋」をしながら全国を放浪する通称「コッセツ」。
元高校球児で、外野手として甲子園に出場するが、決勝戦を自分の落球で負けてしまい、大学受験にも失敗して浪人生活を送る通称「ラッキュー」。
ラッキューはコッセツのなんでも屋に巻き込まれ、2人で様々な依頼に応えていきます。彼女が引っ越す前にもう一度会いたい小学生を連れて60キロの道のりを夜通し走ったり、家業の八百屋を継ぐ条件としてトラック一杯の白菜を仕入れるよう言われた不良少年と一緒に白菜を求めて奔走したり。
こうして、なんでも屋として経験する様々な出来事を通して、傷ついた過去に向き合い、前を向いて踏み出していく、という話なんですが、笑いの要素多めなので、「青春ギャググラフィティ」といったところでしょうか。
エピソードの一つに、埋蔵金を掘り当てる夢を追い続けるおじいさんの話があります。コッセツとラッキューはこの埋蔵金掘りを手伝うことになりますが、あるとき、おじいさんが「夢」について語ります。少し長くなりますが以下に引用します。
ワシはこう考える。夢なんぞは見えるもんじゃないから、目をつぶってみる。
そして、(目の前の壁に手を触れて)この壁が夢じゃ。
(壁から手を離して)こう離れて立つと、壁までどのくらいあるかわからなくなる。ひょっとしてあと1ミリくらいなのかもしれんのに、見えんから、10キロも20キロも先にあるように感じる者もおるだろう。
逆に、あと20~30キロ離れていて、一生のウチじゃ届くわけないのに、5、6センチだと思ってあがく者もおる。
途中で努力をやめる者も、ムリなのにガンバッている者も、そうなると失敗者じゃ。
じゃが、最初から夢を探ろうとせん者も愚か者じゃ。平凡な暮らしに後悔ばかりが残る。
ワシは、ワシが見た夢に向かって進み、必ず勝つ。万が一届かなかったとしても、バカな愚か者より、哀れな失敗者の方がマシじゃ
振り返ってみると、私は明らかに「愚か者」でした。特に夢ももたず、目の前に見えている現実に向き合うことで精一杯だった気がします。
兵庫県では、県民の皆さんと共に「将来、こんな地域になったらいいのになあ」「こんな地域になりたい」という「夢」を描いています。その夢を県では「ビジョン」と呼んでいます。阪神北県民局は、阪神南県民センターと一緒に、阪神地域として2050年のなりたい姿、夢を「阪神地域ビジョン2050」にとりまとめました。
例えば、
などなど、ここに示したのはほんの一例ですが、こうした夢の数々を県民の皆さんと共有し、その実現に向けて共に取り組んでいきたいと思います。
「阪神地域ビジョン2050」は県民局のホームページに掲載していますので、少し分量はありますが、ぜひご一読ください。難しければ、概要版だけでも。
ついでに、「スローニン」も一度読んでいただけるとうれしいなあ。埋蔵金のエピソードもいいんですが、一押しはラッキューとお父さんとのエピソード。不器用な父と子の機微が描かれて、感涙ものです。
阪神北県民局長和泉 秀樹
お問い合わせ
部署名:阪神北県民局総務企画室総務防災課
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