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12月に入ると寒さが一段と厳しくなってきました。中盤以降冬日が多くなり、下旬には数年に一度の寒波の襲来で、一気に冬本番となりました。しかし、そんな寒さにもめげず、今、丹波県民局では内外のたくさんの人のエネルギーを結集するホットな取組を進めようとしています。
その取組とは、「シリ丹バレー」と呼ばれる構想・プロジェクトです。すぐにお気づきだと思いますが、この言葉は世界的なIT産業の集積地であるシリコンバレー(Silicon Valley)※の名称からコンを抜き、代わりに丹波の丹の字を入れた造語です。
※アメリカ合衆国カリフォルニア州北部のサンフランシスコ・ベイエリア南部に位置しているサンタクララバレーおよびその周辺地域をさす。
シリ丹バレー構想は、シリコンバレーのように地域発イノベーションが次々と起きる地域をめざして、丹波に変化を生み出そうとする試みです。人と人の新しい交流を促したり、地域に見合った新技術の導入を促進したりすることで、丹波を起点として産業や製品・サービスのイノベーションを起こそうとする取組です。
シリ丹バレー構想は、2020年度に事業化され、同年9月27日にキックオフ・ミーティングが開催されましたが、コロナ禍もあり、これまで組織化、ネットワーク化は進められてきませんでした。今回、丹波地域と関わりのある企業や経済団体、大学関係者、地域団体、行政機関等の参加を得て、産学官民で同構想の推進機関となる「シリ丹バレー推進協議会」(仮称)を設立(今年度を予定)します。
そもそもこの構想は、集落の空き家や廃校等の遊休施設をワークス・スペースへと改修し、そこに起業家を呼び込もうとするアイデアからスタートしました。それが現在では、地域発イノベーションが生れやすい環境づくり、すなわち、「地域イノベーション・エコシステム」※の形成に資する幅広い事業を盛り込んだ構想へと発展しようとしています。
※ 地域の様々な主体が結びつき、アイデア、情報、知識、技術等の交換を図りながら協業(協働)していくことで、イノベーションが創発的(連鎖的)に生み出されるシステム
構想は大きく4つの事業の柱からなっています。1つはネットワーキングです。協議会の活動を通じ、メンバー間の交流・協業を促進します。協議会内にテーマ別グループを設け、新たな事業の創造やネットワークの形成に取り組みます。また、メンター(相談者)登録制度を設け、起業志望者が先輩起業者から実際的な指導・助言を仰げるような仕組みを整えます。
2つ目の柱は、地域産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化の促進です。DXをテーマとした各種セミナーを経済団体等と共催で実施し、事業者や地域の方々への情報提供に努めます。今年度は農林業家を対象にICTを活用した農林業の効率化、スマート農林業にかかるセミナーを催し、来年度は小売、モビリティ(移動)、スマートシティ等をテーマに幅広くセミナーを開催する計画です。また、DXの担い手となるIT人材のUJIターンの支援に向け、地元企業とのマッチング・イベントの開催にも取り組みます。
スマート農業の展開-ドローンによる山の芋の防除-(丹波篠山市)
3つ目の柱は、起業・創業、継業への支援です。起業・継業志望者等を対象に育成セミナーを開催し、ノウハウやスキルの提供を図ります。特に、女性人材の育成に注力すべく、これまで県民局で実施してきた女性スキルアップ塾の活動充実に努めます。管内における女性起業家ネットワークの立ち上げも進めます。
女性のためのスキルアップセミナー
また、起業・継業人材の発掘・育成とともに、民間副業人材の発掘・活用も推進します。大都市の民間企業で働く専門人材等の丹波における副業・兼業を促進するため、管内の企業・事業所等における副業情報を提供する仕組みの整備を進めます。なお、シリ丹バレー協議会事務局においても、来年度副業人材の採用を予定しています。
起業・継業の推進に向け、県の各種起業支援メニューの活用を促すほか、金融機関と連携し、資金調達支援にもあたります。また、クラウド・ファンディング※(CF)の活用促進に向けセミナーや相談会を開催するほか、ファンド組成にあたっての手数料補助も検討しています。このほか、移住者等に安定した雇用環境を提供し、事業の人材確保・後継者育成にもつながる特定地域づくり事業協同組合※※の設立・運営支援にも乗り出します。
※ インターネットを通じて,プロジェクトの内容と理念を情報発信し、共感する不特定多数の人々から資金を調達する仕組み。
※※ 季節毎の労働需要等に応じて複数の仕事を組み合わせ、組合員に年間を通じた仕事を創出することを目的に設置される組合制度(令和2年6月法施行)
4つ目の柱は、新たなビジネスの場・拠点の創出です。空き家や廃校等の遊休施設におけるシェアオフィス等の整備を支援します(事例:旧雲部小学校・旧福住小学校)。ゲストハウス・農家民宿等におけるコワーキング・スペースや情報通信環境の整備等も後押しします。また、これらの施設を活用したワーケーションの推進にも力を入れていきます。
廃校舎のオフィスで働くIT起業家(旧福住小学校〔丹波篠山市〕)
こうした取組・事業を通じて、シリ丹バレー構想では環境問題や介護・福祉、移動などの地域課題の解決につながるビジネスや地域資源(恐竜化石、日本遺産など)を活かしたビジネスの立ち上げを促進していきます。
シリ丹バレー構想の推進にあたって最も重要なのが、オープンな環境の創出です。シリ丹バレーがめざすのは地域発のイノベーションであって、地域内で完結するイノベーションをめざしているわけではありません。地域内のプレーヤーだけでなく、知見を持った外部のプレーヤーにも幅広く参画を求めていきます。
今、大都市に近接するも、自然豊かな丹波は、ポストコロナの新しいライフスタイルが実現可能な‘希望の地’として注目を浴びようとしています。起業を志す移住者も増えてきています。シリ丹バレー構想の推進によって、チャレンジ精神に富んだ新たな人材の流入を促していきたいと考えています。
我々は、異質な人同士の出会い・交流が新しい知恵や工夫を生み出し、イノベーションを促進、創発することになると信じています。これまで出会ったことがあまりないであろう人たち、例えば、地域中核企業経営者と移住起業家、ICT専門家と農業事業者、海外スタートアップ企業と地元金融機関などが一緒に考え、行動する機会や場を設け、新たなイノベーションの波を起こしていきます。
シリ丹バレー構想は、こうした内外のプレーヤーの交流・連携のなかで、丹波発のアイデアを育て、磨き上げ、新しい価値をもった製品・サービスや革新的なビジネスモデルを世に送り出すことをめざしています。
なかでも、シリ丹バレー構想では次世代社会を暮らしやすく、持続可能なものにしていくうえで有益な製品・サービスの創出に取り組みたいと考えています。今後、協議会で「スマート・コミュニティ・プロジェクト」を立ち上げ、「安全・安心」、「移動支援」、「エネルギー自立」、「買い物支援」等をテーマに地域社会へのスマート技術導入のあり方について専門家とともに検討にあたります。
県民局では、今までお話ししてきた構想の趣旨をご理解いただき、ご協力いただける方を今回設立されるシリ丹バレー推進協議会の設立賛同者(発起人)になっていただこうと考えています。1月上旬にシリ丹バレー構想のホームページで賛同者を募りますので、丹波を元気にしたい、丹波でチャレンジしたいとお考えの方は、是非ご応募いただきたく存じます。様々な知識・経験をお持ちの皆さんお一人おひとりの参加が丹波に新たな変化をもたらすと信じています。
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兵庫県は2月20日(日)までの間、新型コロナまん延防止等重点措置実施区域に指定されています。感染拡大阻止に向け、責任ある行動をお願いします。
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