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阪神・淡路大震災から28年目を迎えた1月17日、穏やかな冬晴のもと、「『ひょうご安全の日』丹波地域のつどい」が丹波市立春日部小学校で行われました。丹波では、毎年この日に小学校で、学校、防災関連団体、市等と共催でつどいを実施し、児童の皆さんに防災学習を行っています(今回で18回目)。
当日、朝一番の避難訓練に続いて、つどいがはじまりました。児童の代表の方が「ひょうご安全の日宣言」を宣誓したのち、県民局から防災グッズ(緊急持出袋)の贈呈を行いました。続いて、震災・学校支援チーム(EARTH:アース)による防災講話では、阪神・淡路大震災の経験・教訓などついて語っていただきました。
児童代表による安全の日宣言(丹波市立春日部小学校)
その後、児童の皆さんには学年ごとにグループに分かれ、様々な体験をしていただきました。起震車(地震体験車)で震度7の揺れを体感したり、煙道体験として煙体験ハウスで火災時の煙の怖さや避難方法などを疑似体験したりしてもらいました。また、水消火器を実際に噴射することで、消火器の扱い方も学んでいただきました。
起震車での震度7体験(丹波市立春日部小学校) 水消火器を使った消火体験(丹波市立春日部小学校)
野外に展示されている自衛隊車両や警察車両、消防車両では、隊員・署員・団員の方から車両の機能や日常の活動について説明がありました。また、運動場では、丹波市によって災害時にも活躍するドローンの飛行デモンストレーション・操縦体験が行われ、児童の皆さんは空高く舞い上がるドローンをみて歓声を上げていました。
自衛隊員の説明を聴く児童の皆さん(丹波市立春日部小学校)
一方、体育館では、アースのメンバーによる防災クイズに挑戦し、楽しみながら防災の基本知識を学んでいました。この日の様々な体験・学習は、児童の皆さんにとって記憶に残るものだったと思います。きっと、お家に帰ってご家族の方にいざという時に備えることの大切さについてお話をしてくれたのではないでしょうか。
当日は、自治会の方々も児童の学習・体験活動を見守ってくださいました。
折角の機会ですので、何人かの方に日頃の活動についてお話をお伺いしました。まず、春日部小学校の地元自治会の防災活動について、春日部地区自治協議会の笹川一太郎(ささかわいちたろう)会長、畑英文(はたひでふみ)事務局長、多利自治会の髙見克彦(たかみかつひこ)会長にお聞きしました。
お話を伺った方々
左:春日部地区自治協議会 笹川一太郎会長
中:春日部地区自治協議会 畑英文事務局長
右:多利自治会 髙見克彦会長
それによると、春日部地区の自治会では資材の備蓄に日頃から取り組んでいるそうです。例えば多利自治会では、丹波市の補助金(外部サイトへリンク)を使って土嚢袋や拡声器などを購入・備蓄し、昨年7月3日の大雨の際にも、その土嚢袋を使って大量に土嚢をつくりました。
土嚢ストック
災害時の対応では、自治会長自身が防災行政無線で避難を呼びかけるとともに、避難所を開ける役割を担っています。隣保内で要支援者等を避難所に案内するのは、防災委員や組長(隣保長)の役割だそうです。
また、自治会内では独自の防災規定により救護班や総務班など、災害時の役割分担を予め決めていて、自治会役員の災害時の具体的な動き方、対応について情報共有しています。災害時の避難・救助活動にあたって重要になる世帯名簿については、年1回更新し、緊急連絡先の確認もしているそうです。
高齢者、障害者等災害時避難行動要支援者への対応も、自治会で行っています。災害時の避難行動要支援者名簿の情報を丹波市と共有し、その名簿情報をもとに、自治会、民生委員等の支援者が災害時に災害時避難行動要支援者に対し、声掛け、避難誘導、避難支援等を行っています。
春日部地区自治協議会では、各自治会役員と民生委員の合同研修会を令和4年6月、10月に開催し、防災活動の基本ガイドラインを策定しました。それに基づき、今後、要支援者情報の更新や災害時の助け合い意識の啓発、土嚢袋等防災物資の計画的備蓄、合同防災会議の定期開催などにあたるそうです。
合同防災会議の模様
要支援者の把握をめぐっては、時代と共に変化していると聞きました。昔は集金常会と称し隣保内を持ち回りで毎月誰かの家に集まって広報の配布・連絡や協議・集金を行っていました。誰がどの部屋で寝ているかもわかるので、安否確認の機会でもありました。それが今では、持ち回りで会合を開く隣保が減少しつつあり、要支援者の把握にあたっては、改めて情報を収集・更新する必要があるとのことでした。
一方、興味深かったのが、平時の祭りが防災に役立つというお話です。大きな炊き出し用の鍋をお祭りの際に使うことで、わざわざ炊き出し訓練をしなくても、その使い方や管理方法などが継承されています。また、防災訓練に参加しなくても、祭りには参加する人もいるので、祭りを通じて地域の人を知ることができ、災害時の避難誘導などにも役立つとのことでした。
実は、祭りの防災上の意義は、私が災害支援、復興調査に訪れた東日本大震災の被災地でも聞かれました。災害社会学者の浦野正樹氏は、祭りなどに凝縮された過去の記憶が、危機状況の時にひとつの指針となって甦り、対応の指針になると述べています(浦野 2010※、p.6)。すなわち、祭りという共同行為を通した体験や知恵の蓄積が、災害初動期の迅速な行動にもつながります。現在コロナ禍のもと、地域の祭礼・文化行事が相次いで中止になっていますが、防災上の観点からもその復活に取り組む必要があるでしょう。
※浦野正樹(2010)「災害研究のアクチュアリティ-災害の脆弱性/復元=回復力パラダイムを軸として-」環境社会学研究 16 (0), 6-18.
続いて煙道体験、水消化器体験を担当された丹波市防災会事務局の金子勝典(かねこかつのり)氏にお話を伺いました。金子氏によると、防災会は平成24(2012)年に発足し、会員登録しているひょうご防災リーダー(外部サイトへリンク)及び防災士(外部サイトへリンク)※は現在35名にのぼるそうです。現在県下では、24市町で25の防災会(防災リーダーの会等)が活動していますが、丹波市防災会は比較的早くに誕生した団体で、令和2(2020)年には、それまでの活動への功績から「兵庫県くすのき賞(外部サイトへリンク)」を受賞されておられます。
丹波市防災会では、市、自治会、学校等からの要請を受けて、市内の各所で防災講話、AED救命講習を行っているほか、避難訓練、避難応急訓練、初期消火体験などを実地指導しています。
活動が活発化したのは、平成26年8月の豪雨災害後からで、活動回数が倍近く増え、多い年には年45回ほど活動したそうです。豪雨災害で市全体の防災意識は格段に高まったとのことでした。
しかし、現在会員の多くは、リタイア世代の人たちだそうで、若い世代にどう活動を繋いでいくかが今後の課題だと語っておられました。「防災」という言葉はすこし堅いイメージがあり、若者には近寄りがたいイメージがあるのかもしれないと分析されておられました。
このほか課題として挙げておられたのが、丹波市防災会の知名度不足です。丹波市防災会といっても、なかなか通じず、今後他の団体と連携を密にできる機会が欲しいとも語っておられました。県民局では、昨年度、市、防災関連団体との研修会の場を設けましたが、お話をお伺いして、そのような機会を今後も定期的に設けていく必要があると認識しました。
つどいの当日、起震車のサポートを担当された丹波市女性消防分団(外部サイトへリンク)の活動については、上田吉美(うえだよしみ)分団長に質問票の形でお伺いしたところ、ご多忙にかかわらずご回答いただきました。その内容をこちら(PDF:359KB)に掲載しています。
消防団の放水デモンストレーションを見学する児童の皆さん(丹波市立春日部小学校)
丹波市には、市域全域を活動範囲とする女性消防分団があります。女性、若者と、性別、世代を超えて様々な立場の人が防災の担い手になることが、結果として地域全体の防災意識や防災力の向上につながると考えられます。女性消防分団のさらなる発展に期待しています。
災害が発生した際、最初に救出にあたるのは、家族、友人、隣人です。阪神・淡路大震災でも、約8割が「自助・共助」により救出されました (令和2年版防災白書(外部サイトへリンク))。各自普段から万が一に備えておくとともに、地域社会においてしっかりと共助の輪を築いておくことが大切です。そして、それは防災に備えてというよりも、平時のお祭りや地域活動のなかで自ずと育まれるものです。春日部地区の皆さんのお話はそのことに改めて気づかせてくれました。
また、今回のつどいへの参加を通して、地域防災における消防団や防災会の皆さんの活動の重要性を改めて知ることができました。今後、県民局でも広報媒体や様々な催しを通じて、その活動のさらなる周知に努めていきたいと思います。
災害はいつ、どこで、どのような形で起きるかわかりません。昨年7月3日、丹波地域を襲った大雨では、柏原地域で時間雨量91ミリを記録しました。これは平成26年8月豪雨時の市島地区の時間雨量に匹敵するものでありましたが、それまでが渇水時期であり、24時間雨量もさほど多くなかったことから、被害は平成26年8月豪雨災害ほどにはなりませんでした。しかし、一つ条件が違えば、大きな被害が発生した可能性があります。我々は常に備えておかねばなりません。
※インタービュー・質問にご回答いただきました春日部地区自治協議会の笹川一太郎会長、畑英文事務局長、多利自治会の髙見克彦会長、丹波市防災会事務局の金子勝典様、丹波市女性消防分団長の上田吉美様に改めてご協力を感謝申し上げます。
(追記)
2023年1月は、丹波の気象史上特筆すべき月となりました。丹波市柏原では、1月14日(土)に1月の日最低気温の過去最高である10.4度を記録し、その12日後の1月26日(木)に1月の日最低気温の過去最低(通年では歴代2位)である-9.6度を記録しました(気象庁ホームページ(外部サイトへリンク))。実にその温度差は20度にのぼります。地球温暖化による気候変動の影響なのかわかりませんが、このような天候の変化が、災害の発生確率を高めることにならないか、気がかりなところです。
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新型コロナとインフルエンザの同時流行期に入り、1月27日には季節性インフルエンザについて、県内全域に注意報が発令されました。基本的な感染対策の徹底やワクチン接種のほか、旅行の際には検査キットや無料検査場の積極的な活用をお願いします。
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