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6月に行われた新人公演では、師匠の横で同じように演奏する「連れ弾き」で出演。 |
国指定重要無形民俗文化財の淡路人形浄瑠璃を継承する「淡路人形座」に今春、14年ぶりに三味線奏者として入門した江本未夢さん。この道に進んだ経緯や人形浄瑠璃の三味線の魅力について聞きました。(インタビュー 本誌編集部)
郷土芸能への親しみ
生まれ育った南あわじ市北阿万地区では毎春、鶴岡八幡神社で春祭りが行われます。だんじりを練り合わせ、人形浄瑠璃の節を太鼓と拍子木を鳴らしながら歌う「だんじり唄」を奉納します。地元の小学校でも授業で郷土芸能に触れる機会が多く、クラブ活動で郷土芸能部に所属するなど、ふるさとの文化を身近に感じられる環境で育ちました。
三味線との出合い
中学1年生の時、郷土芸能部が演奏する三味線の心に真っすぐ響く音色に魅せられ、入部しました。淡路人形座では地域での後継者育成に力を入れており、私たちも月に何度か座員から指導を受けていました。
入門の経緯
進学した高校、大学とも浄瑠璃ができる部活がなかったので、邦楽部で箏(こと)を弾いていました。将来は看護師になるつもりが、迷いが生じ悩んでいた大学4年生の時、淡路人形座で太夫を務めていた地元の友人に誘われ、進路を変更。卒業した今春、研修生として入門しました。
修業の日々
17人の座員のうち、三味線奏者は3人。公演は1日4回あり、私は主に裏方を務めています。接客や広報活動もあるので毎日忙しいですが、公演の合間を縫って師匠に稽古をつけてもらっています。
奏者として目指す姿
浄瑠璃の三味線は、作品全体をまとめ、太夫の語りに合わせ喜びや悲しみなど情感を伝えます。それには物語を読み解き的確に表現する力が不可欠で、知識や技術はもちろん、多様な人生経験が必要です。師匠の音は情景にぴたりとはまって聞き手の呼吸を支配し、どうしてこんな音色が出せるのだろうと驚かされます。いつかお客さんを自然と物語に引き込む演奏ができるようになりたいです。
舞台での経験
浄瑠璃は練習よりも本番で経験を積むことが上達への近道だといわれています。6月には、師匠の横で同じように弾く「連れ弾き」で初めて舞台に立ちました。今後も連れ弾きや舞台裏で引く「影弾き」などをこなしながら、少しずつ本番の感覚をつかんでいきたいと思います。
県民へのメッセージ
人形浄瑠璃は、言葉使いはもちろん、物事に対する価値観も現在とは異なる部分があり、理解するのが難しいかもしれませんが、親子や夫婦の愛など人情味あふれる物語は、とても味わい深いものです。ぜひ生を見て、その醍醐味(だいごみ)を感じていただきたいです。
Profile
江本未夢(えもと・みゆ)さん
2000(平成12)年、南あわじ市生まれ。南あわじ市立南淡中学校では郷土芸能部に所属し三味線を担当。大学を卒業した今春、淡路人形座に研修生として入門
【電話】0799-52-0260
【ファックス】0799-52-3072
※公演情報は淡路人形座のホームページで確認してください
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