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神戸産オリーブの復活
神戸は、日本で始めてオリーブが生産栽培された地です。
明治初期、政府は殖産興業政策の一環として、欧米の農作物の栽培を進めました。1872(明治5)年、東京に「内藤新宿試験場」(現在の新宿御苑)を設置、1877(明治10)年には、現在の港区芝に三田(みた)育種場を設け、様々な野菜・果樹が試験栽培されました。そして、品目ごとに適地が探され、オリーブの試験地として、神戸に白羽の矢が立ちます。
1879(明治12)年、現在の中央区山本通に面積約1haの「三田育種場神戸支園」を開設。パリ万国博覧会で事務官長をつとめた前田正名氏がフランスから持ち帰ったオリーブの苗木2,000本のうち550本が植えられ、オリーブの栽培が始まります。
福羽逸人氏の指導により、3年目には、日本で初めてオリーブ油が搾油され、国産オリーブの実の塩漬けも作られました。神戸産オリーブ油ですが、明治政府のお雇い外国人で『日本近代法の父』とも呼ばれるフランスの法学者ボアソナード氏が食して非常に賞賛をされたとのことで、良質のものであったようです。
「三田育種場神戸支園」は開設5年目に「神戸阿利襪(オリーブ)園」と改称、現在の再度筋町の林野を開墾して拡張され、1,000本を超えるオリーブが栽培されました。その後、民間に払い下げられますが、急速に都市化が進むなか存続が難しくなり、明治41年には閉園となりました。
かつての「神戸阿利襪園」周辺に当時の面影はなく、オリーブ生産の歴史は時代の流れとともに忘れ去られていましたが、近年、神戸大学名誉教授の中西先生を中心に研究が行われ、地元団体の「インターナショナルオリーブアカデミー神戸」の活動も進んでいます
2015(平成27)年には、神戸北野ホテル前に「神戸阿利襪園」の歴史を紹介する案内板を設置されています。
また、湊川神社に植えられているオリーブの樹は、前田正名氏がフランスから持ち帰った中の一本とされ、日本最古のものとして大切に守られています。この樹の枝を挿し木したオリーブ苗が、神戸北野ホテル前に植樹されるそうです。
このような神戸とオリーブの歴史にちなみ、果樹生産者とオリーブに関心を持つ神戸市民の皆さんが協働し、「神戸オリーブ園復活プロジェクト」が進められています。生産復活の第一歩として、3月3日に神戸市立農業公園と近隣果樹団地で、「神戸オリーブ植樹祭」も開催されます。
神戸農林振興事務所では、このプロジェクトを推進するため、2016年から生産拡大や加工品開発等を支援しており、県政150周年を機に取組の気運をさらに盛り上げます。
神戸産オリーブが皆さんにとって身近に感じられる日が来るのも、そう遠くないと思っています。
神戸県民センター長 谷口 賢行
≪以下に「過去の神戸県民センター長メッセージ」のリンク先を掲載しています。≫
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