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今年初めて気温15度を超えた3月10日(木)、「まちの拠点創造プロジェクト」のワーキング(準備会)がたんば黎明館で開催されました。当日は会合に先立ち、プロジェクトの対象地区である柏原交流ゾーンの視察会が行なわれ、春うららの好天のもと、参加者の皆様に柏原の街中を歩いていだきました。
「まちの拠点創造プロジェクト」は、「丹波2050地域ビジョン」のシンボルプロジェクトの1つで、まちの求心力向上に向け、多拠点居住やテレワーク等、新たな暮らし方、働き方にも対応した複合的な都市機能整備を官民共同で推進する取組です。また、多世代が歩いて暮らせるまちの実現も、このプロジェクトに期待されているところであります。
丹波の森公苑上空から望む柏原市街地
開催したワーキングですが、プロジェクトの検討会(柏原交流ゾーン構想検討会(仮称))のなかの学識者部会にあたります。角野幸博丹波の森公苑長(関西学院大学建築学部長・教授)を座長に、都市計画、景観、社会学等の専門家計6名で構成されています。ワーキングには、今後柏原交流ゾーンのコンセプトについて検討し、ゾーンの様々な可能性について具体的に提言いただく予定です。そしてそれを受けて、地域の各界各層からなる検討会が、地元の声を踏まえつつ、交流ゾーンにおけるまちづくりの方向性について意見集約を図っていくこととしています。
柏原藩陣屋敷長屋門をくぐるワーキング一行 まちの拠点プロジェクトワーキング準備会(R4.3.10)
今回検討対象となる柏原交流ゾーンは、柏原駅南地区(県有地・未利用地:約2ha)、柏原市街地、丹波の森公苑の3つのエリアからなっています。これら3つのエリアがそれぞれ機能分担しつつ相互補完し、相乗効果を発揮することで、魅力ある交流ゾーンを形成することをめざしています。
このうち、柏原市街地については、中心市街地活性化法等のもと、旧柏原町時代から30年近くまちの活性化事業が進められてきました。平成21年には、丹波市が「時の太鼓が響き、とどく“ロマン城下町かいばら”の創造」を基本理念とする中心市街地活性化基本計画※1を策定し、コンパクトでにぎわいのあるまちづくりを進めてきました。柏原市街地は、認定を受けている全国の中心市街地のなかでも最も人口が少なかったものの、これまで43にのぼる様々な活性化事業が行われてきました。
※1 柏原地区では、旧柏原町時代の1999(平成11)年度に「柏原町中心市街地活性化基本計画」が策定されている。2009(平成21)年度策定の基本計画の改定計画として、2016(平成28)年度に「丹波市中心市街地活性化基本計画(外部サイトへリンク)」が策定され、2021(令和3)年3月の同計画期間終了まで継続して活性化の取組が進められてきた。
この事業の中核を担ってきたのが、商工会とともに中心市街地活性化協議会の事務局を務めた「株式会社まちづくり柏原」です。2000(平成12)年に設立されたまちづくり柏原は、丹波市、民間企業、住民、商工会、地元金融機関等125名が出資し、地元商工事業者の方々が運営に携わるまちづくり法人です。
まちづくり柏原では、地区商業の活性化に向け、まち全体を1つの集客施設に見立て、空き店舗や古民家等を修復・活用した分散型のテナントミックス※2事業を展開しています。
※2 最適なテナント(業種業態)の組み合わせ
これまで、地区内の空き店舗や古民家を改修し、レストラン、飲食店など9店舗の誘致に成功しています。門前町・城下町柏原の雰囲気にあった魅力ある店舗を誘致することで、ロードサイド型店舗の並ぶ郊外とは質的に異なる商業空間の創造をめざしています。
イタリア料理 オルモ(テナントミックス第1号点)
また、まちづくり柏原では商業活性化のほか、街路の美装化や街並み環境整備など地区の美観形成に取り組むとともに、指定管理者として、歴史的建造物であるたんば黎明館の管理を行っています。さらに、イベントの企画・運営や柏原まちづくり協議会の運営支援など、ソフト面でのコミュニティ再生にも取り組んでいます。関西学院大学の柏原スタジオの運営にも協力し、大学生と地域の連携において橋渡し役としての役割を果たしています。
たんば黎明館(まちづくり柏原が入居・管理)
コロナ禍のなかでも、まちづくり柏原は新しい事業にも乗り出しています。それが、今年度丹波市から事業(起業者育成実践型支援業務)委託を受けたチャレンジショップ事業です。JR柏原駅から徒歩5分ほどの古市場商店街内にある空き家を改修し、面積7坪(25㎡)の厨房設備を備えたチャレンジショップ「あっとかいばら」を2021年7月にオープンさせ、飲食店の出店や食料品製造・販売等での起業をめざす人たちに期間限定で貸し出ししています。
これまで、「あっとかいばら」では6店舗が日替わりでシフトを組み出店しています。業態は、カフェ、フレンチ、パン屋、弁当屋、惣菜屋、宝飾店など様々です。貸し出し形態も、借り受けた人のライフスタイルにあわせて、曜日単位、週単位など様々です。3月は3つのお店が出店し、そのうちの一つ、Heart Beats coffee(ハートビーツコーヒー)に先日取材させていただきました。
チャレンジ・ショップ「あっとかいばら」
お店を営む岸上将博(きしがみまさひろ)さんにお聞きすると、同店は2021年11月から月8回ほど出店しているそうです。お店ではハンドドリップコーヒー、カフェラテのほか、焼き菓子(ブラウニー)、ケーキなどを提供しています。元々会社員だった岸上さんは、コーヒーの魅力にとりつかれて昨年脱サラし、今年柏原町内に自分の店を持つ予定なのですが、今回その準備を兼ねて「あっとかいばら」に出店したそうです。岸上さんは、「チャレンジショップはまさに『練習』。接客や広報のノウハウを学べ、事業を継続していくうえでの大きな自信、経験につながった」と述べ、起業に向けたステップとして出店の意義を高く評価されていました。そして、出店で具体的に学んだこととして、インスタグラムの宣伝効果や広く駐車しやすいスペース確保の必要性などを挙げておられました。
カフェラテと同店オリジナルの「俺のブラウニー」 岸上将博さん
まちづくり柏原の岡林利幸(おかばやしとしゆき)代表取締役にお聞きすると、チャンレンジショップ事業については、2022年度以降も継続・拡大していく方針だそうです。「これまでのテナントミックス事業では、新規出店希望者を待つ‘受動的’な要素が強かったが、これからは、チャンレンジショップ事業をテコに地域内で出店希望者を発掘・育成し、エリア内で出店数を増やす‘能動的’な戦略へとシフトしていきたい」と、今後の抱負を語っておられました。
岡林 利幸 まちづくり柏原代表取締役
2022年度には、住居付ショップの整備や商店街の空き店舗利用したショップの開設などにより、チャレンジショップの数を増やすとともに、商工会の支援メニュー等も活用し、チャレンジショップに出店した人の起業を後押しする取組も行うそうです。また、自治協議会等と連携し店舗を開業可能な空き家の発掘を柏原地区のみならず、丹波市の市街地全域で進めていくことも、検討課題に挙げておられました。このような取組が功を奏し、市街地での新規出店が増えることを期待しています。
まちづくり柏原が活性化事業に取り組みはじめて20年以上が経過しますが、この間、国道176号バイパス沿いにロードサイト店が出店し、商業集積を形成するようになりました。その一方で、中心市街地の商業機能は、量的には大幅に縮小しました。
しかしながら、この5年、中心市街地の居住人口は微減にとどまり、街中の歩行者・自転車通行量は増加傾向にあります。また、個性あふれる魅力的な店舗の誘致を実現した空き家活用・テナントミックスによるまちづくりへの住民の支持も高まっています※3。さらに、歴史的建造物である旧柏原町役場や柏原赤十字病院跡地、それに中心市街地に隣接する柏原駅南用地(県有地・未利用地)と、ポテンシャルの高い‘資産’を保有しています。
※3 「令和2年度丹波市中心市街地活性化基本計画の最終フォローアップに関する報告」〈丹波市(令和3年5月)〉
柏原市街地と柏原駅南用地
(中央がJR柏原駅、その奥が市街地、手前が柏原駅南用地)
今後、「まちの拠点創造プロジェクト」では、産学官民の叡知を結集して、次世代社会における柏原交流ゾーンのあり方を検討するなかで、中心市街地についても、これまでの取組の成果や資産のポテンシャルを踏まえ、再活性化方策を示していきたいと考えています。検討の過程についてはみえる化し、随時皆さんからご意見をいただくつもりです。それを踏まえ、最終提言にて魅力ある将来の柏原の姿を描きたいと思っています。ご協力のほどよろしくお願いいたします。
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まん延防止等重点措置区域の指定は解除されましたが。引き続き、感染防止対策の徹底にご理解、ご協力をお願いいたします。
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