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皆さん、こんにちは。
今回は、近代神戸の発展を支えた、明治期の土木遺産を巡るツアーに参加してきましたので、ご紹介します。地域の遺産を大切な宝として、みんなで保存・活用に取り組んでいきたいというお話です。
神戸は明治以降、港を中心に貿易や産業が急速に栄えるとともに、人口の流入が続くなど、短期間で目覚ましい発展を遂げてきました。一方で、急激にまちが膨張していくと、都市機能を維持していくためのインフラ整備が急務となりました。(1)慢性的な水不足、不衛生な飲料水、(2)大雨による川の氾濫、天井川によるまちの分断、港への土砂の流入、(3)強い波風と岬の突出がもたらす入港の支障などの課題も生じました。そのために実施されたのが「上水道の整備」「湊川の付替」「港湾修築・運河の開削」といった大工事です。これらは明治期の神戸の三大土木事業と称されています。
三大土木事業にはそれぞれを代表する施設があります。
今回、これらの施設を近代土木遺産として、市内外のたくさんの方に知っていただきたいとの思いから、WEBサイト・SNSを活用した魅力発信や写真展を開催するとともに、三大土木遺産見学ツアーを始める事にしました。
今年度は3回にわたってツアーを開催します。
今回私は、12月21日の関係者ツアーに地元神戸市兵庫区長と一緒に参加するとともに、1月24日のおやこツアーにも帯同させていただきました。
兵庫区役所は、市営地下鉄湊川公園駅、神戸電鉄湊川駅を出てスグです。
ここをスタートし、今回は兵庫区のコミュニティバス「みんなのバス」を使って移動することになりました。ちなみに「みんなのバス」はどこまで乗っても大人230円、子ども120円です。
烏原貯水池(からすはらちょすいち)は神戸市水道局さんが管理されています。水圧をダムの重力で支える重力式のコンクリートダムで、堰堤が綺麗な曲線になっています。また堰堤には160個の石臼が埋められています。この地はダム湖になる前、線香の名産地、烏原村でした。その線香を作る際に使われていた石臼です。堰堤に埋められた石臼の意匠はダム湖の建設によって水没した集落の人々に対する感謝の現れではないかと思います。堰堤の上を歩くと、その途中に取水塔があります。ぜひ、現物を生でご覧いただきたいのですが、随所に明治期の洒落た雰囲気を漂わせた作り、装飾になっています。扉には1898年に制定された神戸市水道の徽章を見ることができます。「水」を図案化した六剣水というデザインで、これまたモダンな雰囲気を醸し出しています。そのまま貯水池の周囲「水と森の回遊路」を歩いて一周しました。途中、水源地の分水堰堤の美しい姿も見ることができました。

マルシン市場は「神戸の台所」として有名な東山商店街の北、ほぼ地続きの場所にある東西に延びる市場です。ちなみにここから湊川隧道までは真西に歩いて10分弱の距離です。
マルシン市場では、6人組のチームになって、一人当たり700円・チーム計4,200円を使って自由に食材を購入し、フリースペースでその食材をシェアして頂きました。ツアーメンバーと仲良くなれる、地元小売市場を歩いて回り、その土地のものを食べる事ができるという面白い企画でした。

湊川隧道は、このセンター長だよりで何度もお話ししてきましたので説明は割愛しますが、冬の隧道内は空気が澄んで奥の方まで綺麗に見えました。


〔マルシン市場~隧道までの間で、このマンホールを見つけてくださいね!〕
プロムナード沿いを歩き、人工干潟の説明を受け、和田旋回橋(日本初かつ最古の鉄道用可動橋。今は旋回しませんが、現在もJR西日本和田岬線の鉄道橋として使用されています。)を見学しました。
そもそも神戸に運河があるという事が驚きですが、水面積34haは国内最大級です。ちなみに私は神戸県民センターで働くまで、この辺りを川の一部、淡水だと思い込んでいましたが、ここは海と海を結ぶ運河なので海水です。いろんな種類の海水魚も泳いでいます。この地は明治期には紡績・製粉・砂糖などの工場の物流の要として、その後は貯木場として活躍しました。プロムナードには貯木場の名残りである木材のベンチや碑が置かれています。
兵庫運河は環境の再生にも力を入れている地です。かつては貯木場だった影響で水も濁っていましたが、地域団体や漁協、地元小学校から成るプロジェクトによって10数年前から、アサリの放流やアマモなど海藻類が生える藻場の整備、地元企業も参画した環境学習活動などを続けていて、水質も改善され、県を代表する里海となっています。

JR兵庫駅から歩いて数分の西柳原町近くの「ちから」さんに立ち寄り、おはぎとお茶やコーヒーをいただきました。1934年の創業以来、地元に愛されてきた和風レストランです。何より兵庫運河を訪れた辺りから気温が下がってきていたので、このタイミングでおはぎと温かい飲み物をいただくとホッと一息つけました。

食べ終わると、17時10分 JR兵庫駅前で解散し、1日をかけて周ったツアーを終えました。
今回、ツアーを体験してみて、単に一つ一つの施設を案内されるだけでなく、まちの雰囲気を味わい、地元の人たちと接する機会を組み込んでいただいているんだと感じました。この日、アテンドをしていただいたのは、産業遺産写真家の前畑温子さんと、地元を知り尽くしたまちづくりPRプランナーの西島陽子さん。神戸土木遺産旅における県民センターのパートナーです。お二人がいつもツアーで大切にされていることを教えていただきました。
そうする事によって、まち全体を好きになってもらえる、リピートしてもらえる、とのこと。今回のツアーもその軸はしっかり押さえられていました。
そして土木遺産や産業遺産について、何よりの前提として仰ったのは、地元の人が宝に思ってこそ残していく意味がある、という事でした。この度、始まった神戸土木遺産旅もツアーのみを目的にするのではなく、地域の皆さんとともに末永く、地域の宝を保存・活用するきっかけにしたいと思います。
なお現在、湊川 マルシン市場内で写真展(2月3日(火曜日)~2月16日(月曜日))が開催されています。

また、三大土木遺産をドローン撮影した動画が公開されています。上空から空中散歩をしたような映像はもちろんのこと、普段では見られないアングルからの映像を躍動感、爽快感満載にご覧いただけると思います。
※神戸県民センター公式YouTbeでご覧ください。
神戸土木遺産旅(外部サイトへリンク)
兵庫県神戸県民センター長
内藤 良介
≪以下に「過去の神戸県民センター長だより」のリンク先を掲載しています。≫
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