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ベロ毒素※を産生する腸管出血性大腸菌による感染症です。県内では年間100例以上報告があり、夏に増加する傾向があります。
※ベロ毒素:腸管出血性大腸菌が産生し菌体外に分泌する毒素で、腸の上皮細胞などに作用し症状を起こすといわれています。
腸管出血性大腸菌感染症の原因菌は、ベロ毒素(Verotoxin=VT, またはShigatoxin=Stxと略します)を産生する大腸菌です。
O抗原による血清型によって分けられO157、O26など番号による分類がされています。ヒトを発症させる菌数はわずか50個程度と考えられており、二次感染が起きやすい菌でもあります。また、この菌は酸に強い抵抗性を示すので、胃酸の中でも生残することができます。
感染経路は経口感染です。菌に汚染された食品等を摂取することにより感染します。ヒトからヒトへの感染は、患者の便や菌のついたものに触れた後、手洗いを十分にしなかった場合などに起こります。
病原体が感染すると2~9日ほどの潜伏期を経た後に、激しい腹痛を伴う下痢、続いて血便をおこします。乳幼児や高齢者が感染した場合は重症化しやすいといわれています。また、発症後約5%が溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症を起こすといわれており、時として死亡することもあります。
なお、感染しても発症しないこともあります。
水分補給に加え、下痢に対する整腸剤の使用などの対症療法が中心になります。抗菌剤の使用について医師の判断により行います。
予防のポイントは食べ物の取り扱いと正しい手指衛生です。
汚染食品からの感染が主体であることから、食品を十分加熱したり、調理後の食品はなるべく食べきる等の注意が基本です。
とくに乳幼児、高齢者などは重症事例を防止するため、生肉又は加熱不十分な食肉を食べないように配慮する必要があります。
また、ヒトからヒトへの二次感染を予防するために、食事前、トイレ使用後、排泄介助作業の後などには石けんと流水による手洗いを行うことが必要です。手指衛生のためにアルコール性の擦式消毒剤を追加使用するのも有効です。
トイレなど菌に汚染した可能性のある場所は、アルコールなどの消毒薬等を用いて、適切に消毒することが肝要です。
腸管出血性大腸菌感染症は、便を採取して、病原体分離とベロ毒素の検出によって診断します。
感染症法上、三類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることが義務付けられています。
学校保健安全法では第三種の感染症に指定されており、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」を出席停止の期間の基準としています。
但し、最初から症状がない場合(無症状病原体保有者)、また手洗いなどが十分にできれば二次感染の心配はなく、一律に出席停止とする必要はありません。
なお、保育所においても学校保健安全法に準じた対応を行います。
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