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協働のための広報 兵庫県 広報ガイドライン Hyogo Public Relations Guidelines
若い世代を中心に、「仕事をするなら、社会貢献をしたい」というひとが増えています。そして、おめでとうございます!私たち自治体職員の仕事は、社会を構成する主役である住民の方々を、より幸せにすること。つまり、“ど真ん中ストライク”で、すべての仕事が社会貢献なのです。
この地域にいる誰かを確実に幸せにすることを、あなたはしています。そのことを、必要とされているひとに、しっかり届ける。自治体の、あなたの、“愛”を伝えて相思相愛になる。そんなラブレターとしての広報に役立ちそうなことを、本書ではまとめました。あなたのラブレターづくりが、より楽しくなりましたら、とても嬉しいです。
そして、いちばん楽しいのは、相思相愛になったとき(ですよね?)こちらが差し出した手を、相手からも手を差し伸べて握りかえし、「うん、一緒にやりましょう!」と言ってくれる。これが「協働」のはじまりです。
そんな協働を増やし、住民のみなさまと力を合わせて、(自分自身も)住んでいて最高に幸せな地域をつくっていきましょう。(自分を含めた)誰もが、誇りをもち、あたたかく感じ、ずっとここに住みたいと思い、ここでこどもたちが育ちゆくといいうなと願う。そんな地域を、共につくっていってください。
最後に、あとがきとして、クレドをお伝えします。
「credo」の語源は、ラテン語の「私は、信じます」という意味の言葉です。
なにを?誰かを幸せにできるという、あなた自身を、です。
これから自分に自信をもち、どうぞ胸を張って、事業を、広報を、続けられてください。
だって、住民をより幸せにすることが、自治体職員の仕事なのだから――頼んだよ!
兵庫県広報官(および兵庫県民) 湯川カナ
その事業は、そもそも、何のためにやっているのでしょうか。「県民主役・地域主導」の兵庫を実現する「参画と協働のプラットフォーム」という兵庫県の役割を、しっかりと果たすものでしょうか。
まずは、広報をする事業そのものについて、事業の目的(誰をどう幸せにするのか)をしっかり理解し、背景とともに常に説明できるようにします。
あるいは、広報について、「とりあえず」チラシをつくって、「とりあえず」ホームページを外注でつくらせて、どうも認知不足だし若者に訴求したいから「とりあえず」SNSを始めようと、していませんか。
プロセスのどこかに「とりあえず」が入った瞬間、広報は「伝わらない」ものになります。
もしも自分の中に「なんとなく」を感じたら、必ず立ち止まってください。それが兵庫県民約546万人の幸せを預かるという尊い仕事をされている兵庫県職員さんが常に意識すべき「誠意」です。
その事業は、誰を幸せにするものでしょうか?対象が「県民全体」の場合は、まずいちばん最初にどういう人に伝わらなければいけないのかを、考えてみてください。できるだけ、具体的に。
その人は、どういうことで困ったり悩んだりしていて、それがどういう風に解決されれば幸せになるのでしょうか。そしてその人は、どこに住んでいて、普段はどういう生活をしているのでしょうか。
いま世の中には、情報があふれています。生活者は「情報疲れ」をしているというのが、現代の前提です。そのなかで選んでもらうには、「これは自分宛ての情報だ」と感じてもらうことが必要です。
広報とは、コミュニケーションです。相手がわからなくては、コミュニケーションの取りようがありません。
「県民すべてに」という気持ちもわかりますが、誰宛てかわからない「掲示板」のような告知は、現代では、誰にも読まれません。受け取るべき人に、しっかり届き、理解をされる。そのためには、対象の明確化が欠かせません。
兵庫の主役は、県民です(と、「県民の参画と協働の推進に関する条例」等に書いてあります)。
その事業は、兵庫県民ひとりひとりの幸せを考え抜いていますか?その広報は、兵庫県民ひとりひとりの幸せの実現を促進するために最大限の効果を発揮するよう、考え抜かれていますか?
しっかりと考え抜いているのでしたら、そのビジョンという名の旗を、あなたの手で、高々と掲げてください。
兵庫県職員が預かっているのは、兵庫県民約546万人の幸せです。いま住んでいるひとたち、これからこの土地で育つこどもたちが、「兵庫県で良かった!」と心から思う事業をされ、そのことに誇りをもって、広く伝えてください。
上司や中央省庁などから命令されるのは、お好きでしょうか?「とにかくお金を出すから、話を聞け」を言われたら、どう感じますか?
一般の生活者にとって、兵庫県庁は「お上」です。基本的にすべての言葉が、(発信者の意識は別として)「上から」と思われてしまうということは、前提としてご理解ください。
広報は、コミュニケーションです。「あなたにはこうするのが幸せですよね」という一方的な決めつけからは、対話は生まれません。一方的な答えを押しつけるのではなく、「あなたにはどうするのが幸せですか?」と主役である県民に問いかける姿勢を、常に持ってください。
相手に何かを届けるというのは、ラブレターと同じです。相手のことを思い、相手の幸せを考え抜き、相手に届く言葉、届くツールを選ぶ。それは、対象への敬意でもあります。
兵庫県のすべての事業は、主役である県民を幸せにするものであるはずです。そして兵庫県は、県民の主体性を信じ、その参画と協働のプラットフォームとしての役割を果たすと、宣言しています。
兵庫県は、兵庫県民に片想いをしている状態である、と思ってください。きっとあなたを幸せにする、そのためにいろんな準備をしている。そのことを、あの手この手を尽くして、丁寧に、謙虚に、何度でも諦めずに県民に伝えてください。
あなたの手を通じて、この地域で、より多くのひとが幸せになることを願っています。